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第二章
帰ってきた王都 (其の一)
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私の話を人狼たちへ伝えた結果、話し合いは出発する当日まで続いた。
人間と共存することに反対する者と、共存に賛成する者が半々。
意見は真っ二つに割れ、荒れに荒れたが……子供の未来を考えた結果、最終的に私の案に同意してくれたのだった。
後は私が王へ提言するだけ。
以前ノア王子を母から救出した際の報酬をまだもらっていない。
期限を設けないその言葉を信じ、話してみよう。
それに人狼を国へ属させるのは、こちらとしても悪い提案ではない。
彼らは人間よりもすぐれた身体能力を備えてる。
国に恩を感じれば、彼ら自らが立ち上がり、国防の一つとして役立つだろう。
エドウィンが王都へ来ることになれば、彼らもまとめやすくなる。
それにエドウィンの故郷が近くなり、会いたいときにいつでも会いに行ける。。
今まで通り移動する生活を続けていけば、エドウィンはもう二度と彼らに会えないかもしれないのだから。
騎士達へ同行し王都へ戻る途中、馬車の中で頭領を尋問した報告を受けた。
盗賊たちに依頼した犯人は黒いローブの集団。
詳細を聞くと、彼の母親の事件に関わっていた人物と特徴が同じだった。
彼らはある日突然盗賊たちの前に現れ、人狼の情報をくれたらしい。
その情報と引き換えに、ノア王子が隣国へ行く日付と時間の情報を提供し、王子を差し出すよう言われたようだ。
なぜノア王子の予定を知っていたのか、人間から隠れる人狼の居場所を知っていたのか、それは頭領も知らなかった。
頭領の情報から、黒いローブの集団について調べると、どうやら最近隣国で勢力を伸ばしていると教団だとわかった。
それと彼らのシンボル、黒バラのクロス。
信者の体のどこかに必ず書かれているのだとか。
何でも数か月前、隣国で起こった大地震、厄災を予言したのだとか。
予言を言い当て、爆発的に信者を増やしたことで、隣国で何かトラブルになっているようだ。
詳細については詳しく教えてもらえなかった。
もしかしたらノア王子が今回隣国へ行くことになった理由が、この教団に関わっているのかもしれない。
隣国へ数名の騎士を送り込んでいるが、教祖や内情についての有力な情報はまだ得られていない。
教団の上層部は、教祖の信頼できる者で固められ、外部へ情報が流れないよう徹底していた。
隣国で布教している教団が、なぜノア王子を狙うのだろうか。
彼を利用してさらに布教を進める?
それにしてはリスクが高すぎる。
身代金目的はありえない。
はそれほど信者がいるんなら、資金運用は問題ないはず。
今回隣国へ向かうノア王子を阻止したかった……?
それだと母親を利用し誘拐を助長した理由に結び付かない。
まぁなんにせよ、その教団についてわかるまで、ノア王子が王都から出ることはないだろう。
王都の中なら、ノア王子も安全。
黒いローブの怪しい教団が、あの街へ入れるはずないのだから。
私は王都へ戻ると、すぐに城門を潜った。
隣にはピーターと人型のエドウィン。
ピーターはいつも通りだが、エドウィンは私にピッタリ張り付きながら隣を歩く。
「エドウィン、もう少し離れて歩こうか。歩きづらいでしょう?」
「歩きづらくない。怪我している主様に、これ以上何かある方が心配。だから離れない」
真剣でまっすぐにな瞳。
エドウィンはひと時も離れるつもりはないようだ。
純粋に心配してくれるのは嬉しい。
だけどこれはちょっと近すぎるんじゃないかな……。
でもこれ以上何も言えないよね。
そんな彼に弱弱しく微笑むと、私は心の中でため息をついた。
城の大門へやってくると、そこにノア王子が待っていた。
一月ほど会っていないだけだが、なぜかとても懐かしく感じる。
青い髪が太陽に照らされ、元気そうな彼の姿を見ると、胸が温かくなった。
「戻りました、ノア王子」
私はエドウィンを手で静止し、一人前へ進むと、胸に手を当て敬礼する。
「お帰り、リリー」
ノア王子はニッコリ笑みを浮かべ、手を広げる姿に一瞬戸惑う。
けれど私も腕を広げ近づくと、抱擁を交わした。
こうして改めてノア王子に触れると、伸びた背に、厚い胸板、角ばった手、大人になっていく彼の成長を感じた。
「リリー話は聞いているよ。本当に無事でよかった。だけどこれはどういうことなのかな?」
ノア王子は黒い笑みを浮かべると、体を離し私の後ろへ顔を向ける。
エドヴィンはムッとした表情を浮かべると、ノア王子から引き剥がすように、私の腕を引き寄せた。
そして玩具を取られたくない子供のように、私をギュッと抱きしめる。
「主様、そいつ誰?」
耳元に彼の吐息がかかると、くすぐったさに身をよじらせた。
「ちょっ、エドウィン、コラッ、ダメ、離しなさい。ちゃんと説明したでしょう。この方は私の主様でノア王子よ。あー、えーと、彼は私を助けてくれた人狼です」
「エドウィン……君がリリーを助けた人狼か。人狼とは思えないね。僕たちとの違いがわからない」
体をくねらせエドウィンの腕から逃れると、慌ててノア王子へと向き直る。
逃げたことが気に食わなかったのか、エドウィンは拗ねた表情を見せるが、私は気にせず話し始める。
「彼が逃がしてくれていなければ、私は盗賊たちに売り飛ばされていました。それで彼についてなのですが……」
話を続けようとすると、エドウィンが私の前に回り込む。
