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第五章
新章9:異世界は突然に
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心臓の音がバクバクと激しくなっていくと、ノブを握りしめている手が勝手に震え始める。
大丈夫……落ち着きなさい。
私には戦う力……魔法がある。
それに何かあったとしても、防御魔法で身を守っているから大丈夫よ。
そう自分に言い聞かせると、私は必死に手の震えを抑え込んでいった。
6人相手、一人一人に魔法を飛ばして、凍らせるのはきっと難しい。
なら密閉された部屋を利用して……中にある全ての物を凍らせる方が良い。
人間の持つ水分だと足りない……だから空気中の水分も凍らせないと……。
建物を見る限り、それほど部屋は大きくはなさそうだから、魔力は十分に足りるはず。
扉を開けたら一気に床全体を魔力で覆って……動けないように足元から凍らせる。
私はそっと瞳を閉じると、冬場に湖面が凍結していく様を鮮明に頭の中で描いていく。
そうして空いている手に小さな氷の結晶を作りあげると、氷に映った自分の姿をしっかりと見つめた。
大丈夫、私なら出来る。
私は恐怖心を振り払うように大きく息を吸い込むと、ガチャッと静かにノブをまわす。
すると中から図太い男の怒鳴り声が響き渡った。
「誰だ!!!」
突然の声に思わず肩が大きく跳ねると、すぐさま足音がこちらへと近づいてくる。
まっ、まずいわ、すぐに魔法を……っっ。
私は慌てて中へ飛び込むと、前のめりに倒れ込みながら、手に集めていた魔力を全て床へと流していく。
床に手をつき、魔法に意識を集中させる中、ドンッ、ズドンッと大きな音が響いたかと思うと、男が氷に滑り派手に転んだ。
そんな男の姿を横目に、私は床、壁一面へ氷の結晶が張り巡らせていくと、ビシビシッと音を立て分厚い氷を形成していく。
怯えた悲鳴があがる中、私はゆっくりと顔を上げると、部屋には床に倒れ込んだままに体の半分が凍った男二人、腰のあたりまで立ったまま凍った男が必死にもがく姿、そしてその奥には逃げようとしたのだろうか……私に背を向ける状態で凍った男二人の姿が目に映る。
私は動けなくなった男たちを、順番に口元まで凍らせていくと、先ほどまで部屋に響き渡っていた悲鳴が消えていった。
部屋の一番奥には低い壇上のような物があり、その上には半分凍った椅子の上に立った男の姿があった。
男は恐怖した様子もなく、鋭い瞳をこちらへ向けると、私を威嚇するように睨みつける。
彼自身はまだ凍っていないが……魔力を飛ばせばすぐに凍らせることが出来るわ。
シーンと静まり返った部屋の中、私は徐に立ち上がると、睨みつける男の瞳をじっと見つめた。
「お前はなにもんだ。何が目的だ。……それにこれは……一体どんな手品を使ったんだ?」
手品ねぇ……。
やはり彼も魔法を知らないのかしら。
「私は只子供たちを助けたいだけよ。だから今すぐ街へ戻って子供たちを解放しなさい。今更抵抗しても無駄よ。あなたの仲間はみんな私が凍らせたのだから」
そう冷たく言い放つと、凍らせた男たちを順番に眺めていく。
皆血の気が引き青ざめた表情を見せる中、私は小さな炎を作ると、床に這った氷を溶かしながらに道を作り、部屋の中へと入って行く。
そうして壇上の前へとやって来ると、魔力を男の元へ飛ばし、椅子を徐々に凍らせていく。
すると男は勢いよく飛び上がると、天井に何かをかけ、宙にぶら下がった。
「そんな事をしても無駄よ」
私はブラブラと揺れる彼の脚を凍らせると、氷の重みで男が床へと落ちていく。
その様子を眺める中、私は倒れ込んだ男の前に立つと、体を凍らせながらに呟いた。
「聞きたいことがあるのだけれど、私はどこに居たの?」
そう問いかけてみると、男は訝し気な表情を浮かべながらに私を見上げた。
「一体何なんだあんたは……」
「聞かれたことだけに答えなさい」
私は男の体を覆い、首元まで凍らせると、そこで魔力を遮断する。
男は全く怯えた様子を見せない中、深いため息をつくと、徐に口を開いた。
「はぁ……あんたは俺たちが通ってきた山道に倒れてたんだよ。邪魔だったからなぁ、そのまま山へ捨てようと思ったんだが……。黒髪なんて珍しいもん持ってるあんたを、金のために捕らえただけだ。こんな事になるなら、あの時に殺しておけばよかったぜ」
山に倒れていた……。
なら私はあのお城に戻れていないのね……。
彼の言葉にじっと考え込んでいると、男は余裕そうな表情を浮かべながらにクツクツと笑い始める。
「何よ……何が面白いのよ」
「ハハッ、いや……あんたこれからどうするんだ?俺たちを騎士団へ突き出すか?それでも構わねぇが、捕まっても俺たちはすぐに釈放されちまうぜ」
何なのこいつ。
どうして怯えないの?
どうしてそんな平然としていられるの?
まさか……まだどこかに仲間がいるのかしら……。
ひんやりとした冷気が漂う部屋の中、私は徐に振り返ると、注意深く見渡した。
するとドカンッと爆音と共に、扉の方から爆発が起こった。
細かい木の破片が飛び散る中、私は慌てて身を守ると、煙の中に薄っすらと人影が映る。
煙が次第に薄くなっていく中、扉から小さな影が現れると、私の元へと近づいて来た。
咄嗟に手に魔力を集めたその刹那、脚に衝撃を感じ見下ろしてみると、そこにはピコピコと動く可愛い獣耳が目に映った。
*****お知らせ******
登場人物紹介を更新しました!
ここで登場させようとずっと考えていたケモ耳少年です(*ノωノ)
大丈夫……落ち着きなさい。
私には戦う力……魔法がある。
それに何かあったとしても、防御魔法で身を守っているから大丈夫よ。
そう自分に言い聞かせると、私は必死に手の震えを抑え込んでいった。
6人相手、一人一人に魔法を飛ばして、凍らせるのはきっと難しい。
なら密閉された部屋を利用して……中にある全ての物を凍らせる方が良い。
人間の持つ水分だと足りない……だから空気中の水分も凍らせないと……。
建物を見る限り、それほど部屋は大きくはなさそうだから、魔力は十分に足りるはず。
扉を開けたら一気に床全体を魔力で覆って……動けないように足元から凍らせる。
私はそっと瞳を閉じると、冬場に湖面が凍結していく様を鮮明に頭の中で描いていく。
そうして空いている手に小さな氷の結晶を作りあげると、氷に映った自分の姿をしっかりと見つめた。
大丈夫、私なら出来る。
私は恐怖心を振り払うように大きく息を吸い込むと、ガチャッと静かにノブをまわす。
すると中から図太い男の怒鳴り声が響き渡った。
「誰だ!!!」
突然の声に思わず肩が大きく跳ねると、すぐさま足音がこちらへと近づいてくる。
まっ、まずいわ、すぐに魔法を……っっ。
私は慌てて中へ飛び込むと、前のめりに倒れ込みながら、手に集めていた魔力を全て床へと流していく。
床に手をつき、魔法に意識を集中させる中、ドンッ、ズドンッと大きな音が響いたかと思うと、男が氷に滑り派手に転んだ。
そんな男の姿を横目に、私は床、壁一面へ氷の結晶が張り巡らせていくと、ビシビシッと音を立て分厚い氷を形成していく。
怯えた悲鳴があがる中、私はゆっくりと顔を上げると、部屋には床に倒れ込んだままに体の半分が凍った男二人、腰のあたりまで立ったまま凍った男が必死にもがく姿、そしてその奥には逃げようとしたのだろうか……私に背を向ける状態で凍った男二人の姿が目に映る。
私は動けなくなった男たちを、順番に口元まで凍らせていくと、先ほどまで部屋に響き渡っていた悲鳴が消えていった。
部屋の一番奥には低い壇上のような物があり、その上には半分凍った椅子の上に立った男の姿があった。
男は恐怖した様子もなく、鋭い瞳をこちらへ向けると、私を威嚇するように睨みつける。
彼自身はまだ凍っていないが……魔力を飛ばせばすぐに凍らせることが出来るわ。
シーンと静まり返った部屋の中、私は徐に立ち上がると、睨みつける男の瞳をじっと見つめた。
「お前はなにもんだ。何が目的だ。……それにこれは……一体どんな手品を使ったんだ?」
手品ねぇ……。
やはり彼も魔法を知らないのかしら。
「私は只子供たちを助けたいだけよ。だから今すぐ街へ戻って子供たちを解放しなさい。今更抵抗しても無駄よ。あなたの仲間はみんな私が凍らせたのだから」
そう冷たく言い放つと、凍らせた男たちを順番に眺めていく。
皆血の気が引き青ざめた表情を見せる中、私は小さな炎を作ると、床に這った氷を溶かしながらに道を作り、部屋の中へと入って行く。
そうして壇上の前へとやって来ると、魔力を男の元へ飛ばし、椅子を徐々に凍らせていく。
すると男は勢いよく飛び上がると、天井に何かをかけ、宙にぶら下がった。
「そんな事をしても無駄よ」
私はブラブラと揺れる彼の脚を凍らせると、氷の重みで男が床へと落ちていく。
その様子を眺める中、私は倒れ込んだ男の前に立つと、体を凍らせながらに呟いた。
「聞きたいことがあるのだけれど、私はどこに居たの?」
そう問いかけてみると、男は訝し気な表情を浮かべながらに私を見上げた。
「一体何なんだあんたは……」
「聞かれたことだけに答えなさい」
私は男の体を覆い、首元まで凍らせると、そこで魔力を遮断する。
男は全く怯えた様子を見せない中、深いため息をつくと、徐に口を開いた。
「はぁ……あんたは俺たちが通ってきた山道に倒れてたんだよ。邪魔だったからなぁ、そのまま山へ捨てようと思ったんだが……。黒髪なんて珍しいもん持ってるあんたを、金のために捕らえただけだ。こんな事になるなら、あの時に殺しておけばよかったぜ」
山に倒れていた……。
なら私はあのお城に戻れていないのね……。
彼の言葉にじっと考え込んでいると、男は余裕そうな表情を浮かべながらにクツクツと笑い始める。
「何よ……何が面白いのよ」
「ハハッ、いや……あんたこれからどうするんだ?俺たちを騎士団へ突き出すか?それでも構わねぇが、捕まっても俺たちはすぐに釈放されちまうぜ」
何なのこいつ。
どうして怯えないの?
どうしてそんな平然としていられるの?
まさか……まだどこかに仲間がいるのかしら……。
ひんやりとした冷気が漂う部屋の中、私は徐に振り返ると、注意深く見渡した。
するとドカンッと爆音と共に、扉の方から爆発が起こった。
細かい木の破片が飛び散る中、私は慌てて身を守ると、煙の中に薄っすらと人影が映る。
煙が次第に薄くなっていく中、扉から小さな影が現れると、私の元へと近づいて来た。
咄嗟に手に魔力を集めたその刹那、脚に衝撃を感じ見下ろしてみると、そこにはピコピコと動く可愛い獣耳が目に映った。
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