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乙女ゲームの世界
始まった文化祭
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そうして時はあっという間に過ぎ去り文化祭当日、私は花蓮と一緒に学園へと向かっていた。
催し物のお茶会で着る着物は、家から持参する。
私自身は文化祭だし手頃な浴衣で良いかな、と思っていたけれど、花蓮とお兄様の猛反対で、着物を着ることになってしまった。
屋敷にある着物は一級品の物ばかりで着れないよ!と訴えてみると、お兄様がいつの間にか、着物にしては安いのだろう……数十万の物を用意してくれていた。
金茶の縮緬無地に淡い朱色の帯。
秋の茶会にふさわしい着物だけれど、学生の文化祭にしては、ちょっとやりすぎだよね……。
私は持たされた着物へチラリと目を向けると、とどまる所を知らないお兄様のシスコン度に、深く息を吐き出した。
学園の前にやってくると、校門には色とりどりのペーパーフラワーが飾られたアーチが設置されている。
わぁ~この雰囲気懐かしいなぁ。
いつもとは違う学園の様子に、懐かしさと期待に胸が熱くなると、私は自然と笑みを浮かべていた。
文化祭は二日にかけて行われ、明日ミスコンが開催される。
色々と不安要素はあるけれど、今は文化祭を楽しもう。
私は賑わう校舎を見上げると、真っすぐに教室へと向かっていった。
教室へ入ると、すでに準備が進められ、皆慌ただしく動き回っている。
私は花蓮を連れ別室へと向かうと、着物を着付けていった。
花蓮の着物は、茶色の無地の着物に、松皮菱模様の帯。
落ち着いた秋らしいデザインは、大人びた花蓮にとてもよく似合っている。
「彩華様、楽しみですわね」
「えぇ、そうね。じゃ行きましょうか」
私達は顔を見合わせ笑いあうと、二人並んで中庭へと向かっていった。
中庭へ到着すると、まだ赤く染まりきっていない、緑が残る木々がそよ風に揺れている。
紅葉街道を抜けると、遮る物が少ない中央に、二つの茶席が横並びに設置されていた。
あそこなら日当たりもいいし、生徒たちによく見える。
私はそのまま右側の茶席へ入ると、茶道具を並べていった。
そうして茶席の準備が整うと、徐に顔を上げ校舎にある時計を見つめる。
長い針が12を真っすぐに刺すと、始業のチャイムが鳴り響いた。
「皆さん、今日は精一杯稼ぎましょう!」
その掛け声と共に、茶会が開かれると、いつも違う学園の雰囲気に、浮足立つ生徒たちが目に映った。
始まって暫くすると、一般の方も訪れ始め、中庭がさらに賑わい始める。
老若男女問わず次第に茶席へ列が出来ていくと、私は一期一会を胸に丁寧にお茶をたてていった。
いっ、忙しい……ッッ。
一息する時間すらない……。
なかなか減らない……いや、むしろ増えていく列に狼狽する中、クラスの生徒が茶菓子を運んでくる。
朝準備していた茶菓子は早々になくなり、今4箱目。
思っていた以上の大繁盛に生徒たちが喜ぶ姿を横目に映る中、次のお客さんをと頭を下げると、一般の生徒とは明らかに違う、洗練された所作で茶席へとやってきた。
「本日はようこそお出でまし下さいまして、ありがとうございます。ささやかな茶席ではございますが,ごゆっくりお過ごしください」
ゆっくりと顔を上げると、そこにはお兄様が優し気な笑みを浮かべていた。
「やぁ、彩華。大盛況みたいだね」
「お兄様、来てくれたのね」
「当たり前だろう。彩香の晴れ姿は見ておかないとね。着物よく似合っているよ」
優し気な笑みに心がフワッと温かくなると、忙しさなど忘れ、自然と笑みがこぼれ落ちる。
「彩華ちゃん、俺もいるよ!」
お兄様の後ろからヒョッコリ影が現れると、日華先輩が顔を出した。
「日華先輩、わざわざお越し頂きありがとうございます」
私は手を前にそろえ深く頭を下げると、菓子を二人の前に並べていく。
感謝の気持ちを込め、茶をたてお兄様の前に出すと、丁寧なお辞儀を見せた。
「お先に。お点前頂戴するよ」
右手で御茶碗を取り時計回りに2度回すと、口元へと運んでいく。
お兄様にお茶をたてるなんていつぶりだろう。
そんな事を考えながら見つめていると、ズズッと音が耳にとどいた。
「お加減いかがでしょうか?」
「良いお加減だ」
その言葉に私はほっと息をつくと、日華先輩も碗を口へと運んでいった。
「とても美味しいよ」
「ふふっ、ありがとうございます」
二人の姿に和やかな気持ちになると、私はニッコリ笑みを浮かべた。
「ところでお兄様のクラスの出し物は?」
「あぁ……僕のクラスは……」
「俺たちのクラスは執事&メイド喫茶だよ。でも……ぐふッ」
お兄様は言葉を遮るように日華先輩の首根っこを掴むと、無理矢理に立ち上がらせる。
「彩華、気にしないで。何の変哲もない喫茶店だよ。来ても面白くないだろう」
そうかなぁ……?
