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第三章
疑惑の調査 (其の三)
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サムと分かれ私たちは貴族街へと向かう。
ガブリエル伯爵がロリコンだったかは定かではないが、女性に対して強い執着があった気がする。
中でもブロンドヘアーで、鮮やかな瞳をした女性を好んでいた。
だからトレイシーが彼の好みに合致し、誘拐されたのだ。
兎にも角にも早く何とかしないと……このままだとあの変態が幼気な少女に何をするか……。
だけどどうしようかな。
靴だけでは証拠として弱い。
一番いいのは自白だけれど、素直に聞いて教えてくれるはずなんてないだろうし。
黒の教団との繋がりを暴けば、すぐに城へ報告できるのだけれども……。
入街審査が通ってしまっている現状、そう簡単に見つからないだろう。
時間はないし、危険だけれど……現場を押さえるのが一番固い。
小説にも出てきた地下室を見つけられれば、騎士団が介入し調べるネタにはなるはず。
トレイシーが誘拐されたときに監禁されていたあの部屋。
だけどそのためには屋敷の中へ入らないと……。
「それで主様、どうするつもりなの?」
エドウィンの言葉に顔を向けると、貴族街の真ん中で立ち止まる。
「とりあえず証拠とか手がかりを見つけないと話にならない。そのためには屋敷にある地下室を見つけるのが早いと思うんだけれど……」
「地下室?地下室があるの?」
しまった……これは小説の内容だった。
「あー、えーと、誘拐したのなら少女を隠す部屋が必要でしょ。たぶんそれが地下室だと思っただけ」
誤魔化す様に笑って見せると、エドウィンは腕を胸の前で組むと考え込んだ。
「ふーん、仮にそうだとして、屋敷に侵入するの?」
そこだよね。
貴族の屋敷に忍び込むのは難しい。
見張りも多いし、防犯対策もしっかりされている。
屋敷の中も広いし、もし運よく侵入できても探し出すまでの間に捕まってしまうだろう。
だけれども時間をかけて調査する暇はない……。
となれば地下室の入り口の手がかりになる情報を、思い出すしか方法はないだろう。
地下室へ続く通路。
どうだったかな……えーと、確かノア王子がトレイシーを救出する詳細に書かれていたはず。
屋敷に突入して……そうだ、キッチン。
調理場に入って奥の部屋、そこに扉が……。
その場所で扉を見つけて現場を確認すれば、調べるネタになる。
だけど貴族の屋敷に無断で侵入するのはリスクが高すぎる。
私達は剣の技術は学んだが、隠密系の授業はまだ学び始めたばかり。
知識も実践経験もない私たちが成功するとは思えない。
となれば理由をつけて正面から行くしかないよね。
「侵入はしない、正面から行こう。っとその前に……」
私は貴族街にある雑貨店へ入ると、高そうなブローチを一つ購入した。
伯爵からすれば安い物だろうけれど、口実にはこれで十分かな。
私はそのブローチを胸ポケットに入れると、エドウィンを連れガブリエルの屋敷へ向かったのだった。
「エドウィン、何も話さず立っていてくれるだけでいい。後は私がするから」
「むむむ……わかった。だけど何かするのならその前に合図だけして。目を見て頷いてくれたらいい」
「わかった、じゃぁ行こうか」
ガブリエルの屋敷へやってくると、門番に話を通し、エドウィンと共に中へ入る。
エントラスへ入った刹那、脳に映像が浮かび上がった。
ノア王子が騎士を連れて右の廊下を進み、奥へと消え去って行く映像。
私は残像を追うように顔を向けると、執事が左の廊下へ進んで行く。
その姿に私は左の廊下を進むと、応接室へと案内された。
さっきの映像で、この屋敷の内装をはっきり思い出した。
キッチンへ続く廊下の途中に手洗い場がある、これを利用しよう。
色々と計画を模索しながら暫く待っていると、ガブリエル伯爵がやってきた。
「ようこそ、リリー殿。お話とは何かな?」
彼は向かいのソファーへ腰かけると、護衛たちは下がり壁際へと移動する。
エドウィンもそれに倣うように私の後ろへ立つと、メイドが紅茶を運んできた。
「お忙しいところすみません。先ほど捕らえた少年についてなのですが……」
私は胸ポケットから、先ほどかったブローチを取り出すと机へ並べる。
「これは……女性もののブローチだね?どうしたのかな?」
「少年が持っていた物なのです。もしかしたらガブリエル伯爵殿に関係する持ち物かと思いまして」
ガブリエルは興味深げにブローチを手に取ると、すぐに眉を寄せた。
「いや、これは僕のではないよ。こんな安っぽいブローチを僕が買うわけないだろう」
「もちろん、それは重々承知しております。ですので……あの時連れられていた護衛の方のではと……。安いとおっしゃっても、平民には到底購入出来ない金額でしょうし、どなたかへの贈り物であれば困っていると思いまして」
ガブリエルは騎士の一人を呼び寄せると、ブローチを手渡した。
「ふむ、それもそうだね、確認してみよう。少し時間をもらえるかな?ここでお茶でも楽しんでいてくれ」
ガブリエルは立ち上がると、騎士と共に扉へ向かう。
メイドが新しいお茶を注ごうとする姿に立ち上がると、彼を引き留めた。
「あのすみません、お手洗いをお借りしたいのですが……」
「メイドに案内させよう」
メイドは手にしていたポットを置くと、こちらですと歩き始めた。
ガブリエル伯爵がロリコンだったかは定かではないが、女性に対して強い執着があった気がする。
中でもブロンドヘアーで、鮮やかな瞳をした女性を好んでいた。
だからトレイシーが彼の好みに合致し、誘拐されたのだ。
兎にも角にも早く何とかしないと……このままだとあの変態が幼気な少女に何をするか……。
だけどどうしようかな。
靴だけでは証拠として弱い。
一番いいのは自白だけれど、素直に聞いて教えてくれるはずなんてないだろうし。
黒の教団との繋がりを暴けば、すぐに城へ報告できるのだけれども……。
入街審査が通ってしまっている現状、そう簡単に見つからないだろう。
時間はないし、危険だけれど……現場を押さえるのが一番固い。
小説にも出てきた地下室を見つけられれば、騎士団が介入し調べるネタにはなるはず。
トレイシーが誘拐されたときに監禁されていたあの部屋。
だけどそのためには屋敷の中へ入らないと……。
「それで主様、どうするつもりなの?」
エドウィンの言葉に顔を向けると、貴族街の真ん中で立ち止まる。
「とりあえず証拠とか手がかりを見つけないと話にならない。そのためには屋敷にある地下室を見つけるのが早いと思うんだけれど……」
「地下室?地下室があるの?」
しまった……これは小説の内容だった。
「あー、えーと、誘拐したのなら少女を隠す部屋が必要でしょ。たぶんそれが地下室だと思っただけ」
誤魔化す様に笑って見せると、エドウィンは腕を胸の前で組むと考え込んだ。
「ふーん、仮にそうだとして、屋敷に侵入するの?」
そこだよね。
貴族の屋敷に忍び込むのは難しい。
見張りも多いし、防犯対策もしっかりされている。
屋敷の中も広いし、もし運よく侵入できても探し出すまでの間に捕まってしまうだろう。
だけれども時間をかけて調査する暇はない……。
となれば地下室の入り口の手がかりになる情報を、思い出すしか方法はないだろう。
地下室へ続く通路。
どうだったかな……えーと、確かノア王子がトレイシーを救出する詳細に書かれていたはず。
屋敷に突入して……そうだ、キッチン。
調理場に入って奥の部屋、そこに扉が……。
その場所で扉を見つけて現場を確認すれば、調べるネタになる。
だけど貴族の屋敷に無断で侵入するのはリスクが高すぎる。
私達は剣の技術は学んだが、隠密系の授業はまだ学び始めたばかり。
知識も実践経験もない私たちが成功するとは思えない。
となれば理由をつけて正面から行くしかないよね。
「侵入はしない、正面から行こう。っとその前に……」
私は貴族街にある雑貨店へ入ると、高そうなブローチを一つ購入した。
伯爵からすれば安い物だろうけれど、口実にはこれで十分かな。
私はそのブローチを胸ポケットに入れると、エドウィンを連れガブリエルの屋敷へ向かったのだった。
「エドウィン、何も話さず立っていてくれるだけでいい。後は私がするから」
「むむむ……わかった。だけど何かするのならその前に合図だけして。目を見て頷いてくれたらいい」
「わかった、じゃぁ行こうか」
ガブリエルの屋敷へやってくると、門番に話を通し、エドウィンと共に中へ入る。
エントラスへ入った刹那、脳に映像が浮かび上がった。
ノア王子が騎士を連れて右の廊下を進み、奥へと消え去って行く映像。
私は残像を追うように顔を向けると、執事が左の廊下へ進んで行く。
その姿に私は左の廊下を進むと、応接室へと案内された。
さっきの映像で、この屋敷の内装をはっきり思い出した。
キッチンへ続く廊下の途中に手洗い場がある、これを利用しよう。
色々と計画を模索しながら暫く待っていると、ガブリエル伯爵がやってきた。
「ようこそ、リリー殿。お話とは何かな?」
彼は向かいのソファーへ腰かけると、護衛たちは下がり壁際へと移動する。
エドウィンもそれに倣うように私の後ろへ立つと、メイドが紅茶を運んできた。
「お忙しいところすみません。先ほど捕らえた少年についてなのですが……」
私は胸ポケットから、先ほどかったブローチを取り出すと机へ並べる。
「これは……女性もののブローチだね?どうしたのかな?」
「少年が持っていた物なのです。もしかしたらガブリエル伯爵殿に関係する持ち物かと思いまして」
ガブリエルは興味深げにブローチを手に取ると、すぐに眉を寄せた。
「いや、これは僕のではないよ。こんな安っぽいブローチを僕が買うわけないだろう」
「もちろん、それは重々承知しております。ですので……あの時連れられていた護衛の方のではと……。安いとおっしゃっても、平民には到底購入出来ない金額でしょうし、どなたかへの贈り物であれば困っていると思いまして」
ガブリエルは騎士の一人を呼び寄せると、ブローチを手渡した。
「ふむ、それもそうだね、確認してみよう。少し時間をもらえるかな?ここでお茶でも楽しんでいてくれ」
ガブリエルは立ち上がると、騎士と共に扉へ向かう。
メイドが新しいお茶を注ごうとする姿に立ち上がると、彼を引き留めた。
「あのすみません、お手洗いをお借りしたいのですが……」
「メイドに案内させよう」
メイドは手にしていたポットを置くと、こちらですと歩き始めた。
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