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中等部
言えない言葉 (歩視点)
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ショッピングモールへと向かう二人の姿に深く息を吐き出すと、バカ面で呆けている二条へ視線を向けた。
「おい、お前の妹を何とかしろ」
二条の視線を遮ると、ハッとし視線が絡む
「歩さん……いやいや、ってそれよりも何してたんですか?一条のあの姿……」
僕は深くため息をつくと、お前には関係ないと冷めた目で一瞥する。
二条はひぃっと小さな悲鳴を上げ後退った。
「……ッッ、いや、てかあの服……歩さんが選んだんですよね……。すごく一条に似合ってると思います。やっぱり歩さんも俺と同じであいつのことを――――」
僕は話し終わる前に歩き始めると、ショッピングモールへ入って行く。
「ちょっ、待ってくださいよ!」
声を無視するように歩いていると、後ろからバタバタと駆け寄る音が近づいてきたのだった。
二条が何を言おうとしていたかわかっている。
だがそれは言葉にしてはいけないものだ。
僕と彼女は家族で、誰よりも傍に居て、誰よりも大切に想っている。
彩華も僕を大切に思ってくれているだろう。
けれどそれは兄としてだ。
わかっている、だからこそこの気持ちに蓋をしなければいけない。
ショッピングモールにある高級ブティックへ連れられて行く彩華の姿を見つけると、僕も急いで後を追いかける。
彩華はそのまま試着室へと連れられて行かれると、声をかける前にカーテンが閉められた。
試着室の前には勝ち誇った笑みを浮かべる香澄の姿。
その姿に苛立つと、香澄を睨みつける。
「なぁによ、お姉様はお兄様の婚約者になるんだから。一条様には渡さないわ。まぁ~お兄様の方が数倍恰好いいから問題はないと思うけどね。ふふん」
鼻で笑う彼女の様子に僕は目をスッと目を細める。
後ろから急ぎ足でかけてきた二条を睨みつけると、蛇に睨まれた蛙のように立ち止まった。
その様子に僕は小さく息を吐くと、香澄へと視線を戻した。
「お前も良い度胸だな、彩華を事故に巻き込んでおきながら、今は手のひらを返したように彩華にまとわりつく。まったく図太い女だ」
「ふん、良いのよ。お姉様は何も悪くないって、それよりニッコリ笑いかけてくれる方が嬉しいって言ってくれたもの!」
香澄は思い出すように頬を緩めると、うっとりと笑みを浮かべた。
暫くすると、試着室からスタッフたちが慌ただしい様子で出てくる。
その様子に香澄はスタッフの一人と話をしたかと思うと、勢いよく試着室のカーテンを開いた。
そこに現れたのは、ショートパンツに普段は隠れ見ることがない美しい長い脚に、少し大きめのVネックセーターから豊満な胸の谷間。
モジモジと顔を赤らめ恥ずかしそうにする彩華姿に、目が釘付けになった。
香澄の余計な言葉にハッと我に返ると、二条は放心状態のまま彼女をじっと見つめている。
二人の視線が絡み、見つめ合うその様子に、僕は苛立ちを感じると、すぐさま彼らの間へ割り込んだ。
すぐに彩華に着替えてくるように耳打ちすると、僕はサッとカーテンを閉める。
なんて恰好をさせるんだ……ッッ。
彩華を着替えさせ、さっさと二条達から別れようとするが、結局そのまままとわりつかれ、ショッピングモール周ることになると、気が付けば日が大分傾いていた。
彼らと別れ、ようやく彩華と二人になった頃には、夕日が沈み夜が始まろうとしていた。
彼女は楽しかったと微笑みを浮かべながら、僕の腕へ寄り添う姿に優しく彼女の髪を撫でる。
すると彼女は真剣な瞳を浮かべ、僕を見上げた。
「ねぇ、お兄様……好きな人がいるの?今日あったお嬢様が言っていたわ」
穏やかな雰囲気からの、突然の言葉に彼女に心が乱れる。
僕の好きな人……まさかあの女から聞いたのか……?
必死に動揺を隠し何とか言葉を紡ぐと、どうやら誰なのかは聞いていないようだ。
その返答に僕はほっと胸をなでおろすと、彼女はまた怒ったように話し始める。
「いいえ、聞いていない。それよりも好きな人がいるならその人に頼んだ方が良いわ。こうやってお兄様と歩いている姿をもし見られたら、勘違いされてしまうわよ」
その言葉に胸が締め付けられた。
彼女は本当に僕を、そういった感情で見ていない事実に。
血がつながっていなくてもやはり僕は只の兄。
そんな事はわかりきっていたじゃないか。
それでもはっきりと彼女から突きつけられると、僕は苦しさに視線を逸らせた。
このまま何も言わず、心にしまっておくのが正解のはず。
だがここでもし……本当の思いを伝えれば……楽になるだろう。
彼女は優しいから……兄という立場であっても受け入れてくれるのかもしれない。
ちゃんと男として見てくれるようになるのかもしれない。
僕を意識し、隣で頬を染めて恥じらう姿……それはまるで夢物語のようだ。
「だから……」
だから彩華を選んだんだ。僕は彩華を妹ではなく一人の女性として愛しているから―――――。
思わず出た言葉に僕は慌てて口を閉じると深く息を吸い込んだ。
僕は……何を言いかけて……。
これは口にしてはいけない言葉だ。
言葉にすれば、もう後戻りはできなくなる。
彼女の笑顔の為にも、僕は兄で在りつづけなければならない。
この気持ちに蓋をすると、自分に何度も言い聞かせたじゃないか。
冷静さを取り戻し視線を向けると、彼女はキョトンとした様子で続く言葉を待っていた。
無防備なその表情に、兄と慕い僕に心を許してくれている……そんな彼女を裏切りたくはない。
僕は無理矢理に誤魔化すように笑うと、彼女の手を取り、行こうかと薄暗い街の中家路へと急いだ。
「おい、お前の妹を何とかしろ」
二条の視線を遮ると、ハッとし視線が絡む
「歩さん……いやいや、ってそれよりも何してたんですか?一条のあの姿……」
僕は深くため息をつくと、お前には関係ないと冷めた目で一瞥する。
二条はひぃっと小さな悲鳴を上げ後退った。
「……ッッ、いや、てかあの服……歩さんが選んだんですよね……。すごく一条に似合ってると思います。やっぱり歩さんも俺と同じであいつのことを――――」
僕は話し終わる前に歩き始めると、ショッピングモールへ入って行く。
「ちょっ、待ってくださいよ!」
声を無視するように歩いていると、後ろからバタバタと駆け寄る音が近づいてきたのだった。
二条が何を言おうとしていたかわかっている。
だがそれは言葉にしてはいけないものだ。
僕と彼女は家族で、誰よりも傍に居て、誰よりも大切に想っている。
彩華も僕を大切に思ってくれているだろう。
けれどそれは兄としてだ。
わかっている、だからこそこの気持ちに蓋をしなければいけない。
ショッピングモールにある高級ブティックへ連れられて行く彩華の姿を見つけると、僕も急いで後を追いかける。
彩華はそのまま試着室へと連れられて行かれると、声をかける前にカーテンが閉められた。
試着室の前には勝ち誇った笑みを浮かべる香澄の姿。
その姿に苛立つと、香澄を睨みつける。
「なぁによ、お姉様はお兄様の婚約者になるんだから。一条様には渡さないわ。まぁ~お兄様の方が数倍恰好いいから問題はないと思うけどね。ふふん」
鼻で笑う彼女の様子に僕は目をスッと目を細める。
後ろから急ぎ足でかけてきた二条を睨みつけると、蛇に睨まれた蛙のように立ち止まった。
その様子に僕は小さく息を吐くと、香澄へと視線を戻した。
「お前も良い度胸だな、彩華を事故に巻き込んでおきながら、今は手のひらを返したように彩華にまとわりつく。まったく図太い女だ」
「ふん、良いのよ。お姉様は何も悪くないって、それよりニッコリ笑いかけてくれる方が嬉しいって言ってくれたもの!」
香澄は思い出すように頬を緩めると、うっとりと笑みを浮かべた。
暫くすると、試着室からスタッフたちが慌ただしい様子で出てくる。
その様子に香澄はスタッフの一人と話をしたかと思うと、勢いよく試着室のカーテンを開いた。
そこに現れたのは、ショートパンツに普段は隠れ見ることがない美しい長い脚に、少し大きめのVネックセーターから豊満な胸の谷間。
モジモジと顔を赤らめ恥ずかしそうにする彩華姿に、目が釘付けになった。
香澄の余計な言葉にハッと我に返ると、二条は放心状態のまま彼女をじっと見つめている。
二人の視線が絡み、見つめ合うその様子に、僕は苛立ちを感じると、すぐさま彼らの間へ割り込んだ。
すぐに彩華に着替えてくるように耳打ちすると、僕はサッとカーテンを閉める。
なんて恰好をさせるんだ……ッッ。
彩華を着替えさせ、さっさと二条達から別れようとするが、結局そのまままとわりつかれ、ショッピングモール周ることになると、気が付けば日が大分傾いていた。
彼らと別れ、ようやく彩華と二人になった頃には、夕日が沈み夜が始まろうとしていた。
彼女は楽しかったと微笑みを浮かべながら、僕の腕へ寄り添う姿に優しく彼女の髪を撫でる。
すると彼女は真剣な瞳を浮かべ、僕を見上げた。
「ねぇ、お兄様……好きな人がいるの?今日あったお嬢様が言っていたわ」
穏やかな雰囲気からの、突然の言葉に彼女に心が乱れる。
僕の好きな人……まさかあの女から聞いたのか……?
必死に動揺を隠し何とか言葉を紡ぐと、どうやら誰なのかは聞いていないようだ。
その返答に僕はほっと胸をなでおろすと、彼女はまた怒ったように話し始める。
「いいえ、聞いていない。それよりも好きな人がいるならその人に頼んだ方が良いわ。こうやってお兄様と歩いている姿をもし見られたら、勘違いされてしまうわよ」
その言葉に胸が締め付けられた。
彼女は本当に僕を、そういった感情で見ていない事実に。
血がつながっていなくてもやはり僕は只の兄。
そんな事はわかりきっていたじゃないか。
それでもはっきりと彼女から突きつけられると、僕は苦しさに視線を逸らせた。
このまま何も言わず、心にしまっておくのが正解のはず。
だがここでもし……本当の思いを伝えれば……楽になるだろう。
彼女は優しいから……兄という立場であっても受け入れてくれるのかもしれない。
ちゃんと男として見てくれるようになるのかもしれない。
僕を意識し、隣で頬を染めて恥じらう姿……それはまるで夢物語のようだ。
「だから……」
だから彩華を選んだんだ。僕は彩華を妹ではなく一人の女性として愛しているから―――――。
思わず出た言葉に僕は慌てて口を閉じると深く息を吸い込んだ。
僕は……何を言いかけて……。
これは口にしてはいけない言葉だ。
言葉にすれば、もう後戻りはできなくなる。
彼女の笑顔の為にも、僕は兄で在りつづけなければならない。
この気持ちに蓋をすると、自分に何度も言い聞かせたじゃないか。
冷静さを取り戻し視線を向けると、彼女はキョトンとした様子で続く言葉を待っていた。
無防備なその表情に、兄と慕い僕に心を許してくれている……そんな彼女を裏切りたくはない。
僕は無理矢理に誤魔化すように笑うと、彼女の手を取り、行こうかと薄暗い街の中家路へと急いだ。
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