65 / 135
第三章
傀儡の香り (其の一)
しおりを挟む
どれぐらい気を失っていたのだろう、気が付いた時には鎖で吊るされていた。
腕を動かすと、ジャラジャラと耳障りな鎖の音が部屋に響く。
うぅ……頭が揺れる。
何か変な物を嗅がされて……それで……ここは地下……?
虚ろな意識の中、目を凝らし辺りを見渡すと、薄暗く窓のない湿っぽい一室で、蝋燭の炎が静かに揺れる。
そこに薄っすらと人影が浮かぶと、こちらへ近づいてきた。
「やぁ、ようやくお目覚めだね、待ちくたびれたよ。ごきげんようリリー殿」
キャンドルスタンドを手に、ニッコリ笑みを浮かべる男。
浮かび上がったその顔に嫌悪感を感じた。
「ガブリエル伯爵……ッッ、これなに?エドウィンはどこなの?あなたが連れ去った少女も……ここにいるの?」
自分の声が頭に響き、揺れる視界に耐えながらも、必死に目を開け睨みつける。
彼はニッコリ笑みを浮かべると、手にしていたキャンドルスタンドを机に置いた。
ボヤッと浮かび上がる部屋の姿。
光の先には下着姿でぐったりと横たわる少女が二人。
ブロンドの長い髪の少女とブランドのセミロングの少女。
その奥には鎖で繋がれたエドウィンの姿があった。
金色の瞳が輝き、ガブリエル伯爵を鋭く睨みつけている。
怪我はないようだが、口にロープが巻かれ、声は出せないようだ。
助けに行こうとすると、金属の鎖がそれを静止した。
あの男ッッこんなところに幼気な少女を、それにエドウィンまで……。
キッとガブリエルを睨みつけると、ジャラジャラと鎖を思いっきり揺らす。
「まぁまぁ落ち着いて。そんな顔をしないで、可愛い顔が台無しだよ。まぁ僕の好みではないけれどね。それよりも君が眠っている間に、色々と調べさせてもらったよ。君はそこにいる彼と単独で動いたようだね。賢明な判断だ。ここへ来ることは騎士の関係者や騎士学園の生徒、先生、誰にも話していないみたいだね。一つ気になるのが、サムという少年だが……。彼については今捜索している。見つけ次第ここへ連れて来るよ。まぁ孤児ごときに何か出来るとは思えないけどね」
ガブリエルはニコニコ楽しそうに笑うと、横たわる少女たちへ近づいた。
膝を折りセミロングの少女の耳元に顔を寄せ、ボソボソ何かを呟くと、彼女はパチッと目を開け立ち上がる。
抵抗する素振りもなく大人しくこちらへやってくると、私の前で立ち止まり顔を上げた。
サファイアの澄んだの美しい瞳だが、その瞳に色はなく表情もない。
まるで人形のような不気味さを感じた。
「ほら、キャサリン、リリー殿に挨拶をしなさい」
キャサリンッッ、この子がサムの妹。
彼女は彼の言葉に頭を下げると、ニッコリ笑って見せる。
子供らしい無邪気な笑顔だが、挨拶の言葉はなく、膜がかかったような瞳に悪寒が走った。
何なのこれ……?
訝し気に見つめていると、ガブリエルがキャサリンのブロンドの髪を優しく撫でる。
「どうだい可愛いだろう。僕の最高級の人形なんだ」
「人形……何を言っているの?彼女は人間よ」
「ははははっ、もともとはそうだね。だけど今は違う。僕の命令には絶対服従の可愛い可愛い人形だよ。君もすぐにそうなる」
この男は何を言っているの?
人形?そんなのありえない。
「キャサリン、しっかりして」
彼女に向かって叫んでみるが、表情は変わらずニコニコ笑みを浮かべたまま。
「無駄無駄、僕の声以外はとどかないんだ。アハハハハハハ」
豪快に笑う彼を無視し、少女を見つめ続けるがさっぱり反応ない。
本当に声が聞こえていないの……?
「こんな幼い少女に何をしたの!」
怒りのままに叫ぶと、彼はキョトンとした表情を浮かべた。
「だから言ってるだろう。キャサリンは僕の人形になったんだ。意識があるのかはわからないけれど、僕の思いのままに動いてくれる。もちろん逆らったり嫌な顔一つしない。表情だってほら、可愛い笑みだろう。只一つ難点なのは……喋れなくなることだ。まぁ人形なのだから仕方がないけどね」
正気なの?人間を人形のように操るなんて……。
信じられないと憎悪を込めて睨むが、ガブリエルは気にした素振りもなく嬉しそうに笑うと、キャサリンに何かを耳打ちした。
腕を動かすと、ジャラジャラと耳障りな鎖の音が部屋に響く。
うぅ……頭が揺れる。
何か変な物を嗅がされて……それで……ここは地下……?
虚ろな意識の中、目を凝らし辺りを見渡すと、薄暗く窓のない湿っぽい一室で、蝋燭の炎が静かに揺れる。
そこに薄っすらと人影が浮かぶと、こちらへ近づいてきた。
「やぁ、ようやくお目覚めだね、待ちくたびれたよ。ごきげんようリリー殿」
キャンドルスタンドを手に、ニッコリ笑みを浮かべる男。
浮かび上がったその顔に嫌悪感を感じた。
「ガブリエル伯爵……ッッ、これなに?エドウィンはどこなの?あなたが連れ去った少女も……ここにいるの?」
自分の声が頭に響き、揺れる視界に耐えながらも、必死に目を開け睨みつける。
彼はニッコリ笑みを浮かべると、手にしていたキャンドルスタンドを机に置いた。
ボヤッと浮かび上がる部屋の姿。
光の先には下着姿でぐったりと横たわる少女が二人。
ブロンドの長い髪の少女とブランドのセミロングの少女。
その奥には鎖で繋がれたエドウィンの姿があった。
金色の瞳が輝き、ガブリエル伯爵を鋭く睨みつけている。
怪我はないようだが、口にロープが巻かれ、声は出せないようだ。
助けに行こうとすると、金属の鎖がそれを静止した。
あの男ッッこんなところに幼気な少女を、それにエドウィンまで……。
キッとガブリエルを睨みつけると、ジャラジャラと鎖を思いっきり揺らす。
「まぁまぁ落ち着いて。そんな顔をしないで、可愛い顔が台無しだよ。まぁ僕の好みではないけれどね。それよりも君が眠っている間に、色々と調べさせてもらったよ。君はそこにいる彼と単独で動いたようだね。賢明な判断だ。ここへ来ることは騎士の関係者や騎士学園の生徒、先生、誰にも話していないみたいだね。一つ気になるのが、サムという少年だが……。彼については今捜索している。見つけ次第ここへ連れて来るよ。まぁ孤児ごときに何か出来るとは思えないけどね」
ガブリエルはニコニコ楽しそうに笑うと、横たわる少女たちへ近づいた。
膝を折りセミロングの少女の耳元に顔を寄せ、ボソボソ何かを呟くと、彼女はパチッと目を開け立ち上がる。
抵抗する素振りもなく大人しくこちらへやってくると、私の前で立ち止まり顔を上げた。
サファイアの澄んだの美しい瞳だが、その瞳に色はなく表情もない。
まるで人形のような不気味さを感じた。
「ほら、キャサリン、リリー殿に挨拶をしなさい」
キャサリンッッ、この子がサムの妹。
彼女は彼の言葉に頭を下げると、ニッコリ笑って見せる。
子供らしい無邪気な笑顔だが、挨拶の言葉はなく、膜がかかったような瞳に悪寒が走った。
何なのこれ……?
訝し気に見つめていると、ガブリエルがキャサリンのブロンドの髪を優しく撫でる。
「どうだい可愛いだろう。僕の最高級の人形なんだ」
「人形……何を言っているの?彼女は人間よ」
「ははははっ、もともとはそうだね。だけど今は違う。僕の命令には絶対服従の可愛い可愛い人形だよ。君もすぐにそうなる」
この男は何を言っているの?
人形?そんなのありえない。
「キャサリン、しっかりして」
彼女に向かって叫んでみるが、表情は変わらずニコニコ笑みを浮かべたまま。
「無駄無駄、僕の声以外はとどかないんだ。アハハハハハハ」
豪快に笑う彼を無視し、少女を見つめ続けるがさっぱり反応ない。
本当に声が聞こえていないの……?
「こんな幼い少女に何をしたの!」
怒りのままに叫ぶと、彼はキョトンとした表情を浮かべた。
「だから言ってるだろう。キャサリンは僕の人形になったんだ。意識があるのかはわからないけれど、僕の思いのままに動いてくれる。もちろん逆らったり嫌な顔一つしない。表情だってほら、可愛い笑みだろう。只一つ難点なのは……喋れなくなることだ。まぁ人形なのだから仕方がないけどね」
正気なの?人間を人形のように操るなんて……。
信じられないと憎悪を込めて睨むが、ガブリエルは気にした素振りもなく嬉しそうに笑うと、キャサリンに何かを耳打ちした。
0
お気に入りに追加
1,275
あなたにおすすめの小説

ロザリーの新婚生活
緑谷めい
恋愛
主人公はアンペール伯爵家長女ロザリー。17歳。
アンペール伯爵家は領地で自然災害が続き、多額の復興費用を必要としていた。ロザリーはその費用を得る為、財力に富むベルクール伯爵家の跡取り息子セストと結婚する。
このお話は、そんな政略結婚をしたロザリーとセストの新婚生活の物語。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

もう何も信じられない
ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。
ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。
その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。
「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」
あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。
【お詫び】読んで頂いて本当に有難うございます。短編予定だったのですが5万字を越えて長くなってしまいました。申し訳ありません長編に変更させて頂きました。2025/02/21
踏み台令嬢はへこたれない
IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる