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第三章
ヒロインとの出会い (其の五)
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正面からトレイシーを連れて行けば騒ぎになるかもしれない。
雨も降っていないのにびしょぬれだし、彼女とお近づきになりたいと考えている生徒は多いだろうから。
だけどそんなことさせない。
だって彼女はノア王子の恋人だから。
彼女の手を引きながら裏手へ回ると、窓を開け部屋へと入る。
トレイシーを引っ張り上げ、ソファーへ座らせると、タオルと新しい服を探しに行った。
背丈も体格もそんなに変わらないから、この服で大丈夫かな?
後はタオルと……やっぱり先に湯あみさせたほうがいいか。
脱衣所へ入り私は先に服を脱ぐと、さらしを外し下着姿になる。
湯あみ用にお湯の準備を始めると、濡れた髪を振った。
準備が整い脱衣所を出ると、トレイシーが真っ赤な顔で目を逸らせる。
「あの、リリー様、その……」
「女同士だし恥ずかしがることないよ。これに早く着替えて、そのままじゃ風邪をひいちゃう」
下着姿のままトレイシーに近づくと、彼女はなぜかジリジリと後退った。
「恥ずかしがらないで、ねぇ?お風呂があれなら先に着替えましょう」
「あっ、いえ、その……違うんです……ッッ、えーと……」
壁際まで逃げたトレイシーの腕を引きよせると、髪をタオルで包みこむ。
トレイシーはなぜか体を硬直させ、こちらを見ようとしない。
女同士なのに、こんなに恥ずかしがるなんて予想外だ……。
よく見ると、服は私より濡れている。
早く着替えさせないと。
彼女の服のボタンを外すと、戸惑う彼女を宥めながら服を脱がせた。
シミーズは来ておらず肌があらわになったのだが……あるはずのものがそこにない。
胸は男のように平らで、私は首を傾げる。
胸が無くて……恥ずかしかった?
いやでも、これはちょっと……うん?
彼女の胸を改めてペタペタ触ると、細いが硬い胸板。
これはどうみても女のものではない。
私は目を見開くと、持っていた着替えが手から滑り落ちた。
あれ、どういうこと?
唖然としながらペタペタと何度も彼女の胸を触るが、やはり柔らかい感触が見当たらない。
これじゃまるで男……まさか、そんな……。
「あの……リリー様……触りすぎですわ。その……私……実は……」
「へぇっ!?あっと、ごめん、ごめんなさい、そんなつもりじゃ……ッッえーと」
恥じらう彼女の姿に、私は思いっきり後ろへ飛び退いた。
何が何だかよくわからない。
乱れた服を着なおす姿を唖然と見つめていると、彼女は悲し気に瞳を揺らす。
えっ、あれ、どうして?
トレイシーは男なの?
えっ、ちょっと待って、どういうこと?
彼女は王子のお相手で……えぇ!?えええええ!?
あの小説NLじゃなくて、BLだったの!?
いやいやいや、違う違う今考えるのはそこじゃない。
「えぇ?あの、えーと、トレイシーだよね……?」
驚きすぎてうまく言葉に出来ない。
彼女はコクリと頷くと、濡れた髪から雫が落ち、タオルを胸の前でギュッと握った。
「リリー様……騙していてごめんなさい。私……本当は男なんです……。色々と事情があって……」
爆弾発言。
本当に男なの?
えっ、それじゃ王子と結婚出来ないんじゃ?
いや、どうなんだろう愛があれば可能か。
いやいやいや、子供出来ないと無理だよね。
ノア王子の立場的に跡取りが必要になるし、でもそれなら愛人を作ればいいだけか。
色んな思いと情報が多すぎて、脳の処理が追い付かない。
トレイシーを見つめたまま固まっていると、彼女の瞳が間近に迫る。
「あの……気持ち悪いですわよね。……男なのに女の姿をしているなんて。……本当にごめんなさい……」
今にも泣きだしそうなその瞳に、私はようやく我に返ると、彼女の手を握った。
「ごめん、そんなことない。気持ち悪いなんて思ってない。ただ驚きすぎてパニックになっちゃっただけ。正直男とか女とか関係ないと思う。その姿はとってもよく似合っているし可愛い。トレイシーはそのままでいいと思うよ。それに私も女なのに、騎士なんて目指しているでしょう、同じだね」
「リリー様……」
トレイシーは瞳から大粒の涙を零すと、私に抱きつき顔を埋める。
彼女の肩を抱き返すと、ゴツゴツしていて、改めて男だと実感したのだった。
雨も降っていないのにびしょぬれだし、彼女とお近づきになりたいと考えている生徒は多いだろうから。
だけどそんなことさせない。
だって彼女はノア王子の恋人だから。
彼女の手を引きながら裏手へ回ると、窓を開け部屋へと入る。
トレイシーを引っ張り上げ、ソファーへ座らせると、タオルと新しい服を探しに行った。
背丈も体格もそんなに変わらないから、この服で大丈夫かな?
