33 / 169
中等部
香澄の入学式
しおりを挟む
髪を短く切った華僑君は、あの日以来女子の間で噂の的だった。
中性的な可愛いフェイス、ニッコリと笑う優しそうな笑顔が素敵。
瞬く間に二条と並ぶほどの人気となってしまった。
そんな二条と華僑二人が並ぶと、女子達の声援がすごい。
だけどそんな黄色い声援を気にした様子を見せない二人は、いつも私と一緒に過ごしていた。
月日はあっという間に流れ、私は中等部2年生へと進級した。
兄は中等部を卒業すると、乙女ゲームの舞台であるエイン学園へと進学していく。
エイン学園の制服を着た兄を見た瞬間、乙女ゲームのスチルにありそうな煌びやかな姿に私は確信した。
お兄様も攻略対象者で間違いないと。
巷の噂ではエイン学園へお兄様が入学する前に、ファンクラブ出来ているとかいないとか。
私はと言うと、進級後のクラス替えにより、二条と華僑と別々のクラスになってしまった。
二人は同じクラスで、さらに仲良くなった気がする。
クラスが変わったことで、三人で過ごす時間が減り、二人で楽しそうに話している姿を廊下で目にするようになった。
そんな二人に声をかけてみると、彼らは慌てた様子で会話を切り上げるの。
なんか疎外感半端ないよね。
まぁ……お年頃だし、男同士、女に出来ない話とかあるというのもわかってるけどね。
寂しさを感じながらも、彼らとクラスが別々になったことで、他の生徒達と話をする機会が増えた。
そこでわかった新事実……。
なんと生徒達の間で、私と二条の婚約が目前と噂されているようだった。
一度一条家が二条家の婚約を断った事実を皆知ってるはずなのに……。
そこに噂とは怖いもので、華僑家と言うスパイスが加わり三角関係、と根も葉もない噂が広がっているのだとか。
はぁ……まったく勘弁してほしい。
正直、二条と華僑以外の男子と話さない私にも理由があるのかもしれないけど。
でもね、私が男子生徒に話しかけると、顔を見るなり怯えた目をするんだもん、そんな態度を見せられて話せるはずがない。
私は新しい教室で一人、窓の外を見上げ真っ青な空に流れる雲を眺ていると、なぜか乙女ゲームの愛くるしいヒロインの顔が浮かび上がった。
はぁ……改めて思うけど、二条も華僑も間違いなく攻略対象者だよね。
なら高等部に進学すれば、きっと私の傍から離れていってしまう。
二条との婚約話があがった時、私は純粋に二条が好きな人と結ばれて欲しいとの気持ちで断ったが、今改めて考えてみると、どこかで恐れていたのかもしない。
もし彼と婚約して、私が彼を好きになってしまったら――――。
二人は私にとってかけがえのない大切な存在で。
友人だけど、想いはずっと大きくなっている。
そっと胸に手を当てると、ドクンと大きな鼓動に、胸の奥が苦しくなった。
好きとかそういうんじゃない……ただ傍に居ることが当たり前で。
だけど私の場所がヒロインに奪われてしまった場合、果たして私は冷静でいられるのだろうか?
クラスが離れただけでもこんなに寂しい気持ちになってしまうのに……。
そう考えると、こうしてクラスが離れてどこかほっとする自分がいた。
だってこれ以上彼らを思う気持ちが、大きくなってしまうのは怖いから。
私たちが二年に進級したことで、新しい一年生がやってくる。
今日は新入生を迎える為、全校生徒が広い講堂へと集まっていた。
そういえば、二条の妹、香澄ちゃんもこの学園にやってくるんだよね。
この機会に、なんとか仲良くなれないかなぁ。
私と彼女の仲は、あの頃からまったく進展していない。
時々二条の家にお邪魔するも、彼女は二条の傍にべったりで、私に視線を向けてくれることはなかった。
めげずに話しかけてみるんだけど、彼女は私を一瞥すると、プィッとそっぽを向いちゃうんだよね。
入学式が始まり、私は辺りを見渡していると、香澄の姿を見つけた。
その姿をじっと目で追っていると、彼女とパチリッと目があう。
私は微笑みを浮かべ手を振ってみるが、彼女は私を睨みつけると、いつもと同様にプイッと逸らされてしまった。
悲しい、だけどめげないんだからね……。
無事入学式が終わり各自教室へと戻る中、私も人込みに紛れるように歩いていると、突然腕を掴まれた。
おもむろに振り返ると、そこには二条妹が凄みを利かせこちらを見上げている。
「香澄ちゃん?えーと、入学おめでとう。どっ、どうしたのかな……?」
「私が来たからには、あなたの化けの皮を絶対剥がしてやるんだからね、覚えときなさいよ」
化けの皮……。
底冷えするような視線に、私は体をブルッと震わせると、彼女は満足げにほほ笑みを浮かべ、背を向けた。
うぅぅ、いったい何が始まるのよ……。
はぁ、乙女ゲームの世界に悪役で転生すると、こんなに大変なの……?
私は肩を落としその場で立ち尽くすと、人込みの隙間から見える香澄の姿をじっと眺めていた。
中性的な可愛いフェイス、ニッコリと笑う優しそうな笑顔が素敵。
瞬く間に二条と並ぶほどの人気となってしまった。
そんな二条と華僑二人が並ぶと、女子達の声援がすごい。
だけどそんな黄色い声援を気にした様子を見せない二人は、いつも私と一緒に過ごしていた。
月日はあっという間に流れ、私は中等部2年生へと進級した。
兄は中等部を卒業すると、乙女ゲームの舞台であるエイン学園へと進学していく。
エイン学園の制服を着た兄を見た瞬間、乙女ゲームのスチルにありそうな煌びやかな姿に私は確信した。
お兄様も攻略対象者で間違いないと。
巷の噂ではエイン学園へお兄様が入学する前に、ファンクラブ出来ているとかいないとか。
私はと言うと、進級後のクラス替えにより、二条と華僑と別々のクラスになってしまった。
二人は同じクラスで、さらに仲良くなった気がする。
クラスが変わったことで、三人で過ごす時間が減り、二人で楽しそうに話している姿を廊下で目にするようになった。
そんな二人に声をかけてみると、彼らは慌てた様子で会話を切り上げるの。
なんか疎外感半端ないよね。
まぁ……お年頃だし、男同士、女に出来ない話とかあるというのもわかってるけどね。
寂しさを感じながらも、彼らとクラスが別々になったことで、他の生徒達と話をする機会が増えた。
そこでわかった新事実……。
なんと生徒達の間で、私と二条の婚約が目前と噂されているようだった。
一度一条家が二条家の婚約を断った事実を皆知ってるはずなのに……。
そこに噂とは怖いもので、華僑家と言うスパイスが加わり三角関係、と根も葉もない噂が広がっているのだとか。
はぁ……まったく勘弁してほしい。
正直、二条と華僑以外の男子と話さない私にも理由があるのかもしれないけど。
でもね、私が男子生徒に話しかけると、顔を見るなり怯えた目をするんだもん、そんな態度を見せられて話せるはずがない。
私は新しい教室で一人、窓の外を見上げ真っ青な空に流れる雲を眺ていると、なぜか乙女ゲームの愛くるしいヒロインの顔が浮かび上がった。
はぁ……改めて思うけど、二条も華僑も間違いなく攻略対象者だよね。
なら高等部に進学すれば、きっと私の傍から離れていってしまう。
二条との婚約話があがった時、私は純粋に二条が好きな人と結ばれて欲しいとの気持ちで断ったが、今改めて考えてみると、どこかで恐れていたのかもしない。
もし彼と婚約して、私が彼を好きになってしまったら――――。
二人は私にとってかけがえのない大切な存在で。
友人だけど、想いはずっと大きくなっている。
そっと胸に手を当てると、ドクンと大きな鼓動に、胸の奥が苦しくなった。
好きとかそういうんじゃない……ただ傍に居ることが当たり前で。
だけど私の場所がヒロインに奪われてしまった場合、果たして私は冷静でいられるのだろうか?
クラスが離れただけでもこんなに寂しい気持ちになってしまうのに……。
そう考えると、こうしてクラスが離れてどこかほっとする自分がいた。
だってこれ以上彼らを思う気持ちが、大きくなってしまうのは怖いから。
私たちが二年に進級したことで、新しい一年生がやってくる。
今日は新入生を迎える為、全校生徒が広い講堂へと集まっていた。
そういえば、二条の妹、香澄ちゃんもこの学園にやってくるんだよね。
この機会に、なんとか仲良くなれないかなぁ。
私と彼女の仲は、あの頃からまったく進展していない。
時々二条の家にお邪魔するも、彼女は二条の傍にべったりで、私に視線を向けてくれることはなかった。
めげずに話しかけてみるんだけど、彼女は私を一瞥すると、プィッとそっぽを向いちゃうんだよね。
入学式が始まり、私は辺りを見渡していると、香澄の姿を見つけた。
その姿をじっと目で追っていると、彼女とパチリッと目があう。
私は微笑みを浮かべ手を振ってみるが、彼女は私を睨みつけると、いつもと同様にプイッと逸らされてしまった。
悲しい、だけどめげないんだからね……。
無事入学式が終わり各自教室へと戻る中、私も人込みに紛れるように歩いていると、突然腕を掴まれた。
おもむろに振り返ると、そこには二条妹が凄みを利かせこちらを見上げている。
「香澄ちゃん?えーと、入学おめでとう。どっ、どうしたのかな……?」
「私が来たからには、あなたの化けの皮を絶対剥がしてやるんだからね、覚えときなさいよ」
化けの皮……。
底冷えするような視線に、私は体をブルッと震わせると、彼女は満足げにほほ笑みを浮かべ、背を向けた。
うぅぅ、いったい何が始まるのよ……。
はぁ、乙女ゲームの世界に悪役で転生すると、こんなに大変なの……?
私は肩を落としその場で立ち尽くすと、人込みの隙間から見える香澄の姿をじっと眺めていた。
0
お気に入りに追加
832
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?
ぽんぽこ狸
恋愛
仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。
彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。
その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。
混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!
原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!
ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。
完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!
ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。
え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!!
それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる