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第五章
閑話:カミールの頁 前編(カミール視点)
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薄暗く足場の悪い森の中、俺は愛馬を走らせながらに袖にある金の刺繍をなぞると……スルスルと刺繍が裾から外れ、鳥の姿へ変化していく。
胸元で黄金色の鳥が形成され、そのまま夜空へ放つと、俺はその鳥を追う様に馬を走らせていった。
山道の向こうに街の明かりがポツポツと浮かび上がる中、鳥は街から遠ざかるように羽ばたいていく。
どんどん深くなる森の木々を避けながらに駆け上がっていくと、辺りは暗闇に包まれていった。
どれぐらい馬を走らせていたのだろうか……気がつけば空に浮かんだ月は真上にさしかかり、薄暗い森に光が差し込んでいた。
そんな中、道中に馬車を発見すると、俺はこの辺りにアジトがあるのだろうと当たりを付ける。
俺はそこで愛馬から降りると、幹へ馬をくくり、一人森の中へと進んでいった。
黄金色の鳥を追いながらに進んでいくと、上空で鳥が旋回を始めた。
駆け足でその場へ向かっていくと、林道を上り切ったその先には、不自然に空いた広場があった。
そこには古びた建物が佇み、その裏てには小屋が目に目に映る。
ここがアジトだな……、想像するに、裏手の小屋にガキ共を捕えているのだろう。
先に連れ去られたガキ共を助けてから……あの男に会いに行くか……。
俺は目の前に佇む建物を無視すると、そのまま小屋へと足を向ける。
予想通り小屋に居たガキ共を……ギルドの報酬為に救出すると、愛馬を待たせてある場所へと移動していった。
その道中にガキ共から聞いた話によると……どうやら一人女が連れて行かれたようだ。
連れていかれて大分時間もたっているだろうし、女には気の毒だが……もう手遅れだろう。
そんな事を考えながらに、ガキ共の安全な場所へ移し先ほどの広場へと戻ると……俺はそこであの魔法使いの女と出会ったんだ。
**************************
目的の男を拘束する中、女とガキが出て行ったのを確認すると、俺は男の腕を締めあげていく。
低い呻き声が部屋に響く中、俺はそっと男の耳元へ顔を寄せると、静かに問いかけた。
「ノエルと言う男を知らないか?」
「……っっ、イテェ……ノエル……くぅっ、そんな名前知らねぇよ!!!」
男は苦悶の表情を浮かべながらにそう叫ぶ姿に、俺はさらに腕を締め上げバキッと鈍い音が響くと、室内に悲鳴が轟いた。
苦渋の表情を浮かべた男はその場に倒れ込むと、あまりの痛さに蹲り悶絶している。
そんな男を一瞥し、俺は容赦なく男の髪を鷲掴みにすると、無理矢理に顔を上げさせた。
「もう一度聞く。ノエルと言う男を知らないか?」
「あ”ぁ”ぁ”あああ”あああ”っっ、いてぇっ、しらねぇって言ってんだろう……っっ、グゥハッ」
しらを切ろうとする男に、自然と溜息が漏れると、そのまま床へとたたきつける。
「……お前とノエルとの関係はすでに調べてある。さっさとはけ。言うつもりがないのならば……そうだな、両手の関節を外して、一本一本爪を剥いでやろう。その後は……」
男の背を押さえつけたまま、そう脅す様に呟くと、男の表情が徐々に変わっていく。
先ほどまで強気だった瞳は恐怖へと変わり、逃げようと必死に身を-じらせた。
だが俺はそれを上から強く踏みつけると、肺を圧迫し、男からはくぐもった声が漏れる。
「グッ、っっ、あ”ぁ”ぁ”っ、待て……ああぁっ、ガハッ……、はぁ、はぁ、はぁ、……わかった……わかった。何が知りたいんだ……?」
ようやく話す気になった男の様子に、俺は押さえつける力を緩めると、ニヤリと口角を上げ見下ろした。
「ノエルはどこだ?どこにいる?」
