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乙女ゲームの世界
肝試し
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香澄が嬉しそうに手を挙げる姿に、私と奏太は並ぶ様に鳥居をくぐる。
薄暗い境内は奇妙というよりも、神秘的で……私はその雰囲気を堪能するようにゆっくりと辺りを見渡していた。
砂利の音が響く中、奏太は私を何かから守ろうとしているのか、慎重な様子で踏みしめている。
そんな姿が可愛くて、私は彼に気が付かれないように小さく笑った。
彼の様子に変わったところはない。
……立花さくらについて聞いてみよう。
私は彼の背中を真っすぐ見据えると、大きく息を吸い込み、口を開いた。
「ねぇ、奏太君……聞きたいことがあるんだけど……」
奏太は私の声に立ち止まると、徐に振り返る。
「何ですか?俺に答えられる事でしたら、何でも聞いてください!」
わんこのように何かを期待する彼の姿に、私気まずげに視線を逸らせた。
ううぃ……そんな目で見ないで……聞きにくいじゃないか……、でも聞いておかないと……。
「あのね……立花さくらについて、覚えている範囲でいいの……。教えてくれないかな?」
彼は大きく目を見開くと、シュンとテンションが下がり、視線を落とした。
そんな彼の様子に罪悪感を感じる中、奏太は徐に口を開いた。
「立花さくら……、俺もよくわからないんだ。只気がついたら俺は立花さくらの事ばかり考えていて……初めてあの赤い橋で会った時、彼女が彩華さんが助けた、あのぬいぐるみを助けた話をしてきたんだ。あいつがぬいぐるみを助けたんだって……その話を聞いて、俺は彼女があの時の女性じゃないとわかっていたのに……気がつけば、さくらの事ばかり考えるようになっていた」
ぬいぐるみ……?
彼女はあの川で、ぬいぐるみを助けた事を知っていたの……?
でもどうして自分が助けたなんて……もしかしてイベント……?
原作はあそこで、ヒロインがぬいぐるみを助けたのかしら?
彼の話に疑問が浮かぶ中、奏太はそっと顔を上げた。
「それから、俺は彼女の望みをかなえる為に色々した。彼女の望みが何だったのかは、はっきり思い出せないけど……俺はサクベ学園に行ったり、名家のパーティーに参加させられたり……。思い出そうとすると、なぜか頭の中に真っ赤な瞳が浮かび上がるんだ……思い出すことを邪魔するように……」
赤い瞳……?
何だろうそれ?
彼の言葉にゲームの内容を思い返してみるも、そういった描写は思い出せない。
ポツポツと話す奏太君と並び、どれぐらい進んだだろうか、何も起きることがないまま真っすぐ歩き続けていると、突然叢がガサガサと音を立てる。
すぐに音のする方へ視線を向けると、林の奥から人影が薄っすら浮かび上がった。
奏太は怯えるように小さな悲鳴を漏らす中、私は目を凝らす様に人影をじっと見つめていた。
誰だろう……、香澄ちゃんかな?
人影は長い髪をたなびかせると、次第に大きくなっていく。
弱い月明かりに照らされた先には、立花さくらの姿が現れた。
私はその姿に思わず飛び退くと、体が小さく震えだす。
どうして……どうしてこんなところに居るの……?
「あら、あぶれ者同士あなた達がペアになったのね……。ふふっ、奏太よくやったわ」
あぶれ者……?
彼女へ視線をあわせると、嘲笑うような笑みを浮かべていた。
「……どうしてあなたがここにいるの……?」
彼女は私の言葉に笑みを深めると、徐に口を開く。
「それはもちろん、彼らに会いに来るためよ。ところで奏太……うまい具合にあなたと仲良くなったようね」
彼女は笑みを消すと、放心状態で立ち尽くす奏太へ視線を向ける。
「立花さくら……違う、俺は……俺は……!!!」
奏太は怒りを露わにすると、彼女へ近づいていく。
そんな彼の様子をじっと眺めていると、彼女の瞳が紅に染まっていった。
真っ赤な瞳……彼女の事だったのね……!
奏太は彼女を見つめると、スッと怒りを治め、導かれるように彼女の傍で立ち止まった。
「ふふ、彼は私の操り人形よ。さぁ奏太……邪魔な一条彩華を捕まえて。……その後は好きにしていいわ。彼女が死ぬことはないから……」
彼女の言葉に奏太は首を大きく回し、徐に振り返ると、焦点の合わない瞳が私を射抜く。
「捕まえる・・・、ツカマエル・・・・、イチジョウアヤカ・・・・」
奏太はブツブツと何かを呟いたかと思うと、勢いよく私へ跳びかかってきた。
咄嗟に私は後退すると、彼は前のめりに倒れ込む。
しかし彼はすぐにバランスを取ると、凶器に迫る瞳を私に向け、手を伸ばした。
その姿に私は彼の鳩尾に蹴りを入れると、グハッと低く呻き声が響く。
よし……バッチリ入った、これで動けないでしょ……。
私は慎重に彼の様子を覗っていると、彼はまたゆっくりと体を持ち上げる。
奏太は何事もなかったように立ち上がると、また私へと跳びかかってきた。
嘘でしょ!?鳩尾にきまったはずなのに……!!!!
普通なら悶絶ものよ……、もしかして、痛みを感じないとか……?
彼の伸ばす手を避け、私は境内から離れると、そのまま林の中へと足を進める。
彼は私から視線を外すことなく、真っ赤な瞳を向け追撃してきた。
やばい、やばい……まずい!!!
もし痛みを感じないのなら、気絶させないとだけど……、奏太君の動きを見る限り、難しそう……。
私は木々の間を避けながら進む中、奏太は枝など気にすることなく、真っすぐ私を追いかけてくる。
徐に後ろを振り返ると、木々ですりむいたのか……顔中血だらけになった奏太の姿があった。
ひぇぇぇぇっ!!!
こんなのお化けより数段怖い!!!
こんな本格的な肝試し、いらないんだけど!!!
私は彼の姿にさらに足を速める中、彼との距離が少しずつ開いていく。
その事に走りながらほっと胸をなでおろしていると、月明かりに照らされる薄暗い林に、ふと見覚えのある光景が頭をよぎった。
ここ……知っている……。
確かこの奥に注連縄が巻かれた木があって……その奥に小さな祠があるんだ。
頭の中に浮かんだ鮮明な光景に、私は思わず逃げる向きを変えると、なぜかその祠へと必死に走っていった。
薄暗い境内は奇妙というよりも、神秘的で……私はその雰囲気を堪能するようにゆっくりと辺りを見渡していた。
砂利の音が響く中、奏太は私を何かから守ろうとしているのか、慎重な様子で踏みしめている。
そんな姿が可愛くて、私は彼に気が付かれないように小さく笑った。
彼の様子に変わったところはない。
……立花さくらについて聞いてみよう。
私は彼の背中を真っすぐ見据えると、大きく息を吸い込み、口を開いた。
「ねぇ、奏太君……聞きたいことがあるんだけど……」
奏太は私の声に立ち止まると、徐に振り返る。
「何ですか?俺に答えられる事でしたら、何でも聞いてください!」
わんこのように何かを期待する彼の姿に、私気まずげに視線を逸らせた。
ううぃ……そんな目で見ないで……聞きにくいじゃないか……、でも聞いておかないと……。
「あのね……立花さくらについて、覚えている範囲でいいの……。教えてくれないかな?」
彼は大きく目を見開くと、シュンとテンションが下がり、視線を落とした。
そんな彼の様子に罪悪感を感じる中、奏太は徐に口を開いた。
「立花さくら……、俺もよくわからないんだ。只気がついたら俺は立花さくらの事ばかり考えていて……初めてあの赤い橋で会った時、彼女が彩華さんが助けた、あのぬいぐるみを助けた話をしてきたんだ。あいつがぬいぐるみを助けたんだって……その話を聞いて、俺は彼女があの時の女性じゃないとわかっていたのに……気がつけば、さくらの事ばかり考えるようになっていた」
ぬいぐるみ……?
彼女はあの川で、ぬいぐるみを助けた事を知っていたの……?
でもどうして自分が助けたなんて……もしかしてイベント……?
原作はあそこで、ヒロインがぬいぐるみを助けたのかしら?
彼の話に疑問が浮かぶ中、奏太はそっと顔を上げた。
「それから、俺は彼女の望みをかなえる為に色々した。彼女の望みが何だったのかは、はっきり思い出せないけど……俺はサクベ学園に行ったり、名家のパーティーに参加させられたり……。思い出そうとすると、なぜか頭の中に真っ赤な瞳が浮かび上がるんだ……思い出すことを邪魔するように……」
赤い瞳……?
何だろうそれ?
彼の言葉にゲームの内容を思い返してみるも、そういった描写は思い出せない。
ポツポツと話す奏太君と並び、どれぐらい進んだだろうか、何も起きることがないまま真っすぐ歩き続けていると、突然叢がガサガサと音を立てる。
すぐに音のする方へ視線を向けると、林の奥から人影が薄っすら浮かび上がった。
奏太は怯えるように小さな悲鳴を漏らす中、私は目を凝らす様に人影をじっと見つめていた。
誰だろう……、香澄ちゃんかな?
人影は長い髪をたなびかせると、次第に大きくなっていく。
弱い月明かりに照らされた先には、立花さくらの姿が現れた。
私はその姿に思わず飛び退くと、体が小さく震えだす。
どうして……どうしてこんなところに居るの……?
「あら、あぶれ者同士あなた達がペアになったのね……。ふふっ、奏太よくやったわ」
あぶれ者……?
彼女へ視線をあわせると、嘲笑うような笑みを浮かべていた。
「……どうしてあなたがここにいるの……?」
彼女は私の言葉に笑みを深めると、徐に口を開く。
「それはもちろん、彼らに会いに来るためよ。ところで奏太……うまい具合にあなたと仲良くなったようね」
彼女は笑みを消すと、放心状態で立ち尽くす奏太へ視線を向ける。
「立花さくら……違う、俺は……俺は……!!!」
奏太は怒りを露わにすると、彼女へ近づいていく。
そんな彼の様子をじっと眺めていると、彼女の瞳が紅に染まっていった。
真っ赤な瞳……彼女の事だったのね……!
奏太は彼女を見つめると、スッと怒りを治め、導かれるように彼女の傍で立ち止まった。
「ふふ、彼は私の操り人形よ。さぁ奏太……邪魔な一条彩華を捕まえて。……その後は好きにしていいわ。彼女が死ぬことはないから……」
彼女の言葉に奏太は首を大きく回し、徐に振り返ると、焦点の合わない瞳が私を射抜く。
「捕まえる・・・、ツカマエル・・・・、イチジョウアヤカ・・・・」
奏太はブツブツと何かを呟いたかと思うと、勢いよく私へ跳びかかってきた。
咄嗟に私は後退すると、彼は前のめりに倒れ込む。
しかし彼はすぐにバランスを取ると、凶器に迫る瞳を私に向け、手を伸ばした。
その姿に私は彼の鳩尾に蹴りを入れると、グハッと低く呻き声が響く。
よし……バッチリ入った、これで動けないでしょ……。
私は慎重に彼の様子を覗っていると、彼はまたゆっくりと体を持ち上げる。
奏太は何事もなかったように立ち上がると、また私へと跳びかかってきた。
嘘でしょ!?鳩尾にきまったはずなのに……!!!!
普通なら悶絶ものよ……、もしかして、痛みを感じないとか……?
彼の伸ばす手を避け、私は境内から離れると、そのまま林の中へと足を進める。
彼は私から視線を外すことなく、真っ赤な瞳を向け追撃してきた。
やばい、やばい……まずい!!!
もし痛みを感じないのなら、気絶させないとだけど……、奏太君の動きを見る限り、難しそう……。
私は木々の間を避けながら進む中、奏太は枝など気にすることなく、真っすぐ私を追いかけてくる。
徐に後ろを振り返ると、木々ですりむいたのか……顔中血だらけになった奏太の姿があった。
ひぇぇぇぇっ!!!
こんなのお化けより数段怖い!!!
こんな本格的な肝試し、いらないんだけど!!!
私は彼の姿にさらに足を速める中、彼との距離が少しずつ開いていく。
その事に走りながらほっと胸をなでおろしていると、月明かりに照らされる薄暗い林に、ふと見覚えのある光景が頭をよぎった。
ここ……知っている……。
確かこの奥に注連縄が巻かれた木があって……その奥に小さな祠があるんだ。
頭の中に浮かんだ鮮明な光景に、私は思わず逃げる向きを変えると、なぜかその祠へと必死に走っていった。
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