悪役令嬢はお断りです

あみにあ

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第三章

操り人形 (其の四)

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がむしゃらに抗うが、もちろん効果はない。
私はトレイシーを見つめると、彼女の頬を両手で包みこむ。

「えぇッ!?あの、リリー様ッッ、何をッッ」

エメラルドの瞳に戸惑いの色が浮かぶ。
私はゆっくりと顔を近づけると、息のかかる距離で首を横へ傾けた。
その様に察したのか、トレイシーの頬が赤く染まると、ガブリエルは楽しそうに笑う。

「リリーストップだ。その表情いいよ、最高だ。君はリリーを異性として愛しているんだね。これは面白い。ゆっくり見物させてもらおう。どうぞ進めて」

写真のアングルを見るかのように私たちを眺めるガブリエル。

「この変態!今すぐやめさせて!こんなのこと可笑しいわ!……ッッ、リリー様、正気に戻ってッッ」

ゆっくりと近づく彼の瞳。
待って、なんで、こんなことッッ。
彼の唇へ触れると、私はむさぼるように齧り付く。
唇の感触も熱も何も感じない。
舌で唾液をかき混ぜ、水音が響くと、彼の息が荒くなっていった。

「んんん……はぁ、ふぅッ、うぅぅん、はぁ、んんんんん」

唾液が口角から垂れ、深く激しい口づけを続ける。
私は息一つ乱れぬまま、とろんとしたエメラルドの瞳を見つめた。
おもむろに唇を離すと、指先で乱れた服を脱がせ、彼の体をなぞっていく。

「はぁ、はぁ……リリー様、ぃやっ、んんッ、こんなのッッ、リリーさまぁッッ」

鎖が激しく揺れ、エメラルドの瞳に涙が浮かんでいる。
こんなことしたくないッッ、なのに……もう嫌!
自分の意思と関係なく動く体に心が悲鳴を上げる。

私は指先で彼の胸板を優しく撫でると、くぐもった声が漏れた。
もう何も見たくない、考えたくないッッ。
耐えられないと心が叫ぶと、靄が濃くなり黒く染まっていく。
トレイシーのスカートへ手を伸ばした刹那、ガブリエルの声が脳に響いた。

「いいねいいね、感じている姿はさらに美しい。嫌だと言いながらも体は素直だ。女性と違って男はわかりやすくいい。あぁ待った、リリー、ストップだ。役者は多い方が良いからね」

ガブリエルはポケットからカギを取り出すと、エドウィンのいる檻を開ける。
鎖でがんじがらめにされたエドウィンを引きずってくると、私の前に投げ捨てた。

どうして今エドウィンを?
だけどこれはチャンスかもしれない……。
あの檻の中に私が行くことは不可能だった。
彼が傍に来てくれたのなら、何とかして触れさえすれば……。
閉じようとしていた心に光が差し込むと、黒い靄が若干薄くなった。

「エドウィンと言ったかな?君はどうみても男だが……そのプラチナの髪に、輝く金色の瞳は僕の好みにピッタリだ。男でもこんなに楽しめると知った今、君も僕を楽しませてくれるだろう」

エドウィンは今にも殺しそうな目でガブリエルを睨みつけると、ウゥッと唸り声を上げる。

「挑発的な態度は気に食わないが……まぁ仕方がない。リリーこっちへ来なさい。彼が終わったら最後は僕だ。こういった4Pは初めてだよ。楽しみだ」

ニタニタとゲスな笑いを浮かべるガブリエル。
本当に最低、ゲス野郎だわ。
心でどれだけ悪態をついたかわからない。
操られていなければ、こんな男に負けるはずないのにッッ。

私は彼の言葉通り、スッとトレイシーから離れると、ガブリエルの元へ跪く。

「彼も楽しませてやってくれ。暴れられないようになるくらいまでね、あはははは」

金色の瞳と視線が絡むとエドウィンは小さく頷く。
これは彼が何かをするのならと、言っていた合図。
エドウィンもわかっているんだ。

私は横たわるエドウィンの頬を手を伸ばすと、トレイシーと同じように触れた。
狼に戻って、トレイシーを助けて。
そう強く心で命令した刹那、彼の体から光が溢れた。
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