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第二章
未来の護衛騎士 (其の二)
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すぐに馬車の扉が開くと、ノア王子が身を乗り出す。
「ピーター、リリーは、リリーは見つかったの?」
辺りをキョロキョロ見渡すノア王子。
ピーターはノア王子の前へ跪くと、頭を垂れた。
「はい、見つけたのですが……ひどい怪我を負っており、瀕死の重症、連れ戻せない状態です。早急に医者と薬を手配していただきたい」
診断書をノア王子へ差し出すと、目を通し騎士へ指示を出す。
「すぐに王都の医者へこれを、急げ」
「はい」
紙を渡された騎士は、王都へ続く街門に向かうと馬車一頭手配し、城へと向かって行った。
「ピーターよくやった。本当にありがとう。僕もリリーのところへ行きたいが……それは叶わないだろう。守ってくれた彼女のためにも、僕は僕の役割を果たす。リリーを頼んだ」
「はい、必ずやリリーを救います」
ノア王子は深く頷くと、ピーターへ背を向け馬車の中へ戻る。
出発しようとする馬車に、ピーターは士官の前へ回り込むと、静かに跪いた。
「ダニエル士官、報告いたします。リリーを人狼の村で発見し、誘拐した実行犯を捕まえました。加えて裏に黒いローブの人物が関わっているとの情報を得ました。城まで連行するべきかと思い、生かし捕らえております」
「ほう、人狼か。よくやった、すぐに人員を送ろう。だが今回の単独行動は許されるものではないぞ。上官の命令は絶対だ。隊として動くならなおさらだ。その勝手な行動は大切な仲間の命を奪う結果にもなりえる。今回は運が良かっただけだ。肝に銘じておくよう、次はないと思え」
「はい、深く反省します。申し訳ございませんでした」
ピーターは静々頭を下げると、ダニエル士官へ敬礼を見せた。
ダニエル士官から水と食料をもらい、ピーターはエドウィンの元へ戻る。
燻製した肉と水をエドウィンへ渡すと、鼻を寄せクンクンと匂いを嗅いだ。
「とりあえず休憩だ、城から薬と道具を手に入れたら戻るぞ。夜通し走って疲れただろう?あーその姿だと話せないのか」
エドウィンはチラッとピーターへ視線を向けると、一瞬止まり考え込む。
次の瞬間、ボワッと白い煙が上がると、エドウィンは人型になっていた。
しかし先ほどとは違い、獣の耳に尻尾、鼻さきは尖り人間ではない。
「一応人型にはなれる。だけどこの姿好きじゃない」
素っ裸のエドウィンに、ピーターは慌てて馬車からローブを調達してくると投げつける。
「これを着とけ。それにしてもリリーがいないと人間になれないってのは本当なんだな。どんな仕組みなんだ?」
「知らない。ところであんた強いね。俺も強くなりたい。主様に頼られる存在になりたい。今の俺じゃ無理だ……あんたに敵わない。主様もあんたを信用している。俺は……主様が倒れて、どうすることも出来ずに、動けなかった」
エドウィンはシュンっと尻尾を下げると、バツの悪そうな顔を浮かべた。
「おーサンキュー。ああいうのは場数と知識だろう。お前も十分凄いと思うけどな。人間じゃあのスピードで、夜通し走り続けるなんて無理だ。今以上に強くなりたいなら、剣を扱えるようになるところからだな。身体能力はずば抜けているんだ、すぐに強くなれる」
「本当?お前ムカツク奴だけど、いい奴だな。俺も強くなって主様を守りたい。だから剣を教えてくれ」
「ムカツクってお前なぁ。はぁ……いいぜ。その忠誠心は本物のようだしな。王都に入る為の保証人は俺がなってやる。だが教えるのに一つ条件がある、人型になるときにあいつにキッ、……ッッスするな」
「むぅ、……わかった、唇には触れない。だけどリリーは俺の主様だから、お前も馴れ馴れしくするなよ」
