悪役令嬢はお断りです

あみにあ

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第三章

騎士達の祝賀会 (其の一)

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今日は城へ就任した新人騎士達を祝う、祝賀会が開かれる。
王もちろん、重鎮貴族、騎士団長や、司令官、将校、少佐など、お偉いさん方も参加する大きなパーティ。
式典は昼の部と夜の部に分けられ、昼は正式な式典、夜は騎士関係の人たちだけのどんちゃん騒ぎ。

青年騎士からは私とピーター、エドウィンの3名。
そして青年騎士を卒業し就任したての新人騎士が20名。
昼の式典では王に名を呼ばれ忠誠を誓う。
私達はノア王子に名を呼ばれ、同じように忠誠を誓うのだ。
堅苦しい式典が開くと、騎士達がざわざわとざわめき始めた。

祝賀会は小説で描かれていなかった気がする。
それはそうだろう、式典にトレイシーは参加しないのだから。
この世界は前世と違い、17歳で成人とみなされお酒もタバコも合法。
太陽が沈み暗くなった頃、先輩騎士たちに案内され、私達は飲み席の中央へ案内された。

私達を囲い酒盛りを始める先輩方。
断れるはずもなく、色々と飲まされあっという間に酔いが回ってくる。
前世はお酒に強かったはずなんだけれど、リリーはどうもアルコールに弱いようだ。

「リリー、楽しんでいるかい?君のためにお酒をもってきたよ」

「サイモン教官、ありがとうございます。あーですがまだグラスに残っていて……」

私はビールが半分ほど入ったグラスを見せると、すっかり出来上がっているサイモンは眉を寄せた。

「あれ~?僕のお酒が飲めないっていうの?この赤ワインすっごく美味しいんだよ」

サイモンはにこやかな笑みを浮かべると、赤ワインのボトルを見せ付ける。
私は苦笑いを浮かべると、半分ほど残ったビールグラスを見つめた。
うぅ……そう言われれば飲むしかない。
前世ならアルハラと言えるんだろうけれど……。
私は弱弱しく笑みを浮かべると、グラスのビールを一気に飲み干した。

同じように飲まされているピーターやエドウィンへ顔を向けると、ほのかに頬に赤みがかかっている程度で、まだまだいけそうだ。
あぁ……羨ましい。
昔の私ならこれぐらい余裕なんだけれど……はぁ……最後の赤ワインが利いた……。
先輩たちの盛り上がりの邪魔をしないよう、何とか理由をつけ席を立ち外へ出ると、私はテラスへ向かったのだった。

薄暗いテラスには誰の姿もない。
会場から騒がしい音が漏れているが、中より数段落ち着ける。
火照った頬を撫でる冷たい風。
あぁ、気持ちいい……。

夜空には満天の星が散らばっているが、酔っていて光がゆらゆらと揺れていた。
ぼうっと涼んでいると、後方からカサカサと足音が耳にとどく。
私はおもむろに振り返ると、視線の先にはトレイシーの姿。

「トレイシー?……今日はお城のお勤めじゃなかった?」

「えぇ、ですがリリー様が心配で……ここを担当していた執事の方にお願いして変わってもらいましたのですわ。それよりも大丈夫ですか?席を立たれたので心配になって……」

こんな可愛い女の子にお願いされて断る男性はいないだろう。

「あー、うん、ちょっと飲みすぎてしまって、トレイシーはいつ見ても可愛いね~」

「……ッッ、リリー様大分酔われておりますわね」

「酔ってないよ~」

「はぁ……酔っぱらいは皆そういうのですわ」

あーふわふわして気持ちいいのに、頭がガンガンする……。
これは間違いなく二日酔いだなぁ……。
トレイシーへ近づいていくと、グラッと体が傾く。
その様に彼女は慌てて私の体を支えると、解放するように抱きしめた。

「もうベロベロじゃないですか。こんなになるほど飲まれて……無理はいけませんわ。どうぞ後は私にお任せください」

耳元で囁かれた優しい言葉に、甘えるように目を閉じると、意識がプツリッと途切れた。

目覚めると、私はベッドの上に居た。
虚ろな瞳で辺りを見渡すと、ここはどうやらゲストルームのようだ。
あれ……いつの間に……会場へ戻らないと……。
おもむろに体を起こすと、頭がグランと揺れた。
気持ち悪い……。
前のめりに倒れそうになると、トレイシー私の体を支えた。

「リリー様、休んでいて下さい。飲み過ぎはいけませんわ。そんな状態でホールへ戻るのは許しません」

「トレイシ……?あぁ……ここまで運んでくれたんだね。ありがとう、ごめんね」

「いえ、仕給を変わってもらって正解でしたわ。お水飲まれますか?」

彼女は私の背を擦りながらグラスを口元へ近づけると、頭痛に視界がグラリと傾く。
グラスが唇からそれ水がボタボタと垂れると、服の上に零れた。

「ごめんなさいッッ、すぐにタオルを……」

「ううん、大丈夫……うぅッッ……んんん」

服の中にまで入り、ベトベトと張り付いて気持ち悪い。
体は暑し、気持ち悪いし、胸も苦しい。
私はすぐに濡れた上着を脱ぐと、さらしまで濡れている。
濡れたさらしを外すと、胸がスッと軽くなりそのままベッドへと横になった。
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