91 / 135
最終章
誕生祭 (其の四)
しおりを挟む
逃げ遅れた貴族たちが、突然現れた黒ローブの姿に悲鳴をあげる。
騎士たちが警戒しながら貴族たちを誘導する中、私はこちらへ注意を引くために口を開いた。
「どうやってあの場所へ?」
「あははは、それは簡単なことだ。私は教祖だよ。未来を見れるんだ、これぐらい容易い」
未来を予知……?正気なの?
真意を探るように男の表情を注視してみるが、嘘を言ってる様子はない。
彼は本当にサイキック……?
「本当なの……?」
男はフードを深くかぶりなおすと、おもむろに顔を上げた。
「信用できないのはわかる。人間は目に見えるものしか信じないからね。だから私の力を目で見えるようにしてあげよう」
彼はポケットから一枚のコインを取り出すと、左手に持ちこちらへ見せつける。
一瞬手を握り、すぐに開くと、手にあったはずのコインが消えた。
次に手を開くと、コインが二枚右手に移動している。
これってコインズ アクロス?
前世で有名だったコイン手品の一種。
私も手品を始めた頃、何度も練習した基礎のマジックだ。
私は疑いの目で男を見るが、他の人たちは違うようだ。
この世界に手品が存在するのか知らないが、皆の反応を見る限りないのかもしれない……。
「どうだい、これで信じてもらえたかな?」
男はパッと手を開くと左手にコインが1枚。
「そんなもの、なんの証拠にもならないわ」
男の出方を探りながら、私はゆっくり距離を詰めていく。
すると彼は深く息を吐きだすと、降参すると言わんばかりに両手を上げた。
手にしていた弓を床へ投げると、カランカランッ転がっていく。
何が目的なのだろうか……。
訝し気に男を見つめながら、投げられた弓へ慎重に近づくと、素早く弓を拾い上げる。
弓には黒いバラと十字架が描かれていた。
弓を見て、またなんだか違和感を感じる。
あれ……?
結局どうやって二人を殺そうとするのか思い出せなかった。
結果この弓を見てわかったが、弓矢を使った事実になんだかしっくりこない。
エドウィンが負った傷は切り傷だったはずなんだけれど……。
ピーターのガラスの傷とも違う……。
ダメダメ、今はそんなことより、この男を確実にここで捕らえないと。
私は男を睨みつけながら、少しずつまた距離を詰めていく。
緊迫した空気が流れる中、男に手が届くところまで来ると、私は素早く腕を捕らえ地面へ叩きつけた。
よし、取り押さえた。
抵抗できないようグッと体を押さえつけるが、一切抵抗する気配はない。
「未来を見れるなんて嘘、さっきのコインもタネがあるでしょう。それに本当に未来を予知しているのなら、どうして私たちの前に現れたの?」
静かに問いかけると、ローブの隙間から不気味な笑みが見えた。
「これが私の使命だからさ」
使命?何なのこいつ……?
目的は何も達成されていないはずなのに……あまりに潔すぎる。
そこでまた何かが引っかかった。
この違和感はなに?
何かがおかしい……。
「もう一人の仲間はどこなの?あなたともう一人入街したのでしょう」
「まったく……ガブリエルはそんなことまで話したのか。さっさと殺しておくべきだった。あいつは殺したよ。ガブリエルの事件で失敗をしたからね。当然の報いだ」
なんてやつなの……ッッ。
かぶっているローブを取ろうとした刹那、トレイシーがこちらへ近づいてくる。
「トレイシー、近づいちゃダメよ!」
彼に向って叫ぶが、聞こえていないのか……無言のまま進み続けた。
そして私たちの前で立ち止まると、男を見下ろしながらしゃがみ込む。
フードを無造作に払いのけ、男の髪をひっぱり持ち上げた。
現れたのは黒い短髪の髪に、ダークブラウンの瞳。
しかし生え際の髪はブラウンで、髪を染めているのだと気が付いた。
知らない男だ。
男の顔を見つめていると、何だか妙な感じがする。
胸がざわつくような、これは一体……?
騎士たちが警戒しながら貴族たちを誘導する中、私はこちらへ注意を引くために口を開いた。
「どうやってあの場所へ?」
「あははは、それは簡単なことだ。私は教祖だよ。未来を見れるんだ、これぐらい容易い」
未来を予知……?正気なの?
真意を探るように男の表情を注視してみるが、嘘を言ってる様子はない。
彼は本当にサイキック……?
「本当なの……?」
男はフードを深くかぶりなおすと、おもむろに顔を上げた。
「信用できないのはわかる。人間は目に見えるものしか信じないからね。だから私の力を目で見えるようにしてあげよう」
彼はポケットから一枚のコインを取り出すと、左手に持ちこちらへ見せつける。
一瞬手を握り、すぐに開くと、手にあったはずのコインが消えた。
次に手を開くと、コインが二枚右手に移動している。
