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高等部
乙女ゲームのヒロイン
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あの場にいた生徒たちを確認し、北条家と同じよう、私はここまで望んでいないと、彼女たちを助けるようお願いする。
兄は一般人である彼女たちも容赦なく潰そうとしていた。
何とか食い止め暫くしたある日。
北条家が落ち着いた頃を見計らって、私は花蓮へ連絡を取った。
「もしもし、花蓮さん大丈夫かしら?」
「はい、彩華様。本当にありがとうございました。どうにか不渡りを出さず、父の会社は何とか持ちこたえられましたわ。本当に、本当に……感謝しきれませんわ」
只、一度一条家と仲たがいしたとの噂は業界に広がってしまっている。
元の状態へ立て直すには大変だろう。
だがそのために今度のパーティーで、仲は良好だと見せ付けなければいけない。
持ち直した彼女の様子にほっと胸を撫で下ろすと、私は深く息を吸い込んだ。
「ところで花蓮さん、こんな時に申し訳ないのだけれど……立花さくらについて伺っても宜しいかしら?」
花連は、はいと返事を返すと、彼女について語り始めた。
・
・
・
私が初めて立花さくらに出会ったのは、数か月前です。
彼女は天使のような微笑みを浮かべて、弟の隣で寄り添っていました。
弟とどこで知り合ったのかはわかりません。
ですが彼女に心酔している様子で、私に恋人だと紹介してくれたんです。
中等部三年生になった弟は、今まで女の影もなかった。
素直で真面目な子で、だから私は彼女ができてとても嬉しく思っていました。
最初の頃、彼女は弟にいい影響を与えていたんです。
今まで参加する事を嫌がっていた一族のパーティーへも積極的に参加するようになって……。
だけど次第に弟は彼女と一緒に過ごす時間が増えれば増えるほど、おかしくなっていきました。
真面目だった弟が、彼女を一番優先するようになり、彼女に呼ばれれば授業中だろうと会いに行きました。
彼女が望めばどんなお願いも叶えようとする……。
会いたいそんな願いならまだよかったのかもしれない。
けれど彼女は高価な品物を要求し始め、弟はお小遣いでは賄えなくなり、家のお金に手をだしたんです。
それに気が付いた私はすぐに弟を咎めたんですが……私の言葉は届かず、逆切れするありさま。
大人しい弟だったはずなのに、彼女に心酔し荒れていく姿は胃が痛む思いでした。
弟に私の言葉が届かないとわかり、私はすぐに立花さくらへ会いに行きました。
立花さくらは私の言葉を失笑すると、別れるつもりはないと断られました。
これは私だけでは無理と判断し、父と母に相談しましたが……それでも弟は変わりませんでした。
弟の様子がひどくなっていくことに頭を抱え、何度も止めようと努力しましたが焼け石に水。
そうして弟は成績もがた落ちし、進学が危ぶまれるレベルになってしまったのです。
学園も休みがちで、このままだと弟の将来が閉ざされてしまう。
そんなある日、弟が家に帰って来なくなったんです。
携帯も家に置いていき、どこにいるのか、わかりませんでした。
こんなことは初めてで……両親とも警察に届け出ようかと、悩んでいました。
そんな時、立花さくらが私の元にやってきたんです。
「ねぇ、北条 花蓮さん、弟君返して欲しくない?」
私は詰め寄るように早く返して!と強く言いました。
すると彼女は、ある条件を提示してきたんです。
「ふふ、じゃぁ~あなたの学園にいる、一条彩華って女を学園から追い出してくれない?どんな手を使っても構わないわ。出来ないなら、奏太君は諦めてね。あっ、探そうとしても無駄。私は誰よりもこの街に詳しいからね。見つける事なんて不可能だから」
そう言い放った彼女の姿はひどく不気味で、恐ろしいと感じました。
私は弟のためにと、彩華様を学園を辞めるよう仕向けるよう、あれこれ策を考えました。
その結果が……悪い噂を流し生徒たちを操って、学園に居づらくなるように仕向けました。
案の定、彩華様の悪評を流すとすぐに嫌がらせをする生徒たちが現れました。
彩華様の席に落書きを始めた女は中等部でも、陰湿な女で有名でした。
