悪役令嬢はお断りです

あみにあ

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第二章

新たな任務 (其の四)

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柔らかい木を編んで作られた小さな牢屋に投げ込まれ、身動きが取れない。
狐面の男たちは私が檻に入ったのを確認すると、急ぎ足で洞窟の入り口の方へ消えて行った。

辺りはシーンと静まり返り、風が通る音だけ響く。
見張りは誰もいない。
手首を縛られ、こんな小さな檻に入れられて抜け出せる人間はそうそういないからだろう。
だけどこれはチャンス。
主犯は頭領と呼ばれた男で間違いない。
犯人が分かった今、何とかして逃げださないと……。

この手首の縄さえはずせばなんとかなるはず。
このまま黙って売らるわけにはいかない。
さっきの様子、狐面の男たちは脅されているだけ。
忠誠心がないのならば、こちら側に抱き込むことが出来るだろう。
そのためにも脅されているその恐怖を取り除かないと。

ゴロンと体の向きを変え辺りを探ってみるが、薄暗い洞窟には何もない。
先ほどの馬車で武器になるようなものを見つけられなかったのが痛い。
もう少し早く目覚めてれば、何とかなったかもしれないのに……。
後ろで縛られたロープを外そうと試みるが、硬くピクリともしない。
腕に小さな痛みが走るが、私はかまうことなく力を入れ続けた。

「……ッッ、あぁもうッッ」

動けるスペースを利用して、体も動かしてみるがあまり効果はない。

必死にもがいていると、ふと黒い影が視界に映る。
動きをとめ警戒しながら顔を向けると、金色の瞳が二つ。
浮かび上がる瞳がゆっくりとこちらへやってくると、姿がはっきりと映った。

中型犬ほどの白い犬。
毛並みが整い、とても美しい。
首輪はないが、手入れされた姿は、誰かに飼われているだろうとわかる。

どうして犬がこんなところに……?
じっと金色の瞳を見つめていると、私の背後に周り、檻の隙間から手首のロープ齧り付いた。
外そうとしてくれてるの?
犬はガブガブと噛みつくと、ロープが緩み腕が自由になる。
体に巻かれたロープを外し体を起こすと、金色の瞳が間近に迫った。

「ありがとう、君のおかげで助かったよ」

よしよしと檻の隙間から手を伸ばし、頭を撫でようとすると、犬は一瞬怯えた様子を見せる。
安心させるように、体の方へ手を持って行くと、気持ちよさそうに目を細めた。

「可愛い。君はどうしてここにいるの?どうやってきたの?」

問いかけるが、もちろん返事はない。
もっとなでろと言わんばかりに、犬は横になるとご満悦の様子で瞳を閉じた。
よしよしとお腹を擦ってみると、尻尾がゆらゆらと揺れる。

「ふふっ、話しかけてもわからないよね。はぁ……拘束はなくなったけれど、この檻思ったよりやっかい」

檻をガタガタと何度も揺らしてみるが、柔軟な枝を使っていて折れる気配はない。
鍵は南京錠、力で壊すのは難しいだろう。
武器があれば簡単なんだけど……。
私は深く息を吐き出し両手で犬の顔を包むと、金色の瞳を覗き込む。

「もう少し早く思い出していれば、色々対策が出来たのに……。私っていつもそうなんだよね……」

前回の事件の時も、思い出したのは事件が起きる直前。
せっかく便利な記憶がるあるのに、上手く活用できていない。
ボソッと呟くと、犬は鼻を寄せながら近づいてくる。
慰めてくれているのだろうか、くぅ~んと小さく鳴くと、鼻をスリスリと擦りつけた。

このまま逃げ出せず売られてしまえば、もう彼らの元へ戻ることはないだろう。
この世界は前の世界と違って、人身売買が往々している。
異国に売られればそれまで、そこから永遠に逃げ出すことは出来ない。
奴隷として働かされるか、愛玩人形として飼われるか。
だからこそ私は何としてもここから脱出して、犯人の情報をお城へ持ち帰らなければ。

それにみんなに会えなくなるのは辛い。
王子と侍女が結ばれるところを見守りたい。
絶対ここから逃げ出してみせる……。
ノア王子やピーター、青年騎士のたち、両親や士官の顔が頭を過ると寂しさが込み上げた。
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