乙女ゲームの世界は大変です。

あみにあ

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高等部

体育祭:後編

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二条が居なくなると、静かな教室内に歓声が外から響く。
そういえば、確か乙女ゲームでも体育祭のイベントがあったような気がする。
攻略対象者とペアで、何かイベントが発生したような……?
それが競技でなのか、それとも体育祭が終わった後なのかは、記憶がぼやけ思い出せない。
そんな事を考えながら、窓の外に視線を向けると、クラスメイトとじゃれ合う二条と華僑の姿が目に映る。
彼らから少し離れた所では、女子生徒たちが等巻きながらに声援を送っているようだ。

暫くすると黄色い声援が多くなり何事かと、校庭を覗き込んでみると、兄と日華が二条と華僑へ話しかけていた。
4人が揃うと、そこだけ別空間のようにキラキラしている。
あれで攻略対象者じゃないなんてことないでしょう。
とりあえず何事もないが、彼らがいないエイン学園は、一体どうなっているのだろう。
とても気になるが、やはり確認に行く勇気はない。
エイン学園で、主人公と鉢合わせでもしたら、元も子もないもんね。

体育祭は順調に進み、私は教室から離れ誰もいない空き部屋を探しお昼をすませる。
あのまま教室に居れば、また二条や華僑君がやってきていただろう。
一人の食事が寂しくないと言えば嘘になるけれど、二条や華僑と一緒に居るところを見られ、女子生徒達から敵意を向けられるのは避けたかった。

お昼休みも終わり、窓から差し込む太陽の光にウトウトしていると、教室内に放送が響きわたる。

『リレーへ出場する生徒は、至急テント前へ集まってください』

私は立ち上がると、鉢巻をしっかり締めテント前へと向かったのだった。

指定された場所へやってくると、リレーの選手であろう生徒達が集まっている。
私も集団の中へ紛れ込むと、先頭に立つ体育委員にトラックへ案内された。
集まっている生徒に目を向けると、皆運動部なのだろう、しっかりした体つきに、しなやかな筋肉がのぞかせている。
みんな速そうだなぁ……。

スタート位置に並ぶと、先生がスターターピストルを手にトラックの内側へとやってくる。
生徒達は真剣な表情を浮かべ緊迫した空気に包まれると、先生は大きく手を上げ、ピストルを掲げた。

パーン!!!

大きなスタート音が鳴り響くと、皆一斉に走り出す。
そんな中、私は案内された第3レーンで待っていた。
私の前はバスケ部に所属している男子生徒だ。
先頭の選手が第一コーナを曲がり、私のクラスは6組中4位についている。
そのまま第二走者にバトンが手渡されると、バスケ部の男子は一気に加速した。

第二コーナーに差し掛かると、私のクラスは3位に浮上していた。
私は緊張した面持ちで第二走者を目で追う中、バトン手渡される。
しっかりバトンを受け取ると、前かがみで走り出し、ゆっくりと上体を起こして行く。
真っすぐ見えた目線の先には、2位の生徒の背中がすぐ目の前にあった。
さらにスピードを上げると、そのまま2位を抜きさり、先頭の背中を追った。
スピードを落とすことなく腕を振っていると、徐々に先頭走者の背中が大きくなっていく。
もう少しで抜ける、とのところで私はアンカーへとバトンを手渡した。

はぁ、はぁ、はぁ……苦しい……ッッ。
初めてこんなに全力で走ったかもしれない。
ひどく息があがり、声を出せない。
私はヨロヨロとトラックの内側へ移動すると、額から流れる汗を拭う。
最終レーン、歓声が大きくなる中、私のクラスは1位になっていた。
やったぁ!

しかし喜びもつかの間、二条が最終レーンでバトンを受け取ると、二条は2位を軽々と追い抜きそのまま走るペースを上げていく。
差はジリジリと縮み、ゴールまで30メートル、私のクラスが二条と並んだ。
二条はさらにスピードを上げると、そのまま1位でゴールテープを切った。

女子達の黄色い声援が響く中、二条は小さくガッツポーズを決める。
その姿は少年そのもので、私は微笑ましい気持ちで眺めていた。
女子生徒たちがキャーキャーと彼の周りに集まる中、ふと二条と目が合うと、彼は私に向かって最高の笑顔を見せてくれたのだった。
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