彼女にあることないことを吹き込んで、嫌がらせを過激にさせ……順調に進んでいたはずでしたが、彩華様は全く気にした様子がなく、正直焦りました。
それにある日突然、彼女が学園にも来なくなったので、別の作戦を考えたんです。
父は医療関係の器具を販売する会社の代表取締役で、家の力を使って男二人を脅しました。
彼らを使って彩華様の嘘話をでっち上げたんです。
その当時彼らには恋人がおり、その恋人は中等部で傲慢で性格が悪いと酷評で、すぐにあなたに敵対してくれました。
水を掛けたり、机にカッターを仕込み、花瓶を落としたり……。
彼女たちのいき過ぎたいじめに私も戸惑っていたんです。
だけど今更止める事なんて出来ない。
こんな事言って信じてもらえるかわかりませんが、私は……彩華様が学園をやめれば、全てを告発して、彼女たちを道ずれに、学園を去るつもりでした。
でも彩華様は全くやめる様子を見せなかった。
このままだと虐めが過激になりすぎ、本当に殺してしまうのではないかと怖くなって、あの日彩華様を呼び出したんです。
結果はこんなありさまで……だけど私の家が条華族から切り離されてすぐ、弟は無事に家へ帰ってきました。
戻ってきた弟は、夢から覚めたように立花さくらへ対する気持ちがなくなっていて……もうわけがわかりません。
居ない間どこで何をしていたのか聞いてみたのですが、本人は全く覚えていないようで……。
花蓮の話がそこで途切れると、私は大きく息を吐いた。
全ては彼女が仕組んだこと、その事実に恐怖を感じる。
長い時間電話に付き合わせていたことを謝ると、そっとスマホの電源を落とした。
私はスマホを投げ布団に潜り込み、先ほどの立花さくらの話を思い返すと、ゾクゾクと鳥肌が立っていく。
こんなブラックなヒロインだなんて信じられない。
誘拐もどきに脅し、恐ろしいすぎるでしょう。
それに……弟君の記憶がないとか、一体何をしたのだろう?
それにしても彼女は私をエイン学園に戻すためにこんな手の込んだことを……。
私は小さく体を震わせると、体を小さく丸めた。
乙女ゲームに関わりたくない。
だけどヒロインを知った今野放しにしておくわけにいかない。
このまま無視し続ければ、また誰かが犠牲になってしまう。
何か手を考えないと……。
そういえば……花蓮さんの弟くんも攻略対象者なのかな?
花蓮さんはかなり美人だし、弟くんもイケメンだろうとは安易に想像がつく。
花堂家のパーティーには花蓮さんに彼女の弟、それにお兄様、二条、華僑くん、そして日華先輩も参加する。
乙女ゲームに出てきた初めてのイベント。
立花さくらが来る可能性は高い。
どうして私を知っているのか、前世の記憶持ちかなのかどうか、確認してみよう。
もし記憶を持っているのなら、邪魔はしないとそう伝えよう。
花蓮の話を聞く限りあまり深く関わらないほうがよさそうだし、悪役になりたくない。
私は身を守るようにギュッと腕を掴むと、目を深く瞑った。
****************************
おまけ(歩視点)
****************************
彩華を屋敷へ残し、僕は先にマンションへと帰る。
そこに日華と二条、華僑を呼び出すと、リビングに集合させた。
二条と華僑は暗い表情で佇み、日華はいつもと変わらない様子だ。
「亮、今回の件は本当にありがとう。お前が気づいていなかったら、彩香をまだ救いだせていなかった」
「そっか、よかったよ。でもまさか条家族が関わっていたなんて想定外だよな」
全くだ、一族の恥さらしもいいところだ。
再起不能まで追い込みたかったが……仕方がない。
「それよりもだ、今回の発端はお前たち二人が関わっている。わかっているな?」
僕は二条と華僑へ顔を向けると、二人は神妙な面持ちで頷いた。
「歩さん、すみませんでした」
「軽率な行動でした……。ですが一条さんは自分がどれほど魅力的なのかわかっていないんです。だから……」
華僑は顔を上げると、真っすぐにこちらを見つめる。
「あぁ、それはわかっている。だがサクベ学園はエイン学園とは違う。一般人ばかりで僕たちを知らない人間が多い。名を出してもピンっとくる生徒は少ないだろう。だからこそこういうことが起きたんだ。潰すのは簡単だが、周りを刺激する行動は控えろ。守る方法はいくらでもある」
