悪役令嬢はお断りです

あみにあ

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おまけ

第一弾:ノア王子

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結局ノア王子との話はうやむやのまま終わり、慌ただしい日々が始まった。
私は異世界の住人として認められ、リリーが居た場所に戻れるよう配慮された。
牢屋の中で、もう二度と彼らと共に歩んでいけないと思っていたけれど、としてまた仲間達と剣を交えられる事実が本当に嬉しい。

それに漫画みたいな展開で、自分で言ってはなんだけれども、逆ハーレム状態。
本当に信じられない。
だけどそれは紛れもない事実で……。
あぁ、本当にどうしよう……。

この世界で結婚しようとか、婚約したいとか考えたことなかった。
ノア王子を救うことで頭がいっぱいだったから。
それにしてもノア王子が私を……。
考えるだけ頭が沸騰しそうになる。
ずっとずっと憧れで、私のヒーローで……ヒロインと結ばれる彼の幸せを願っていた。

怪我も完治し、私は訓練場で一人木刀を持ち構えながら、素振りに励んでいた。
リリーの体ではない今の私に剣術を馴染ませるため。
集中しようと思っても、ふとした瞬間、ノア王子の姿が脳裏をかすめる。
甘い笑みに、唇にかかった熱い吐息。
あーもうダメダメ、鍛錬に集中しないと。

私は振りかけた木刀を握りなおすと、雑念を振り払う。
このままでは頑張ってきた騎士学園を卒業できない。
せっかく祐佳として戻ってこられたのに……。
無心、無心にならないと。
私は深く息を吸い込み集中しようとするが、結局雑念は振り払えなかった。

そして翌朝。

「うーん」

頬に触れる手の温もりに目覚めると、眠気眼を擦る。
誰かいる……またエドウィンが忍び込んできたのかな。
私はおもむろに寝返りを打つと、その手を捕まえた。

「エドウィン……何度も言ってるでしょう、勝手に部屋に入っちゃダメだって……むにゃむにゃ」

「へぇ……おはよう、ユカ。それはどういう意味かな?」

エドウィンではない声に、ハッと目を開けると飛び起きた。
視界には青い瞳。
スッとその瞳が細められ、冷たい笑みが映し出される。

「えっ!?へぇっ!?どっ、どうしてノア王子が!!?」

驚きすぎて彼を見たままに固まっていると、ようやく頭がはっきりとしてくる。
そうだ……リリーが宿舎を出て行ったことで、城で生活することになったんだった……。
非常にまずいことを口走ってしまった気がする……。
私は苦笑いを浮かべると、誤魔化す様に笑って見せた。

「ねぇユカ、どういうことかな?」

「あっ、いえ、その……何といえばいいのか……」

怒りの混じる声色に、額から冷汗が流れ、思わず目を逸らせる。
そんな私の姿に、ノア王子は深く息を吐きだすと手をおもむろに重ねた。

「はぁ……君たちが仲がいいことは知っているし、何もないということもわかっている。だけどね、どれだけ大人になろうとしても……こればっかりは抑えられない。とりあえず城で生活させて、正解だったかな」

己に言い聞かせるように呟く声に恐る恐る見上げると、彼はいつもの笑みに戻っていた。
私はほっと肩をなでおろすと、目線を下げる。

「すみません……その……」

「いいよ、わかってる。彼らは僕よりも君と過ごした時間が長いのも承知している。とりあえず今は、それを塗り替えるところから始めようかな。もう遠慮はしないよ」

「それってどういう……」

首を傾げ言葉を続けようとすると、ノア王子がおもむろに立ち上がった。

「そうそう、朝食の準備ができたんだ。一緒に食べよう」

私は伸ばされた手を反射的に掴むと、ベッドから立ち上がった。

彼の言った言葉の意味を理解したのはその後。
彼は暇があれば、私に会いにくるようになった。
昔訓練場へ来ていた時と同じ。
私をこれでもかというほどじっと見つめてくるその視線に、全く集中できない。
一度苦言を言いに行ってみたけれど、こんなことで集中できないようなら、騎士は務まらないよと諫められてしまった。