「居場所か……はぁ、はぁ、はぁ、くぅあっ、……あいつは……もうこの街にはいねぇ……っ。うぅっ……壁へ向かった……グゥ、ア”ァッ」
「本当なのか?」
「あぁ……本当だ……ぅぅっ、渡航履歴でも知らべれば……すぐにわかるだろう……ぐぅっっ」
チッ、壁だと……。
くそっ、また振り出しか……。
苛立ちをぶつけるように男の額を床へ押し付け背中を踏み抜くと、俺は徐に腰から短剣を抜いた。
そのまま鋭い切っ先を自分の指先へ当てると、皮膚を割くように振りぬいた。
パカッと皮膚が裂け、真っ赤な血がシルバーの刃に流れ落ちていくと、短剣を持つ手にドクンッと大きな鼓動が伝わってくる。
その鼓動は次第に大きくなる中、俺はその剣を男の背に向けると、思いっ切りに突き刺した。
「あああああああああ、あ”あ”あ”あ”、ガハッ、」
「セブン」
男の絶叫を聞き流しながらに、そう呪文のように言葉を紡ぐ。
すると突き刺さった短剣は、返り血を飛び散りらせながらに、姿を変えていく。
短剣だったそれは、男から離れひとりでに地面へ降り立つと、光の中に縦長のスリッド状の瞳が現れた。
次第に形が形成され、そこに現れた者は……四足歩行で、長い爪がキラリと光り、美しい金色の長い鬣。
その獣は威嚇するように、血を流しながら床に倒れる男を睨みつけると、低く唸り声を上げた。
「いてぇっっ、こっこれは……まさか遣い魔だと……。どうしてお前みたいな奴が……こんなところにいるんだ……。はぁ、はぁ、ガハッッ……ッッ」
男は息も絶え絶えになりながらも、目を大きく見開き獣を凝視する中、俺は呼び出した《ゼブン》へと顔を向けた。
「ゼブン、この男を街のギルドへ運んでくれ。逃げようとすれば噛み殺してくれて構わない。まぁ、これだけ弱っていれば、逃げることも出来ないだろうがな……。後この地図も頼む。アジトの場所を提供すれば、報酬をはずんでくれるらしい」
俺は男の腕を縛り上げると、ゼブンの背へと担ぎ上げる。
背にしっかりと固定すると、長い鬣を優しく撫でてやった。
ゼブンは俺へ顔を向けコクリと頷くと、薄暗い部屋を飛び出し、外へと駆け抜けて行った。
胸元で黄金色の鳥が形成され、そのまま夜空へ放つと、俺はその鳥を追う様に馬を走らせていった。
山道の向こうに街の明かりがポツポツと浮かび上がる中、鳥は街から遠ざかるように羽ばたいていく。
どんどん深くなる森の木々を避けながらに駆け上がっていくと、辺りは暗闇に包まれていった。
どれぐらい馬を走らせていたのだろうか……気がつけば空に浮かんだ月は真上にさしかかり、薄暗い森に光が差し込んでいた。
そんな中、道中に馬車を発見すると、俺はこの辺りにアジトがあるのだろうと当たりを付ける。
俺はそこで愛馬から降りると、幹へ馬をくくり、一人森の中へと進んでいった。
黄金色の鳥を追いながらに進んでいくと、上空で鳥が旋回を始めた。
駆け足でその場へ向かっていくと、林道を上り切ったその先には、不自然に空いた広場があった。
そこには古びた建物が佇み、その裏てには小屋が目に目に映る。
ここがアジトだな……、想像するに、裏手の小屋にガキ共を捕えているのだろう。
先に連れ去られたガキ共を助けてから……あの男に会いに行くか……。
俺は目の前に佇む建物を無視すると、そのまま小屋へと足を向ける。
予想通り小屋に居たガキ共を……ギルドの報酬為に救出すると、愛馬を待たせてある場所へと移動していった。
その道中にガキ共から聞いた話によると……どうやら一人女が連れて行かれたようだ。
連れていかれて大分時間もたっているだろうし、女には気の毒だが……もう手遅れだろう。
そんな事を考えながらに、ガキ共の安全な場所へ移し先ほどの広場へと戻ると……俺はそこであの魔法使いの女と出会ったんだ。
**************************
目的の男を拘束する中、女とガキが出て行ったのを確認すると、俺は男の腕を締めあげていく。
