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第五章
新章3:とある密会
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なかなか私を離そうとしないシナンを何とか説得し解放してもらうと、私たちは朝食を作り始めた。
「ところで……お姉さん体調は大丈夫ですか?無理しないで下さいね。準備は僕がやっておきますから……。それでこの薬草はどうすればいいですか?」
シナンはポケットから青い草を取り出すと、土を払いながらに私へと差し出した。
「ふふっ、わざわざ取りに行ってくれてありがとう。この薬草は次何かあるかもしれないし、魔法で保存しておきましょう。私はもう大丈夫、熱もないようだし、元気いっぱいよ。心配をかけてごめんなさいね」
そんな事を話しながらに、二人並んで朝食を準備していく中、和やかな雰囲気が包み込んでいく。
そうして朝食を作り終え、カミールの部屋へ行ってみるが……彼はどうやらどこかへ出かけたようだ。
まぁ……改めて顔をあわせるのは気まずかったし……。
彼がいないことにどこかほっとする中、そのまま穏やかな一日が過ぎると、あっという間に夜が訪れる。
そんな中、カミールは未だ帰って来てはいなかった。
彼が戻ってこないことはよくある事だが……今日は何だかとても気になってしまう。
あんな事があったせいかしらね……。
そんな事を考えながらにチラッと玄関へ視線を向けてみるが……その扉が開くことはなかった。
そうして夜も更け、二人で部屋へ戻ると、そこで私はあることに気が付いた。
えっ……大人のシナンと一緒に眠る……?
いやいやそれはさすがに……教育上良くないと思うわ……。
年は変わらなくて大人の姿で眠るのと、子供の姿で眠るのは全然違う。
そう思い私は慌てて顔を上げると、シナンから距離を取るように後ずさった。
「シナン、私はリビングで眠るから、あなたはここで眠って」
「えっ、どうして!?お姉さん……僕と眠るの……嫌になった……?」
シナンは私の言葉にシュンと尻尾を下げると、悲しそうな表情を見せる。
「嫌というわけじゃないわ。でも……そうね……シナンは大人になったでしょ?……それで女性と一緒にベッドを使うのは良くないと思うのよ」
そうぎこちない笑みを浮かべながらに説明してみると、シナンはわからないと言った様子で首を傾げた。
「どうして?大人になると……お姉さんと一緒に眠れなくなってしまうの?」
「えっ、あ~、う~ん……その……。そうだわ、大人になったシナンだと、ベッドで二人眠るのは狭いでしょ?だから別々の方がいいと思うの」
「僕は狭くても全然かまわないよ。……一人で眠るのは寂しい……」
シナンはそっと服の裾を握りしめると、潤んだ瞳で私を見下ろした。
うぅ……そんな顔をされると……。
でもダメよ……ここはしっかりしないと……。
あぁ……説明が難しいわね……。
なんと言えばいいのか……そううんうんと頭を悩ませていると、シナンの腕が私の腰へと回された。
「ねぇ、おねぇさん……カミールさんとは一緒に眠っていたのに……どうして僕はダメなの……?」
シナンは真っすぐに私を見下ろすと、逃がさないと言わんばかりに、私の体を抱き寄せる。
「へぇっ!?なっ、なっ、どうして知っているの!?」
「僕は獣人だよ、朝からずっと……お姉さんからカミールさんの匂いがするから……。そんなに臭いが付くって事は、一晩中一緒に眠っていたってことでしょ……?」
臭いっっ!?
その言葉に慌てて自分の腕を嗅いでみるが……よくわからない。
「ふふっ、お姉さんにはわからないよ。獣人はね、人間よりも嗅覚が鋭いんだ。だから……すぐにわかったよ」
シナンはニッコリと笑みを浮かべて見せると、そのまま私を抱き上げベッドへと運んでいく。
「えっ、シナン待ちなさい」
そう声を荒げてみるが……シナンに止まる気配はない。
あれやこれやと抵抗してみるも、大の男にかなうはずもなく……腕の中に安易に囚われてしまう中、シナンは私をベッドへ下ろしギュッと抱きよせると、二人並んで横になった。
あまりに密着したその体制に、私は慌てて身をよじらせ背を向けると、シナンの鼓動が伝わってくる。
子供の時とは違う低い体温に、ゴツゴツした腕や手に、私の熱が次第に高まっていった。
「シッ、シナン……ッッ」
「全然狭くないね。だから……お姉さん一緒に眠ろう」
シナンは抱き枕を握りしめるように、ギュッと私を包みこむと、体が自然と硬直していく。
ちょっと、これは……さすがに……。
背中から感じるシナンの体は、どう見ても大人の男性そのもので……。
逞しい腕に、熱い胸板に……心臓がバクバクと大きく波打っていく。
こんなの……眠れないわ……。
逃げ出そうと身をよじらせてみるが、彼の腕はビクともしない。
シナンと声を上げてみると、彼からの返事はもう返ってこなかった。
まさか……もう眠ってしまったのかしら……?
