[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第五章

序章

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焼野原の上に、一人の女性が膝をつき渇いた土を濡らしていた。

服は激しい戦いのせいか……ボロボロに破れ、あちこちに血が流れている。

辺りには血を流した遺体が散乱し、近くには彼女以外に、生きている者はいなかった。

彼女は渇いた土を強く掴み顔を上げると、怒りと憎しみを込めた金色の瞳で、聳え立った壁を真っすぐに見上げた。

頬に涙が伝っていく中、彼女は下唇を強く噛むと、怒りをぶつけるように壁を強く殴りつける。

鈍い音が響き彼女は顔を顰める中、暗雲が立ち込めるてくると、突然に激しい雨が降り注いだ。

血が雨で流れ、土に交じっていくと、ザー、ザーと雨音に包まれる。

そんな彼女の前には、魔法で作られたのだろうか……大きく、高い壁が地平線を真っすぐに伸びていた。

その壁は大きな大陸を真っ二つに分断しており、見上げても先が見えぬほどに高い。

人では到底超えることが出来ないだろう壁の向こう側からは、カキン、カキンと剣が合わさる音が聞こえてきた。

遠くの方からはこの壁を破壊しようとしているのだろう……雨の音に紛れながらも、爆発音が耳に届く。

何度も何度も爆発音が轟くが……壁は揺れることも、崩れる気配もまるでない。

濡れた地面が微かに揺れ、強い風が吹き荒れると、スコールが更に激しくなっていった。

強風の中、壁にもたれかかり地団駄を踏んだ女性からは、壮大な魔力が憎しみの炎となって渦巻き始めている。

激しい雨に打たれながらも消える事のない炎は、メラメラと威力を増していくと、彼女の姿を包み込んでいった。

そんな炎の中からは、彼女の辛く悲しい叫び声が、魔力を通じて伝わってくる。

どうして、どうして、どうして。

なんでや、なんでや、なんでなんや。

これ以上どうすればええん……もうやれることは全部やった。

せやのに……ここまでやったのに……なんで変わらへんのや……。

誰か教えてや!!!

もう、何度同じ思いをすればええんや?

何度XXXところを見やなアカンのや?

どうしてうちが……こんな思いをしなければならんのや!!!

彼女は悲痛な声を上げたが、その声は雨音にかき消されていく。
ブロンドの髪からポタポタと雫が落ちていく中、彼女はその場に崩れ落ちると、悪態をつきながらに、髪をクシャクシャにかき乱した。

なぁ、どうしてうちの邪魔をするんや?

今まで何でも思い通りに出来てたのに。

なんでこれだけは譲ってくれへんのや。

それでも、うちは絶対認めへんからな。

許さへん、絶対に許さへんからな……。

「こんな世界……許せるはずがあらへん……」

そう彼女がボソッと呟くと、彼女の周りに蠢いていた魔力が、闇の色へ染まっていく。
闇は雨を溶かしながらに増幅していくと、あたりに黒い水たまりが広がっていった。

嫌や、嫌や、絶対いやや。

こんな世界で生きていくなんて、ありえへん。

なら……うちが死ねばええんか?

それは嫌や、なんでうちが死ななアカンねん。

おかしいやろ?

うちは何もしてへん、悪いのは変わらんこの世界や。

新しい魔法を開発して、あらゆる不安要素を排除したのに……諦めとうないんや……。

そうおもても……もう打つ手はあらへんねん。

彼女は頭を垂れると、深い深い息を吐きだした。
大粒の雨が頭上に打ち付けられる中、彼女は苦し気な表情を浮かべると、胸を強く握りしめる。
激しい痛みでも感じているのだろうか……肩が上下に動き始めると、呻き声が雨音に紛れながらに辺りに響いた。

はぁ、はぁ、はぁ、……嫌や、嫌や、嫌なんや。

もうどうにもなれへんとおもても、それを認めることは絶対に出来へん。

せや……、もうどうにもならへんのやったら、破壊したらええんや。

こんな不合理な世界、うちの全てを使って壊したる。

こんな世界は、必要ないんや。

彼女はゆっくりと立ち上がると、闇色の魔力が糸状に地面を駆け抜けて行く。
そのままそっと瞼を閉じると、小さく口を開いた。
ザーザーと激しく雨が降り注ぐ中、魔力の糸が大きな魔法陣を形成していくと、彼女の体は闇の中へと吸い込まれていった。
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