低い呻き声が部屋に響く中、俺はそっと男の耳元へ顔を寄せると、静かに問いかけた。
「ノエルと言う男を知らないか?」
「……っっ、イテェ……ノエル……くぅっ、そんな名前知らねぇよ!!!」
男は苦悶の表情を浮かべながらにそう叫ぶ姿に、俺はさらに腕を締め上げバキッと鈍い音が響くと、室内に悲鳴が轟いた。
苦渋の表情を浮かべた男はその場に倒れ込むと、あまりの痛さに蹲り悶絶している。
そんな男を一瞥し、俺は容赦なく男の髪を鷲掴みにすると、無理矢理に顔を上げさせた。
「もう一度聞く。ノエルと言う男を知らないか?」
「あ”ぁ”ぁ”あああ”あああ”っっ、いてぇっ、しらねぇって言ってんだろう……っっ、グゥハッ」
しらを切ろうとする男に、自然と溜息が漏れると、そのまま床へとたたきつける。
「……お前とノエルとの関係はすでに調べてある。さっさとはけ。言うつもりがないのならば……そうだな、両手の関節を外して、一本一本爪を剥いでやろう。その後は……」
男の背を押さえつけたまま、そう脅す様に呟くと、男の表情が徐々に変わっていく。
先ほどまで強気だった瞳は恐怖へと変わり、逃げようと必死に身を-じらせた。
だが俺はそれを上から強く踏みつけると、肺を圧迫し、男からはくぐもった声が漏れる。
「グッ、っっ、あ”ぁ”ぁ”っ、待て……ああぁっ、ガハッ……、はぁ、はぁ、はぁ、……わかった……わかった。何が知りたいんだ……?」
ようやく話す気になった男の様子に、俺は押さえつける力を緩めると、ニヤリと口角を上げ見下ろした。
「ノエルはどこだ?どこにいる?」
「居場所か……はぁ、はぁ、はぁ、くぅあっ、……あいつは……もうこの街にはいねぇ……っ。うぅっ……壁へ向かった……グゥ、ア”ァッ」
「本当なのか?」
「あぁ……本当だ……ぅぅっ、渡航履歴でも知らべれば……すぐにわかるだろう……ぐぅっっ」
チッ、壁だと……。
くそっ、また振り出しか……。
苛立ちをぶつけるように男の額を床へ押し付け背中を踏み抜くと、俺は徐に腰から短剣を抜いた。
そのまま鋭い切っ先を自分の指先へ当てると、皮膚を割くように振りぬいた。
パカッと皮膚が裂け、真っ赤な血がシルバーの刃に流れ落ちていくと、短剣を持つ手にドクンッと大きな鼓動が伝わってくる。
その鼓動は次第に大きくなる中、俺はその剣を男の背に向けると、思いっ切りに突き刺した。
「あああああああああ、あ”あ”あ”あ”、ガハッ、」
「セブン」
男の絶叫を聞き流しながらに、そう呪文のように言葉を紡ぐ。
すると突き刺さった短剣は、返り血を飛び散りらせながらに、姿を変えていく。
短剣だったそれは、男から離れひとりでに地面へ降り立つと、光の中に縦長のスリッド状の瞳が現れた。
次第に形が形成され、そこに現れた者は……四足歩行で、長い爪がキラリと光り、美しい金色の長い鬣。
その獣は威嚇するように、血を流しながら床に倒れる男を睨みつけると、低く唸り声を上げた。
「いてぇっっ、こっこれは……まさか遣い魔だと……。どうしてお前みたいな奴が……こんなところにいるんだ……。はぁ、はぁ、ガハッッ……ッッ」
男は息も絶え絶えになりながらも、目を大きく見開き獣を凝視する中、俺は呼び出した《ゼブン》へと顔を向けた。
「ゼブン、この男を街のギルドへ運んでくれ。逃げようとすれば噛み殺してくれて構わない。まぁ、これだけ弱っていれば、逃げることも出来ないだろうがな……。後この地図も頼む。アジトの場所を提供すれば、報酬をはずんでくれるらしい」
俺は男の腕を縛り上げると、ゼブンの背へと担ぎ上げる。
背にしっかりと固定すると、長い鬣を優しく撫でてやった。
ゼブンは俺へ顔を向けコクリと頷くと、薄暗い部屋を飛び出し、外へと駆け抜けて行った。
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