静かな部屋の中、月明かりが微かに差し込む、薄暗い部屋が目に映る。
動く事も出来ず、背中から深くなる鼓動を感じる中、彼の温もりがゆっくりと私を包みこんでいった。
その熱に次第に安らぎを感じ始めると、瞼が重くなっていく。
そうして私はいつの間にか深く息を吸い込むと、彼の腕へ身を預けるように眠りについた。
☆おまけ☆
******彼女が眠った後(シナン視点)******
シーンと静まり返る部屋の中、彼女の深い寝息が耳に届く。
そっと体を持ち上げてみると、肩を大きく揺らせながらに目を閉じた彼女を覗き込んだ。
「お姉さん、眠っちゃった?」
そうぼそりと呟いてみると、返事は返ってこない。
僕は彼女の顔へそっと手を伸ばすと、頬にかかった黒髪を払い落とす。
露になった真っ白な肌が月明かりに照らされ、ドクンと心臓が大きく跳ねると、僕は無意識に顔を寄せていた。
お姉さんの香りはとても心地よくて……食べてしまいたくなる。
そう思うと僕はそっと舌を伸ばし、真っ白な頬をペロリと舐める。
口の中に甘美な味が広がり、ゾクゾクとした熱い感情がこみあげてくると、胸の中で渦巻いていった。
彼女の香りに酔いしれる中、ふとカミールさんの香りが鼻を掠めると、どこからか黒い感情がこみあげてくる。
体中あちこちからカミールさんの匂いがする。
それがたまらなく苛立って……僕の匂いで全てを消してしまいたいそんな衝動が……。
この気持ちは一体なんだろう。
何とも言えぬ黒く渦巻く感情に戸惑う中、僕は彼女の首筋へ顔を埋めると、何かを抑え込むように必死に目を閉じるのだった。
「ところで……お姉さん体調は大丈夫ですか?無理しないで下さいね。準備は僕がやっておきますから……。それでこの薬草はどうすればいいですか?」
シナンはポケットから青い草を取り出すと、土を払いながらに私へと差し出した。
「ふふっ、わざわざ取りに行ってくれてありがとう。この薬草は次何かあるかもしれないし、魔法で保存しておきましょう。私はもう大丈夫、熱もないようだし、元気いっぱいよ。心配をかけてごめんなさいね」
そんな事を話しながらに、二人並んで朝食を準備していく中、和やかな雰囲気が包み込んでいく。
そうして朝食を作り終え、カミールの部屋へ行ってみるが……彼はどうやらどこかへ出かけたようだ。
まぁ……改めて顔をあわせるのは気まずかったし……。
彼がいないことにどこかほっとする中、そのまま穏やかな一日が過ぎると、あっという間に夜が訪れる。
そんな中、カミールは未だ帰って来てはいなかった。
彼が戻ってこないことはよくある事だが……今日は何だかとても気になってしまう。
あんな事があったせいかしらね……。
そんな事を考えながらにチラッと玄関へ視線を向けてみるが……その扉が開くことはなかった。
そうして夜も更け、二人で部屋へ戻ると、そこで私はあることに気が付いた。
えっ……大人のシナンと一緒に眠る……?