慌てて後ろへ下がらせようとした刹那、エドウィンはさり気なく私の顎をクイッ持ち上げたかと思うと、舌が唇の隣へ触れた。
人間と共存することに反対する者と、共存に賛成する者が半々。
意見は真っ二つに割れ、荒れに荒れたが……子供の未来を考えた結果、最終的に私の案に同意してくれたのだった。
後は私が王へ提言するだけ。
以前ノア王子を母から救出した際の報酬をまだもらっていない。
期限を設けないその言葉を信じ、話してみよう。
それに人狼を国へ属させるのは、こちらとしても悪い提案ではない。
彼らは人間よりもすぐれた身体能力を備えてる。
国に恩を感じれば、彼ら自らが立ち上がり、国防の一つとして役立つだろう。
エドウィンが王都へ来ることになれば、彼らもまとめやすくなる。
それにエドウィンの故郷が近くなり、会いたいときにいつでも会いに行ける。。
今まで通り移動する生活を続けていけば、エドウィンはもう二度と彼らに会えないかもしれないのだから。
騎士達へ同行し王都へ戻る途中、馬車の中で頭領を尋問した報告を受けた。
盗賊たちに依頼した犯人は黒いローブの集団。
詳細を聞くと、彼の母親の事件に関わっていた人物と特徴が同じだった。
彼らはある日突然盗賊たちの前に現れ、人狼の情報をくれたらしい。
その情報と引き換えに、ノア王子が隣国へ行く日付と時間の情報を提供し、王子を差し出すよう言われたようだ。
なぜノア王子の予定を知っていたのか、人間から隠れる人狼の居場所を知っていたのか、それは頭領も知らなかった。
頭領の情報から、黒いローブの集団について調べると、どうやら最近隣国で勢力を伸ばしていると教団だとわかった。
それと彼らのシンボル、黒バラのクロス。
信者の体のどこかに必ず書かれているのだとか。
何でも数か月前、隣国で起こった大地震、厄災を予言したのだとか。
予言を言い当て、爆発的に信者を増やしたことで、隣国で何かトラブルになっているようだ。
詳細については詳しく教えてもらえなかった。
もしかしたらノア王子が今回隣国へ行くことになった理由が、この教団に関わっているのかもしれない。
隣国へ数名の騎士を送り込んでいるが、教祖や内情についての有力な情報はまだ得られていない。
教団の上層部は、教祖の信頼できる者で固められ、外部へ情報が流れないよう徹底していた。
隣国で布教している教団が、なぜノア王子を狙うのだろうか。
彼を利用してさらに布教を進める?
それにしてはリスクが高すぎる。
身代金目的はありえない。
はそれほど信者がいるんなら、資金運用は問題ないはず。
今回隣国へ向かうノア王子を阻止したかった……?
それだと母親を利用し誘拐を助長した理由に結び付かない。
まぁなんにせよ、その教団についてわかるまで、ノア王子が王都から出ることはないだろう。
王都の中なら、ノア王子も安全。
黒いローブの怪しい教団が、あの街へ入れるはずないのだから。
私は王都へ戻ると、すぐに城門を潜った。
隣にはピーターと人型のエドウィン。
ピーターはいつも通りだが、エドウィンは私にピッタリ張り付きながら隣を歩く。
「エドウィン、もう少し離れて歩こうか。歩きづらいでしょう?」
「歩きづらくない。怪我している主様に、これ以上何かある方が心配。だから離れない」
真剣でまっすぐにな瞳。
エドウィンはひと時も離れるつもりはないようだ。
純粋に心配してくれるのは嬉しい。
だけどこれはちょっと近すぎるんじゃないかな……。
でもこれ以上何も言えないよね。
そんな彼に弱弱しく微笑むと、私は心の中でため息をついた。
城の大門へやってくると、そこにノア王子が待っていた。
一月ほど会っていないだけだが、なぜかとても懐かしく感じる。
青い髪が太陽に照らされ、元気そうな彼の姿を見ると、胸が温かくなった。
「戻りました、ノア王子」
私はエドウィンを手で静止し、一人前へ進むと、胸に手を当て敬礼する。
「お帰り、リリー」
ノア王子はニッコリ笑みを浮かべ、手を広げる姿に一瞬戸惑う。
けれど私も腕を広げ近づくと、抱擁を交わした。
こうして改めてノア王子に触れると、伸びた背に、厚い胸板、角ばった手、大人になっていく彼の成長を感じた。
「リリー話は聞いているよ。本当に無事でよかった。だけどこれはどういうことなのかな?」
ノア王子は黒い笑みを浮かべると、体を離し私の後ろへ顔を向ける。
エドヴィンはムッとした表情を浮かべると、ノア王子から引き剥がすように、私の腕を引き寄せた。
そして玩具を取られたくない子供のように、私をギュッと抱きしめる。
「主様、そいつ誰?」
耳元に彼の吐息がかかると、くすぐったさに身をよじらせた。
「ちょっ、エドウィン、コラッ、ダメ、離しなさい。ちゃんと説明したでしょう。この方は私の主様でノア王子よ。あー、えーと、彼は私を助けてくれた人狼です」
「エドウィン……君がリリーを助けた人狼か。人狼とは思えないね。僕たちとの違いがわからない」
体をくねらせエドウィンの腕から逃れると、慌ててノア王子へと向き直る。
逃げたことが気に食わなかったのか、エドウィンは拗ねた表情を見せるが、私は気にせず話し始める。
「彼が逃がしてくれていなければ、私は盗賊たちに売り飛ばされていました。それで彼についてなのですが……」
話を続けようとすると、エドウィンが私の前に回り込む。
慌てて後ろへ下がらせようとした刹那、エドウィンはさり気なく私の顎をクイッ持ち上げたかと思うと、舌が唇の隣へ触れた。
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