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真相ルート
序章 花の妖精の真実
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大変お待たせいたしまして、申し訳ございませんm(__)m
Twitterにて読者様より有難いお声を頂き、真相ルートを投稿致しました。
もう暫くお付き合い頂ければ嬉しいです(*'ω'*)
ご意見ご感想等いただければ嬉しいです!
それではお楽しみ下さい。
――――――――――――――――――――――――――――――
これはまだ魔法が身近にあった昔のお話。
鬱蒼と広がる森の中に妖精たちがおりました。
妖精たちは人間を嫌い、ひっそりと暮らしています。
そんな妖精の中、ひときわ美しく、魔力溢れる妖精が誕生しました。
彼女は森に咲く美しい花から生まれたので、花の妖精と名づけられました。
そんな花の妖精は長く透き通るような漆黒の髪に黒い瞳を宿していました。
妖精の世界では黒とは美しさの象徴でした。
そんな花の妖精は好奇心旺盛で他の妖精たちとは違い、人間に興味を持ち始めました。
ある日森の中で一人の人間の少年を見つけました。
彼女は興味津々で遠くから少年をじっと眺めています。
少年は何か棒のような物を振り回し、汗を流していました。
次の日も同じ場所へ向かうと、また少年がいました。
いつしか森へ頻繁にやって来るその一人の人間の子供を、遠くから眺める事が日課となっていきました。
周りの妖精たちはそんな花の妖精に、何度も人間に近づいてはいけないよ!あいつらは非道で残酷だ!と言い聞かせましがまったく聞く耳を持ちません。
そんなある日、毎日現れる少年の姿に衝動的に少年と話をしてみたくなりました。
彼女の強い意志は彼女の魔力に作用し見よう見まねでしたが黒髪の美しい人間の姿になることができました。
こうなってしまえば花の妖精を止められるものはいません。
妖精達は困った様子で美しい花の妖精を遠くから眺めていました。
「ねぇ、あなたはいつも何をしているの?」
突然話しかけられ、驚きを見せる少年に花の妖精はニッコリと笑いかけました。
「君は……?」
「私は花の妖精、ここに住んでいるの」
少年は呆けた表情を見せると、顔を赤くし俯きました。
「僕はここで剣の訓練をしているんだ」
「剣?それはなぁに?」
花の妖精は初めて人間との会話にはしゃいでいました。
あっという間に日がくれ、少年は帰る時間となります。
「また来てね!」
妖精は笑顔で少年を見送ると、人間界へ戻る背中をずっと見つめていました。
それから月日は流れ、少年と花の妖精は何度も何度も逢瀬を重ねました。
次第に二人にはひかれあい、愛し合うようになりました。
でも花の妖精は自分の本来の姿を彼には見せていませんでした。
彼は花の妖精だと名乗る彼女の事を人間だと思っていたのです。
もし妖精だと言えば、彼は気味悪がって離れていくかもしれません。
花の妖精は彼に嫌われるのが怖くて怖くて、ずっと人間の振りをして彼と過ごしていました。
声変わりもしていなかった少年は青年となり、次第に逞しい男の人になっていきました。
そんなある日
「ねぇ、森を出て……僕と結婚してくれないか?」
結婚との言葉に心が躍りましたが、人間と妖精が結婚できるはずがありません。
人間は人間と、妖精は妖精と子をなすのが当たり前だったのです。
花の妖精は暗い表情を見せると、
「ごめんなさい、……私はそちら側には行くことができないの」
「どうして?」
すると花の妖精は人間の姿を消し、妖精の姿に戻りました。
「ごめんなさい、ごめんなさい、私は人間じゃないの……」
その言葉に彼は驚いた様子を見せましたが、すぐにいつもの笑顔に戻ると、妖精の姿になった私を優しく包み込みました。
「君が何者でも構わないんだ、僕は君を愛しているから」
花の妖精はまた人間の姿になると、彼と熱い口づけを交わしました。
翌日いつものように彼を待っていると、森に別の人間がやってきました。
その人間は花の妖精の前に現れると、冷たい目で彼女を睨みつけました。
「彼はもう来ないわ、彼はあなたといることよりも王になることを選んだのだから」
「王?」
「えぇ、彼はこの国の王様になったの。だからあなたとは一緒に居られない、わかるでしょう」
花の妖精は彼と会えない事に涙を流しました。
まわりの妖精たちから、ほら人間なんてものと関わるからこんなことになるんだ!あいつらは嘘つきで、自分たちの事しか考えない最低な生き物なんだと。
花の妖精は悲しくて悲しくて毎日泣きました。
住む世界が違っても、花の妖精は王を愛し続けています。
もう来てくれない彼を……愚かだとわかっていながらも忘れることはできません。
どれぐらい泣き続けたでしょうか、花の妖精は今日も彼と出会った場所にいました。
彼の優しい仕草、彼のはにかんだ笑顔が昨日の事のように思い出されます。
呆然とその場で立ち尽くしていると、森が騒がしくなりました。
どうしたのかと思い飛び回る妖精たちに話を聞くと、武装した多くの人間が森に侵入してきたと言いました。
妖精達は慌てた様子でチリチリに逃げていきます。
森が騒然とする中、花の妖精は動くことができませんでした。
人間たちが彼女を見つけると、鋭く光る剣を構えました。
彼がいないのなら……このまま……。
そう思い覚悟を決めじっと立ち尽くしていると、彼らを薙ぎ払い一人の男が近づいてきました。
「ごめんな、遅くなって。君を迎えに来たんだ」
そう呟いた声は聴きなれた彼の声でした。
花の妖精は瞳に涙を浮かべながら、彼に抱きつきました。
突然の王の登場に周りの騎士たちは驚きを隠せません。
王は彼女を強く抱きしめました。
「すまない、僕は彼女と居ることを選ぶよ」
そういうと、花の妖精を抱えたまま森の奥へ奥へ逃げ延びた二人は、人里からも森からも離れた土地で幸せに暮らしましたとさ……めでたし、めでたし
…………花の妖精は幸せになったと誰もが思ったでしょう。
好きな人と一緒に添い遂げる、それは何よりも幸せな事。
唯一つ誤算だったのは、二人が違う種族だという事……。
二人は文字通り逃げました。
王子に手を引かれ、妖精もまたそれを望んでいた。
二人は森を抜け、追手から逃げ延びると新しい地へと到着しました。
「ねぇ、君に僕が新しい名前を付けていいかな? 花の妖精だと呼びにくいから、清純で華麗なる美 それに君のその美しい漆黒の黒髪をイメージして……シュワルツワルダーはどうだろう、僕の一番好きな花の名前なんだ」
「嬉しい!!ありがとう!!!私はシュワルツワルダー」
そうして二人は仲睦まじい様子で、新しい生活が始まりました。
しかし人間と妖精では考え方の違いがありました。
妖精はとても嫉妬深く、彼女達の世界では、一度パートナーを決めると、その後は異性の妖精とは話すことも触れることもない、好きな人以外に愛想を振りまくこともない。
心変わりすることはなく、パートナーをずっと……愛し続けるのです。
逆に人間はというと、パートナーを見つけたとしても、心変わりすることもあります。
一人の人間を愛し続ける確約はありません。
加えて人間は、集団生活の中を生き抜くため、他人に気を配り、その集団の中馴染もうと努力します。
王子もまた同じ……新しい地で、生活しやすいよう周りに気を配っていきます。
だからそんな王子の様子に妖精はいつも苛立っておりました。
しかし王子も隣人に挨拶すらしない妖精に、不信感を抱いていました。
ある日王子は妖精に尋ねました。
「どうして君は……人間と話をしないんだい?人間が嫌いだから?」
「違うわ。私は……妖精の世界ではパートナーを決めると異性と話すことはないの。それが当たり前だから。それに愛する人以外に愛想なんて振りまかないわ」
「そうだったのか……でもここで暮らしていくには、もう少し愛想よくしないと、住みづらくなってしまうよ……僕は君とずっとここで生活を共にしたいんだ」
王子の言葉に妖精は口を閉ざすと、不承不承に頷きました。
小さなわだかまりを抱えたまま、妖精は王子の希望に応えようと、愛想よく努力しました。
その努力を王子はとても喜んでくれましたが、妖精の中ではモヤモヤした気持ちが残りつづけます。
それでも王子を愛しているから、優しい王子が自分を想ってくれていると信じているからこそ頑張れました。
そんなある日、土砂降りの雨が降り始めました。
妖精は王子が忘れた傘を片手に急いで家を出ると、王子の働いている場所へ走っていきます。
そんな中、妖精は見てしまったのです。
王子が柔らかい表情を浮かべ、傘を片手に女性と肩を並べて歩く姿を……。
妖精はその姿を呆然と眺める中、頬から涙が零れ落ちます。
そのまま妖精は、王子に傘を渡すことなく踵を返しました。
それから妖精は王子を疑うようになりました。
「どうして女性に傘を借りたりするの?……私は……他の女があなたの傍に居るなんて許せない」
そう言葉にすると王子は困った表情を浮かべ、只傘を借りただけなんだと説明します。
妖精はそんな王子に苛立つ中、二人の関係は益々ギクシャクし始めました。
数日後、妖精は街へ買い物に出ておりました。
そこでまた、王子と並ぶ様に歩くあの女の姿を見つけたのです。
信じられない思いで二人を見つめる中、突然王子が彼女を優しく抱き留めました。
王子は柔らかな笑みを浮かべ、女は顔を赤らめ照れる。
そんな二人の様子に、我慢ならなくなった妖精は二人の間に割り込むと、強く彼らを睨みつけます。
「どうしてあなたは……私以外の女と一緒にいるのよ!!!どうして裏切ったの……?信じていたのに……、どうして、どうして、どうして!!!!!!!」
「いや、待ってくれ。今のは違う!!彼女がよろけて……」
女性は恐る恐る私に視線を向ける中、そんな彼女を守るようにして立つ王子に、妖精の怒りは爆発しました。
「そんな言葉いらないわ!私が居るのに……そんなにその女と一緒に居たいの?もういいわ……私は絶対に許さないから……あなたの事……。私の最後の力を使って、あなたに呪いをかけてあげる……」
そう妖精が呟くと、王子の周りに魔法の光が飛んでいきます。
魔法の光は王子の胸の中へ入りこむと、王子は膝をつき地面に項垂れました。
そんな彼の様子に、立っていた女性が悲鳴を上げました。
「きゃぁぁぁぁぁっ!!!」
女の悲鳴に妖精はスッと目を細めると、煩く叫ぶ女の声を魔法で封じました。
「あなたにも同じ呪いをかけてあげる。人の物を横取りした罰よ……未来永劫解けない呪いを」
妖精はそう呟くと女性にも光の玉を飛ばしました。
「さようなら……愛しい人……」
蹲る二人を余所に妖精はボソっとそう呟くと、消えるようにその場を去っていきました。
そうして妖精は……遠い遠い森へ行きました。
全ての魔力を使い切った妖精は、呪いを強める為、人間から魔法を使う事を奪い、自分の魔力として吸収し始めました。
吸収した魔力で妖精はまた新たな魔法を唱えます。
二人の呪いが解けてしまわぬようにと……。
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これはまだ魔法が身近にあった昔のお話。
鬱蒼と広がる森の中に妖精たちがおりました。
妖精たちは人間を嫌い、ひっそりと暮らしています。
そんな妖精の中、ひときわ美しく、魔力溢れる妖精が誕生しました。
彼女は森に咲く美しい花から生まれたので、花の妖精と名づけられました。
そんな花の妖精は長く透き通るような漆黒の髪に黒い瞳を宿していました。
妖精の世界では黒とは美しさの象徴でした。
そんな花の妖精は好奇心旺盛で他の妖精たちとは違い、人間に興味を持ち始めました。
ある日森の中で一人の人間の少年を見つけました。
彼女は興味津々で遠くから少年をじっと眺めています。
少年は何か棒のような物を振り回し、汗を流していました。
次の日も同じ場所へ向かうと、また少年がいました。
いつしか森へ頻繁にやって来るその一人の人間の子供を、遠くから眺める事が日課となっていきました。
周りの妖精たちはそんな花の妖精に、何度も人間に近づいてはいけないよ!あいつらは非道で残酷だ!と言い聞かせましがまったく聞く耳を持ちません。
そんなある日、毎日現れる少年の姿に衝動的に少年と話をしてみたくなりました。
彼女の強い意志は彼女の魔力に作用し見よう見まねでしたが黒髪の美しい人間の姿になることができました。
こうなってしまえば花の妖精を止められるものはいません。
妖精達は困った様子で美しい花の妖精を遠くから眺めていました。
「ねぇ、あなたはいつも何をしているの?」
突然話しかけられ、驚きを見せる少年に花の妖精はニッコリと笑いかけました。
「君は……?」
「私は花の妖精、ここに住んでいるの」
少年は呆けた表情を見せると、顔を赤くし俯きました。
「僕はここで剣の訓練をしているんだ」
「剣?それはなぁに?」
花の妖精は初めて人間との会話にはしゃいでいました。
あっという間に日がくれ、少年は帰る時間となります。
「また来てね!」
妖精は笑顔で少年を見送ると、人間界へ戻る背中をずっと見つめていました。
それから月日は流れ、少年と花の妖精は何度も何度も逢瀬を重ねました。
次第に二人にはひかれあい、愛し合うようになりました。
でも花の妖精は自分の本来の姿を彼には見せていませんでした。
彼は花の妖精だと名乗る彼女の事を人間だと思っていたのです。
もし妖精だと言えば、彼は気味悪がって離れていくかもしれません。
花の妖精は彼に嫌われるのが怖くて怖くて、ずっと人間の振りをして彼と過ごしていました。
声変わりもしていなかった少年は青年となり、次第に逞しい男の人になっていきました。
そんなある日
「ねぇ、森を出て……僕と結婚してくれないか?」
結婚との言葉に心が躍りましたが、人間と妖精が結婚できるはずがありません。
人間は人間と、妖精は妖精と子をなすのが当たり前だったのです。
花の妖精は暗い表情を見せると、
「ごめんなさい、……私はそちら側には行くことができないの」
「どうして?」
すると花の妖精は人間の姿を消し、妖精の姿に戻りました。
「ごめんなさい、ごめんなさい、私は人間じゃないの……」
その言葉に彼は驚いた様子を見せましたが、すぐにいつもの笑顔に戻ると、妖精の姿になった私を優しく包み込みました。
「君が何者でも構わないんだ、僕は君を愛しているから」
花の妖精はまた人間の姿になると、彼と熱い口づけを交わしました。
翌日いつものように彼を待っていると、森に別の人間がやってきました。
その人間は花の妖精の前に現れると、冷たい目で彼女を睨みつけました。
「彼はもう来ないわ、彼はあなたといることよりも王になることを選んだのだから」
「王?」
「えぇ、彼はこの国の王様になったの。だからあなたとは一緒に居られない、わかるでしょう」
花の妖精は彼と会えない事に涙を流しました。
まわりの妖精たちから、ほら人間なんてものと関わるからこんなことになるんだ!あいつらは嘘つきで、自分たちの事しか考えない最低な生き物なんだと。
花の妖精は悲しくて悲しくて毎日泣きました。
住む世界が違っても、花の妖精は王を愛し続けています。
もう来てくれない彼を……愚かだとわかっていながらも忘れることはできません。
どれぐらい泣き続けたでしょうか、花の妖精は今日も彼と出会った場所にいました。
彼の優しい仕草、彼のはにかんだ笑顔が昨日の事のように思い出されます。
呆然とその場で立ち尽くしていると、森が騒がしくなりました。
どうしたのかと思い飛び回る妖精たちに話を聞くと、武装した多くの人間が森に侵入してきたと言いました。
妖精達は慌てた様子でチリチリに逃げていきます。
森が騒然とする中、花の妖精は動くことができませんでした。
人間たちが彼女を見つけると、鋭く光る剣を構えました。
彼がいないのなら……このまま……。
そう思い覚悟を決めじっと立ち尽くしていると、彼らを薙ぎ払い一人の男が近づいてきました。
「ごめんな、遅くなって。君を迎えに来たんだ」
そう呟いた声は聴きなれた彼の声でした。
花の妖精は瞳に涙を浮かべながら、彼に抱きつきました。
突然の王の登場に周りの騎士たちは驚きを隠せません。
王は彼女を強く抱きしめました。
「すまない、僕は彼女と居ることを選ぶよ」
そういうと、花の妖精を抱えたまま森の奥へ奥へ逃げ延びた二人は、人里からも森からも離れた土地で幸せに暮らしましたとさ……めでたし、めでたし
…………花の妖精は幸せになったと誰もが思ったでしょう。
好きな人と一緒に添い遂げる、それは何よりも幸せな事。
唯一つ誤算だったのは、二人が違う種族だという事……。
二人は文字通り逃げました。
王子に手を引かれ、妖精もまたそれを望んでいた。
二人は森を抜け、追手から逃げ延びると新しい地へと到着しました。
「ねぇ、君に僕が新しい名前を付けていいかな? 花の妖精だと呼びにくいから、清純で華麗なる美 それに君のその美しい漆黒の黒髪をイメージして……シュワルツワルダーはどうだろう、僕の一番好きな花の名前なんだ」
「嬉しい!!ありがとう!!!私はシュワルツワルダー」
そうして二人は仲睦まじい様子で、新しい生活が始まりました。
しかし人間と妖精では考え方の違いがありました。
妖精はとても嫉妬深く、彼女達の世界では、一度パートナーを決めると、その後は異性の妖精とは話すことも触れることもない、好きな人以外に愛想を振りまくこともない。
心変わりすることはなく、パートナーをずっと……愛し続けるのです。
逆に人間はというと、パートナーを見つけたとしても、心変わりすることもあります。
一人の人間を愛し続ける確約はありません。
加えて人間は、集団生活の中を生き抜くため、他人に気を配り、その集団の中馴染もうと努力します。
王子もまた同じ……新しい地で、生活しやすいよう周りに気を配っていきます。
だからそんな王子の様子に妖精はいつも苛立っておりました。
しかし王子も隣人に挨拶すらしない妖精に、不信感を抱いていました。
ある日王子は妖精に尋ねました。
「どうして君は……人間と話をしないんだい?人間が嫌いだから?」
「違うわ。私は……妖精の世界ではパートナーを決めると異性と話すことはないの。それが当たり前だから。それに愛する人以外に愛想なんて振りまかないわ」
「そうだったのか……でもここで暮らしていくには、もう少し愛想よくしないと、住みづらくなってしまうよ……僕は君とずっとここで生活を共にしたいんだ」
王子の言葉に妖精は口を閉ざすと、不承不承に頷きました。
小さなわだかまりを抱えたまま、妖精は王子の希望に応えようと、愛想よく努力しました。
その努力を王子はとても喜んでくれましたが、妖精の中ではモヤモヤした気持ちが残りつづけます。
それでも王子を愛しているから、優しい王子が自分を想ってくれていると信じているからこそ頑張れました。
そんなある日、土砂降りの雨が降り始めました。
妖精は王子が忘れた傘を片手に急いで家を出ると、王子の働いている場所へ走っていきます。
そんな中、妖精は見てしまったのです。
王子が柔らかい表情を浮かべ、傘を片手に女性と肩を並べて歩く姿を……。
妖精はその姿を呆然と眺める中、頬から涙が零れ落ちます。
そのまま妖精は、王子に傘を渡すことなく踵を返しました。
それから妖精は王子を疑うようになりました。
「どうして女性に傘を借りたりするの?……私は……他の女があなたの傍に居るなんて許せない」
そう言葉にすると王子は困った表情を浮かべ、只傘を借りただけなんだと説明します。
妖精はそんな王子に苛立つ中、二人の関係は益々ギクシャクし始めました。
数日後、妖精は街へ買い物に出ておりました。
そこでまた、王子と並ぶ様に歩くあの女の姿を見つけたのです。
信じられない思いで二人を見つめる中、突然王子が彼女を優しく抱き留めました。
王子は柔らかな笑みを浮かべ、女は顔を赤らめ照れる。
そんな二人の様子に、我慢ならなくなった妖精は二人の間に割り込むと、強く彼らを睨みつけます。
「どうしてあなたは……私以外の女と一緒にいるのよ!!!どうして裏切ったの……?信じていたのに……、どうして、どうして、どうして!!!!!!!」
「いや、待ってくれ。今のは違う!!彼女がよろけて……」
女性は恐る恐る私に視線を向ける中、そんな彼女を守るようにして立つ王子に、妖精の怒りは爆発しました。
「そんな言葉いらないわ!私が居るのに……そんなにその女と一緒に居たいの?もういいわ……私は絶対に許さないから……あなたの事……。私の最後の力を使って、あなたに呪いをかけてあげる……」
そう妖精が呟くと、王子の周りに魔法の光が飛んでいきます。
魔法の光は王子の胸の中へ入りこむと、王子は膝をつき地面に項垂れました。
そんな彼の様子に、立っていた女性が悲鳴を上げました。
「きゃぁぁぁぁぁっ!!!」
女の悲鳴に妖精はスッと目を細めると、煩く叫ぶ女の声を魔法で封じました。
「あなたにも同じ呪いをかけてあげる。人の物を横取りした罰よ……未来永劫解けない呪いを」
妖精はそう呟くと女性にも光の玉を飛ばしました。
「さようなら……愛しい人……」
蹲る二人を余所に妖精はボソっとそう呟くと、消えるようにその場を去っていきました。
そうして妖精は……遠い遠い森へ行きました。
全ての魔力を使い切った妖精は、呪いを強める為、人間から魔法を使う事を奪い、自分の魔力として吸収し始めました。
吸収した魔力で妖精はまた新たな魔法を唱えます。
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