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最終章
リリーと私 (其の二)
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隙間から廊下の様子を窺うと、騎士の制服に身を包んだリリーの背中が目に映る。
来るのか不安だったが、上手く彼女をここへ誘い出せたようだ。
私が袖を通していたその服。
こうして改めて見ると、高身長でスタイルの良いリリーにとてもよく似合っていた。
しかしダークブルーの長い髪は縛らず垂れたまま。
腰に刺さった剣を振れば、髪が邪魔をして振り切ることは出来ないだろう。
「はぁ……誰もいないじゃない。こんなところにいるはずないのよ。あぁ、全く面倒だわ……どうして私が……ぶつぶつ」
不満げな様子でダラダラと足を進める彼女。
私は体を横にし隙間からそっと外へ出ると、彼女の足音に合わせ忍び足で近づいていく。
「適当な部屋を見つけて、さっさと休みましょう」
ボソッと呟いた彼女の背後を取ると、剣先を背中へ向ける。
「動かないで、騒がないで。妙な動きをみせれば殺すわ」
彼女はピタッと止まると緊張が走る。
チラッとこちらを見たかと思うと、すぐに視線を戻した。
動向を注視しながら柄を握る手を強めると、彼女は背筋を伸ばしゆっくりと両手を上げる。
「落ち着きなさいよ。これ以上まだ罪を重ねるつもり?」
とんでもない言葉に、私は剣先を背中へ突き立てるとカッとなって叫んだ。
「私は何もしていない!あなたの罪でしょ!」
「ふふふっ、そう怒らないで。あなたの罪じゃないけれども、皆があなたの仕業だと思っているわ。あはははは、それで?逃げ場のないこんな場所にやってきて、どうするつもりなの?逃げ場なんてないわよ」
彼女のせいで私は拷問を受け死刑を宣告された。
私が築き上げてきた場所を奪われた。
怯えた様子がない余裕の声色。
そんな彼女の姿に苛立ちを感じると、私は剣先を背に押し当てたまま腕を取り、強引に扉の中へと引きずり込んだ。
バタンッと扉を閉め鍵をかけると、彼女を壁へ叩きつけ剣刃を首へかける。
リリーの腰に刺さっている剣を取り上げ、遠くへ放り投げた。
彼女の瞳を見上げると、怯える様子もなく余裕の表情を浮かべている。
「ねぇ、まさか脱獄して私を殺しに来たの?それなら考え直してほしいんだけれど……。死は怖くない、もう一度死んだ身だもの。だけど私には果たさなければならないことがあるの。正直あなたには何の恨みもないわ。だからあなたの逃亡を手伝ってあげてもいいのよ。私がこの街から逃がしてあげる」
口角を上げニッコリと笑うその様を、鋭く睨み返す。
腕に力を入れると、脅すように剣刃を彼女の白い首へ押し当てた。
「逃げ切ろうなんて、はなっから考えていない。あなたと話をするために脱獄したのよ」
「私と話……?あははっ、面白いわね。何について?今更話したところで何も変わらないわよ」
可笑しいと肩を揺らせて笑う姿に、肘で肩を強く押し込む。
彼女が痛みに顔を歪めると、私はグッと顔を近づけた。
「そんな事、言われなくてもわかっている。私はただ真実を知りたいだけ。その前に一つ確認しておきたいことがあるわ。……あなたは本当のリリーなの?」
探るように視線を向けると、彼女は鼻で笑った。
彼女は表情を取り繕いニッコリ笑みを深めると、私を真っすぐに見つめる。
「えぇ、そうよ。私は公爵家のリリー。あなたはユカよね?ふふふ、あははは」
何がおかしいのか高らかに笑う彼女の姿を、無言のまま眺める。
彼女がリリー。
ならあの記憶はやはり彼女のもの。
それに私の名前を知っているということは、彼女も私の記憶が残っている証拠。
来るのか不安だったが、上手く彼女をここへ誘い出せたようだ。
私が袖を通していたその服。
こうして改めて見ると、高身長でスタイルの良いリリーにとてもよく似合っていた。
しかしダークブルーの長い髪は縛らず垂れたまま。
腰に刺さった剣を振れば、髪が邪魔をして振り切ることは出来ないだろう。
「はぁ……誰もいないじゃない。こんなところにいるはずないのよ。あぁ、全く面倒だわ……どうして私が……ぶつぶつ」
不満げな様子でダラダラと足を進める彼女。
私は体を横にし隙間からそっと外へ出ると、彼女の足音に合わせ忍び足で近づいていく。
「適当な部屋を見つけて、さっさと休みましょう」
ボソッと呟いた彼女の背後を取ると、剣先を背中へ向ける。
「動かないで、騒がないで。妙な動きをみせれば殺すわ」
彼女はピタッと止まると緊張が走る。
チラッとこちらを見たかと思うと、すぐに視線を戻した。
動向を注視しながら柄を握る手を強めると、彼女は背筋を伸ばしゆっくりと両手を上げる。
「落ち着きなさいよ。これ以上まだ罪を重ねるつもり?」
とんでもない言葉に、私は剣先を背中へ突き立てるとカッとなって叫んだ。
「私は何もしていない!あなたの罪でしょ!」
「ふふふっ、そう怒らないで。あなたの罪じゃないけれども、皆があなたの仕業だと思っているわ。あはははは、それで?逃げ場のないこんな場所にやってきて、どうするつもりなの?逃げ場なんてないわよ」
彼女のせいで私は拷問を受け死刑を宣告された。
私が築き上げてきた場所を奪われた。
怯えた様子がない余裕の声色。
そんな彼女の姿に苛立ちを感じると、私は剣先を背に押し当てたまま腕を取り、強引に扉の中へと引きずり込んだ。
バタンッと扉を閉め鍵をかけると、彼女を壁へ叩きつけ剣刃を首へかける。
リリーの腰に刺さっている剣を取り上げ、遠くへ放り投げた。
彼女の瞳を見上げると、怯える様子もなく余裕の表情を浮かべている。
「ねぇ、まさか脱獄して私を殺しに来たの?それなら考え直してほしいんだけれど……。死は怖くない、もう一度死んだ身だもの。だけど私には果たさなければならないことがあるの。正直あなたには何の恨みもないわ。だからあなたの逃亡を手伝ってあげてもいいのよ。私がこの街から逃がしてあげる」
口角を上げニッコリと笑うその様を、鋭く睨み返す。
腕に力を入れると、脅すように剣刃を彼女の白い首へ押し当てた。
「逃げ切ろうなんて、はなっから考えていない。あなたと話をするために脱獄したのよ」
「私と話……?あははっ、面白いわね。何について?今更話したところで何も変わらないわよ」
可笑しいと肩を揺らせて笑う姿に、肘で肩を強く押し込む。
彼女が痛みに顔を歪めると、私はグッと顔を近づけた。
「そんな事、言われなくてもわかっている。私はただ真実を知りたいだけ。その前に一つ確認しておきたいことがあるわ。……あなたは本当のリリーなの?」
探るように視線を向けると、彼女は鼻で笑った。
彼女は表情を取り繕いニッコリ笑みを深めると、私を真っすぐに見つめる。
「えぇ、そうよ。私は公爵家のリリー。あなたはユカよね?ふふふ、あははは」
何がおかしいのか高らかに笑う彼女の姿を、無言のまま眺める。
彼女がリリー。
ならあの記憶はやはり彼女のもの。
それに私の名前を知っているということは、彼女も私の記憶が残っている証拠。
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