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第一章
芽吹いた気持ち (其の三)
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ノア王子と話す機会が増えていくと、何気ない話の合間に、よく私へ質問を投げかけてくるようになった。
例えば……
「リリーの好きな食べ物は?」
「好きな食べ物ですか、あー、そうですね、兎のステーキが好きです」
「へぇー珍しいね。令嬢は甘い物が好きだと思ってた」
「甘い物も嫌いじゃないですよ。けど筋肉をつけるためにもやっぱりお肉です」
そう答えると、ノア王子はなぜかいつも手帳を取り出して書き記ししていくのだ。
「好きな花は?」
「花ですか……そうですね、家に咲いていたカーネーションが好きですね。ひらひらして可愛いです」
その後も続く質問。
時々こうした質問攻めに戸惑うこともある。
何を記録しているのか、ノートをのぞき込もうとすると、すぐに隠されるのだけれども……。
「好きな色は?」
「青ですね、ノア王子の瞳のような透き通った青色が好きです」
小説を読んでいた頃も、彼の瞳の色が好きだった。
サファイアとも違う、海の色とも違う、本ではもっと冷たくて冷え冷えしていたけれど……。
今のノア王子の瞳の色が一番好き。
綺麗だと彼の瞳を見つめると、ノア王子は頬を赤く染め視線をそらせた。
「ッッ、そういうのほんと反則……」
「えっ、どうしたんですか?」
「何でもない……ッッ、好きな本は?」
本か……。
この世界で読んだ本は、貴族のマナー書だったり勉強に関するものばかりで、令嬢だったころ、物語を読んだ記憶はない。
騎士を目指し始めてからは、教科書以外の本を読む機会もなかった。
でも私が一番好きな本は、今も昔も変わっていない。
「私はこうみえて、恋愛小説が好きなんですよ」
題名は伏せ、王子と侍女の恋愛、この先の彼の未来を語ってみる。
これから歩むはずの彼の歩く先に少しでも役に立てると嬉しい。
この世界に転生してわかったことだが、王子と侍女の恋愛なんてうまくいくはずがないから。
「それでですね、王子が最後に告白するシーンがすごくいいんですよ」
「ふーん、どんなふうに告白するの?」
「それはですね……」
その言葉を必死にメモするノア王子。
何を書いているのかわからないけれど、彼が侍女と出会ってそうしてくれればとても嬉しい。
そんなことを考えながら、私はニッコリとほほ笑んだのだった。
★おまけ(ノア視点)
彼女の怪我は僕のせい。
令嬢にとって大事な髪を切らせたのも僕だ。
だから毎日様子を見に行こうと決めた。
時間があれば、彼女の病室へ。
起き上がれない彼女に水を与えて、他愛のない話をする。
次第にその時間を幸せだと感じる自分がいた。
彼女が笑うと胸がポッと熱くなって……。
彼女をもっと知りたいと思った。
過ごす時間が楽しくて、病院生活を長引かせたのも僕だ。
だけどさすがにこれ以上引き延ばせなくて、彼女は宿舎へ戻ってしまった。
つい彼女に会いに行こうと、無理矢理時間を作るけれど、もう城に彼女はいない。
ぽっかりと胸に空いた穴。
その穴を埋めるために、僕は訓練場へ彼女を見に行った。
元気になった彼女の姿に安心する。
だけど何か物足りない。
話しかけようとしたけれど、どうしてか一歩が踏み出せなかった。
ピーターと仲良さそうに話す姿に、胸にモヤモヤした何かが込み上げる。
笑う彼女を見ると、何とも言えない苛立ちのようなものを感じ始めていた。
そんなある日、彼女が話しかけてくれた。
嬉しかった、笑った笑みを見るとまた胸が熱くなる。
まっすぐに目を見れなくて、胸がドキドキするんだ。
こんな感情初めてで、戸惑って……。
だけど彼女が他の男と話しているのを見ると苛立って。
僕を見てほしくて、男子生徒と話している彼女を捕まえた。
他の男たちと同じようにはなりたくなくて。
彼女を理解したくて。
僕を見て笑ってくれる彼女を独り占めしたくて。
そこで初めて気が付いた。
僕は彼女を好きなのだと。
やっとわかったモヤモヤの意味。
