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高等部
思い悩む先に
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平穏な学園生活を望んでいたのに、どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
二条と華僑くんと仲がいいのを僻まれる気持ちはわかる。
だけどここまでする必要があるのかな……?
最初はそれほどまで気にしていなかったけれど、どうもおかしい。
最初の一件以来、二条と華僑君と会わないようしている。
全く会っていないわけじゃないけれど、そろそろ噂も落ち着いてもいい頃でしょう。
なのに寧ろ悪化している。
少し彼らと話しただけで噂があっという間に広がって、尾ひれまでついているのだ。
もしかして私は誰かに恨まれている……?
だけどこの学園に来たのは数か月前、多少の反感を買っても恨まれるほどのことはしていない。
知り合いは二条や華僑君だけ、もしかして一条家に対してなのかな。
いやいや、私が一条家だってことは伏せているし、条華族に関わっている人もいない。
うんうん頭を悩ませながら校庭を歩いていると、危ないとの声に私は慌てて立ち止まった。
その瞬間、目の前に大きな影が通り過ぎたかと思うと、
ガシャーンッ
大きな音とともに何かの破片が散らばった。
反射的に身構えたが、破片の一つが私の頬を掠め、血が流れる。
嘘でしょ……ここまでする?
ってこれはさすがにダメでしょ、当たったら死んじゃうよ!?
私は急いで顔を上げると、開け放たれた窓からバタバタと走り去る足音と、女子生徒達の笑い声が聞こえた。
そこからヒラヒラと一枚の紙が投げ捨てられると、私は慌ててその紙を取った。
恐る恐る開くと、【学園から出て行け】と大きな文字で書かれている。
うーん、この言葉下駄箱にも書かれていたような……。
「おぃ、大丈夫か!」
声に振り返ると、そこには二条の姿。
私は慌てて紙をクシャクシャに丸めると、ポケットへと突っ込んだ。
二条は私の顔を覗き込むと頬に手を当て、今にも泣きそうな表情を浮かべる。
「血が出てる、すぐに保健室へ行こう」
「このぐらいの傷平気よ。それよりも声をかけてくれてありがとう。ちょっとぼうとしていて」
誤魔化す様に笑うと、私は二条から距離を取るように後ずさる。
二条と二人……こんなところを見られたら、また変な噂が広がりそう。
「一条……」
何か言いたそうにする彼の言葉にかぶせる様に、私はわざとらしく大きな声を出す。
「あー!今日は風も強いから落ちたのかな。ほんと、当たらなくてよかった。じゃぁまたね」
早口でそう話すと、二条から逃げるように背を向ける。
すると二条は私の腕を強く掴むと、体が後方へガクンと傾いた。
そのままバランスを崩し彼の胸に倒れ込むと、抱きとめられる。
離れようと慌てて身をよじるが、抱きしめる腕に力が入り身動きが取れなくなった。
「どうして何も話してくれないんだ……」
「本当に何でもないの、心配しすぎよ。……だから離して」
私は拒絶を示すように胸を強く押し返すと、彼の顔を見る事その場から無く走り去った。
前回の一件、それに今回の一件で、二条も華僑も様子がおかしいと気づき始めているだろう。
このままじゃ嫌がらせを受けているとバレるのも時間の問題。
それにしても、さっきのはあまりに行き過ぎた行動だと思う。
ここまでされるほど、恨まれるようなことはしていない。
もしかして私がサクベ学園にきたから……?
小説とかでよくある転生者にありがちな……なぞの強制力が働いて、私をこの学園から追い出そうとしているとか?
