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最終章
彼の正体 (其の二)
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私達の生活が一変し怯える毎日。
突然の死刑宣告、姿の見えない存在。
教団以外の国民は王の味方となり立ち上がってくれたのですが、信者の数が多すぎて、国が真っ二つに割れたのです。
情勢が日々悪くなっていく中、城や街で小競り合いが増え、治安が悪化していきました。
ピリピリとした重い空気が街を包み、内戦が始まりそうな気配が漂い始めた。
内戦を止める手立ては、教団を倒し、民の気持ちを一つにすること。
ですが教祖の正体も居場所もわからない現状、手の打ちようがなかった。
その結果導き出された答えが、教祖を捕らえられるまで、私と姉を安全な国外へ避難させることでした。
そこで親交のあるこの国を頼り、私たちを逃がす算段が立てられたんです。
ノア王子とは幼いころからの友人で、姉と私と3人でよく遊んでおりました。
あの頃の私たちはまだ子供で、王族として義務など関係なく、策略や暗黙などくだらない駆け引きなしに話せる貴重な友人だった。
大人になるにつれて会う機会は減っていきましたが、私と姉が唯一友と呼べる、気負うことなく信頼できる存在。
加えてこの街は外部からの入街が難しく、教団が交じっている危険性も少なかった。
ノア王子に書状を送ると、すぐに受け入れてくれるとの承諾の返事がきました。
王族を迎えるには王族が必要。
そんな古きしきたりに沿い、ノア王子が私たちの国へ来る日が決まったのです。
私は姉と一緒に国を出る準備を進め、計画は完璧でした。
ですが当日、姉はノアが向けに来るその場所に現れなかった。
姉は内戦が始まりそうなこの状況を憂い、打開する最後のチャンスだと、私の代わりに一人で立ち上がっていたんです。
私は女で王子ではない、身代わりになれると……。
身代わりなんて間違っている、私たちは同じ容姿でも違う人間なのだから。
姉は私が反対するとわかっていたのでしょう、だから内密に事を進めていた。
当日になってようやく気が付いた私は、胸騒ぎ感じすぐに城へ戻ろうとしました。
引き留める騎士を振り払い、街へ戻ってきたとき、姉は私の姿でバルコニーに立ち、国民へ語りかけている最中でした。
だけどその途中、弓で射抜かれ死んでしまった。
私はその様子を人ごみの中から見ていました。
頭から血を流し倒れる姉の姿を。
阿鼻叫喚の要素の街から、耳に届く音が静かに消え、現実味が消えた。
怒号が響き逃げ惑う人ごみの中、呆然と立ち尽くす私を発見した騎士が、そのまま馬車へと連れ帰っていきました。
王が殺された事実は、あっという間に街中に知れ渡り、それがきっかけとなり内戦が始まってしまった。
そして私は姉の亡骸を見ることができないばかりか、弟ではなく姉として国を去ることになったのです。
そして数か月前、このお城へやってきました。
王が生きているとばれぬよう、ノアと王、王妃以外の人間には、私が姉のトレイシーだと思わせるよう手配してくれた。
私の性格を配慮してくれた面もありますが……。
そして隣国から逃げてきた王族とわからぬよう、身分を隠し侍女として働き始めたんです。
だけどとうとう見つかってしまった。
もうここで決着をつけるしかない。
やっと逃げてばかりいても無意味だと気が付いたんです。
ノア王子のパートナーが決まっていないと知り、私が囮になるため名乗りを上げました。
そして案の定奴はやってきた。
姉は弓矢で殺された。
それもバルコニーから民へ演説している際に。
地上からは到底矢を飛ばすことは不可能な場所。
別の高い建物もしくは木に身を隠し、姉を射止めた。
優れた弓の使い手でなければ、あんな無謀な矢を放てない。
それほど腕に自信をもった弓使いは少ないはず。
あの距離から私を狙い放たれた矢の軌道を見て、姉を殺したのはこの男だとすぐに気が付きました。
トレーシーはナイフがあるだろう太ももへ触れると、憑き物が落ちたかのように安らかな表情を浮かべた。
「そして復習を果たした。これでやっと国に帰れますわ。帰ったら真っ先に姉へ報告するつもりです」
小説では描かれていなかった壮大なストーリーに茫然としてしまう。
小説のヒロインも似たような事情でこの街へやってきていたのだろうか。
突然の死刑宣告、姿の見えない存在。
教団以外の国民は王の味方となり立ち上がってくれたのですが、信者の数が多すぎて、国が真っ二つに割れたのです。
情勢が日々悪くなっていく中、城や街で小競り合いが増え、治安が悪化していきました。
ピリピリとした重い空気が街を包み、内戦が始まりそうな気配が漂い始めた。
内戦を止める手立ては、教団を倒し、民の気持ちを一つにすること。
ですが教祖の正体も居場所もわからない現状、手の打ちようがなかった。
その結果導き出された答えが、教祖を捕らえられるまで、私と姉を安全な国外へ避難させることでした。
そこで親交のあるこの国を頼り、私たちを逃がす算段が立てられたんです。
ノア王子とは幼いころからの友人で、姉と私と3人でよく遊んでおりました。
あの頃の私たちはまだ子供で、王族として義務など関係なく、策略や暗黙などくだらない駆け引きなしに話せる貴重な友人だった。
大人になるにつれて会う機会は減っていきましたが、私と姉が唯一友と呼べる、気負うことなく信頼できる存在。
加えてこの街は外部からの入街が難しく、教団が交じっている危険性も少なかった。
ノア王子に書状を送ると、すぐに受け入れてくれるとの承諾の返事がきました。
王族を迎えるには王族が必要。
そんな古きしきたりに沿い、ノア王子が私たちの国へ来る日が決まったのです。
私は姉と一緒に国を出る準備を進め、計画は完璧でした。
ですが当日、姉はノアが向けに来るその場所に現れなかった。
姉は内戦が始まりそうなこの状況を憂い、打開する最後のチャンスだと、私の代わりに一人で立ち上がっていたんです。
私は女で王子ではない、身代わりになれると……。
身代わりなんて間違っている、私たちは同じ容姿でも違う人間なのだから。
姉は私が反対するとわかっていたのでしょう、だから内密に事を進めていた。
当日になってようやく気が付いた私は、胸騒ぎ感じすぐに城へ戻ろうとしました。
引き留める騎士を振り払い、街へ戻ってきたとき、姉は私の姿でバルコニーに立ち、国民へ語りかけている最中でした。
だけどその途中、弓で射抜かれ死んでしまった。
私はその様子を人ごみの中から見ていました。
頭から血を流し倒れる姉の姿を。
阿鼻叫喚の要素の街から、耳に届く音が静かに消え、現実味が消えた。
怒号が響き逃げ惑う人ごみの中、呆然と立ち尽くす私を発見した騎士が、そのまま馬車へと連れ帰っていきました。
王が殺された事実は、あっという間に街中に知れ渡り、それがきっかけとなり内戦が始まってしまった。
そして私は姉の亡骸を見ることができないばかりか、弟ではなく姉として国を去ることになったのです。
そして数か月前、このお城へやってきました。
王が生きているとばれぬよう、ノアと王、王妃以外の人間には、私が姉のトレイシーだと思わせるよう手配してくれた。
私の性格を配慮してくれた面もありますが……。
そして隣国から逃げてきた王族とわからぬよう、身分を隠し侍女として働き始めたんです。
だけどとうとう見つかってしまった。
もうここで決着をつけるしかない。
やっと逃げてばかりいても無意味だと気が付いたんです。
ノア王子のパートナーが決まっていないと知り、私が囮になるため名乗りを上げました。
そして案の定奴はやってきた。
姉は弓矢で殺された。
それもバルコニーから民へ演説している際に。
地上からは到底矢を飛ばすことは不可能な場所。
別の高い建物もしくは木に身を隠し、姉を射止めた。
優れた弓の使い手でなければ、あんな無謀な矢を放てない。
それほど腕に自信をもった弓使いは少ないはず。
あの距離から私を狙い放たれた矢の軌道を見て、姉を殺したのはこの男だとすぐに気が付きました。
トレーシーはナイフがあるだろう太ももへ触れると、憑き物が落ちたかのように安らかな表情を浮かべた。
「そして復習を果たした。これでやっと国に帰れますわ。帰ったら真っ先に姉へ報告するつもりです」
小説では描かれていなかった壮大なストーリーに茫然としてしまう。
小説のヒロインも似たような事情でこの街へやってきていたのだろうか。
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