訓練中はもちろん、朝目覚めたときも、寝る前も。
一輪の花を持って会いに来ると、甘い言葉と軽いスキンシップ。
触れる手に毎度毎度意識させられ、沸騰するほどに頬が熱くなる。
今までとは全く違う積極的な彼の行動に、私はとうとう耐え切れなくなってしまった。

触れる温もりに、最初の頃よりも高鳴っておかしくなりそう。
青い瞳に自分の姿が映ると、冷静ではいられない。
自分でもコントロールできない感情に、私は朝王子が来る前に目覚め、早朝に部屋から抜け出す。
夜も彼に会わないように、遅くに戻ってそのままベッドへ入った。
訓練場でも彼を見ないように、なるべく遠くに離れる日々。

あからさまな態度。
トレーシーの時に反省したはずだが……こればかりはどうしようもない。
最近の彼は何だかキラキラして見えて、まともに会話すらできそうにないのだから。

今日も訓練を終えノア王子から逃げ出す。
宿舎に身を隠し、夜が更けた頃に部屋へ戻ろうすると、城の廊下でばったりノア王子と出会ってしまった。

「うわっ、あー、サイモン教官に呼ばれているので、すみません!」

彼から視線を逸らせ赤くなる頬を必死に隠す。
回れ右で走り去ろうとする前に、後ろから声が響いた。

「待って、逃げないで、ユカ」

そういわれても体が勝手に動き始める。
私は彼の言葉を無視すると、来た道を走った。

追いかけてくる足音が聞こえる。
次第に大きくなる足音に、私は咄嗟に近くにあった扉を開けると、中へダイブした。
すぐに扉を閉めようとするが、その前にノア王子の靴が割り込んでくる。
何とか追い出そうと、力を入れてドアを引っ張るが、男の力に叶うはずもなく、扉がこじ開けられた。

私は慌てて扉から飛びのき、部屋の奥へと逃げると、体を縮こませ身を守る。
真後ろに彼の気配を感じると、私はしゃがみ込み壁へしがみついた。

「あの、すみません。えーと、その……」

「はぁ、はぁ、はぁ……もう逃がさないからね」

ノア王子は捕まえたと、そっと後ろから私を抱きしめると、肩に額を押し付ける。

「さすがに露骨な反応は傷つくんだけど……。全力で逃げ出すほど、嫌だった?」

呟かれた言葉に、私は慌てて首を横へ振る。

「ちっ、違います!あの、嫌とかそういうんじゃなくて……。その、感情がコントロールできなくて……どうしたらいいのかわからないんです。ノア王子に触れられると、胸がドキドキしすぎて、まともに顔も……。こうやって触れられてるだけでも、どうにかなりそうなんです!だから、その……うぅぅ……ッッ」

私はてんぱりながらも必死で想いを伝えると、抱きしめる腕が強くなった。
体中の血が沸騰しそうになっていると、背中から彼の激しい鼓動が伝わってくる。

「はぁ……何それ可愛すぎ……。あぁもう~~~~ッッ」

ノア王子はギュッと抱きしめると、耳元に吐息がかかった。

「毎度毎度君は……想定外なことばっかりするんだから。こっちは必死に我慢してるんだけど。そんなこと言われたら我慢できなくなる、騎士学園を卒業するまで待つはずだったんだけどね……」

ノア王子はグッと腕に力を入れると、私の肩を引き寄せる。
彼の胸の中に閉じ込められると、ドクドクと高鳴る鼓動がはっきりと耳に届く。
私の鼓動なのか、彼の鼓動なのか、どちらかわからない。

彼は私の頬を両手で挟むと、そっと持ち上げる。
そのまま彼の瞳が近づいてくると、柔らかい唇が触れた。
触れるだけの軽い口づけ、すぐに彼の唇が離れていく。
ニコッと可愛らしく笑った彼の姿に、私はキャパシティを超えると、そのまま後ろへひっくり返った。