令嬢に僕がこんな感情を抱く日がくるなんて。
信じられないけれど、この気持ちに嘘はないそう確信したのだった。
例えば……
「リリーの好きな食べ物は?」
「好きな食べ物ですか、あー、そうですね、兎のステーキが好きです」
「へぇー珍しいね。令嬢は甘い物が好きだと思ってた」
「甘い物も嫌いじゃないですよ。けど筋肉をつけるためにもやっぱりお肉です」
そう答えると、ノア王子はなぜかいつも手帳を取り出して書き記ししていくのだ。
「好きな花は?」
「花ですか……そうですね、家に咲いていたカーネーションが好きですね。ひらひらして可愛いです」
その後も続く質問。
時々こうした質問攻めに戸惑うこともある。
何を記録しているのか、ノートをのぞき込もうとすると、すぐに隠されるのだけれども……。
「好きな色は?」
「青ですね、ノア王子の瞳のような透き通った青色が好きです」
小説を読んでいた頃も、彼の瞳の色が好きだった。
サファイアとも違う、海の色とも違う、本ではもっと冷たくて冷え冷えしていたけれど……。
今のノア王子の瞳の色が一番好き。
綺麗だと彼の瞳を見つめると、ノア王子は頬を赤く染め視線をそらせた。
「ッッ、そういうのほんと反則……」
「えっ、どうしたんですか?」
「何でもない……ッッ、好きな本は?」
本か……。
この世界で読んだ本は、貴族のマナー書だったり勉強に関するものばかりで、令嬢だったころ、物語を読んだ記憶はない。
騎士を目指し始めてからは、教科書以外の本を読む機会もなかった。
でも私が一番好きな本は、今も昔も変わっていない。
「私はこうみえて、恋愛小説が好きなんですよ」
題名は伏せ、王子と侍女の恋愛、この先の彼の未来を語ってみる。
これから歩むはずの彼の歩く先に少しでも役に立てると嬉しい。
この世界に転生してわかったことだが、王子と侍女の恋愛なんてうまくいくはずがないから。
「それでですね、王子が最後に告白するシーンがすごくいいんですよ」
「ふーん、どんなふうに告白するの?」
「それはですね……」
その言葉を必死にメモするノア王子。
何を書いているのかわからないけれど、彼が侍女と出会ってそうしてくれればとても嬉しい。
そんなことを考えながら、私はニッコリとほほ笑んだのだった。
★おまけ(ノア視点)
彼女の怪我は僕のせい。
令嬢にとって大事な髪を切らせたのも僕だ。
だから毎日様子を見に行こうと決めた。
時間があれば、彼女の病室へ。
起き上がれない彼女に水を与えて、他愛のない話をする。
次第にその時間を幸せだと感じる自分がいた。
彼女が笑うと胸がポッと熱くなって……。
彼女をもっと知りたいと思った。
過ごす時間が楽しくて、病院生活を長引かせたのも僕だ。
だけどさすがにこれ以上引き延ばせなくて、彼女は宿舎へ戻ってしまった。
つい彼女に会いに行こうと、無理矢理時間を作るけれど、もう城に彼女はいない。
ぽっかりと胸に空いた穴。
その穴を埋めるために、僕は訓練場へ彼女を見に行った。
元気になった彼女の姿に安心する。
だけど何か物足りない。
話しかけようとしたけれど、どうしてか一歩が踏み出せなかった。
ピーターと仲良さそうに話す姿に、胸にモヤモヤした何かが込み上げる。
笑う彼女を見ると、何とも言えない苛立ちのようなものを感じ始めていた。
そんなある日、彼女が話しかけてくれた。
嬉しかった、笑った笑みを見るとまた胸が熱くなる。
まっすぐに目を見れなくて、胸がドキドキするんだ。
こんな感情初めてで、戸惑って……。
だけど彼女が他の男と話しているのを見ると苛立って。
僕を見てほしくて、男子生徒と話している彼女を捕まえた。
他の男たちと同じようにはなりたくなくて。
彼女を理解したくて。
僕を見て笑ってくれる彼女を独り占めしたくて。
そこで初めて気が付いた。
僕は彼女を好きなのだと。
やっとわかったモヤモヤの意味。
令嬢に僕がこんな感情を抱く日がくるなんて。
信じられないけれど、この気持ちに嘘はないそう確信したのだった。
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