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真相ルート
5手探りの中(ザック視点)
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太陽が高々と上がる頃に俺はアレクの元へと訪れた。
しかしトントントンと何度も扉を叩くが、中から返事はない。
「またか……」
俺はぼそりと呟くと、おもむろに扉をあける。
カギはもちろんかかっていない。
まったく不用心すぎる……。
アレクの元を訪れて数か月、こいつはかなり怠惰な性格で、飯を食べることも忘れる奴だからな、カギなんてかけるはずがない。
呆れながら俺は小さく息を吐き出すと、いつものように勢いよく扉を開け放つ。
昨日片付けたばかりの部屋はまた魔道具が散らばり、そこに埋もれながら眠るアレクの姿が目に映った。
はぁ……こいつまた夜通し魔道具作りに夢中になっていたんだろう。
魔道具を避けながらアレクの元へ向かい、肩へそっとブランケットをかける。
全く世話のかかるやつだ。
俺はスヤスヤと気持ちよさそうに眠るアレクを覗き込むと、頬にかかる黒い髪をそっと持ち上げた。
その先に白く細い首筋が目に映る。
こいつ……本当に女みたいだな。
華奢な体に中世的で整った顔立ち、真っ赤な唇、滑らかな肌。
男にも女にもモテそうだ。
まぁ……だが女って事はないだろう……。
もしこいつが女だったら、最初に出会った時、普通に俺と話ができるはずがない。
俺はそっとアレクから体を離し、机の上に置かれたままの空になったバスケットを手に取る。
その隣に作りかけただろう魔道具が目に映った。
これほどの魔道具を作れるのなら、きっとアレクは母国でも重宝されていただろう。
ならなぜこの国へ来たのだろうか?
最初はそれを暴くためにこいつに近づいた。
だが過ごしてわかったことは、只の研究馬鹿で、超のつくほどのめんどくさがりで、悪だくみなど考えているようには思えない。
最初に出会った頃、こいつは旅人だと言ったが……旅人にしては荷物が少なすぎる上、街へ入るとローブ深くかぶり、人目をとても気にしていた。
ここへ宿泊してからも、外へ出ることを嫌がり……いやこれは面倒だからかもしれないが。
まぁ、何かから隠れているのは間違いないだろう。
一応アレクついて色々調べてみたが、有力情報は未だ得られていない。
あまりない珍しい黒髪に、漆黒の瞳、目立つ顔立ち。
それにこれだけ魔道具に精通しているんだ、すぐに見つけられると思ったんだがな。
会話の中から探ろうと試みたが、アレクは自分の事をあまり話したがらない。
それも怪しいんだよな。
何かあるんだろうが……あまり探りを入れ、警戒されては元もこもない。
だが一つわかったことがある。
時々出る仕草や、言葉遣いを見る限り、アレクは貴族で間違いないだろう。
幼い頃から教え込まれたのだろう洗練された動きは、体に染みついている。
嘘も下手で、隣国のスパイというわけではなさそうだし、一体何者なんだ?
まぁそれは追々調べていくとして、こいつと過ごす時間はなかなか楽しい。
こいつの不思議な雰囲気に、魔道具の高度な技術。
それに普飯を食べ忘れるほど、研究に没頭するなんて馬鹿すぎてみていて面白い。
最初の頃、宿屋の婆さんに聞いた時は呆れてものも言えなくなったがな。
掃除も自分できない、湯あみをするついでに服を洗っているようだが、ちゃんと干していないのだろう、いつもこいつの服はよれよれだ。
俺は一人口角を上げると、バスケットを片手に扉へと足を向ける。
するとふとアレクの方から、何かボソボソと囁く声が耳に届いた。
俺は徐に振り返り、近づいていくと、そっと顔を近づける。
閉じられた瞳には涙が浮かび、アレクは苦しそうな様子でうわ言を言った。
「待って、待ってくれ、行かないでくれ……」
苦しそうなその声に、俺はアレクの頭をそっと撫でてみると、表情が少しずつ緩んでいった。
暫くそうしていると、アレクは安らかな寝顔に戻り、気持ちよさそうに寝息を立て始める。
そして俺は静かにアレクの部屋を出ると、そっと扉を閉めた。
次来れるのは、明後日だな。
これだけ調べてもわからないところみると、アレクは本名ではないのだろう。
まぁ俺も本当の名を教えていないがな。
「なぁお前は何者なんだ?どうしてこの国にきた?」
俺は夕暮れに染まる空を見上げると、そう問いかけた。
しかしトントントンと何度も扉を叩くが、中から返事はない。
「またか……」
俺はぼそりと呟くと、おもむろに扉をあける。
カギはもちろんかかっていない。
まったく不用心すぎる……。
アレクの元を訪れて数か月、こいつはかなり怠惰な性格で、飯を食べることも忘れる奴だからな、カギなんてかけるはずがない。
呆れながら俺は小さく息を吐き出すと、いつものように勢いよく扉を開け放つ。
昨日片付けたばかりの部屋はまた魔道具が散らばり、そこに埋もれながら眠るアレクの姿が目に映った。
はぁ……こいつまた夜通し魔道具作りに夢中になっていたんだろう。
魔道具を避けながらアレクの元へ向かい、肩へそっとブランケットをかける。
全く世話のかかるやつだ。
俺はスヤスヤと気持ちよさそうに眠るアレクを覗き込むと、頬にかかる黒い髪をそっと持ち上げた。
その先に白く細い首筋が目に映る。
こいつ……本当に女みたいだな。
華奢な体に中世的で整った顔立ち、真っ赤な唇、滑らかな肌。
男にも女にもモテそうだ。
まぁ……だが女って事はないだろう……。
もしこいつが女だったら、最初に出会った時、普通に俺と話ができるはずがない。
俺はそっとアレクから体を離し、机の上に置かれたままの空になったバスケットを手に取る。
その隣に作りかけただろう魔道具が目に映った。
これほどの魔道具を作れるのなら、きっとアレクは母国でも重宝されていただろう。
ならなぜこの国へ来たのだろうか?
最初はそれを暴くためにこいつに近づいた。
だが過ごしてわかったことは、只の研究馬鹿で、超のつくほどのめんどくさがりで、悪だくみなど考えているようには思えない。
最初に出会った頃、こいつは旅人だと言ったが……旅人にしては荷物が少なすぎる上、街へ入るとローブ深くかぶり、人目をとても気にしていた。
ここへ宿泊してからも、外へ出ることを嫌がり……いやこれは面倒だからかもしれないが。
まぁ、何かから隠れているのは間違いないだろう。
一応アレクついて色々調べてみたが、有力情報は未だ得られていない。
あまりない珍しい黒髪に、漆黒の瞳、目立つ顔立ち。
それにこれだけ魔道具に精通しているんだ、すぐに見つけられると思ったんだがな。
会話の中から探ろうと試みたが、アレクは自分の事をあまり話したがらない。
それも怪しいんだよな。
何かあるんだろうが……あまり探りを入れ、警戒されては元もこもない。
だが一つわかったことがある。
時々出る仕草や、言葉遣いを見る限り、アレクは貴族で間違いないだろう。
幼い頃から教え込まれたのだろう洗練された動きは、体に染みついている。
嘘も下手で、隣国のスパイというわけではなさそうだし、一体何者なんだ?
まぁそれは追々調べていくとして、こいつと過ごす時間はなかなか楽しい。
こいつの不思議な雰囲気に、魔道具の高度な技術。
それに普飯を食べ忘れるほど、研究に没頭するなんて馬鹿すぎてみていて面白い。
最初の頃、宿屋の婆さんに聞いた時は呆れてものも言えなくなったがな。
掃除も自分できない、湯あみをするついでに服を洗っているようだが、ちゃんと干していないのだろう、いつもこいつの服はよれよれだ。
俺は一人口角を上げると、バスケットを片手に扉へと足を向ける。
するとふとアレクの方から、何かボソボソと囁く声が耳に届いた。
俺は徐に振り返り、近づいていくと、そっと顔を近づける。
閉じられた瞳には涙が浮かび、アレクは苦しそうな様子でうわ言を言った。
「待って、待ってくれ、行かないでくれ……」
苦しそうなその声に、俺はアレクの頭をそっと撫でてみると、表情が少しずつ緩んでいった。
暫くそうしていると、アレクは安らかな寝顔に戻り、気持ちよさそうに寝息を立て始める。
そして俺は静かにアレクの部屋を出ると、そっと扉を閉めた。
次来れるのは、明後日だな。
これだけ調べてもわからないところみると、アレクは本名ではないのだろう。
まぁ俺も本当の名を教えていないがな。
「なぁお前は何者なんだ?どうしてこの国にきた?」
俺は夕暮れに染まる空を見上げると、そう問いかけた。
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