250 / 358
第五章
閑話:雨降る街で:中編2
しおりを挟む
月明かりに照らされ映ったものは、獣耳をした男の姿。
それは紛れもなく獣人の姿だ。
長い尻尾が揺れ、その手には女が力なく抱きかかえられている。
その腕の中でグッタリとする女の姿をよく見てみると、それはあの魔法使いだった。
「お前……何者だ……?」
「……その声……カミールさん!!助けて、お姉さんが!!!」
予想だにしなかった返答にひるむ中、獣人をよく見てみると、赤みを帯びたブラウンの髪……グレー瞳や感じる雰囲気が、シナンにとてもよく似ていた。
「お前……まさかシナンか?」
「お姉さん助けて!!!お願いします、早くしないと……お姉さんが……っっ」
必死に訴えるシナンの様子に、彼女を覗き込んでみると、その顔から血の気が引いている。
恐る恐るに触れてみると、生きているのかと思うほどに肌が冷たくなっていた。
「おい、シナンこれはどういうことだ!!」
「説明は後でします、どんな罰でも受けます……。だからお姉さんを助けて下さい……お願いします……」
シナンは悲痛な声でそう叫ぶと、成長したシナンの体が大きく揺れる。
その様子に慌てて支えてやると、シナンの腕から彼女を受け取った。
彼女の体が離れるや否や、シナンは荒く息を繰り返すと、今にも倒れてしまいそうなほどに衰弱している。
その様子に俺はシナンのボロボロになったローブを掴むと、彼女を担ぎながらに家の中へと引きずっていった。
そうしてシナンを一階のソファーへ寝かせ、俺は彼女を2階へ運ぶと、そこには爺さんが待っていた。
「ほっほっほ、愛しい恋人が見つかったようじゃなぁ」
「爺さん、診てくれ」
俺は彼女をベッドへ寝かせる中、爺さんはカバンからナイフを取り出すと、手首へと傷をつける。
爺さんの腕から流れ出る血から蜂のような遣い魔が浮かび上がると、彼女首筋へと飛んでいった。
そうしてまた爺さんはカバンから何やら道具を取り出すと、横たわる彼女へと触れていく。
「こりゃ……まずいな。この娘さん魔力切れを起こしておる」
「魔力切れ……どういうことだ?」
「魔力切れは魔力切れじゃ。彼女はどこかで魔力を使いすぎたのじゃろうて……だがこれは……」
爺さんは再びペタペタと彼女の体へ触れると、考え込むように顎に手を添えた。
彼女は深く眠っている様子で、ピクリとも動く気配はない。
「おかしいの~、魔法使いであれば外から魔力を吸収するはずなんじゃが……この娘さんの体は魔力を弾いているようじゃの。これだと魔力は補充できん」
「うん……?ならどうするんだ?」
「外から魔力を与えられないとなると……無理矢理に中へ注ぐしかないじゃろうな」
「注ぐ……?どうすればいいんだ?」
「そりゃお前さん、魔力を渡すには、彼女の中に魔力を流し込むんじゃよ」
「だからそれはどうするんだと聞いているんだ!」
「魔力を他人に渡す方法はただ一つ、彼女とつながることじゃな」
「つながるだと……本気で言っているのか?」
「あぁ、この娘さんを助けたければ、魔力を持った者がこの娘さんを抱くしかないの~。口移しでもできなくはないじゃろうが……果たしてどうじゃろうな。この娘さんかなり魔力をもっておったようじゃしなぁ。いやはや……これはすごい魔法使いじゃの~」
爺さんが興味津々の様子で彼女を眺める姿を横目に、俺はその場に固まっていた。
はあ……どうなってるんだ?
抱くってことは……そういうことなのか……?
真意を確かめるように爺さんを睨みつけてみるが……どうやら本気の様子だ。
俺がこの魔法使いを……寝ている女を抱く趣味は無いんだが……。
「わしがもう少し若ければなぁ……残念じゃ……。まぁ恋人がいる以上お前さんが抱いてあげんしゃい。あとはそうじゃ、この首の噛まれた傷と毒を解読してみたんじゃが、それほど強い毒ではないからのぉ、安静にしておれば問題はないようじゃ。魔力さえ補充できれば、彼女は目覚めるじゃろうて」
爺さんは遣い魔を帰還させると、俺を肩を強く叩き、ニヤリと口角を上げたかと思うと、そのまま部屋から去っていった。
残された俺は彼女を目の前に、暫し頭を抱えていた。
この女を助ける為には……くそっ、どうして俺が……。
とりあえず……。
俺はそっと彼女の元へ近づいてくと、冷たい頬へと触れる。
爺さんは口づけでも何とかなると言っていたな……。
まるで死んでしまっているかのような冷たさにたじろぐ中、意を決して彼女の唇へ近づけていった。
女に口づけるのに、これほどまで緊張したことはない……。
真っ赤に染まる唇へそっと重ねてみると、突然体に巡る血が一気に湧き上がった。
何かが吸い取られる感覚に、思わず体を離そうとしたその刹那、彼女の舌が俺の中へ侵入してくる。
頬の冷たさと相まって熱いその舌に一瞬怯むと、先ほどまでピクリとも動かなかった彼女の腕が俺の首へと巻き付いてきた。
クチュッ、クチュッ、チュッ、
唾液が混ざり深くなる口づけに下半身が反応すると、その甘く痺れるような感覚に犯されていく。
彼女の甘さを求めるように舌を絡ませ続ける中、気がつけば俺は彼女をベッドへと押さえつけていた。
甘美なその舌を堪能するように、無我夢中に何度も何度も口づけを交わしていく。
こんなに心地いいと感じたのは、初めてだな。
もっと味わいたい。
彼女の香りに、甘さに酔いしれる中、俺は何度も彼女の舌を求めていった。