執事……お兄様も日華先輩もとても似合いそうね。
襟が締まり苦しそうにする日華先輩を横目に、二人の燕尾服を想像していると、お兄様はそそくさと席を離れる。
「彩華邪魔したね、頑張って」
「えっ、うん。来てくれてありがとう」
そう二人に手を振ると、また次のお客様が席へとつくのだった。
催し物のお茶会で着る着物は、家から持参する。
私自身は文化祭だし手頃な浴衣で良いかな、と思っていたけれど、花蓮とお兄様の猛反対で、着物を着ることになってしまった。
屋敷にある着物は一級品の物ばかりで着れないよ!と訴えてみると、お兄様がいつの間にか、着物にしては安いのだろう……数十万の物を用意してくれていた。
金茶の縮緬無地に淡い朱色の帯。
秋の茶会にふさわしい着物だけれど、学生の文化祭にしては、ちょっとやりすぎだよね……。
私は持たされた着物へチラリと目を向けると、とどまる所を知らないお兄様のシスコン度に、深く息を吐き出した。
学園の前にやってくると、校門には色とりどりのペーパーフラワーが飾られたアーチが設置されている。
わぁ~この雰囲気懐かしいなぁ。
いつもとは違う学園の様子に、懐かしさと期待に胸が熱くなると、私は自然と笑みを浮かべていた。
文化祭は二日にかけて行われ、明日ミスコンが開催される。
色々と不安要素はあるけれど、今は文化祭を楽しもう。
私は賑わう校舎を見上げると、真っすぐに教室へと向かっていった。
教室へ入ると、すでに準備が進められ、皆慌ただしく動き回っている。
私は花蓮を連れ別室へと向かうと、着物を着付けていった。
花蓮の着物は、茶色の無地の着物に、松皮菱模様の帯。
落ち着いた秋らしいデザインは、大人びた花蓮にとてもよく似合っている。
「彩華様、楽しみですわね」
「えぇ、そうね。じゃ行きましょうか」
私達は顔を見合わせ笑いあうと、二人並んで中庭へと向かっていった。
中庭へ到着すると、まだ赤く染まりきっていない、緑が残る木々がそよ風に揺れている。
紅葉街道を抜けると、遮る物が少ない中央に、二つの茶席が横並びに設置されていた。
あそこなら日当たりもいいし、生徒たちによく見える。
私はそのまま右側の茶席へ入ると、茶道具を並べていった。
そうして茶席の準備が整うと、徐に顔を上げ校舎にある時計を見つめる。
長い針が12を真っすぐに刺すと、始業のチャイムが鳴り響いた。
「皆さん、今日は精一杯稼ぎましょう!」
その掛け声と共に、茶会が開かれると、いつも違う学園の雰囲気に、浮足立つ生徒たちが目に映った。
始まって暫くすると、一般の方も訪れ始め、中庭がさらに賑わい始める。
老若男女問わず次第に茶席へ列が出来ていくと、私は一期一会を胸に丁寧にお茶をたてていった。
いっ、忙しい……ッッ。
一息する時間すらない……。
なかなか減らない……いや、むしろ増えていく列に狼狽する中、クラスの生徒が茶菓子を運んでくる。
朝準備していた茶菓子は早々になくなり、今4箱目。
思っていた以上の大繁盛に生徒たちが喜ぶ姿を横目に映る中、次のお客さんをと頭を下げると、一般の生徒とは明らかに違う、洗練された所作で茶席へとやってきた。
「本日はようこそお出でまし下さいまして、ありがとうございます。ささやかな茶席ではございますが,ごゆっくりお過ごしください」
ゆっくりと顔を上げると、そこにはお兄様が優し気な笑みを浮かべていた。
「やぁ、彩華。大盛況みたいだね」
「お兄様、来てくれたのね」
「当たり前だろう。彩香の晴れ姿は見ておかないとね。着物よく似合っているよ」
優し気な笑みに心がフワッと温かくなると、忙しさなど忘れ、自然と笑みがこぼれ落ちる。
「彩華ちゃん、俺もいるよ!」
お兄様の後ろからヒョッコリ影が現れると、日華先輩が顔を出した。
「日華先輩、わざわざお越し頂きありがとうございます」
私は手を前にそろえ深く頭を下げると、菓子を二人の前に並べていく。
感謝の気持ちを込め、茶をたてお兄様の前に出すと、丁寧なお辞儀を見せた。
「お先に。お点前頂戴するよ」
右手で御茶碗を取り時計回りに2度回すと、口元へと運んでいく。
お兄様にお茶をたてるなんていつぶりだろう。
そんな事を考えながら見つめていると、ズズッと音が耳にとどいた。
「お加減いかがでしょうか?」
「良いお加減だ」
その言葉に私はほっと息をつくと、日華先輩も碗を口へと運んでいった。
「とても美味しいよ」
「ふふっ、ありがとうございます」
二人の姿に和やかな気持ちになると、私はニッコリ笑みを浮かべた。
「ところでお兄様のクラスの出し物は?」
「あぁ……僕のクラスは……」
「俺たちのクラスは執事&メイド喫茶だよ。でも……ぐふッ」
お兄様は言葉を遮るように日華先輩の首根っこを掴むと、無理矢理に立ち上がらせる。
「彩華、気にしないで。何の変哲もない喫茶店だよ。来ても面白くないだろう」
そうかなぁ……?
執事……お兄様も日華先輩もとても似合いそうね。
襟が締まり苦しそうにする日華先輩を横目に、二人の燕尾服を想像していると、お兄様はそそくさと席を離れる。
「彩華邪魔したね、頑張って」
「えっ、うん。来てくれてありがとう」
そう二人に手を振ると、また次のお客様が席へとつくのだった。
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