鋭く睨み言い聞かせると、二人は深く頷いた。
兄は一般人である彼女たちも容赦なく潰そうとしていた。
何とか食い止め暫くしたある日。
北条家が落ち着いた頃を見計らって、私は花蓮へ連絡を取った。
「もしもし、花蓮さん大丈夫かしら?」
「はい、彩華様。本当にありがとうございました。どうにか不渡りを出さず、父の会社は何とか持ちこたえられましたわ。本当に、本当に……感謝しきれませんわ」
只、一度一条家と仲たがいしたとの噂は業界に広がってしまっている。
元の状態へ立て直すには大変だろう。
だがそのために今度のパーティーで、仲は良好だと見せ付けなければいけない。
持ち直した彼女の様子にほっと胸を撫で下ろすと、私は深く息を吸い込んだ。
「ところで花蓮さん、こんな時に申し訳ないのだけれど……立花さくらについて伺っても宜しいかしら?」
花連は、はいと返事を返すと、彼女について語り始めた。
・
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・
私が初めて立花さくらに出会ったのは、数か月前です。
彼女は天使のような微笑みを浮かべて、弟の隣で寄り添っていました。
弟とどこで知り合ったのかはわかりません。
ですが彼女に心酔している様子で、私に恋人だと紹介してくれたんです。
中等部三年生になった弟は、今まで女の影もなかった。
素直で真面目な子で、だから私は彼女ができてとても嬉しく思っていました。
最初の頃、彼女は弟にいい影響を与えていたんです。
今まで参加する事を嫌がっていた一族のパーティーへも積極的に参加するようになって……。
だけど次第に弟は彼女と一緒に過ごす時間が増えれば増えるほど、おかしくなっていきました。
真面目だった弟が、彼女を一番優先するようになり、彼女に呼ばれれば授業中だろうと会いに行きました。
彼女が望めばどんなお願いも叶えようとする……。
会いたいそんな願いならまだよかったのかもしれない。
けれど彼女は高価な品物を要求し始め、弟はお小遣いでは賄えなくなり、家のお金に手をだしたんです。
それに気が付いた私はすぐに弟を咎めたんですが……私の言葉は届かず、逆切れするありさま。
大人しい弟だったはずなのに、彼女に心酔し荒れていく姿は胃が痛む思いでした。
弟に私の言葉が届かないとわかり、私はすぐに立花さくらへ会いに行きました。
立花さくらは私の言葉を失笑すると、別れるつもりはないと断られました。
これは私だけでは無理と判断し、父と母に相談しましたが……それでも弟は変わりませんでした。
弟の様子がひどくなっていくことに頭を抱え、何度も止めようと努力しましたが焼け石に水。
そうして弟は成績もがた落ちし、進学が危ぶまれるレベルになってしまったのです。
学園も休みがちで、このままだと弟の将来が閉ざされてしまう。
そんなある日、弟が家に帰って来なくなったんです。
携帯も家に置いていき、どこにいるのか、わかりませんでした。
こんなことは初めてで……両親とも警察に届け出ようかと、悩んでいました。
そんな時、立花さくらが私の元にやってきたんです。
「ねぇ、北条 花蓮さん、弟君返して欲しくない?」
私は詰め寄るように早く返して!と強く言いました。
すると彼女は、ある条件を提示してきたんです。
「ふふ、じゃぁ~あなたの学園にいる、一条彩華って女を学園から追い出してくれない?どんな手を使っても構わないわ。出来ないなら、奏太君は諦めてね。あっ、探そうとしても無駄。私は誰よりもこの街に詳しいからね。見つける事なんて不可能だから」
そう言い放った彼女の姿はひどく不気味で、恐ろしいと感じました。
私は弟のためにと、彩華様を学園を辞めるよう仕向けるよう、あれこれ策を考えました。
その結果が……悪い噂を流し生徒たちを操って、学園に居づらくなるように仕向けました。
案の定、彩華様の悪評を流すとすぐに嫌がらせをする生徒たちが現れました。
彩華様の席に落書きを始めた女は中等部でも、陰湿な女で有名でした。
彼女にあることないことを吹き込んで、嫌がらせを過激にさせ……順調に進んでいたはずでしたが、彩華様は全く気にした様子がなく、正直焦りました。
それにある日突然、彼女が学園にも来なくなったので、別の作戦を考えたんです。
父は医療関係の器具を販売する会社の代表取締役で、家の力を使って男二人を脅しました。
彼らを使って彩華様の嘘話をでっち上げたんです。
その当時彼らには恋人がおり、その恋人は中等部で傲慢で性格が悪いと酷評で、すぐにあなたに敵対してくれました。
水を掛けたり、机にカッターを仕込み、花瓶を落としたり……。
彼女たちのいき過ぎたいじめに私も戸惑っていたんです。
だけど今更止める事なんて出来ない。
こんな事言って信じてもらえるかわかりませんが、私は……彩華様が学園をやめれば、全てを告発して、彼女たちを道ずれに、学園を去るつもりでした。
でも彩華様は全くやめる様子を見せなかった。
このままだと虐めが過激になりすぎ、本当に殺してしまうのではないかと怖くなって、あの日彩華様を呼び出したんです。
結果はこんなありさまで……だけど私の家が条華族から切り離されてすぐ、弟は無事に家へ帰ってきました。
戻ってきた弟は、夢から覚めたように立花さくらへ対する気持ちがなくなっていて……もうわけがわかりません。
居ない間どこで何をしていたのか聞いてみたのですが、本人は全く覚えていないようで……。
花蓮の話がそこで途切れると、私は大きく息を吐いた。
全ては彼女が仕組んだこと、その事実に恐怖を感じる。
長い時間電話に付き合わせていたことを謝ると、そっとスマホの電源を落とした。
私はスマホを投げ布団に潜り込み、先ほどの立花さくらの話を思い返すと、ゾクゾクと鳥肌が立っていく。
こんなブラックなヒロインだなんて信じられない。
誘拐もどきに脅し、恐ろしいすぎるでしょう。
それに……弟君の記憶がないとか、一体何をしたのだろう?
それにしても彼女は私をエイン学園に戻すためにこんな手の込んだことを……。
私は小さく体を震わせると、体を小さく丸めた。
乙女ゲームに関わりたくない。
だけどヒロインを知った今野放しにしておくわけにいかない。
このまま無視し続ければ、また誰かが犠牲になってしまう。
何か手を考えないと……。
そういえば……花蓮さんの弟くんも攻略対象者なのかな?
花蓮さんはかなり美人だし、弟くんもイケメンだろうとは安易に想像がつく。
花堂家のパーティーには花蓮さんに彼女の弟、それにお兄様、二条、華僑くん、そして日華先輩も参加する。
乙女ゲームに出てきた初めてのイベント。
立花さくらが来る可能性は高い。
どうして私を知っているのか、前世の記憶持ちかなのかどうか、確認してみよう。
もし記憶を持っているのなら、邪魔はしないとそう伝えよう。
花蓮の話を聞く限りあまり深く関わらないほうがよさそうだし、悪役になりたくない。
私は身を守るようにギュッと腕を掴むと、目を深く瞑った。
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おまけ(歩視点)
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彩華を屋敷へ残し、僕は先にマンションへと帰る。
そこに日華と二条、華僑を呼び出すと、リビングに集合させた。
二条と華僑は暗い表情で佇み、日華はいつもと変わらない様子だ。
「亮、今回の件は本当にありがとう。お前が気づいていなかったら、彩香をまだ救いだせていなかった」
「そっか、よかったよ。でもまさか条家族が関わっていたなんて想定外だよな」
全くだ、一族の恥さらしもいいところだ。
再起不能まで追い込みたかったが……仕方がない。
「それよりもだ、今回の発端はお前たち二人が関わっている。わかっているな?」
僕は二条と華僑へ顔を向けると、二人は神妙な面持ちで頷いた。
「歩さん、すみませんでした」
「軽率な行動でした……。ですが一条さんは自分がどれほど魅力的なのかわかっていないんです。だから……」
華僑は顔を上げると、真っすぐにこちらを見つめる。
「あぁ、それはわかっている。だがサクベ学園はエイン学園とは違う。一般人ばかりで僕たちを知らない人間が多い。名を出してもピンっとくる生徒は少ないだろう。だからこそこういうことが起きたんだ。潰すのは簡単だが、周りを刺激する行動は控えろ。守る方法はいくらでもある」
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