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中等部
突然の提案:後編
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モールの一角にある高級ブティックへと連れて来られると、丁寧な対応の女性スタッフたちと香澄が慣れ親しんだ様子で話を始める。
その話を馬耳東風に笑顔で眺めていると、怒りが治まっていない兄と、困った様子の二条の姿が頭を掠める。
うーん、二条大丈夫かな……いや……大丈夫じゃないよね……。
「お姉様、こっちよ!」
「へえ……ッッ!?」
突然香澄に腕を引っ張られると、何もわからないまま試着室へと連行される。
中へ入ると、女性スタッフたちが何人も洋服をもって現れ、そのままもみくちゃにされてしまった。
あれ、デジャヴュ感……ってなんで私が着替えさせられているのかな。
香澄ちゃんの服を買いに来たんじゃないの?
口をはさむことも出来ないスタッフたちの勢いに、諦め身を任せていると、ふと肌寒さを感じそっと鏡に視線を向ける。
そこに映ったのは、黒のショートパンツに胸元が大きく開いたVネックセータをきた私が佇んでいた。
えぇ……太ももを出した服装なんて、彩華に生まれ変わってから一度もない。
まぁ綺麗な脚だけど、なんだかとても恥ずかしい。
胸元も……前回もそうだったけれど、香澄ちゃんこういう系統の服装が好きなのかしら……。
私は恥ずかしさに思わず鏡から顔を背けると、突然試着室のカーテンが開いた。
「きゃー、やっぱりお姉様にはセクシー系がよく似合うわー」
香澄の声に顔を向けると、彼女の後ろにはいつの間に来ていたのか、兄と二条が佇んでいた。
二条は私の姿を呆然と嘗め、兄は眉間に皺を寄せる。
「……ッッ、香澄ちゃん、この服は……中等部の私には早いんじゃないかな?」
「なぁに言っているのお姉様、お姉様は身長も高くて、脚長くてきれいだし。出るとこはでて締まるところは締まる、女性のあこがれのスタイルなんだから、このぐらい見せないと!」
うぅ、気持ちはわからなくもないけど、やっぱり恥ずかしい……。
私は顔を真っ赤に頭を垂れると、いたたまれない気持ちに、もじもじと立ち尽くす。
「ほら、お兄様。ここでちゃんと言わないと~」
香澄は二条の腕を引っ張り試着室の前へ連れて来るが、それを遮るかのように兄が間に入った。
「彩華、とっても似合っているよ。でもこういう服はまだはやいね。ほら、早く着替えておいで」
やっぱりそうだよね。
私はコクコクと頷くと、逃げるように試着室のカーテンを閉めたのだった。
***********************
試着室の外では
***********************
「あぁもう、一条様邪魔をしないで下さい。お兄様もどうしてさっさと可愛いって言ってあげられないの?」
歩は香澄の言葉を無視すると、じっと試着室へ顔を向ける。
「いやいや、あれはダメだろう……キャパオーバー、綺麗すぎる……ッッ」
二条は顔を覆いその場で項垂れると、香澄は呆れるようにため息をついた。
そんな二人の様子に、歩はおもむろに振り返ると、香澄に冷たい視線を向ける。
「二条妹、彩華に悪影響を及ぼすのはやめてくれないか?」
「なぁによ、男の嫉妬は見苦しいわよ。一条様もお姉様に見惚れていたじゃない。それにお姉様にはさっきのダサい清楚系のワンピースより、小悪魔セクシー系の方が似合うのよ」
歩は深く息を吐くと、項垂れる二条の首根っこを掴み立ち上がらせる。
「いてっ、歩さん、ちょっ、痛いですって……ッッ」
「二条、妹をちゃんと躾けた方がいいんじゃないかな?お前でわからせてやろうか……?」
歩の言葉ににじょうは震えあがると、勘弁して下さいと何度も謝る。
そんな会話が繰り返されているとは知らない私は、せっせと元のワンピースへと着替えていた。
・
・
・
その後ショッピングモールを4人で歩き、楽しいひと時を過ごしていると、あっという間に辺りは暗くなっていた。
二人と別れ車を呼び寄せようとする兄に、歩いて帰りましょうと提案すると、人通りが少なくなった静かな街並みを肩を並べて歩いていく。
ビルの隙間から差し込む夕日を見上げていると、今日一日のことを思い出した。
「楽しかったわね、お兄様」
兄はあぁと小さく笑うと、私は腕を兄の腕へからませる。
「またみんなで出かけたいわ。でもお兄様、こんなことは今日限りにしてね。今度は協力しないわ。だって相手に悪いもの、断るために偽の恋人を作るなんて……」
「あぁ、わかっているよ……」
兄の腕に捕まりながら歩いていると、ふと彼女の言葉が頭を過った。
(彼の一番にはなれない)
「ねぇ、お兄様……好きな人がいるの?今日あったお嬢様が言っていたわ」
兄は足を止めると、こちらへ顔を向けた。
向けられた瞳はひどく動揺している。
「どうしてそんな……ッッ、誰が好きなのかを聞いたのかい?」
私は首を横へ振ると、腕から離れ兄の前へと回り込んだ。
「いいえ、聞いていない。それよりも好きな人がいるならその人に頼んだ方が良いわ。こうやってお兄様と歩いている姿をもし見られたら、勘違いされてしまうわよ」
言い聞かせるように兄を見つめると、彼の瞳が静かに触れた。
「だから……」
続く言葉を待っていると、兄は唇を閉じ、そっと私から視線を逸らせる。
「わかった、次はそうしよう。じゃぁ、この話は終わり。彩華、もうすぐ暗くなる、早く帰ろう」
兄は私の手を取ると、ギュッと強く握りしめた。
彼が何を言いかけたのか、その言葉を聞こうと口を開くが、なぜかうまく言葉が出てこない。
そっと兄を見上げると、夕日が反射してはっきりと表情が見えなかった。
その話を馬耳東風に笑顔で眺めていると、怒りが治まっていない兄と、困った様子の二条の姿が頭を掠める。
うーん、二条大丈夫かな……いや……大丈夫じゃないよね……。
「お姉様、こっちよ!」
「へえ……ッッ!?」
突然香澄に腕を引っ張られると、何もわからないまま試着室へと連行される。
中へ入ると、女性スタッフたちが何人も洋服をもって現れ、そのままもみくちゃにされてしまった。
あれ、デジャヴュ感……ってなんで私が着替えさせられているのかな。
香澄ちゃんの服を買いに来たんじゃないの?
口をはさむことも出来ないスタッフたちの勢いに、諦め身を任せていると、ふと肌寒さを感じそっと鏡に視線を向ける。
そこに映ったのは、黒のショートパンツに胸元が大きく開いたVネックセータをきた私が佇んでいた。
えぇ……太ももを出した服装なんて、彩華に生まれ変わってから一度もない。
まぁ綺麗な脚だけど、なんだかとても恥ずかしい。
胸元も……前回もそうだったけれど、香澄ちゃんこういう系統の服装が好きなのかしら……。
私は恥ずかしさに思わず鏡から顔を背けると、突然試着室のカーテンが開いた。
「きゃー、やっぱりお姉様にはセクシー系がよく似合うわー」
香澄の声に顔を向けると、彼女の後ろにはいつの間に来ていたのか、兄と二条が佇んでいた。
二条は私の姿を呆然と嘗め、兄は眉間に皺を寄せる。
「……ッッ、香澄ちゃん、この服は……中等部の私には早いんじゃないかな?」
「なぁに言っているのお姉様、お姉様は身長も高くて、脚長くてきれいだし。出るとこはでて締まるところは締まる、女性のあこがれのスタイルなんだから、このぐらい見せないと!」
うぅ、気持ちはわからなくもないけど、やっぱり恥ずかしい……。
私は顔を真っ赤に頭を垂れると、いたたまれない気持ちに、もじもじと立ち尽くす。
「ほら、お兄様。ここでちゃんと言わないと~」
香澄は二条の腕を引っ張り試着室の前へ連れて来るが、それを遮るかのように兄が間に入った。
「彩華、とっても似合っているよ。でもこういう服はまだはやいね。ほら、早く着替えておいで」
やっぱりそうだよね。
私はコクコクと頷くと、逃げるように試着室のカーテンを閉めたのだった。
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試着室の外では
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「あぁもう、一条様邪魔をしないで下さい。お兄様もどうしてさっさと可愛いって言ってあげられないの?」
歩は香澄の言葉を無視すると、じっと試着室へ顔を向ける。
「いやいや、あれはダメだろう……キャパオーバー、綺麗すぎる……ッッ」
二条は顔を覆いその場で項垂れると、香澄は呆れるようにため息をついた。
そんな二人の様子に、歩はおもむろに振り返ると、香澄に冷たい視線を向ける。
「二条妹、彩華に悪影響を及ぼすのはやめてくれないか?」
「なぁによ、男の嫉妬は見苦しいわよ。一条様もお姉様に見惚れていたじゃない。それにお姉様にはさっきのダサい清楚系のワンピースより、小悪魔セクシー系の方が似合うのよ」
歩は深く息を吐くと、項垂れる二条の首根っこを掴み立ち上がらせる。
「いてっ、歩さん、ちょっ、痛いですって……ッッ」
「二条、妹をちゃんと躾けた方がいいんじゃないかな?お前でわからせてやろうか……?」
歩の言葉ににじょうは震えあがると、勘弁して下さいと何度も謝る。
そんな会話が繰り返されているとは知らない私は、せっせと元のワンピースへと着替えていた。
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その後ショッピングモールを4人で歩き、楽しいひと時を過ごしていると、あっという間に辺りは暗くなっていた。
二人と別れ車を呼び寄せようとする兄に、歩いて帰りましょうと提案すると、人通りが少なくなった静かな街並みを肩を並べて歩いていく。
ビルの隙間から差し込む夕日を見上げていると、今日一日のことを思い出した。
「楽しかったわね、お兄様」
兄はあぁと小さく笑うと、私は腕を兄の腕へからませる。
「またみんなで出かけたいわ。でもお兄様、こんなことは今日限りにしてね。今度は協力しないわ。だって相手に悪いもの、断るために偽の恋人を作るなんて……」
「あぁ、わかっているよ……」
兄の腕に捕まりながら歩いていると、ふと彼女の言葉が頭を過った。
(彼の一番にはなれない)
「ねぇ、お兄様……好きな人がいるの?今日あったお嬢様が言っていたわ」
兄は足を止めると、こちらへ顔を向けた。
向けられた瞳はひどく動揺している。
「どうしてそんな……ッッ、誰が好きなのかを聞いたのかい?」
私は首を横へ振ると、腕から離れ兄の前へと回り込んだ。
「いいえ、聞いていない。それよりも好きな人がいるならその人に頼んだ方が良いわ。こうやってお兄様と歩いている姿をもし見られたら、勘違いされてしまうわよ」
言い聞かせるように兄を見つめると、彼の瞳が静かに触れた。
「だから……」
続く言葉を待っていると、兄は唇を閉じ、そっと私から視線を逸らせる。
「わかった、次はそうしよう。じゃぁ、この話は終わり。彩華、もうすぐ暗くなる、早く帰ろう」
兄は私の手を取ると、ギュッと強く握りしめた。
彼が何を言いかけたのか、その言葉を聞こうと口を開くが、なぜかうまく言葉が出てこない。
そっと兄を見上げると、夕日が反射してはっきりと表情が見えなかった。
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