ピーターは呆れた様子で深い息を吐き出すと、わかったよと呟き燻製肉を頬張った。
「ピーター、リリーは、リリーは見つかったの?」
辺りをキョロキョロ見渡すノア王子。
ピーターはノア王子の前へ跪くと、頭を垂れた。
「はい、見つけたのですが……ひどい怪我を負っており、瀕死の重症、連れ戻せない状態です。早急に医者と薬を手配していただきたい」
診断書をノア王子へ差し出すと、目を通し騎士へ指示を出す。
「すぐに王都の医者へこれを、急げ」
「はい」
紙を渡された騎士は、王都へ続く街門に向かうと馬車一頭手配し、城へと向かって行った。
「ピーターよくやった。本当にありがとう。僕もリリーのところへ行きたいが……それは叶わないだろう。守ってくれた彼女のためにも、僕は僕の役割を果たす。リリーを頼んだ」
「はい、必ずやリリーを救います」
ノア王子は深く頷くと、ピーターへ背を向け馬車の中へ戻る。
出発しようとする馬車に、ピーターは士官の前へ回り込むと、静かに跪いた。
「ダニエル士官、報告いたします。リリーを人狼の村で発見し、誘拐した実行犯を捕まえました。加えて裏に黒いローブの人物が関わっているとの情報を得ました。城まで連行するべきかと思い、生かし捕らえております」
「ほう、人狼か。よくやった、すぐに人員を送ろう。だが今回の単独行動は許されるものではないぞ。上官の命令は絶対だ。隊として動くならなおさらだ。その勝手な行動は大切な仲間の命を奪う結果にもなりえる。今回は運が良かっただけだ。肝に銘じておくよう、次はないと思え」
「はい、深く反省します。申し訳ございませんでした」
ピーターは静々頭を下げると、ダニエル士官へ敬礼を見せた。
ダニエル士官から水と食料をもらい、ピーターはエドウィンの元へ戻る。
燻製した肉と水をエドウィンへ渡すと、鼻を寄せクンクンと匂いを嗅いだ。
「とりあえず休憩だ、城から薬と道具を手に入れたら戻るぞ。夜通し走って疲れただろう?あーその姿だと話せないのか」
エドウィンはチラッとピーターへ視線を向けると、一瞬止まり考え込む。
次の瞬間、ボワッと白い煙が上がると、エドウィンは人型になっていた。
しかし先ほどとは違い、獣の耳に尻尾、鼻さきは尖り人間ではない。
「一応人型にはなれる。だけどこの姿好きじゃない」
素っ裸のエドウィンに、ピーターは慌てて馬車からローブを調達してくると投げつける。
「これを着とけ。それにしてもリリーがいないと人間になれないってのは本当なんだな。どんな仕組みなんだ?」
「知らない。ところであんた強いね。俺も強くなりたい。主様に頼られる存在になりたい。今の俺じゃ無理だ……あんたに敵わない。主様もあんたを信用している。俺は……主様が倒れて、どうすることも出来ずに、動けなかった」
エドウィンはシュンっと尻尾を下げると、バツの悪そうな顔を浮かべた。
「おーサンキュー。ああいうのは場数と知識だろう。お前も十分凄いと思うけどな。人間じゃあのスピードで、夜通し走り続けるなんて無理だ。今以上に強くなりたいなら、剣を扱えるようになるところからだな。身体能力はずば抜けているんだ、すぐに強くなれる」
「本当?お前ムカツク奴だけど、いい奴だな。俺も強くなって主様を守りたい。だから剣を教えてくれ」
「ムカツクってお前なぁ。はぁ……いいぜ。その忠誠心は本物のようだしな。王都に入る為の保証人は俺がなってやる。だが教えるのに一つ条件がある、人型になるときにあいつにキッ、……ッッスするな」
「むぅ、……わかった、唇には触れない。だけどリリーは俺の主様だから、お前も馴れ馴れしくするなよ」
ピーターは呆れた様子で深い息を吐き出すと、わかったよと呟き燻製肉を頬張った。
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