悪役令嬢はお断りです

あみにあ

文字の大きさ
上 下
109 / 135
最終章

似て非なるもの (其の二)

しおりを挟む
深刻な表情で悩む二人。
シーンと静まり返る部屋に、突然バンッと勢いよく扉が開いた。

「ピーター、ノア王子、主様をどこへやったの?」

現れたエドウィンの姿に、二人は反射的に立ち上がる。

「エドウィン、いつ戻ってきたんだ?」

「お帰り、療養生活は終わったんだね。無事に戻ってきてくれて嬉しいよ」

帰ってきたエドウィンを迎え入れる二人の姿に、エドウィンは金色の瞳を細める。

「うん、ただいま、戻ってきた。もう元気。って、それよりも主様をどこへ隠したの!」

「リリーなら宿舎にいるんじゃないか?あー、違うな、あいつ出て行ったんだった。城にいると思うが……」

ピーターは窓の外へ目を向けると、エドウィンの苛立った声が響いた。

「違う、城にいるあの女は主様じゃない!見た目が同じだけの別人。俺の主様をどこへやったの!」

鋭く睨みつける金色の瞳を見つめながら、ピーターとノア王子は大きく目を見開いた。

「「別人!?」」

衝撃的な事実に二人は声をそろえると、顔を見合わせる。

「エドウィン、どういうことだ?」

「別人とはどういう意味なの?」

問いかける二人の姿に、エドウィンはムッとした表情を浮かべると、ズンズンと部屋の中へやってくる。

「別人は別人だよ、わかるだろう!全然違う、あんなの主様じゃない。俺と主様は魂でつながっているんだ。現にさっき見つけて触れてみたけれど、狼の姿に戻れなかった。なんで中身が違うのかわからないけど……俺がいない間に何があったの?」

詰め寄ってくるエドウィンを横目に、ピーターとノア王子は真剣な表情で考え込む。

「中身が別人……まさかそんなことが?だがそれなら不可解な言動に理由がつく」

「あぁ、そうだね。だけどそれが本当なら、本物のリリーはどこへ行ったんだろうか?」

ノア王子の言葉にピーターはハッと何かを思い出すと、勢いよく顔を上げた。

「……もしかして……いや、まさか……だが……お願い、信じてか……」

ぶつぶつとピーターは呟いたかと思うと、視線をノア王子へ向ける。

「ノア王子、教祖への面会許可をいただけませんか?もしかしたらもしかするかもしれません。リリーが変わったのはあいつを捕らえた日からです」

ノア王子はピーターへ顔を向けると、難しい表情で頷いた。

「それは教祖が本当のリリーかもしれないということかな?教祖がリリーだとしたらかなりまずい……。急ぎこちらから申請しておこう。もしピーターの言う通りなら……大変なことだ」

「ありがとうございます。すぐに俺とエドウィンで確認してきます。ノア王子は危険ですので、ここでお待ちください」

ノア王子はその言葉に一瞬言葉を詰まらせるが、わかったと渋々呟いた。

★おまけ(エドウィン視点)★

やっとここへ戻ってこられた。
俺は城を見上げながら、笑みがこぼれる。
主様に早く会いたい。
俺は主様の匂いを探すと、城内へ入って行った。

回廊を抜けた広場に主様の姿を見つける。
駆け寄ろうとした刹那、違和感に気が付いた。
匂いは間違いなく主様、だけど何かが違う。
何だろう……?

俺は首を傾げながらも主様へ近づいていくと、彼女がこちらを振り返った。

「あら、エドウィン様、ごきげんよう」

他人行儀な挨拶に目が点になる。
それに雰囲気も全く別人だ。

「主様……?」

「主?あなたの主はノア王子でしょ」

意味の分からない返答に思わず戸惑う。
彼女の前まで行きじっと瞳を覗き込むと、その奥には深い闇が浮かんでいた。
なんだろうこれ?

「ちょっと近づかないでよ、獣風情が」

彼女はムッと眉間にしわを寄せ俺の胸を突き飛ばすと、不快そうに顔を歪める。
俺を一瞥し一歩下がると、そのまま城内へと戻っていった。

先ほど触れた彼女の手。
俺は獣姿に戻ろうとしていた。
けれど戻れなかった。
感じていた違和感、その答えは……。

「……あいつは誰だ……?」

俺は去っていくのその姿を見つめながら茫然とすると、その場から動けなかった。
しおりを挟む
感想 85

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~

薄味メロン
恋愛
 HOTランキング 1位 (2019.9.18)  お気に入り4000人突破しました。  次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。  だが、誰も知らなかった。 「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」 「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」  メアリが、追放の準備を整えていたことに。

いつかの空を見る日まで

たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。 ------------ 復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。 悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。 中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。 どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。 (うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります) 他サイトでも掲載しています。

処理中です...