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中等部
入院生活:後編
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他愛無い話から話から始まり、彼について話を聞く。
どうも彼はずっと前からこの病院に入院しているのようだ。
何でも原因不明の難病らしく、時々発作が現れ病室から出してもらえないのだとか。
病気の治療法がまだ見つかっておらず、毎日一人っきりでつまらないと呟く。
「病室はもう飽きたんだ。他の子たちは外で遊べるのに、僕だけ許してもらえない。わかってるよ、僕が病気だから仕方がないって……。だけどね今日はとっても気分が良かったんだ。それで勝手に飛び出した。こうでもしないと外へ出られないもん……」
彼は悪い事をしていると自覚しているのだろう、どこかばつの悪そうな表情を浮かべ、足元に転がっていた石を軽く蹴った。
謎の病気で、突然発作が起こるのなら病室に居た方がいい。
だけどこのままだと可愛そうだわ、あっ、そうだ、
「ならこうしましょう、私が俊くんの病室へ遊びに行くわ。一緒に何かして遊びましょう!それならつまらなくないでしょう?」
「本当に?あやかお姉ちゃんいいの?」
俊はパァッと表情を明るくすると、満面の笑みでほほ笑んだ。
抱きしめたくなるような可愛さに、私も笑顔で返すと、彼の手を引き病室へと戻っていった。
病院内へ戻ると、なんと彼は私と同じ病棟。
この病棟は一般の病棟とは違い、お偉いさんというのはあれだけど……特別な病室。
ここに居るという事は、彼もどこかお金持ちの息子さんかな。
あぁさっき苗字も聞き返しておけばよかった。
そんな事を考えていると、俊くんは嬉しそうな様子で私の手を引っ張っていく。
一緒に病室へ入ると、そこは何もない殺風景な部屋だった。
お見舞いでよく見る果物や花、そういったものがなにもない。
不思議に思いながら部屋を見渡していると、俊くんは私の手を離し、ベッドへと飛び乗った。
人様の事情をあまり詮索するべきじゃないわね。
はしゃぐ彼の様子に微笑ましい気持ちになると、私はそっと彼のベッドわきに置いてある大きな椅子へと腰かけ、他愛のない話に花を咲かせた。
それから私は毎日彼の病室へと通っていた。
朝からリハビリに通い、お昼過ぎに会いに行く。
夕方兄がやってくる時間に病室へ戻るようにしていた。
そうして松葉づえなしで歩けるようところまで回復した頃。
松葉杖なしで彼の病室へ訪れると、俊くんは自分の事のように喜んでくれたのだった。
あんなある日、いつものように俊の部屋を訪れていた。
するとガラガラと病室の扉が開き、私は立ち上がる。
数週間この病室へ通っていたけれど、私以外の来客はない。
誰が来たのだろうと振り返ると、扉の前には中等部の屋上で見た、亮が佇んでいた。
「お兄ちゃん」
俊は元気のない様子でそう呟くと俯いた。
「どうして……彩華ちゃんがこんなところにいるの?」
亮の問いかけに俊は慌ててベッドから起き上がると、私を守るように腕へしがみついた。
「ごめんなさい、お兄ちゃん。あやかお姉ちゃんは僕の友達なんだ。だからお願いします」
いつもと違う憂いに満ちた俊君の様子に戸惑う。
兄が来て嬉しいのではなく、若干怯えている姿に、私はそっと彼を抱きしめる。
宥めるように頭をなでていると、彼は手まねきで私を病室の外へと呼び寄せた。
俊を落ち着かせ病室から出ると、すぐ前に亮の姿があった。
「でっ、どうして君がここにいるのかな?」
「……お友達の病室に、遊びに来ているだけ。何も悪いことはしていないわ」
責めるような目を真っすぐに見返すと、彼はなぜか深いため息をついた。
「はぁ……これが原因か……最近歩の機嫌が悪かったんだよね」
どういう意味?
問いかけようとする前に彼の言葉が重なった。
「君には悪いんだけど、もう弟に会いに来ないでくれないかな?」
「……どうして?」
なぜ彼にそんな事を言われなければいけないの?
スッと目を細め彼を見据えてみると、コロッと表情を変えアイドルばりの爽やかな笑顔を浮かべた。
「あー、ちゃんとした自己紹介がまだだったよね。僕は日華 亮、この病院の息子だよ。彩華ちゃんみたいな素敵な女の子が、僕に会いに来てくれるのなら大歓迎、だけど俊はダメだ。理由は言えないけど、この病院では大人しくしていてくれないかな?お転婆なお姫様」
「……ッッ」
異論は認めないそんな圧力をヒシヒシと感じる。
俊くんが日華家の次男だったなんて……。
日華家は一条家と並ぶ名家。
この病院が日華病院だと知っていたけれど、まさか……。
彼の家と下手にもめるわけにはいかない。
だけどこのままだと俊はまた一人になってしまう。
先ほど俊の悲しそうな表情が脳裏をかすめると、胸がギュッと痛んだ。
どうも彼はずっと前からこの病院に入院しているのようだ。
何でも原因不明の難病らしく、時々発作が現れ病室から出してもらえないのだとか。
病気の治療法がまだ見つかっておらず、毎日一人っきりでつまらないと呟く。
「病室はもう飽きたんだ。他の子たちは外で遊べるのに、僕だけ許してもらえない。わかってるよ、僕が病気だから仕方がないって……。だけどね今日はとっても気分が良かったんだ。それで勝手に飛び出した。こうでもしないと外へ出られないもん……」
彼は悪い事をしていると自覚しているのだろう、どこかばつの悪そうな表情を浮かべ、足元に転がっていた石を軽く蹴った。
謎の病気で、突然発作が起こるのなら病室に居た方がいい。
だけどこのままだと可愛そうだわ、あっ、そうだ、
「ならこうしましょう、私が俊くんの病室へ遊びに行くわ。一緒に何かして遊びましょう!それならつまらなくないでしょう?」
「本当に?あやかお姉ちゃんいいの?」
俊はパァッと表情を明るくすると、満面の笑みでほほ笑んだ。
抱きしめたくなるような可愛さに、私も笑顔で返すと、彼の手を引き病室へと戻っていった。
病院内へ戻ると、なんと彼は私と同じ病棟。
この病棟は一般の病棟とは違い、お偉いさんというのはあれだけど……特別な病室。
ここに居るという事は、彼もどこかお金持ちの息子さんかな。
あぁさっき苗字も聞き返しておけばよかった。
そんな事を考えていると、俊くんは嬉しそうな様子で私の手を引っ張っていく。
一緒に病室へ入ると、そこは何もない殺風景な部屋だった。
お見舞いでよく見る果物や花、そういったものがなにもない。
不思議に思いながら部屋を見渡していると、俊くんは私の手を離し、ベッドへと飛び乗った。
人様の事情をあまり詮索するべきじゃないわね。
はしゃぐ彼の様子に微笑ましい気持ちになると、私はそっと彼のベッドわきに置いてある大きな椅子へと腰かけ、他愛のない話に花を咲かせた。
それから私は毎日彼の病室へと通っていた。
朝からリハビリに通い、お昼過ぎに会いに行く。
夕方兄がやってくる時間に病室へ戻るようにしていた。
そうして松葉づえなしで歩けるようところまで回復した頃。
松葉杖なしで彼の病室へ訪れると、俊くんは自分の事のように喜んでくれたのだった。
あんなある日、いつものように俊の部屋を訪れていた。
するとガラガラと病室の扉が開き、私は立ち上がる。
数週間この病室へ通っていたけれど、私以外の来客はない。
誰が来たのだろうと振り返ると、扉の前には中等部の屋上で見た、亮が佇んでいた。
「お兄ちゃん」
俊は元気のない様子でそう呟くと俯いた。
「どうして……彩華ちゃんがこんなところにいるの?」
亮の問いかけに俊は慌ててベッドから起き上がると、私を守るように腕へしがみついた。
「ごめんなさい、お兄ちゃん。あやかお姉ちゃんは僕の友達なんだ。だからお願いします」
いつもと違う憂いに満ちた俊君の様子に戸惑う。
兄が来て嬉しいのではなく、若干怯えている姿に、私はそっと彼を抱きしめる。
宥めるように頭をなでていると、彼は手まねきで私を病室の外へと呼び寄せた。
俊を落ち着かせ病室から出ると、すぐ前に亮の姿があった。
「でっ、どうして君がここにいるのかな?」
「……お友達の病室に、遊びに来ているだけ。何も悪いことはしていないわ」
責めるような目を真っすぐに見返すと、彼はなぜか深いため息をついた。
「はぁ……これが原因か……最近歩の機嫌が悪かったんだよね」
どういう意味?
問いかけようとする前に彼の言葉が重なった。
「君には悪いんだけど、もう弟に会いに来ないでくれないかな?」
「……どうして?」
なぜ彼にそんな事を言われなければいけないの?
スッと目を細め彼を見据えてみると、コロッと表情を変えアイドルばりの爽やかな笑顔を浮かべた。
「あー、ちゃんとした自己紹介がまだだったよね。僕は日華 亮、この病院の息子だよ。彩華ちゃんみたいな素敵な女の子が、僕に会いに来てくれるのなら大歓迎、だけど俊はダメだ。理由は言えないけど、この病院では大人しくしていてくれないかな?お転婆なお姫様」
「……ッッ」
異論は認めないそんな圧力をヒシヒシと感じる。
俊くんが日華家の次男だったなんて……。
日華家は一条家と並ぶ名家。
この病院が日華病院だと知っていたけれど、まさか……。
彼の家と下手にもめるわけにはいかない。
だけどこのままだと俊はまた一人になってしまう。
先ほど俊の悲しそうな表情が脳裏をかすめると、胸がギュッと痛んだ。
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