[R18] 引きこもり令嬢が先生になりました。

あみにあ

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真相ルート

2微睡の中で

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あの不思議な妖精との出会い後記憶があまりなく、次に目覚めた時はお屋敷の中だった。
どうやら突然いなくなった私を、屋敷の者を呼び寄せ、森の中を捜索していたらしい。
なかなか見つからず諦めかけていたその時、花畑の前に私が現れたそうだ。
皆の心配をよそに、私はスヤスヤと深く眠っていて、そんな私を屋敷へ連れ帰ったようだった。

そんな一件からか、私は母に屋敷を出ることを禁じられた。
危険だからだと……。
今まで街へ出ると知らない男の人に話しかけられ、連れて行かれそうになったりはよくあったが……その度に妖精たちが助けてくれた。
そう必死に母へ訴えかけても、母が納得するはずもなく……私は屋敷に閉じこもることになった。

一人部屋の中、何もすることのないつまらない生活。
外に出たい思い抱きながら、ずっと窓から外の世界を眺めていた。

そんな時あの森の中で出会った、美しい妖精が私の前に現れた。

「久しぶりね、アレックス」

「うわぁ!!!シュワルちゃん!」

「シュワル……まぁいいわ。私は今日あなたに用があってきたの。その呪い解いてあげるわ」

呪い?
よくわからない言葉に私は首を傾げて見せると、妖精は妖麗な笑みを浮かべた。

「まだ幼いあなたにはわからないでしょう。……でもあなたの魔力量は大人になるにつれて増えていくわ。そうね……500年ほど前に私がかけた呪いの様に……。あの女みたいに一生外へ出れなくなるかもしれないわ。もう長い年月がたったから、血が薄れ、力が弱まってきていたから放っておいたんだけど、あなたのその魔力の量を見る限り、大変な事になりそうね……」

「うーん、なんかよくわからないけど、どうすればいいの?」

「ふふふ、あなたは只、その有り余る魔力を私に吸収させればいいのよ。そうね……今巷で流行っているこの魔道具をあなたにあげるわ。魔道具は人間が自分自身で魔力を使う事が出来なくなった時代に作られた、魔法を使う為の媒体よ。その中にある鉱石に自分の魔力を吸い込ませ、組み合わせることによって、魔法を発動できるの。人間は面白いわよね……ふふふ」

妖精は私に小さな箱を差し出すと、ニッコリ笑みを浮かべた。

「この魔道具で遊んでいなさい。そうすれば魔力は徐々に減っていくわよ」

シュワルの話は難しくてわからない。
だけど目の前に見せられた新しいおもちゃに目を輝かせ、私は深く頷いた。

それから私は魔道具に、のめり込んでいった。
摩訶不思議で便利な魔道具。
自分ではできなかった事が、これを使えばなんだってできる。
背の届かない物をとったり、出歩けなかった外の世界を見ることができる。
そんな私の様子に妖精は魔道具の本も持ってきてくれた。
唯一の外出は王宮へ赴く事。
王宮には大きな樹木があって、そこからシュワルの声を聴くことができたのは大きな発見だった。

それからも私は用がなければ部屋から一歩も外に出ず、毎日毎日魔道具を作りつづけた。
魔道具を触るのはとても面白い。
妖精は魔法に詳しいから色々教えてもらい、それを組み合わせて新しい魔道具作り出した。
時々メイドや母や姉に邪魔されることもあるけど……。
貴族令嬢に必要なマナーの勉強や、ダンスの練習、それをしっかりこなせれば、だんだん邪魔することもなくなった。

そうして気がつけば私は12歳になっていた。
魔力は幾分薄れたようで、今まではっきりと見えていた妖精の姿が見えなくなっていた。
シュワルの姿もそうだ……彼女の姿はもう見えない。
でも声はいつも届いていた。

そんなある日夜、満月が浮かぶ深夜に、シュワルは私の部屋へとやってきた。

「ねぇ、アレックス。もうそろそろ私の役目は終わりの様だわ。あなたの魔力を全をなくすことは出来なかったけど、きっとこれであなたの子供にはもう受け継がれない。だから最後に私の話を聞いて欲しいの」

耳元で響く透き通る声に私は深く頷くと、魔道具作りから手を離し、耳をそばだてた。

「実はね、この国で良く知られる花の妖精は私なの。でも……あの童話の様に幸せでは終われなかった。私は嫉妬にかられ、あなたの先祖と王子を呪ったわ」

私は彼女の震える声に、何もない場所へそっと手を伸ばした。

「あの日……王子と別れてから300年、私は森へ引きこもっていたわ。でもその間もずっと人間を見ていた。人間は本当に面白い。私のせいで魔法を使えなくなると、すぐに別の物に代用した。次第に魔力が薄れた人間たちは、妖精の姿が見えなくなると、私は人間の世界を渡り歩いた。そうして200年がすぎ、人間とはどういうものなのかが、わかってきたの」

妖精はそこで言葉をとめると、耳元に小さな風を感じた。

「彼を思う気持ちは一生なくならない。……でも何も知らない短い時を過ごすあなたが、私の呪いで苦しむのは、間違っているのだと気が付いたわ。だからねあなたの魔力を吸収して助けようと思ったわ。そこでふと愛する王子の先祖のことを考えたの。彼もまた終わらない呪いを受けている。だから王子を探してみたんだけれど、見つけることは出来なかったわ。だけど一つ探していない場所があるの。あの砂漠の向こうにある街、彼の先祖はきっとそこにいる。でも妖精に砂漠を渡る力はないわ。だって妖精は森がないと生きていけないですもの。だからね、もしあなたが砂漠の向こうにある街へ行くことがあったら、王子の呪いを解いてあげてほしい。今日はその力を渡しに来たの」

そっと目を開けると、私の前に小さな光が現れた。
炎のように真っ赤に光る玉は、私の胸元の前にやってくると、そのまま中へと入っていく。

「人間には人間の柵があると分かっているわ。別に無理にお願いするわけじゃないの。あなたはあなたの人生を全うしてほしいから。そうねぇ……あなたに愛する人が出来れば、この約束は忘れなさい」

妖精の言葉に私は深く頷くと、胸に入ったポカポカと温かい光の玉を感じた。

「ふふふ、私はもうすぐ花に戻るわ。長く生きすぎて疲れちゃった。だからあなたとこうやって話すのも最後」

別れの言葉に、瞳から自然と涙があふれ出すと、震える唇を必死に堪え口を開いた。

「わかった……約束する……でもその王子はどうやって見つけ出せばいいの?」

「うーん、そうね……見目は私にもわからない。もう500年もたっているもの。でもね、会えばわかると思うの。魔力を感じればすぐに」

魔力を感じる……、なんてハードな……。
私はうんうんと頭を悩ませる中、妖精の声が耳元で響いた。

「あぁ、そうそう呪いの解き方なんだけどね……」

その言葉を聞いた瞬間、先ほどの景色が消え、焼けるような暑さに私は座り込む。
暑い、暑い……どうしたの……。
額から汗が流れ、来ていたドレスは汗で湿っていく。
灼熱の炎に焼かれるような暑さに、ひどく喉が渇いていと、私は傍に蹲った。
助けて……誰か……水を……。
魘される中、妖精の姿は消えていた。
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