それは紛れもなく獣人の姿だ。
長い尻尾が揺れ、その手には女が力なく抱きかかえられている。
その腕の中でグッタリとする女の姿をよく見てみると、それはあの魔法使いだった。
「お前……何者だ……?」
「……その声……カミールさん!!助けて、お姉さんが!!!」
予想だにしなかった返答にひるむ中、獣人をよく見てみると、赤みを帯びたブラウンの髪……グレー瞳や感じる雰囲気が、シナンにとてもよく似ていた。
「お前……まさかシナンか?」
「お姉さん助けて!!!お願いします、早くしないと……お姉さんが……っっ」
必死に訴えるシナンの様子に、彼女を覗き込んでみると、その顔から血の気が引いている。
恐る恐るに触れてみると、生きているのかと思うほどに肌が冷たくなっていた。
「おい、シナンこれはどういうことだ!!」
「説明は後でします、どんな罰でも受けます……。だからお姉さんを助けて下さい……お願いします……」
シナンは悲痛な声でそう叫ぶと、成長したシナンの体が大きく揺れる。
その様子に慌てて支えてやると、シナンの腕から彼女を受け取った。
彼女の体が離れるや否や、シナンは荒く息を繰り返すと、今にも倒れてしまいそうなほどに衰弱している。
その様子に俺はシナンのボロボロになったローブを掴むと、彼女を担ぎながらに家の中へと引きずっていった。
そうしてシナンを一階のソファーへ寝かせ、俺は彼女を2階へ運ぶと、そこには爺さんが待っていた。
「ほっほっほ、愛しい恋人が見つかったようじゃなぁ」
「爺さん、診てくれ」
俺は彼女をベッドへ寝かせる中、爺さんはカバンからナイフを取り出すと、手首へと傷をつける。
爺さんの腕から流れ出る血から蜂のような遣い魔が浮かび上がると、彼女首筋へと飛んでいった。
そうしてまた爺さんはカバンから何やら道具を取り出すと、横たわる彼女へと触れていく。
「こりゃ……まずいな。この娘さん魔力切れを起こしておる」
「魔力切れ……どういうことだ?」
「魔力切れは魔力切れじゃ。彼女はどこかで魔力を使いすぎたのじゃろうて……だがこれは……」
爺さんは再びペタペタと彼女の体へ触れると、考え込むように顎に手を添えた。
彼女は深く眠っている様子で、ピクリとも動く気配はない。
「おかしいの~、魔法使いであれば外から魔力を吸収するはずなんじゃが……この娘さんの体は魔力を弾いているようじゃの。これだと魔力は補充できん」
「うん……?ならどうするんだ?」
「外から魔力を与えられないとなると……無理矢理に中へ注ぐしかないじゃろうな」
「注ぐ……?どうすればいいんだ?」
「そりゃお前さん、魔力を渡すには、彼女の中に魔力を流し込むんじゃよ」
「だからそれはどうするんだと聞いているんだ!」
「魔力を他人に渡す方法はただ一つ、彼女とつながることじゃな」
「つながるだと……本気で言っているのか?」
「あぁ、この娘さんを助けたければ、魔力を持った者がこの娘さんを抱くしかないの~。口移しでもできなくはないじゃろうが……果たしてどうじゃろうな。この娘さんかなり魔力をもっておったようじゃしなぁ。いやはや……これはすごい魔法使いじゃの~」
爺さんが興味津々の様子で彼女を眺める姿を横目に、俺はその場に固まっていた。
はあ……どうなってるんだ?
抱くってことは……そういうことなのか……?
真意を確かめるように爺さんを睨みつけてみるが……どうやら本気の様子だ。
俺がこの魔法使いを……寝ている女を抱く趣味は無いんだが……。
「わしがもう少し若ければなぁ……残念じゃ……。まぁ恋人がいる以上お前さんが抱いてあげんしゃい。あとはそうじゃ、この首の噛まれた傷と毒を解読してみたんじゃが、それほど強い毒ではないからのぉ、安静にしておれば問題はないようじゃ。魔力さえ補充できれば、彼女は目覚めるじゃろうて」
爺さんは遣い魔を帰還させると、俺を肩を強く叩き、ニヤリと口角を上げたかと思うと、そのまま部屋から去っていった。
残された俺は彼女を目の前に、暫し頭を抱えていた。
この女を助ける為には……くそっ、どうして俺が……。
とりあえず……。
俺はそっと彼女の元へ近づいてくと、冷たい頬へと触れる。
爺さんは口づけでも何とかなると言っていたな……。
まるで死んでしまっているかのような冷たさにたじろぐ中、意を決して彼女の唇へ近づけていった。
女に口づけるのに、これほどまで緊張したことはない……。
真っ赤に染まる唇へそっと重ねてみると、突然体に巡る血が一気に湧き上がった。
何かが吸い取られる感覚に、思わず体を離そうとしたその刹那、彼女の舌が俺の中へ侵入してくる。
頬の冷たさと相まって熱いその舌に一瞬怯むと、先ほどまでピクリとも動かなかった彼女の腕が俺の首へと巻き付いてきた。
クチュッ、クチュッ、チュッ、
唾液が混ざり深くなる口づけに下半身が反応すると、その甘く痺れるような感覚に犯されていく。
彼女の甘さを求めるように舌を絡ませ続ける中、気がつけば俺は彼女をベッドへと押さえつけていた。
甘美なその舌を堪能するように、無我夢中に何度も何度も口づけを交わしていく。
こんなに心地いいと感じたのは、初めてだな。
もっと味わいたい。
彼女の香りに、甘さに酔いしれる中、俺は何度も彼女の舌を求めていった。
0
お気に入りに追加
2,462
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる