悪役令嬢はお断りです

あみにあ

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第三章

疑惑の調査 (其の四)

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チラッとエドウィンを見ると私は軽く頷き合図を送る。
そのままメイドと共に部屋を出ると、お手洗い場に入った。
メイドは廊下に待機したまま。
私はカギをかけそっとお手洗い場の窓を開けると、外へ下りた。
辺りを警戒しながら目的の場所まで素早く進む。

警備兵たちは基本侵入者用の配置になっているため、こうして中から外へ出れば見張りは比較的少ない。
そうはいっても、メイドや執事たちがうじゃうじゃいるから気は抜けない。
だが時間的に昼食が終わった正午過ぎ、休憩に入っている使用人が多いはず。

記憶を頼りに壁沿いを進み、エントラスから右側へとやってくる。
すぐに調理場を見つけると、換気用の窓を慎重に開けた。
中を覗き込むと、人の姿はない。
私は窓に手を付き足を掛けると、飛び上がり中へ入った。
時間はあまりない、すぐに調べて戻らないと……。

調理場の奥に扉を見つけると、ドアノブを回してみる。
鍵がかかっているかと思ったが、すんなりと回った。
ガチャッと開けてみると、そこは倉庫。
保存用の食材が並んだ棚がズラリと並んでいる。
棚をまじまじ見つめてみると、どうやらここは非常食が集められているようだ。

メイドや執事はここへ入らないのか……、掃除はされておらず棚には埃かかっている。
慎重に奥へ進んでみると、その先に記憶と同じ扉を見つけた。
壁と同系色の扉。
扉は微かに開いていて、そこから冷たい風が吹き込んだ。
開いていなければ気が付ないほどに、精巧に作られている。

恐る恐る中を覗き込むと、薄暗い先に石段が下へ続いていた。
扉の内側にカギはなく、何かを閉じ込めるための部屋……、きっとここだ。
これを知らせれば……警備兵を動かせる。
とりあえず先に戻らないと、そろそろ怪しまれる。

戻ろうと振り返ると、外から足音が響く。
私は慌てて食品棚に隠れると、じっと身を顰めた。
息をひそめ様子を窺っていると、部屋に先ほど応接室でブローチを受け取った騎士がやってくる。
心臓の音がバクバクと響く中、騎士が目の前を通り過ぎた刹那、後ろからガタンッと大きな音が響いた。

慌てて振り返ると、地下から戻っていたのだろう、ガブリエルの姿。
咄嗟に逃げようとするが、こちらに気が付いた騎士が私の体を押さえつける。

「ぐっ、がはっ、……ッッ」

「おやおや、リリー殿、こんなところで何をされているのかな?」

口を閉ざし、ガブリエルを睨みつけると、彼は楽しそうに私を見下ろした。

「ふーん、まぁいい。あの小汚い少年の事を思い出したんだ。彼はあの子のお兄さんだね。それで僕の事を聞いたのかな?君は初めからこれが目的だったんだろう?あの少年を見てから君がここへやってきた。怪しいと思ったんだ。そこでこのブローチを調べてみて、さっき君が購入した物だとわかった。本当の目的がなんなのか探ろうと思っていたが、手間が省けたよ」

くぅ……はぁ……失敗した……。
思いつきで動くべきではなかったのだ。
後悔するが今更遅い。
エドウィンだけでも何とか逃がしたいところだけれど……。

「君の連れて来たエドウィンと言ったかな?彼は既に捕らえてある。君も大人しく来るんだ」

私はすぐに顔を上げると、彼へ訴えかける。

「彼は何もしらない、関係ない!手を出さないでッッ」

押さえつける腕に力が入ると、鈍い痛みに顔が歪んだ。

「まぁまぁそう熱くならず、落ち着いて、……少し眠ろうか」

ガブリエルは胸ポケットからシルクのハンカチを取り出すと、私の口元へあてた。

急激な眠気に意識を失うと、私の体は騎士に抱かれ運ばれていく。
そのまま応接室へやってくると、私の首へ短剣が押し当てられた。

「エドウィン殿、お待たせしたね」

ガブリエルは私の髪を引っ張ると、エドウィンへ笑いかける。

「主様、貴様ッッ」

腰の剣に手を伸ばした刹那、切先が首の皮を切った。

「君が暴れると大変そうだ。少しでも動けば彼女の首が赤く染まるよ。さぁ剣から手を離してくれ」

エドウィンは彼を睨みつけながら舌打ちすると、剣から手を離し両手を挙げた。

「彼の腕にこの手錠を、二人とも地下室へ連れて行く」

ガブリエルは騎士達へそう命令すると、私達は地下へと運ばれたのだった。

★おまけ(エドウィン視点)★

今日は初めてのお休み。
俺は主様に会いに行くと、部屋に姿はなかった。
匂いを頼りに探してみると、主様はどこかへ出かけるところだった。
声を掛けると、大きく肩を跳ねさせ、明らかに動揺している。

俺は怪しんで無理矢理主様についてきた。
主様はいつもとんでもない事をしでかすから。
この前の村でだってそう、火を消すはずが、あんな大けがを負う事になるなんて……。
今度は絶対俺が守るんだ。

主様の目的を聞き出そうとするが、なかなか上手くいかない。
ピーターなら聞き出せたるのかな……。
そう考えるとイライラが止まらない。
俺だって主様を守りたいんだ。
そのために強くなったはずだった。

だけど結局俺は主様を守り切れなかった。
ピーターみたいなヒーローになれない。
腰の剣は取り上げられ、手には手錠、口にはロープ、足には足枷と鎖。
意識を失い、鎖で吊るされた主様の姿に、俺は……。
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