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31閑話:逃げられた二人(エリック視点)
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また逃げられた。
でもどうして彼女は、あれほどまでに婚約を嫌がるのだろうか。
以前婚約の話をしたときは、親に決められた婚約よりも、気の合う人を婚約したいと話していたし。
そりゃあ無理やり事を進めてしまったことは反省しているけど……。
さっきの様子を見る限り、彼女はとても分かりやすいから、自惚れではなく、まだ俺を気に入ってくれているはず。
はぁ……こんなときどうすればいいんだ?
今まで婚約してくれとすり寄られたことはあれど、逃げられたことなんて一度もない。
深く息を吐き出しながらチラッとウィリアムへ視線を向けると、彼女が出て行った扉をじっと見つめている。
追うわけでもなく、だけどどこか悲しそうに揺れる瞳は、今までこいつと一緒に居て、初めて見た姿かもしれない。
それほどまでに、彼女の事は本気なのだろうと伝わってくる。
だが、譲るつもりはない。
「なぁ、ウィリアム。彼女の事を諦めてくれない?」
「それはこちらの台詞ですよ」
即答だな、まぁそう応えるとはわかっていたけど。
……こいつがライバルとか、本当ハードル高すぎ。
俺よりも女経験もあるし、何といっても大人だ。
俺は先生よりも年下で……。
彼女が俺の事を弟のように接しているのは気が付いていた。
男としては見られていない、だから夜会の翌日平然としていたんだろう。
そこからどうにか抜け出したくて、食事に誘ってみたけど、断られたんだよな。
それなのにウィリアムとは食事に行くとか……マジで嫉妬でどうにかなりそうだった。
なんで俺じゃないんだ。
あいつよりも俺の方が先生の傍に居たじゃないか。
それに彼女は教師と生徒だからと、そんなくだらない理由で……。
俺が生徒じゃなかったら、応えてくれたのか?
あぁ思い出すだけでむかつく。
でもあいつは俺と違って、生徒と教師、そんな理由で断られることはない。
ウィリアムはあいつと歳も近いし、余裕もあって……。
なのに俺は余裕もなく、脅かすだけだった彼女に……。
そう改めて気が付くと、自分の不甲斐なさに拳を強く握りしめた。
・
・
・
昨日二人が去った後、俺は居ても立っても居られなくなって、ウィリアムと先生の後をつけたんだ。
彼女はウィリアム好みのドレスを身に着けて、美しい令嬢姿に着飾っていた。
そんな二人の並んだ姿はお似合いで、俺は真っすぐに見る事が出来なかったんだ。
そのままウィリアムと彼女は貴族の間で評判良いの高級レストランへと入って行った。
俺も続けて中へ入ろうとするが、予約制だと追い払われてしまう。
だけどここで帰る事なんて出来なくて。
バカみたいに、レストランの外で二人を待っていたら、先生が涙をながしながら飛び出してきたんだ。
彼女はなぜか裸足で、顔を赤く火照らせ、ドレスが不自然に乱れていた。
そんな彼女を見れば、誰だって何かあったのだろうとはすぐにわかる。
なんで泣いてたの?
なんでドレスが乱れてたの?
ねぇ……二人で何をしていたの?
だけど彼女は答えなかった。
あいつが何をしたのかわからない。
だけど想像するだけで、苛立ちと嫉妬で、胸の奥からどす黒い感情が込み上げてくる。
そんな身勝手な嫉妬心と独占欲で、無理矢理先生を襲った事は理解している。
罪悪感はあるけど、これでウィリアムと同じ土俵で勝負できるよな。
「明日、絶対にウィリアムより先に先生を捕まえないと」
そう独りごちると、俺はウィリアムの横をすり抜け保健室を後にした。
でもどうして彼女は、あれほどまでに婚約を嫌がるのだろうか。
以前婚約の話をしたときは、親に決められた婚約よりも、気の合う人を婚約したいと話していたし。
そりゃあ無理やり事を進めてしまったことは反省しているけど……。
さっきの様子を見る限り、彼女はとても分かりやすいから、自惚れではなく、まだ俺を気に入ってくれているはず。
はぁ……こんなときどうすればいいんだ?
今まで婚約してくれとすり寄られたことはあれど、逃げられたことなんて一度もない。
深く息を吐き出しながらチラッとウィリアムへ視線を向けると、彼女が出て行った扉をじっと見つめている。
追うわけでもなく、だけどどこか悲しそうに揺れる瞳は、今までこいつと一緒に居て、初めて見た姿かもしれない。
それほどまでに、彼女の事は本気なのだろうと伝わってくる。
だが、譲るつもりはない。
「なぁ、ウィリアム。彼女の事を諦めてくれない?」
「それはこちらの台詞ですよ」
即答だな、まぁそう応えるとはわかっていたけど。
……こいつがライバルとか、本当ハードル高すぎ。
俺よりも女経験もあるし、何といっても大人だ。
俺は先生よりも年下で……。
彼女が俺の事を弟のように接しているのは気が付いていた。
男としては見られていない、だから夜会の翌日平然としていたんだろう。
そこからどうにか抜け出したくて、食事に誘ってみたけど、断られたんだよな。
それなのにウィリアムとは食事に行くとか……マジで嫉妬でどうにかなりそうだった。
なんで俺じゃないんだ。
あいつよりも俺の方が先生の傍に居たじゃないか。
それに彼女は教師と生徒だからと、そんなくだらない理由で……。
俺が生徒じゃなかったら、応えてくれたのか?
あぁ思い出すだけでむかつく。
でもあいつは俺と違って、生徒と教師、そんな理由で断られることはない。
ウィリアムはあいつと歳も近いし、余裕もあって……。
なのに俺は余裕もなく、脅かすだけだった彼女に……。
そう改めて気が付くと、自分の不甲斐なさに拳を強く握りしめた。
・
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昨日二人が去った後、俺は居ても立っても居られなくなって、ウィリアムと先生の後をつけたんだ。
彼女はウィリアム好みのドレスを身に着けて、美しい令嬢姿に着飾っていた。
そんな二人の並んだ姿はお似合いで、俺は真っすぐに見る事が出来なかったんだ。
そのままウィリアムと彼女は貴族の間で評判良いの高級レストランへと入って行った。
俺も続けて中へ入ろうとするが、予約制だと追い払われてしまう。
だけどここで帰る事なんて出来なくて。
バカみたいに、レストランの外で二人を待っていたら、先生が涙をながしながら飛び出してきたんだ。
彼女はなぜか裸足で、顔を赤く火照らせ、ドレスが不自然に乱れていた。
そんな彼女を見れば、誰だって何かあったのだろうとはすぐにわかる。
なんで泣いてたの?
なんでドレスが乱れてたの?
ねぇ……二人で何をしていたの?
だけど彼女は答えなかった。
あいつが何をしたのかわからない。
だけど想像するだけで、苛立ちと嫉妬で、胸の奥からどす黒い感情が込み上げてくる。
そんな身勝手な嫉妬心と独占欲で、無理矢理先生を襲った事は理解している。
罪悪感はあるけど、これでウィリアムと同じ土俵で勝負できるよな。
「明日、絶対にウィリアムより先に先生を捕まえないと」
そう独りごちると、俺はウィリアムの横をすり抜け保健室を後にした。
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