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気になるかと言われれば気になるわ。
だけどブローチの件といい、すぐに違うと証明できない物的証拠を用意しているところを見ると、用意周到とみて間違いない。
大公爵家の力を使って調べなおしたとして、一週間は必要じゃないかしら。
きっと彼女もそれはわかっているはず。
捨て身の作戦……ということは一週間以内で、何かしようとしている。
一週間で出来る事なんてあったかしら……?
寵愛を得て豪遊?
あの王子は金を自由に動かせない。
何か必要であれば、側近の許可が必要だし、彼の様子を見るにそれを許すはずもない。
なら王子を暗殺?
いえ、彼を暗殺する理由がないわ。
どんな話でも真に受け親身になる彼が、恨まれているとは思えない。
権力を振りかざす傲慢さもないしね。
権力をうまく使えないだけかもしれないけれど。
う~ん、そうね……カモにされているならわかるんだけれど。
カモなら殺す必要がないわ。
とうことは……。
「近々何か催し物はあったかしら?」
「えっ、ちょっ、一大イベントがあるじゃないですか!王子の誕生祭ですよ!」
あっ、そうだったわね……。
四日後王子の誕生祭、興味が薄すぎて失念していたわ。
もちろん私も王子と共に参加するはずだったけれど、婚約破棄を言い渡された手前参加は出来ない。
ということは彼女は王子を使って誕生祭に参加しようとしているのかしら?
男爵家が誕生祭に参加なんて出来ない。
誰かの招待状がないとね……。
それが目的だとしても何を狙っているのかしら?
様々な貴族たちが集まる大きなパーティーになる。
参加者の中に目的の人物がいるのかしらね……?
なんにしても彼女の正体を探らないと答えは出なさそうね。
「……仕方がないわね、調べるわよ。とりあえず彼女の情報はあるのかしら?」
彼は待ってましたと言わんばかりに封筒を取り出すと、こちらへと差し出した。
王子の為ではないわ。
あそこまでして何が目的なのか気になるだけ。
害がなさそうなら知っても放っておくつもりよ。
まぁそれは言わないけれど……。
封筒から書類を取り出すと、目を通していく。
男爵家の長女で名はカーラ。
王都から離れた辺境の地の領主の娘ようね。
さすがに侯爵家、公爵家なら顔と名前は記憶しているけれど、それより下になると覚えていられないわ。
似顔絵はない、だけど年齢や特徴はさっきの女に一致している。
だけど果たして男爵家の令嬢がここまで出来るのかしら……?
実際に確認させたいところだけれど、辺境の地まで馬を走らせても一週間はかかるわ。
その頃にはあの女はいないでしょうし。
しょうがないわね、別の線であたってみようかしら。
「彼女の似顔絵を用意して下さる。後辺境の地へ一人向かわせて、カーラが本物なのか確認して」
「えっ、確認するのに一週間はかかっちゃいますけどいいんですか?」
私はニッコリと笑みを浮かべると、早く行きなさいと追っ払った。
屋敷へ戻ると、ラフな服装に着替え、カーラの似顔絵を手に家を出た。
繁華街から外れスラム街へやってくると、まだ開店していない酒屋の裏口へと回る。
ノックを5回鳴らすとガチャと鍵が開いた。
「何のようだ、フィー」
中へ入ると、不機嫌そうな表情した亭主の姿。
名はチャック、表向きは酒屋、けれど裏では優秀な情報屋として有名だ。
「あら、そんな顔しないで。情報を買いにきたのよ」
「あんたが関わるといつも碌なことがないんだが……。はぁ、まぁいい、用件は?」
私はスッと似顔絵を取り出すと、カウンターに上げられた椅子を下ろし腰かける。
「この女のこと何か知らないかしら?」
マスターは似顔絵を持ち上げると、一瞬表情が曇った。
「いや、この女がどうかしたのか?」
「私の仕事の邪魔をしにきているのよね。だから追っ払いたいの」
チャックは口を閉じると、開店準備を進めようとする。
「知っていることを教えてほしいの。それとも口止めされているの?」
作業へ戻ろうとする彼の腕を掴むと、こちらへ顔を向けさせる。
「チッ、詳しいことは知らねぇが、数か月前にここに来た。隣国のやつと親し気に話をしていただけだ。内容は聞いてねぇよ」
隣国……益々怪しいわね。
カーラの情報を見る限り隣国と仲良くしているとは思えない。
それに普通のお嬢様がこんな場所へ来ること自体おかしい。
「ふーん、その隣国の方を紹介してくれない?」
「おい、無茶ぶりはよせ。相手はこっちの世界で有名な盗賊団だ。隣国を本拠地として世界中で盗み強奪している。こんな小さな酒屋の亭主がどうこう出来る相手じゃねぇ」
盗賊団……それなら彼らに依頼して私の屋敷に侵入したのかしら?
手口が気になるわね、今後の警備強化に役立てたいところね。
「なら、彼らを良く知る相手でもいいわ。お願いよ」
強請るように腕を引っ張ると、チャックは呆れた様子でため息をついた。
「はぁ……わかったよ。紹介料高くつくぞ」
私は金貨10枚を取り出すと、一枚の紙を受け取った。
だけどブローチの件といい、すぐに違うと証明できない物的証拠を用意しているところを見ると、用意周到とみて間違いない。
大公爵家の力を使って調べなおしたとして、一週間は必要じゃないかしら。
きっと彼女もそれはわかっているはず。
捨て身の作戦……ということは一週間以内で、何かしようとしている。
一週間で出来る事なんてあったかしら……?
寵愛を得て豪遊?
あの王子は金を自由に動かせない。
何か必要であれば、側近の許可が必要だし、彼の様子を見るにそれを許すはずもない。
なら王子を暗殺?
いえ、彼を暗殺する理由がないわ。
どんな話でも真に受け親身になる彼が、恨まれているとは思えない。
権力を振りかざす傲慢さもないしね。
権力をうまく使えないだけかもしれないけれど。
う~ん、そうね……カモにされているならわかるんだけれど。
カモなら殺す必要がないわ。
とうことは……。
「近々何か催し物はあったかしら?」
「えっ、ちょっ、一大イベントがあるじゃないですか!王子の誕生祭ですよ!」
あっ、そうだったわね……。
四日後王子の誕生祭、興味が薄すぎて失念していたわ。
もちろん私も王子と共に参加するはずだったけれど、婚約破棄を言い渡された手前参加は出来ない。
ということは彼女は王子を使って誕生祭に参加しようとしているのかしら?
男爵家が誕生祭に参加なんて出来ない。
誰かの招待状がないとね……。
それが目的だとしても何を狙っているのかしら?
様々な貴族たちが集まる大きなパーティーになる。
参加者の中に目的の人物がいるのかしらね……?
なんにしても彼女の正体を探らないと答えは出なさそうね。
「……仕方がないわね、調べるわよ。とりあえず彼女の情報はあるのかしら?」
彼は待ってましたと言わんばかりに封筒を取り出すと、こちらへと差し出した。
王子の為ではないわ。
あそこまでして何が目的なのか気になるだけ。
害がなさそうなら知っても放っておくつもりよ。
まぁそれは言わないけれど……。
封筒から書類を取り出すと、目を通していく。
男爵家の長女で名はカーラ。
王都から離れた辺境の地の領主の娘ようね。
さすがに侯爵家、公爵家なら顔と名前は記憶しているけれど、それより下になると覚えていられないわ。
似顔絵はない、だけど年齢や特徴はさっきの女に一致している。
だけど果たして男爵家の令嬢がここまで出来るのかしら……?
実際に確認させたいところだけれど、辺境の地まで馬を走らせても一週間はかかるわ。
その頃にはあの女はいないでしょうし。
しょうがないわね、別の線であたってみようかしら。
「彼女の似顔絵を用意して下さる。後辺境の地へ一人向かわせて、カーラが本物なのか確認して」
「えっ、確認するのに一週間はかかっちゃいますけどいいんですか?」
私はニッコリと笑みを浮かべると、早く行きなさいと追っ払った。
屋敷へ戻ると、ラフな服装に着替え、カーラの似顔絵を手に家を出た。
繁華街から外れスラム街へやってくると、まだ開店していない酒屋の裏口へと回る。
ノックを5回鳴らすとガチャと鍵が開いた。
「何のようだ、フィー」
中へ入ると、不機嫌そうな表情した亭主の姿。
名はチャック、表向きは酒屋、けれど裏では優秀な情報屋として有名だ。
「あら、そんな顔しないで。情報を買いにきたのよ」
「あんたが関わるといつも碌なことがないんだが……。はぁ、まぁいい、用件は?」
私はスッと似顔絵を取り出すと、カウンターに上げられた椅子を下ろし腰かける。
「この女のこと何か知らないかしら?」
マスターは似顔絵を持ち上げると、一瞬表情が曇った。
「いや、この女がどうかしたのか?」
「私の仕事の邪魔をしにきているのよね。だから追っ払いたいの」
チャックは口を閉じると、開店準備を進めようとする。
「知っていることを教えてほしいの。それとも口止めされているの?」
作業へ戻ろうとする彼の腕を掴むと、こちらへ顔を向けさせる。
「チッ、詳しいことは知らねぇが、数か月前にここに来た。隣国のやつと親し気に話をしていただけだ。内容は聞いてねぇよ」
隣国……益々怪しいわね。
カーラの情報を見る限り隣国と仲良くしているとは思えない。
それに普通のお嬢様がこんな場所へ来ること自体おかしい。
「ふーん、その隣国の方を紹介してくれない?」
「おい、無茶ぶりはよせ。相手はこっちの世界で有名な盗賊団だ。隣国を本拠地として世界中で盗み強奪している。こんな小さな酒屋の亭主がどうこう出来る相手じゃねぇ」
盗賊団……それなら彼らに依頼して私の屋敷に侵入したのかしら?
手口が気になるわね、今後の警備強化に役立てたいところね。
「なら、彼らを良く知る相手でもいいわ。お願いよ」
強請るように腕を引っ張ると、チャックは呆れた様子でため息をついた。
「はぁ……わかったよ。紹介料高くつくぞ」
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