[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第五章

新章12:船旅編

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壁へ映し出された映像に茫然とする中、高波はどんどん近づいて来る。
うそよ……こんな高波に襲われれば……間違いなく船は転覆するわ。
果たして……船が転覆した後……私の魔法でどこまで助け出せるかしら……。
乗客全員はきっと無理……不可能よ。

「もう遅い、そう言っただろう。さぁ、どうする?」

迫りくる波の大きさに血の気が引いていく中、私は慌てて魔力を集めると、頭の中でイメージを鮮明にしていく。
転覆した後の事を考えている場合じゃないわ。
まだ波に飲み込まれていない……ならあの高波を止めないと。
確か……私の生まれた世界では海岸沿いに波の対策として、消波ブロックというの物があったはず。
いやでもあれは……波を打ち消すもの。
それなら迫る波に対抗するには堤防しかない……。
そうだわ……船周辺へ高い壁を創りだせば……。

私は向かってくる波をイメージしながらに魔力を展開していくと、大きな壁を鮮明に描いていく。
コンクリート出来た頑丈な壁。
魔力を練る感覚から、ずっとこの壁を出し続ける事は難しいわ。
魔力を消費しすぎる。
なら一瞬……ぶつかる瞬間そこに壁があればいいのよ。
私は魔力を徐々に流しながらに練っていくと、防波堤をイメージしながらに船を囲っていく。
再度映像へ目を向け慎重にタイミングを計る中、波が船に近づいた瞬間、一気に魔力を放つと、そのまま解き放った。

その瞬間……高波の前に灰色の大きな壁が現れる。
その壁は船一体を囲うように円を描いていくと、そこへ激しい波が打ち付けられた。
バサッ、ヴァササアアア、と水音が激しく響く中、堤防に弾かれながらに波が激しく弾き飛ぶ。
よし、これで……。
私は魔力の流れを止めると、次に来る波の衝撃に身構えた。
打ち付けた波は別の方向へ飛び散る為、あれほど大きくはないだろうが海は激しく波打つだろう。
覆った壁を消した今……波は必然に他へと伝わるはず。

しかし暫く身を固くし続ける中、船が揺れる気配はない。
どうして……揺れがこない……?
恐る恐る目を開け映像を眺めてみると、そこには波などどこへ行ったのだろう……穏やかな海が映し出されていた。
どういう事……?
ハッと我に返り後ろへ振り返ると、先ほどの男は楽しそうに笑っていた。

「いやぁ、これはすごい。さすが魔法使い……いや魔導師か。北の国では魔法使いを魔導師と呼ぶのだろう」

「……ッッ、どうしてそれを……。いえそんな事よりも、何が面白いの?今の何なの?どうしてこんなことをするのよ!!!」

「ははっ、そう怒らないでくれ。今のは私がイメージした図を映し出しただけの物。実際に高波は来ていない。君が本物なのかどうか、実力はどれほどのものなのか……それを確認しておきたかったんだ」

その言葉に身構えると、私は慌てて魔力を手に集中させる。
何なのこの男は……こんな事をして一体何の意味があるのよ。
私はこの男を知らないわ。

「どうして……わざわざそんな事を……?なんであなたは私の事を知っているのよ」

「ははっ、どうして知っているかだって?君はとっても有名人だ。数少ない魔法使いで、戦闘能力に、治癒能力にも優れている。私はね、ずっと君のような存在を探していたんだ」

「探す?何なのよ一体……。あなたは誰……何者なの?」

訳の分からない男の言葉に戸惑う中、そう問いかけてみると、彼は笑みを深めながらに頭を下げた。

「これは失礼、私の名はノエル」

ノエル!?
この男が……。
知ったその名に気が動転する中、情報屋の言葉が頭をよぎると、私は考え込むように視線を落とした。
裏の組織のボス……そして私と同じ魔法を使える存在。
でも確かこの男は壁の傍にいるはず……ならどうやって……?

「本当に……あなたがノエルなの?でもそれならばどうやってここへ来たのよ。あなたは壁の傍にいるはずでしょ。移転魔法を使うには正しい道筋が必要よ。船の航路なんてイメージ出来るはずがないわ」

「ははっ、私の事を知っていてくれて嬉しい。そう君の言う通り、私は壁の傍にいた。でもどうしても早く君に会いたくなってしまった。だからこうやって追いかけてきたんだ。もちろん移転魔法は使っていないよ。言葉通り君の存在を感じて、ここまで飛んできたんだ」

存在を感じる……。
それって……エヴァンが指輪を追って私の傍にやってきたの同じ……?
でも今は指輪はないし……この男と対となる物を持ってないわ。

「はぁ!?追いかけてって……?どうして私の居場所がわかるのよ。ここは海の上よ?」

「その疑問はもっともだ。実はね、君のつけているミサンガは私が作った物なんだ」

その言葉に私は慌てて腕へ視線を向けると、ミサンガからは何かに反応するように、薄っすらと光が溢れだしている。
光が……いつの間に!?
ノエルは驚く私の様子にゆっくりと近づいてくると、袖をまくりながらに真っ赤なミサンガを見せつけた。
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