これってコインズ アクロス?
前世で有名だったコイン手品の一種。
私も手品を始めた頃、何度も練習した基礎のマジックだ。
私は疑いの目で男を見るが、他の人たちは違うようだ。
この世界に手品が存在するのか知らないが、皆の反応を見る限りないのかもしれない……。
「どうだい、これで信じてもらえたかな?」
男はパッと手を開くと左手にコインが1枚。
「そんなもの、なんの証拠にもならないわ」
男の出方を探りながら、私はゆっくり距離を詰めていく。
すると彼は深く息を吐きだすと、降参すると言わんばかりに両手を上げた。
手にしていた弓を床へ投げると、カランカランッ転がっていく。
何が目的なのだろうか……。
訝し気に男を見つめながら、投げられた弓へ慎重に近づくと、素早く弓を拾い上げる。
弓には黒いバラと十字架が描かれていた。
弓を見て、またなんだか違和感を感じる。
あれ……?
結局どうやって二人を殺そうとするのか思い出せなかった。
結果この弓を見てわかったが、弓矢を使った事実になんだかしっくりこない。
エドウィンが負った傷は切り傷だったはずなんだけれど……。
ピーターのガラスの傷とも違う……。
ダメダメ、今はそんなことより、この男を確実にここで捕らえないと。
私は男を睨みつけながら、少しずつまた距離を詰めていく。
緊迫した空気が流れる中、男に手が届くところまで来ると、私は素早く腕を捕らえ地面へ叩きつけた。
よし、取り押さえた。
抵抗できないようグッと体を押さえつけるが、一切抵抗する気配はない。
「未来を見れるなんて嘘、さっきのコインもタネがあるでしょう。それに本当に未来を予知しているのなら、どうして私たちの前に現れたの?」
静かに問いかけると、ローブの隙間から不気味な笑みが見えた。
「これが私の使命だからさ」
使命?何なのこいつ……?
目的は何も達成されていないはずなのに……あまりに潔すぎる。
そこでまた何かが引っかかった。
この違和感はなに?
何かがおかしい……。
「もう一人の仲間はどこなの?あなたともう一人入街したのでしょう」
「まったく……ガブリエルはそんなことまで話したのか。さっさと殺しておくべきだった。あいつは殺したよ。ガブリエルの事件で失敗をしたからね。当然の報いだ」
なんてやつなの……ッッ。
かぶっているローブを取ろうとした刹那、トレイシーがこちらへ近づいてくる。
「トレイシー、近づいちゃダメよ!」
彼に向って叫ぶが、聞こえていないのか……無言のまま進み続けた。
そして私たちの前で立ち止まると、男を見下ろしながらしゃがみ込む。
フードを無造作に払いのけ、男の髪をひっぱり持ち上げた。
現れたのは黒い短髪の髪に、ダークブラウンの瞳。
しかし生え際の髪はブラウンで、髪を染めているのだと気が付いた。
知らない男だ。
男の顔を見つめていると、何だか妙な感じがする。
胸がざわつくような、これは一体……?
0
お気に入りに追加
1,275
あなたにおすすめの小説

ロザリーの新婚生活
緑谷めい
恋愛
主人公はアンペール伯爵家長女ロザリー。17歳。
アンペール伯爵家は領地で自然災害が続き、多額の復興費用を必要としていた。ロザリーはその費用を得る為、財力に富むベルクール伯爵家の跡取り息子セストと結婚する。
このお話は、そんな政略結婚をしたロザリーとセストの新婚生活の物語。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
踏み台令嬢はへこたれない
IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。

もう何も信じられない
ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。
ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。
その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。
「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」
あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。
【お詫び】読んで頂いて本当に有難うございます。短編予定だったのですが5万字を越えて長くなってしまいました。申し訳ありません長編に変更させて頂きました。2025/02/21

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる