悪役令嬢はお断りです

あみにあ

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最終章

掴んだ光 (其の一)

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ピーターとエドウィン、ノア王子との再会を喜ぶ中、ノア王子は真剣な眼差しを浮かべると、私の両肩を掴んだ。

「本来であればこれほどに重傷で衰弱してる君を休ませてあげるべきだとわかっている。この怪我は僕のせいでもあるしね……。だがもう少しだけ頑張ってほしい。辛いと思うけれど、こうなってしまった経緯、何があったのか全て話してくれないかな?君の処刑が決定されている今、回避するに為にも早急に話を聞かなければ動けない。急がなければ間に合わなくなってしまう」

切羽詰まった彼の姿に、私は姿勢を正すと、青い瞳を真っすぐに見つめ返す。

「私は大丈夫です。あの、何があったのか話す前に、伝えておかなければならないことがあるんです。私はリリーですが、リリーではありません。何を言っているのかわからないですよね……。今のこの姿が本当の私で……、リリーは生粋のご令嬢だった。信じられない話しなんですが……、ノア王子に初めてお会いしたあの日に変わったんです」

「君と最初にあったのは……騎士になりたい言ったあの日だね?」

私は静かに頷くと、拳をギュッと握りしめた。

「はい、あの日私はノア王子の姿を見て、リリーになる前の自分の記憶を思い出しました。この世界とは全く異なる世界で暮らしていた記憶です。こうやって自分の姿に戻るまでは、前世の記憶を思い出したのだと思っていました。だけど私がここにいるということは、今と同様に中身が入れ替わったというのが、正解かなのかもしれません。それは置いといて……それに連なって、私が住んでいた世界にあった、ある小説の話を思い出したんです。その小説はこの世界ととても類似していて、私は直観で小説の世界へ生まれ変わったのかもしれないと……そう思いました。小説でリリーは最後断罪されてしまうんです。だからあの日、断罪を回避したい一心で、騎士になりたいと進言しました」

「断罪されないように騎士になった……?どういうこと?それに小説って、それってもしかして……君が好きだと話していた小説のこと?」

「はい、国の名前、街の名前、リリーはもちろんですが、ノア王子にピーターやエドウィン、それにトレイシーもみんな小説で登場していました。そして小説の内容と同じ事件が起こったり、確信に変わりました。ここは小説の世界なのだと。そこでリリーはノア王子の婚約者だったんです。ですが城に現れた侍女のトレイシーがノア王子と親密になっていく様に、嫌がらせを始めるんですすよね。それがバレて断罪されてしまうんです。だからどうしても婚約者にはなりたくなくて。その結果思いついたのが騎士なることで……意味が分からな過ぎて、笑いちゃいますねよね。ははは」

私は首に手を当てると、思わず苦笑いを浮かべる。
こうして話と自分のバカさ加減に呆れてしまう。
婚約を回避するだけなら、騎士という厳しい道に進む必要もなかった。
ノア王子は青い瞳を細めると、ぼそぼそと呟く。

「婚約者になりたくないか……。まさか……君が話していた王子というのが僕で、侍女がトレイシーだった……?ありえないね……」

ノア王子は複雑そうな表情を浮かべると、ピクピクと頬を引きつらせる。

「そうです!小説はお話しした通り、身分さを乗り越えての切ないラブスートーリーでしたが。実際のトレイシーは、ノア王子と同等な身分で、結婚するのも問題なさそうですけれど」

ノア王子は頭を抱えると、深く息を吐きだした。

「はぁ……だから君はとんでもない勘違いをしていたんだね……」

疲れた様子のノア王子を横目に、ピーターが乗り出してくると、紅の瞳と視線が絡む。

「なぁ、小説の内容を知っていたから、今日ノア王子が襲われることがわかったのか?」

「うん、今日の事だけじゃない。今までの事全部。ノア王子が母親に毒を盛られる事件も、誘拐されそうになるのも……先日のガブリエルの事件も全部小説に書いてあったの。ガブリエルの事件は起こる前にどうにかしようとして……大失敗しちゃったけれど……。こういうわけだったから上手く説明できなくて、信じてとしか言えなかった」

ピーターは顎に手を当て考え込む中、エドウィンが金色の瞳を向けた。

「小説……だからあの時、俺の名前を知っていたの?」

「えぇ、そうよ。ガブリエルの件は本当にごめんなさい。軽率な行動であんなひどい怪我をさせてしまって……私が……」

「ううん、あれは名誉の負傷。村でもみんなに褒められた。それに見て、傷の痕もない!」

エドウィンは服のボタンを二つ外すと、ペラっと服を捲る。
そこに剣で刺された傷跡は跡形もなかった。
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