[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

文字の大きさ
上 下
254 / 358
第五章

新章3:とある密会

しおりを挟む
なかなか私を離そうとしないシナンを何とか説得し解放してもらうと、私たちは朝食を作り始めた。

「ところで……お姉さん体調は大丈夫ですか?無理しないで下さいね。準備は僕がやっておきますから……。それでこの薬草はどうすればいいですか?」

シナンはポケットから青い草を取り出すと、土を払いながらに私へと差し出した。

「ふふっ、わざわざ取りに行ってくれてありがとう。この薬草は次何かあるかもしれないし、魔法で保存しておきましょう。私はもう大丈夫、熱もないようだし、元気いっぱいよ。心配をかけてごめんなさいね」

そんな事を話しながらに、二人並んで朝食を準備していく中、和やかな雰囲気が包み込んでいく。
そうして朝食を作り終え、カミールの部屋へ行ってみるが……彼はどうやらどこかへ出かけたようだ。
まぁ……改めて顔をあわせるのは気まずかったし……。
彼がいないことにどこかほっとする中、そのまま穏やかな一日が過ぎると、あっという間に夜が訪れる。
そんな中、カミールは未だ帰って来てはいなかった。

彼が戻ってこないことはよくある事だが……今日は何だかとても気になってしまう。
あんな事があったせいかしらね……。
そんな事を考えながらにチラッと玄関へ視線を向けてみるが……その扉が開くことはなかった。

そうして夜も更け、二人で部屋へ戻ると、そこで私はあることに気が付いた。
えっ……大人のシナンと一緒に眠る……?
いやいやそれはさすがに……教育上良くないと思うわ……。
年は変わらなくて大人の姿で眠るのと、子供の姿で眠るのは全然違う。
そう思い私は慌てて顔を上げると、シナンから距離を取るように後ずさった。

「シナン、私はリビングで眠るから、あなたはここで眠って」

「えっ、どうして!?お姉さん……僕と眠るの……嫌になった……?」

シナンは私の言葉にシュンと尻尾を下げると、悲しそうな表情を見せる。

「嫌というわけじゃないわ。でも……そうね……シナンは大人になったでしょ?……それで女性と一緒にベッドを使うのは良くないと思うのよ」

そうぎこちない笑みを浮かべながらに説明してみると、シナンはわからないと言った様子で首を傾げた。

「どうして?大人になると……お姉さんと一緒に眠れなくなってしまうの?」

「えっ、あ~、う~ん……その……。そうだわ、大人になったシナンだと、ベッドで二人眠るのは狭いでしょ?だから別々の方がいいと思うの」

「僕は狭くても全然かまわないよ。……一人で眠るのは寂しい……」

シナンはそっと服の裾を握りしめると、潤んだ瞳で私を見下ろした。
うぅ……そんな顔をされると……。
でもダメよ……ここはしっかりしないと……。
あぁ……説明が難しいわね……。
なんと言えばいいのか……そううんうんと頭を悩ませていると、シナンの腕が私の腰へと回された。

「ねぇ、おねぇさん……カミールさんとは一緒に眠っていたのに……どうして僕はダメなの……?」

シナンは真っすぐに私を見下ろすと、逃がさないと言わんばかりに、私の体を抱き寄せる。

「へぇっ!?なっ、なっ、どうして知っているの!?」

「僕は獣人だよ、朝からずっと……お姉さんからカミールさんの匂いがするから……。そんなに臭いが付くって事は、一晩中一緒に眠っていたってことでしょ……?」

臭いっっ!?
その言葉に慌てて自分の腕を嗅いでみるが……よくわからない。

「ふふっ、お姉さんにはわからないよ。獣人はね、人間よりも嗅覚が鋭いんだ。だから……すぐにわかったよ」

シナンはニッコリと笑みを浮かべて見せると、そのまま私を抱き上げベッドへと運んでいく。

「えっ、シナン待ちなさい」

そう声を荒げてみるが……シナンに止まる気配はない。
あれやこれやと抵抗してみるも、大の男にかなうはずもなく……腕の中に安易に囚われてしまう中、シナンは私をベッドへ下ろしギュッと抱きよせると、二人並んで横になった。
あまりに密着したその体制に、私は慌てて身をよじらせ背を向けると、シナンの鼓動が伝わってくる。
子供の時とは違う低い体温に、ゴツゴツした腕や手に、私の熱が次第に高まっていった。

「シッ、シナン……ッッ」

「全然狭くないね。だから……お姉さん一緒に眠ろう」

シナンは抱き枕を握りしめるように、ギュッと私を包みこむと、体が自然と硬直していく。
ちょっと、これは……さすがに……。
背中から感じるシナンの体は、どう見ても大人の男性そのもので……。
逞しい腕に、熱い胸板に……心臓がバクバクと大きく波打っていく。
こんなの……眠れないわ……。
逃げ出そうと身をよじらせてみるが、彼の腕はビクともしない。
シナンと声を上げてみると、彼からの返事はもう返ってこなかった。
まさか……もう眠ってしまったのかしら……?

静かな部屋の中、月明かりが微かに差し込む、薄暗い部屋が目に映る。
動く事も出来ず、背中から深くなる鼓動を感じる中、彼の温もりがゆっくりと私を包みこんでいった。
その熱に次第に安らぎを感じ始めると、瞼が重くなっていく。
そうして私はいつの間にか深く息を吸い込むと、彼の腕へ身を預けるように眠りについた。




☆おまけ☆

******彼女が眠った後(シナン視点)******

シーンと静まり返る部屋の中、彼女の深い寝息が耳に届く。
そっと体を持ち上げてみると、肩を大きく揺らせながらに目を閉じた彼女を覗き込んだ。

「お姉さん、眠っちゃった?」

そうぼそりと呟いてみると、返事は返ってこない。
僕は彼女の顔へそっと手を伸ばすと、頬にかかった黒髪を払い落とす。
露になった真っ白な肌が月明かりに照らされ、ドクンと心臓が大きく跳ねると、僕は無意識に顔を寄せていた。

お姉さんの香りはとても心地よくて……食べてしまいたくなる。

そう思うと僕はそっと舌を伸ばし、真っ白な頬をペロリと舐める。
口の中に甘美な味が広がり、ゾクゾクとした熱い感情がこみあげてくると、胸の中で渦巻いていった。

彼女の香りに酔いしれる中、ふとカミールさんの香りが鼻を掠めると、どこからか黒い感情がこみあげてくる。
体中あちこちからカミールさんの匂いがする。
それがたまらなく苛立って……僕の匂いで全てを消してしまいたいそんな衝動が……。
この気持ちは一体なんだろう。
何とも言えぬ黒く渦巻く感情に戸惑う中、僕は彼女の首筋へ顔を埋めると、何かを抑え込むように必死に目を閉じるのだった。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

処理中です...