まさか……それは考えすぎでしょ。
そんなものがあればきっとこの学園に入学出来ていない。
あぁ今はそんなことよりも、お兄様に気が付かれる前に何とかしないと。
はぁ……そろそろ自分で動き出すべきかな。
主犯を見つけけだして直接対決……うーん、火に油を注ぐ結果になりそう。
かといって一条家の力を使うのもなぁ……。
あぁ、そうだ先生に相談しよう。
ダメだ、先生たちは私が一条家だと知っているだろう。
嫌がらせをされているなんて言えば、大事になっちゃいそう。
大事といえば……二条に言っておかないと……。
授業が終わりすぐに学園を出ると、私は習い事へ向かう為、車へと乗り込む、
習い事を終え、そのまま外で簡単な夕食をすませると、マンションに到着した頃には、日が沈み、辺りは暗くなっていた。
私はマンションのエレベーターを降りると、二条の部屋へと向かいインターフォンを押した。
インターフォンから二条の驚いた声が返ってくると、ガチャリと静かに扉が開く。
扉の前にはラフな黒のTシャツ姿の二条が、なぜか焦った様子を見せていた。
「一条どうしたんだ?何かあったのか?」
「ううん、今日はごめんね。助けてもらったのに、冷たい態度をとっちゃったかなって思って……だから謝りたくて本当にごめんなさい」
「そんなこと気にすんな。それよりも、顔の傷は大丈夫か?」
二条はそっと私の頬へ手を伸ばしたかと思うと、触れるか触れないかの距離で止まった。
「うん、かすり傷だもの。あのね……二条、一つお願いがあるんだけど……今日のことはお兄様に話さないでほしいの」
私はニッコリ二条に微笑みを浮かべると、また明日ね!と手を振り背を向けた。
「一条!!!」
呼ばれる声に振り替えることなく、家へと戻った。
メイドはすでに帰っており、兄は父の仕事の手伝いで、明かりがついていない。
私は部屋の電気を付けずに、暗闇の中ドサッとソファーの上に座り込むと天を仰いだ。
お兄様がいなくてよかった。
二条には口止めしたけれど、この絆創膏を見られれば、どうしたのかと、心配をかけてしまう。
次、お兄様に会う前に治っているといいなぁ。
私はそっと頬から絆創膏を取ると、小さな瘡蓋に指を添わせる。
チリチリと鈍い痛みを感じると、私はそっと立ち上がり、自室へと戻っていった。
二条と華僑くんと仲がいいのを僻まれる気持ちはわかる。
だけどここまでする必要があるのかな……?
最初はそれほどまで気にしていなかったけれど、どうもおかしい。
最初の一件以来、二条と華僑君と会わないようしている。
全く会っていないわけじゃないけれど、そろそろ噂も落ち着いてもいい頃でしょう。
なのに寧ろ悪化している。
少し彼らと話しただけで噂があっという間に広がって、尾ひれまでついているのだ。
もしかして私は誰かに恨まれている……?
だけどこの学園に来たのは数か月前、多少の反感を買っても恨まれるほどのことはしていない。
知り合いは二条や華僑君だけ、もしかして一条家に対してなのかな。
いやいや、私が一条家だってことは伏せているし、条華族に関わっている人もいない。
うんうん頭を悩ませながら校庭を歩いていると、危ないとの声に私は慌てて立ち止まった。
その瞬間、目の前に大きな影が通り過ぎたかと思うと、
ガシャーンッ
大きな音とともに何かの破片が散らばった。
反射的に身構えたが、破片の一つが私の頬を掠め、血が流れる。
嘘でしょ……ここまでする?
ってこれはさすがにダメでしょ、当たったら死んじゃうよ!?
私は急いで顔を上げると、開け放たれた窓からバタバタと走り去る足音と、女子生徒達の笑い声が聞こえた。
そこからヒラヒラと一枚の紙が投げ捨てられると、私は慌ててその紙を取った。
恐る恐る開くと、【学園から出て行け】と大きな文字で書かれている。
うーん、この言葉下駄箱にも書かれていたような……。
「おぃ、大丈夫か!」
声に振り返ると、そこには二条の姿。
私は慌てて紙をクシャクシャに丸めると、ポケットへと突っ込んだ。
二条は私の顔を覗き込むと頬に手を当て、今にも泣きそうな表情を浮かべる。
「血が出てる、すぐに保健室へ行こう」
「このぐらいの傷平気よ。それよりも声をかけてくれてありがとう。ちょっとぼうとしていて」
誤魔化す様に笑うと、私は二条から距離を取るように後ずさる。
二条と二人……こんなところを見られたら、また変な噂が広がりそう。
「一条……」
何か言いたそうにする彼の言葉にかぶせる様に、私はわざとらしく大きな声を出す。
「あー!今日は風も強いから落ちたのかな。ほんと、当たらなくてよかった。じゃぁまたね」
早口でそう話すと、二条から逃げるように背を向ける。
すると二条は私の腕を強く掴むと、体が後方へガクンと傾いた。
そのままバランスを崩し彼の胸に倒れ込むと、抱きとめられる。
離れようと慌てて身をよじるが、抱きしめる腕に力が入り身動きが取れなくなった。
「どうして何も話してくれないんだ……」
「本当に何でもないの、心配しすぎよ。……だから離して」
私は拒絶を示すように胸を強く押し返すと、彼の顔を見る事その場から無く走り去った。
前回の一件、それに今回の一件で、二条も華僑も様子がおかしいと気づき始めているだろう。
このままじゃ嫌がらせを受けているとバレるのも時間の問題。
それにしても、さっきのはあまりに行き過ぎた行動だと思う。
ここまでされるほど、恨まれるようなことはしていない。
もしかして私がサクベ学園にきたから……?
小説とかでよくある転生者にありがちな……なぞの強制力が働いて、私をこの学園から追い出そうとしているとか?
まさか……それは考えすぎでしょ。
そんなものがあればきっとこの学園に入学出来ていない。
あぁ今はそんなことよりも、お兄様に気が付かれる前に何とかしないと。
はぁ……そろそろ自分で動き出すべきかな。
主犯を見つけけだして直接対決……うーん、火に油を注ぐ結果になりそう。
かといって一条家の力を使うのもなぁ……。
あぁ、そうだ先生に相談しよう。
ダメだ、先生たちは私が一条家だと知っているだろう。
嫌がらせをされているなんて言えば、大事になっちゃいそう。
大事といえば……二条に言っておかないと……。
授業が終わりすぐに学園を出ると、私は習い事へ向かう為、車へと乗り込む、
習い事を終え、そのまま外で簡単な夕食をすませると、マンションに到着した頃には、日が沈み、辺りは暗くなっていた。
私はマンションのエレベーターを降りると、二条の部屋へと向かいインターフォンを押した。
インターフォンから二条の驚いた声が返ってくると、ガチャリと静かに扉が開く。
扉の前にはラフな黒のTシャツ姿の二条が、なぜか焦った様子を見せていた。
「一条どうしたんだ?何かあったのか?」
「ううん、今日はごめんね。助けてもらったのに、冷たい態度をとっちゃったかなって思って……だから謝りたくて本当にごめんなさい」
「そんなこと気にすんな。それよりも、顔の傷は大丈夫か?」
二条はそっと私の頬へ手を伸ばしたかと思うと、触れるか触れないかの距離で止まった。
「うん、かすり傷だもの。あのね……二条、一つお願いがあるんだけど……今日のことはお兄様に話さないでほしいの」
私はニッコリ二条に微笑みを浮かべると、また明日ね!と手を振り背を向けた。
「一条!!!」
呼ばれる声に振り替えることなく、家へと戻った。
メイドはすでに帰っており、兄は父の仕事の手伝いで、明かりがついていない。
私は部屋の電気を付けずに、暗闇の中ドサッとソファーの上に座り込むと天を仰いだ。
お兄様がいなくてよかった。
二条には口止めしたけれど、この絆創膏を見られれば、どうしたのかと、心配をかけてしまう。
次、お兄様に会う前に治っているといいなぁ。
私はそっと頬から絆創膏を取ると、小さな瘡蓋に指を添わせる。
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