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第三章
エヴァンと過ごす日々:中編1
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魔法の練習を終え家に戻ると、エヴァンの機嫌はまだ直ってはいなかった。
何とも言えない空気が漂う中、私は彼の様子を覗いながら食事を済ませると、逃げるように部屋へと戻っていく。
うぅ……どうしてエヴァンは怒っているのかしら……。
セーフィロの話に何か気に障ることがあった?
う~ん、でも魔法を教えてもらった事ぐらいしか話していないのに……。
なら私が何か失礼な事をしてしまったのかしら……?
だが部屋の中でうんうんと一人悩んでいても、何の解決もしない。
はぁ……二人で過ごしていく以上、この空気が続くのは避けたいわ。
私はむくっとベッドから起き上がると、静かに廊下へと出て行った。
そうして彼の部屋の前へやって来ると、私は意を決して扉をノックする。
トントントンと扉を叩き、しばらく待っていると、扉がゆっくりと開いた。
「……こんな夜更けに一体どうしたのですか?何かありましたか?」
いつも通りの彼の姿にあっけにとられる中、彼の手にはワイングラスが握りしめられている。
あれ……機嫌が直ってるわ。
ここで話をぶり返すのもあれよね……。
「ううん、えーと……。エヴァンはお酒を飲んでいたの?」
「えぇ、……あなたも飲まれますか?」
私はコクリと頷くと、彼に連れられるままに部屋の中へと入って行く。
「赤ワインですが……大丈夫ですか?」
エヴァンはどこからかグラスを持ってくると、ワインのコルクを空け、真っ赤なワインを注いでいく。
差し出されたグラスを受け取ると、甘い香りに自然と頬が緩んだ。
「赤ワインなんて久しぶりだわ」
そっとグラスへ口を近づけると、ゆっくりと喉へと流し込んでいく。
するとアルコールに喉を通り、熱さを感じる中、舌の上にワインの渋さと旨さが広がっていった。
「あら、とっても美味しいわね」
ゴクゴクとアルコールで喉を潤していくと、次第に体が火照ってくる。
「そんなに一気に飲んでは、すぐに酔いが回ってしまいますよ」
彼の言葉が耳に届くが……私は空になったグラスにワインを注ぐと、また口へと運んでいく。
アルコールが強いのか……二杯目を飲み終えた瞬間に、グラリと視界が揺れた。
エヴァンがそんな私の体を支えるや否や、手にしていたグラスが彼によって取り上げられる。
「はぁ……落ち着いてください。もうここまでにしましょう」
「嫌よ……。返してぇ~。エヴァン」
私は彼の胸にしがみ付きそうねだると、彼の体が小さく震えた。
「……っっ。酔っぱらいは部屋に戻りますよ」
「酔ってなんかいないわ~。ねぇ……エヴァン、どうして今日は怒っていたの?私……何か気に障る事しちゃった?」
エヴァンに縋りつくようにそう言葉をこぼすと、私は強く彼を引き寄せる。
そのまま彼をベッドへと押し倒すと、エヴァンは慌てた様子で、グラスを硬く握りしめていた。
「危ないですよ!」
「ふふふっ、あはは。ねぇ~エヴァン、もう怒ってない?」
私はエヴァンの上に跨ると、スリスリと彼の胸に頬を摺り寄せる。
火照った体に彼の冷たい肌がとても心地よい。
「……っっ。怒っていませんから、離れて下さい!」
そう叫びエヴァンは勢いよく体を起こすと、ワイングラスを置き、私を引きはがしていく。
そんな彼の態度に私は小さく顔を歪めると、なぜだか泣きたい気持ちになってきた。
「うぅぅ……、やっぱりまだ怒ってる……。どうすれば機嫌を直してくれる?私……エヴァンに怒られると、とても悲しいわ。ねぇ……どうしたら許してくれるの?」
私を突き放す彼の腕にギュッとしがみ付くと、彼は大きく肩を跳ねさせる。
そんな彼の反応にそっと顔を上げてみると、ゆでだこのようになった彼の顔が映った。
その姿に何だか嬉しくなると、私は抱きつくように彼に腕を回して見せる。
「ふふっ、エヴァン、顔が真っ赤ねぇ~。とっても可愛い」
そう彼の耳元で囁くと、突然に視界が反転した。
いつの間には私はベッドに押し倒され、彼のエメラルドの瞳が目の前に現れると、私は見惚れるようにじっと見上げていた。
「あなたは……、一体何なのですか……。どうして私の心は……こんなにも乱れされるのですか?」
「ふふっ、あなたの瞳はとっても綺麗ねぇ。吸い込まれてしまいそう……」
頭がふわふわする中、フカフカのベッドが、ゆっくり私を眠りへと誘っていく。
「はぁ……これだから酔っ払いは……答えになってないですよ」
私は彼の言葉を馬耳東風に、そっと彼の頬へ手を添える。
透明感のある肌は、温かく……その温もりをずっと感じていたい。
じっと彼の姿を眺める中、エヴァンは小さく顔を歪めると、薄紅いろの唇が小さく動いた。
「……あなたはセーフィロ殿をどう思っているのですか?」
その囁きに、私は彼を捕まえるようにギュッと抱きしめる。
「セーフィロ……?う~ん、同じ目的を持った同士かなぁ~。ふふっ、あはははっ」
彼の吐息が首へかかり、擽ったさに身をよじらせていると、何だか楽しい気分になってくる。
「同士ですか?……好きだとかそういった感情はないのですか?」
「ないない~。彼の目には私なんて映っていないわ~」
そうクスクスと笑うと、エヴァンの温もりを感じ、次第に眠気が襲ってくる。
私は彼のサラサラヘヤーを優しく撫でていると、腕の力が抜けていった。
そのまま夢の中へと沈んでいくと、ポカポカした心地よさが私を包んでいった。
*******おまけ(エヴァン視点)*******
この状態で眠るとは……。
はぁ……ありえませんね……。
彼女の腕の力が抜け、私はそっと体を離すと、スヤスヤと心地よい寝息が耳に届く。
そっと彼女の頬へ触れてみると、アルコールのせいだろう……彼女の頬が幾分熱い。
先ほど潤んだ瞳、頬を赤らめた彼女の縋りつく姿が頭をよぎると、自然と下半身が疼き始めた。
……全く、無防備にもほどがある。
私の前でなければ、今頃襲われているでしょうね……。
そう思うと、先ほどアルコールで流したはずの苛立ちが蘇ってくる。
あまりに警戒心が薄い彼女の姿に息を吐きだすと、私は怒りを鎮めるように大きく息を吸い込んだ。
すると彼女は暑いのだろうか……、徐に寝返りを打ったかと思うと、スカートから真っ白な脚が現れる。
滑らかで、美しいその肌に魅了される中、私は慌てて瞳を閉じると、彼女の姿を振り払うように首を振った。
外では絶対に……彼女にアルコールを与えるのはやめましょう。
そう決意を固め立ち上がろうとすると、彼女の手が私のローブを硬く握りしめていた。
「……正気ですか……」
私は深く息を吐きだすと、小気味よい寝息を立てる彼女の姿に頭を抱えていた。
何とも言えない空気が漂う中、私は彼の様子を覗いながら食事を済ませると、逃げるように部屋へと戻っていく。
うぅ……どうしてエヴァンは怒っているのかしら……。
セーフィロの話に何か気に障ることがあった?
う~ん、でも魔法を教えてもらった事ぐらいしか話していないのに……。
なら私が何か失礼な事をしてしまったのかしら……?
だが部屋の中でうんうんと一人悩んでいても、何の解決もしない。
はぁ……二人で過ごしていく以上、この空気が続くのは避けたいわ。
私はむくっとベッドから起き上がると、静かに廊下へと出て行った。
そうして彼の部屋の前へやって来ると、私は意を決して扉をノックする。
トントントンと扉を叩き、しばらく待っていると、扉がゆっくりと開いた。
「……こんな夜更けに一体どうしたのですか?何かありましたか?」
いつも通りの彼の姿にあっけにとられる中、彼の手にはワイングラスが握りしめられている。
あれ……機嫌が直ってるわ。
ここで話をぶり返すのもあれよね……。
「ううん、えーと……。エヴァンはお酒を飲んでいたの?」
「えぇ、……あなたも飲まれますか?」
私はコクリと頷くと、彼に連れられるままに部屋の中へと入って行く。
「赤ワインですが……大丈夫ですか?」
エヴァンはどこからかグラスを持ってくると、ワインのコルクを空け、真っ赤なワインを注いでいく。
差し出されたグラスを受け取ると、甘い香りに自然と頬が緩んだ。
「赤ワインなんて久しぶりだわ」
そっとグラスへ口を近づけると、ゆっくりと喉へと流し込んでいく。
するとアルコールに喉を通り、熱さを感じる中、舌の上にワインの渋さと旨さが広がっていった。
「あら、とっても美味しいわね」
ゴクゴクとアルコールで喉を潤していくと、次第に体が火照ってくる。
「そんなに一気に飲んでは、すぐに酔いが回ってしまいますよ」
彼の言葉が耳に届くが……私は空になったグラスにワインを注ぐと、また口へと運んでいく。
アルコールが強いのか……二杯目を飲み終えた瞬間に、グラリと視界が揺れた。
エヴァンがそんな私の体を支えるや否や、手にしていたグラスが彼によって取り上げられる。
「はぁ……落ち着いてください。もうここまでにしましょう」
「嫌よ……。返してぇ~。エヴァン」
私は彼の胸にしがみ付きそうねだると、彼の体が小さく震えた。
「……っっ。酔っぱらいは部屋に戻りますよ」
「酔ってなんかいないわ~。ねぇ……エヴァン、どうして今日は怒っていたの?私……何か気に障る事しちゃった?」
エヴァンに縋りつくようにそう言葉をこぼすと、私は強く彼を引き寄せる。
そのまま彼をベッドへと押し倒すと、エヴァンは慌てた様子で、グラスを硬く握りしめていた。
「危ないですよ!」
「ふふふっ、あはは。ねぇ~エヴァン、もう怒ってない?」
私はエヴァンの上に跨ると、スリスリと彼の胸に頬を摺り寄せる。
火照った体に彼の冷たい肌がとても心地よい。
「……っっ。怒っていませんから、離れて下さい!」
そう叫びエヴァンは勢いよく体を起こすと、ワイングラスを置き、私を引きはがしていく。
そんな彼の態度に私は小さく顔を歪めると、なぜだか泣きたい気持ちになってきた。
「うぅぅ……、やっぱりまだ怒ってる……。どうすれば機嫌を直してくれる?私……エヴァンに怒られると、とても悲しいわ。ねぇ……どうしたら許してくれるの?」
私を突き放す彼の腕にギュッとしがみ付くと、彼は大きく肩を跳ねさせる。
そんな彼の反応にそっと顔を上げてみると、ゆでだこのようになった彼の顔が映った。
その姿に何だか嬉しくなると、私は抱きつくように彼に腕を回して見せる。
「ふふっ、エヴァン、顔が真っ赤ねぇ~。とっても可愛い」
そう彼の耳元で囁くと、突然に視界が反転した。
いつの間には私はベッドに押し倒され、彼のエメラルドの瞳が目の前に現れると、私は見惚れるようにじっと見上げていた。
「あなたは……、一体何なのですか……。どうして私の心は……こんなにも乱れされるのですか?」
「ふふっ、あなたの瞳はとっても綺麗ねぇ。吸い込まれてしまいそう……」
頭がふわふわする中、フカフカのベッドが、ゆっくり私を眠りへと誘っていく。
「はぁ……これだから酔っ払いは……答えになってないですよ」
私は彼の言葉を馬耳東風に、そっと彼の頬へ手を添える。
透明感のある肌は、温かく……その温もりをずっと感じていたい。
じっと彼の姿を眺める中、エヴァンは小さく顔を歪めると、薄紅いろの唇が小さく動いた。
「……あなたはセーフィロ殿をどう思っているのですか?」
その囁きに、私は彼を捕まえるようにギュッと抱きしめる。
「セーフィロ……?う~ん、同じ目的を持った同士かなぁ~。ふふっ、あはははっ」
彼の吐息が首へかかり、擽ったさに身をよじらせていると、何だか楽しい気分になってくる。
「同士ですか?……好きだとかそういった感情はないのですか?」
「ないない~。彼の目には私なんて映っていないわ~」
そうクスクスと笑うと、エヴァンの温もりを感じ、次第に眠気が襲ってくる。
私は彼のサラサラヘヤーを優しく撫でていると、腕の力が抜けていった。
そのまま夢の中へと沈んでいくと、ポカポカした心地よさが私を包んでいった。
*******おまけ(エヴァン視点)*******
この状態で眠るとは……。
はぁ……ありえませんね……。
彼女の腕の力が抜け、私はそっと体を離すと、スヤスヤと心地よい寝息が耳に届く。
そっと彼女の頬へ触れてみると、アルコールのせいだろう……彼女の頬が幾分熱い。
先ほど潤んだ瞳、頬を赤らめた彼女の縋りつく姿が頭をよぎると、自然と下半身が疼き始めた。
……全く、無防備にもほどがある。
私の前でなければ、今頃襲われているでしょうね……。
そう思うと、先ほどアルコールで流したはずの苛立ちが蘇ってくる。
あまりに警戒心が薄い彼女の姿に息を吐きだすと、私は怒りを鎮めるように大きく息を吸い込んだ。
すると彼女は暑いのだろうか……、徐に寝返りを打ったかと思うと、スカートから真っ白な脚が現れる。
滑らかで、美しいその肌に魅了される中、私は慌てて瞳を閉じると、彼女の姿を振り払うように首を振った。
外では絶対に……彼女にアルコールを与えるのはやめましょう。
そう決意を固め立ち上がろうとすると、彼女の手が私のローブを硬く握りしめていた。
「……正気ですか……」
私は深く息を吐きだすと、小気味よい寝息を立てる彼女の姿に頭を抱えていた。
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