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なんで思い出しちゃったの……
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この世界に生まれて早16年。
まさかここへ来ることになるなんて……。
私は高々とそびえたつ立派な学園を見上げると、深くため息をついた。
学園の名はサンドリ学園。
貴族たちが集う学園で、平民はいない。
そんな学園に初の平民として入学するのがこの私。
貴族が集まる場所に平民が赴くことなどありえないのだが……今年から優秀な平民を受け入れようと新たな取り組みが始まったのだ。
もちろん私以外にも数人の平民が入学を決めている。
皆希望と誇りを胸に入学を喜んでいる中、私は一人暗い表情。
なぜなら私はこの学園で始まるだろうことを知っているから。
この記憶を思い出す前であれば、わくわくした気持ちでいられただろう。
私はまた大きなため息をつくと、がっくりと肩を落とした。
なんで思い出しちゃったんだろう……。
いやでも……内容を考えれば、思い出した方がよかったのかな……。
思い出した記憶、それは前世のもの。
私が私になる前、この世界とは全く異なる、文明が発達した別の世界で生涯を終えた記憶。
前世の私はそこであるゲームに出会った。
大好きな絵師さんがイラストを担当した乙女ゲーム。
詳細を見ずに購入したのだが……これがまた酷い駄作だった。
ストーリー性は驚くほどに薄く、主人公は攻略対象者によって性格が変わるという少し変わった仕様。
なぜ主人公の性格が変わらなければいけなかったのか、それはクリアして合点がいった。
主人公が変わらなければ、攻略なんて不可能。
そう……攻略対象者は皆曲者揃いだったのだ。
惚れっぽく女好きの王子に、無愛想な騎士、そしてヘタレな同級生。
"今までにない斬新な攻略を"とキャッチフレーズにしていたが、逆の意味で裏切られた。
王子は婚約者がいるにも関わらず、女癖が悪く自己中心的で最低な男。
騎士は笑顔一つ見せず会話も続かない典型的なコミュ障。
ヘタレは鬱気味で、何一つ自分で決められない、見ていてイライラするほどにダメダメな男だった。
うたい文句通り、今までにない攻略対象者だったことは認めよう。
パッケージやキャラデザは神絵師さんのイラストだから文句なしに素晴らしい出来だった。
だけどね、中身が欠落した男たちにときめきなんて感じるはずない!
正直何度プレイをやめようと思ったか……。
だけど彼らが恋をして変わることを期待し、その気力だけで最後までプレイしたのだ……。
攻略すればさ、王子は主人公一途になるだとか、不愛想な騎士はデレデレになるとか、ヘタレな男は主人公を守るために立ち向かうとかするものじゃない!?
しかし思いとは裏腹に、彼らは何一つ変わらなかった。
特に苛立ったのは王子。
性格はともかく見目が一番好みで爽やかな笑顔は最高だった。
それに騙され過度な期待をしてしまったからかもしれない……。
王子は可愛い令嬢を見つければ、見境なしに声をかけ、部屋へと連れ帰ろうとする。
主人公といようが、婚約者といようがお構いなし。
きっとまともになると信じて、最後の最後まで攻略を頑張ったのに……主人公に告白した直後、通りかかった令嬢を追いかけて行ってしまった。
その姿にぶちっと電源を切り、フリマアプリで投げうったのはいい思い出だ。
それにしても私がゲームの世界に転生することになるなんて……。
しかもよりにもよって主人公……。
他にも乙女ゲームがあるのになぜこれなのか、頭が痛い。
あぁもっと早くに思い出していれば……こんなところに来なかったのになぁ……。
私は天を仰ぐと、二度と聞きたくないと思っていた乙女ゲームのオープニングが流れた気がした。
まさかここへ来ることになるなんて……。
私は高々とそびえたつ立派な学園を見上げると、深くため息をついた。
学園の名はサンドリ学園。
貴族たちが集う学園で、平民はいない。
そんな学園に初の平民として入学するのがこの私。
貴族が集まる場所に平民が赴くことなどありえないのだが……今年から優秀な平民を受け入れようと新たな取り組みが始まったのだ。
もちろん私以外にも数人の平民が入学を決めている。
皆希望と誇りを胸に入学を喜んでいる中、私は一人暗い表情。
なぜなら私はこの学園で始まるだろうことを知っているから。
この記憶を思い出す前であれば、わくわくした気持ちでいられただろう。
私はまた大きなため息をつくと、がっくりと肩を落とした。
なんで思い出しちゃったんだろう……。
いやでも……内容を考えれば、思い出した方がよかったのかな……。
思い出した記憶、それは前世のもの。
私が私になる前、この世界とは全く異なる、文明が発達した別の世界で生涯を終えた記憶。
前世の私はそこであるゲームに出会った。
大好きな絵師さんがイラストを担当した乙女ゲーム。
詳細を見ずに購入したのだが……これがまた酷い駄作だった。
ストーリー性は驚くほどに薄く、主人公は攻略対象者によって性格が変わるという少し変わった仕様。
なぜ主人公の性格が変わらなければいけなかったのか、それはクリアして合点がいった。
主人公が変わらなければ、攻略なんて不可能。
そう……攻略対象者は皆曲者揃いだったのだ。
惚れっぽく女好きの王子に、無愛想な騎士、そしてヘタレな同級生。
"今までにない斬新な攻略を"とキャッチフレーズにしていたが、逆の意味で裏切られた。
王子は婚約者がいるにも関わらず、女癖が悪く自己中心的で最低な男。
騎士は笑顔一つ見せず会話も続かない典型的なコミュ障。
ヘタレは鬱気味で、何一つ自分で決められない、見ていてイライラするほどにダメダメな男だった。
うたい文句通り、今までにない攻略対象者だったことは認めよう。
パッケージやキャラデザは神絵師さんのイラストだから文句なしに素晴らしい出来だった。
だけどね、中身が欠落した男たちにときめきなんて感じるはずない!
正直何度プレイをやめようと思ったか……。
だけど彼らが恋をして変わることを期待し、その気力だけで最後までプレイしたのだ……。
攻略すればさ、王子は主人公一途になるだとか、不愛想な騎士はデレデレになるとか、ヘタレな男は主人公を守るために立ち向かうとかするものじゃない!?
しかし思いとは裏腹に、彼らは何一つ変わらなかった。
特に苛立ったのは王子。
性格はともかく見目が一番好みで爽やかな笑顔は最高だった。
それに騙され過度な期待をしてしまったからかもしれない……。
王子は可愛い令嬢を見つければ、見境なしに声をかけ、部屋へと連れ帰ろうとする。
主人公といようが、婚約者といようがお構いなし。
きっとまともになると信じて、最後の最後まで攻略を頑張ったのに……主人公に告白した直後、通りかかった令嬢を追いかけて行ってしまった。
その姿にぶちっと電源を切り、フリマアプリで投げうったのはいい思い出だ。
それにしても私がゲームの世界に転生することになるなんて……。
しかもよりにもよって主人公……。
他にも乙女ゲームがあるのになぜこれなのか、頭が痛い。
あぁもっと早くに思い出していれば……こんなところに来なかったのになぁ……。
私は天を仰ぐと、二度と聞きたくないと思っていた乙女ゲームのオープニングが流れた気がした。
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