「ちょっと、ユカ大丈夫?」

ずっと憧れていた彼とキスする日がくるなんて。
もうダメ、頭が爆発した。
心配するノア王子の声が耳に届くが、私は両手で顔を覆うと、そのまま目を閉じたのだった。
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感想 85

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みんなの感想(85件)

san+
2021.05.20 san+

お疲れ様でした!本編完結おめでとうございます!
最初の頃の予想を遥かに裏切る怒濤の展開、
すごく楽しかったです!
元の体に戻った時はえっ!?どうなっちゃうの!?
っとドキドキで、皆ハッピーエンドを迎えられて良かったです。

3度目の転生のリリーちゃんもチャンスがもらえてホッとしていました。頑張って幸せをつかんで欲しいです。

番外編も王子がグイグイしてて、がんばれ!と思いながらキュンキュン、ニヨニヨしていました٩(ˊᗜˋ*)و

他の番外編ももしあれば楽しみにしています。
楽しい長編ありがとうございました!

2021.05.24 あみにあ

san+ 様

コメントありがとうございます!
お読み頂けて嬉しいです(*'ω'*)

お忙しい中、表紙を書いて頂き本当にありがとうございました!
san+様のイラストに見合う内容になったのかどうか不安でしたが……楽しんで頂けてほっといたしました(*ノωノ)


また別の作品でもお会いできるよう、これからも頑張ります!
ぜひまた表紙をお願いしたいです!!!

解除
ファレノプシス

番外編💕楽しみにしていました😊
ユカとの恋愛モードにキュン♪
ノア王子 可愛いなぁ🥰
ハーレムなユカちゃん 心臓持つかしら💖

2021.05.06 あみにあ

ラフレシア 様

コメントありがとうございます!
また読んで頂けて嬉しいです(*˙︶˙*)☆*°
今回はノア掃除でしたが、次回はピーター予定です!
最後の方になりますが、サイモン教官も書きたいとおもってます!
また楽しんで頂けるよう、これからも頑張ります🤗

解除
ファレノプシス

㊗️本編完結❗️毎日の楽しみが😭
寂しいですが 毎日楽しかったです。
ユカは孤独の中唯一信じていた母の裏切りで自身を殺し
リリーは信頼し応援していた友から裏切りから断罪され
転生逆行した世界で幸せを探すユカと復讐へと向かうリリー
に毎日今後どうなるのかとドキドキしました。
リリーは3度目へ リリー大丈夫かな、、多分大丈夫
マズイ!ここで本編完結Σ(・□・)妄想暴走モードへ( ̄∇ ̄)
鼻持ちならないお貴族のまま サイモン教官を跪かして好きだと
言わせてみたい欲しい願望が沸々😁作者さまと答え合わせてが出来ないので妄想暴走中です笑
サイモン教官とダニエル士官のやり取り中々見られないので
楽しかったです🍀ピーターが上官になったら ダニエル士官っぽいかもって思ってしまいました😊
ユカの日常も相変わらず賑やかで前世より楽しい日常で良かったです♪

ガブリエルのシリアスな章で教祖が誰なのか!な時も
もういっそのことサイモン教官が教祖なら檻に入れて
一生牢番出来るかもと妄想する私は
自分が思うより 変態デス(´-`).。oO

番外編 新作があればと心より楽しみしています💕
長編作完結まで楽しませて頂きありがとうございました💖

2021.04.04 あみにあ

ラフレシア 様

いつもコメントありがとうございました!
寂しいと言っていただけて、嬉しいです(*ノωノ)

妄想爆発嬉しいです!
私も+おまけでは妄想爆発させて書きたいシーンをもりもりにしております(笑)
サイモン教官ももちろんございますよ!
最初はぽっとでのわき役位置のサイモンでしたが、書いていたこれはいいと、新しい扉を開かせていただきました~!

また別の作品でお会いできるよう、これからも頑張っていきます!

最後に長編となりましたが、お読みいただきありがとうございました!

解除

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