いやいやそれはさすがに……教育上良くないと思うわ……。
年は変わらなくて大人の姿で眠るのと、子供の姿で眠るのは全然違う。
そう思い私は慌てて顔を上げると、シナンから距離を取るように後ずさった。
「シナン、私はリビングで眠るから、あなたはここで眠って」
「えっ、どうして!?お姉さん……僕と眠るの……嫌になった……?」
シナンは私の言葉にシュンと尻尾を下げると、悲しそうな表情を見せる。
「嫌というわけじゃないわ。でも……そうね……シナンは大人になったでしょ?……それで女性と一緒にベッドを使うのは良くないと思うのよ」
そうぎこちない笑みを浮かべながらに説明してみると、シナンはわからないと言った様子で首を傾げた。
「どうして?大人になると……お姉さんと一緒に眠れなくなってしまうの?」
「えっ、あ~、う~ん……その……。そうだわ、大人になったシナンだと、ベッドで二人眠るのは狭いでしょ?だから別々の方がいいと思うの」
「僕は狭くても全然かまわないよ。……一人で眠るのは寂しい……」
シナンはそっと服の裾を握りしめると、潤んだ瞳で私を見下ろした。
うぅ……そんな顔をされると……。
でもダメよ……ここはしっかりしないと……。
あぁ……説明が難しいわね……。
なんと言えばいいのか……そううんうんと頭を悩ませていると、シナンの腕が私の腰へと回された。
「ねぇ、おねぇさん……カミールさんとは一緒に眠っていたのに……どうして僕はダメなの……?」
シナンは真っすぐに私を見下ろすと、逃がさないと言わんばかりに、私の体を抱き寄せる。
「へぇっ!?なっ、なっ、どうして知っているの!?」
「僕は獣人だよ、朝からずっと……お姉さんからカミールさんの匂いがするから……。そんなに臭いが付くって事は、一晩中一緒に眠っていたってことでしょ……?」
臭いっっ!?
その言葉に慌てて自分の腕を嗅いでみるが……よくわからない。
「ふふっ、お姉さんにはわからないよ。獣人はね、人間よりも嗅覚が鋭いんだ。だから……すぐにわかったよ」
シナンはニッコリと笑みを浮かべて見せると、そのまま私を抱き上げベッドへと運んでいく。
「えっ、シナン待ちなさい」
そう声を荒げてみるが……シナンに止まる気配はない。
あれやこれやと抵抗してみるも、大の男にかなうはずもなく……腕の中に安易に囚われてしまう中、シナンは私をベッドへ下ろしギュッと抱きよせると、二人並んで横になった。
あまりに密着したその体制に、私は慌てて身をよじらせ背を向けると、シナンの鼓動が伝わってくる。
子供の時とは違う低い体温に、ゴツゴツした腕や手に、私の熱が次第に高まっていった。
「シッ、シナン……ッッ」
「全然狭くないね。だから……お姉さん一緒に眠ろう」
シナンは抱き枕を握りしめるように、ギュッと私を包みこむと、体が自然と硬直していく。
ちょっと、これは……さすがに……。
背中から感じるシナンの体は、どう見ても大人の男性そのもので……。
逞しい腕に、熱い胸板に……心臓がバクバクと大きく波打っていく。
こんなの……眠れないわ……。
逃げ出そうと身をよじらせてみるが、彼の腕はビクともしない。
シナンと声を上げてみると、彼からの返事はもう返ってこなかった。
まさか……もう眠ってしまったのかしら……?
静かな部屋の中、月明かりが微かに差し込む、薄暗い部屋が目に映る。
動く事も出来ず、背中から深くなる鼓動を感じる中、彼の温もりがゆっくりと私を包みこんでいった。
その熱に次第に安らぎを感じ始めると、瞼が重くなっていく。
そうして私はいつの間にか深く息を吸い込むと、彼の腕へ身を預けるように眠りについた。
☆おまけ☆
******彼女が眠った後(シナン視点)******
シーンと静まり返る部屋の中、彼女の深い寝息が耳に届く。
そっと体を持ち上げてみると、肩を大きく揺らせながらに目を閉じた彼女を覗き込んだ。
「お姉さん、眠っちゃった?」
そうぼそりと呟いてみると、返事は返ってこない。
僕は彼女の顔へそっと手を伸ばすと、頬にかかった黒髪を払い落とす。
露になった真っ白な肌が月明かりに照らされ、ドクンと心臓が大きく跳ねると、僕は無意識に顔を寄せていた。
お姉さんの香りはとても心地よくて……食べてしまいたくなる。
そう思うと僕はそっと舌を伸ばし、真っ白な頬をペロリと舐める。
口の中に甘美な味が広がり、ゾクゾクとした熱い感情がこみあげてくると、胸の中で渦巻いていった。
彼女の香りに酔いしれる中、ふとカミールさんの香りが鼻を掠めると、どこからか黒い感情がこみあげてくる。
体中あちこちからカミールさんの匂いがする。
それがたまらなく苛立って……僕の匂いで全てを消してしまいたいそんな衝動が……。
この気持ちは一体なんだろう。
何とも言えぬ黒く渦巻く感情に戸惑う中、僕は彼女の首筋へ顔を埋めると、何かを抑え込むように必死に目を閉じるのだった。
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