後はタオルと……やっぱり先に湯あみさせたほうがいいか。
脱衣所へ入り私は先に服を脱ぐと、さらしを外し下着姿になる。
湯あみ用にお湯の準備を始めると、濡れた髪を振った。
準備が整い脱衣所を出ると、トレイシーが真っ赤な顔で目を逸らせる。
「あの、リリー様、その……」
「女同士だし恥ずかしがることないよ。これに早く着替えて、そのままじゃ風邪をひいちゃう」
下着姿のままトレイシーに近づくと、彼女はなぜかジリジリと後退った。
「恥ずかしがらないで、ねぇ?お風呂があれなら先に着替えましょう」
「あっ、いえ、その……違うんです……ッッ、えーと……」
壁際まで逃げたトレイシーの腕を引きよせると、髪をタオルで包みこむ。
トレイシーはなぜか体を硬直させ、こちらを見ようとしない。
女同士なのに、こんなに恥ずかしがるなんて予想外だ……。
よく見ると、服は私より濡れている。
早く着替えさせないと。
彼女の服のボタンを外すと、戸惑う彼女を宥めながら服を脱がせた。
シミーズは来ておらず肌があらわになったのだが……あるはずのものがそこにない。
胸は男のように平らで、私は首を傾げる。
胸が無くて……恥ずかしかった?
いやでも、これはちょっと……うん?
彼女の胸を改めてペタペタ触ると、細いが硬い胸板。
これはどうみても女のものではない。
私は目を見開くと、持っていた着替えが手から滑り落ちた。
あれ、どういうこと?
唖然としながらペタペタと何度も彼女の胸を触るが、やはり柔らかい感触が見当たらない。
これじゃまるで男……まさか、そんな……。
「あの……リリー様……触りすぎですわ。その……私……実は……」
「へぇっ!?あっと、ごめん、ごめんなさい、そんなつもりじゃ……ッッえーと」
恥じらう彼女の姿に、私は思いっきり後ろへ飛び退いた。
何が何だかよくわからない。
乱れた服を着なおす姿を唖然と見つめていると、彼女は悲し気に瞳を揺らす。
えっ、あれ、どうして?
トレイシーは男なの?
えっ、ちょっと待って、どういうこと?
彼女は王子のお相手で……えぇ!?えええええ!?
あの小説NLじゃなくて、BLだったの!?
いやいやいや、違う違う今考えるのはそこじゃない。
「えぇ?あの、えーと、トレイシーだよね……?」
驚きすぎてうまく言葉に出来ない。
彼女はコクリと頷くと、濡れた髪から雫が落ち、タオルを胸の前でギュッと握った。
「リリー様……騙していてごめんなさい。私……本当は男なんです……。色々と事情があって……」
爆弾発言。
本当に男なの?
えっ、それじゃ王子と結婚出来ないんじゃ?
いや、どうなんだろう愛があれば可能か。
いやいやいや、子供出来ないと無理だよね。
ノア王子の立場的に跡取りが必要になるし、でもそれなら愛人を作ればいいだけか。
色んな思いと情報が多すぎて、脳の処理が追い付かない。
トレイシーを見つめたまま固まっていると、彼女の瞳が間近に迫る。
「あの……気持ち悪いですわよね。……男なのに女の姿をしているなんて。……本当にごめんなさい……」
今にも泣きだしそうなその瞳に、私はようやく我に返ると、彼女の手を握った。
「ごめん、そんなことない。気持ち悪いなんて思ってない。ただ驚きすぎてパニックになっちゃっただけ。正直男とか女とか関係ないと思う。その姿はとってもよく似合っているし可愛い。トレイシーはそのままでいいと思うよ。それに私も女なのに、騎士なんて目指しているでしょう、同じだね」
「リリー様……」
トレイシーは瞳から大粒の涙を零すと、私に抱きつき顔を埋める。
彼女の肩を抱き返すと、ゴツゴツしていて、改めて男だと実感したのだった。
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