悪役令嬢はお断りです

あみにあ

文字の大きさ
上 下
86 / 135
最終章

嵐の前 (其の二)

しおりを挟む
鋭いブラウンの瞳にゴクリと唾を飲み込むと、私は姿勢を正し顔を上げる。

「君の両親は生粋の貴族、それはわかっているだろう?言っちゃっ悪いけれど、君の家が公爵家になれたのは先々代が優秀だったからだ。先々代が亡くなってから、これといって何の功績もあげていない。だから公爵家にも関わらず、重鎮貴族の一員になれていないんだ。その事実に彼らが焦っているのは周知の事実だろう」

公爵家のリリー。
小説では家について、あまり詳しく書かれていなかった。
私自身も小説のことばかりに気を取られ、リリーの家に興味を示したことはなかった。
記憶が戻ってすぐ家を出てしまったし……。
自分の家のことなのに初めて知ることばかりで私は内心狼狽していると、教官はおもむろに腕を上げ、私を指さした。

「そんな彼らが頼りにしているのが君だ。生粋の貴族である君の家が、騎士として育てることを由としたのもこれだろうね。普通の親なら大事な娘を男ばかりの世界に放りこんだりしないだろう。初の女性騎士として騎士団へ入団すれば注目の的。君の実力なら爵位もあり、すぐに昇進できるだろうしね。正式な護衛騎士になっても同じだ。それだけで彼らは功績をあげられる。功績さえあれば、君の家は重鎮貴族の席を得られる権利を獲得できるが……残念なことに今は空いている席がないのが現状だった」

だった……?
重鎮貴族。
前世で言えば政治家のようなもの。
国の法律や治安維持、政策について話し合い決議する。
王を中心に公爵家5名、侯爵家5名、伯爵家5名の者を集め、毎月定例会議が行われているのだ。
選ばれる家は、過去の功績により評価され王により選任。
それによって貴族としてのステータスと、重鎮貴族ならではの特権を得られるのだ。
ガブリエルの父は息子の犯罪により、重鎮貴族から外された。
しかし彼らは伯爵家、公爵家である私の家がその席へ座ることはできない。

「先日伯爵家の事件に便乗するように、君の家が動き始めたんだ。クレア嬢の家が重鎮貴族の一員から外され、王都外へ追いやられた。理由は彼らの不正疑惑が、君の家から告発されたからだ。君の家が持っていた証拠は完璧で、立証するには十分だった。だけどクレア嬢の家は最後までやっていないと否定していたらしい。"はめられた"のだと言っていたようだよ。正直君の家なら、喉から手が出るほどに欲しがっていた重鎮貴族の席のためなら、何でもするだろうね。それにクレア嬢の家と君の家は古からの付き合いだろう。クレア嬢の兄を君の婚約者にとの話も出ていたようだしね。だから証拠を捏造するのたやすいだろう。もしこれが仕組まれたものだったとしたら、ただじゃすまないはず。王都から追い出されたといっても、クレア嬢の力がなくなったわけじゃないからね。そんな疑惑を持たれている家に、君のような真っすぐな子が、戻るのはオススメできないかな」

クレア嬢が王都から追い出された?
だからノア王子のパートナーが決まっていないんだ。
全然知らなかった……。

「あの、クレア様は大丈夫なんですか?」

「あぁ今はね。だけど恨みつらみは凄まじいものだと思うよ。心配なのはわかるが、今はそっとしておいたほうがいい」

ですよね……。
クレア嬢とは幼いころから家を行き来する仲だった。
だけどここ数年、公爵家とは一切関わらず生活していた。
両親の記憶については、リリーの記憶が大きい。
記憶の中での両親は厳しく、私をノア王子の婚約者にさせるために必死だった。
あれも王妃という座を手に入れ、重鎮貴族というステータスを得たいがためだったのだろうか?

正直、無責任な発言で家に迷惑をかけ、騎士になるまで戻ってくるなと言われ、向こうからも連絡がないから必然的に関われなかった。
でも教官が言った通り、公爵家の令嬢が騎士学園に入学して、一切音沙汰がないのはおかしいのかも。

私が公の場でノア王子へ騎士になりたいと発言したことで、両親は婚約者という席をあきらめた。
その代わりに女性騎士という新たな道を考えた?
私の記憶にある母はプライドが高く生粋の貴族、父は野心家で家にいることが少なかった。
貴族としてあるべき姿ばかりを追い求めていた。


*************ご連絡*************
2月には完結予定だったのですが……気が付けば3月に……。
年明けから気が付けばもう2か月、早すぎる(;´Д`)
校正しているといつの間にか100話になっておりました(-_-;)

第三章も後半となってきましたが、
どうぞもう暫くお付き合い頂けると嬉しいです。

ご感想等ございましたら、いつもでコメントください。
いつも励みになっております(*'ω'*)
長編ですがここまでお読みいただき、
本当にありがとうございます(*´Д`)
しおりを挟む
感想 85

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~

薄味メロン
恋愛
 HOTランキング 1位 (2019.9.18)  お気に入り4000人突破しました。  次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。  だが、誰も知らなかった。 「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」 「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」  メアリが、追放の準備を整えていたことに。

いつかの空を見る日まで

たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。 ------------ 復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。 悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。 中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。 どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。 (うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります) 他サイトでも掲載しています。

処理中です...