悪役令嬢はお断りです

あみにあ

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第二章

新たな任務 (其の三)

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バタバタバタと足音が響き、鎖の外す音が響く。
後方にある扉が観音開きに開き、中に光が差し込んだ。
眩しさに目が眩み、思わず顔を背ける。
連れ去られたのは夕刻だった。
太陽が昇っているということは、かなりの時間気絶していたのだろう。

「起きろ、外へ出るんだ」

眩む目をゆっくり開けると、屈強な体つきの男が6人。
光に目が慣れ彼らの姿が浮かび上がると、皆狐のようなお面をつけていた。
鼻先が尖り、面には耳もついていてよくできたお面だった。
お面が一斉にこちらをむくと、気味悪さを感じる。
男に腕を掴まれ立たされると、馬車から引きずり降ろされた。

「歩け」

足の縄が解かれる代わりに、黒い布で目隠しをされ視界を奪われる。
足場の悪い山道を目隠しで歩くのは容易ではない。
転びそうになる度に、男たちに引っ張りあげられながら山道を進んで行った。

どれぐらい歩いただろう、足場が土ではなくなり石になった。
ゴツゴツした感じはなく、真っすぐで躓くこともない。
歩きやすくなりペースが速くなると、布越しに光がぼやっと浮かび上がった。
蝋燭だろうか、炎のような明かりがゆらゆらと揺れている。
湿っぽい空気に、冷たい風が頬にあたると、ポタンッと水の音が反響した。
その音と様に、ここが洞窟だと推測する。

隣国へ続く近くの山に、洞窟があるなんて聞いたことがない。
時間の経過からしても近くて隣の山、もしくはそれよりも遠い場所に自分はいるのだろう。
男たちに先導されながら暫く進むと、突然背中を押され、私はその場に倒れ込む。
手をつこうとするが、縛られているため、私は前のめりに倒れ込んだ。
頭が石に打ち付ける前に、両脇いた男が私の体を支え、優しく地面へ落とす。
荒っぽく巻かれていた布が解かれると、ゆらゆらと揺れる松明が真横に見えた。

「頭領連れてきました」

「おぉーうまくいったようだな。青い髪にその紋章、やるじゃねぇか」

頭領と呼ばれた男は、満足げにほほ笑むと、髪をガシッと掴み私の頭を持ち上げる。
息が顔にかかると、異臭に顔が歪んだ。

「ノア王子殿、はじめ……うん……瞳の色が違う、お前は誰だ、お前ら誰を連れてきたんだ?」

狐の面をつけた男たちはヒィッと悲鳴を上げると、焦った様子で私の髪を引っ張り向きを変えさせた。

「いや、そんなはず……俺はちゃんと言われた通りにやった。真ん中のやつを捕まえて、それに紋章も確認して、青い髪、間違えるはずない」

「そうだ、計画は完璧だ。あの速さで替え玉何て用意出来るはずねぇ」

「おい、見ろ……嘘だろう、青い瞳じゃない……だがこの上着の紋章は……」

「おい、お前ら、失敗したらどうなるかわかってんのか!!!」

頭領は怒り任せて叫ぶと、近くにあった樽を思いっきりに蹴飛ばした。
樽がバラバラと割れ、中から赤い水が零れだすと、ワインの匂いが鼻を刺激する。

「頭領、待ってくれ。すまない、次は成功させるッッ、だから頼む、殺さないでくれ」

「あぁ、待ってくれ、家族には手を出さないでくれ、すぐにノア王子を連れて来る」

必死で縋る狐面の男たち。
頭領は苛立ちながら、私の上着を強引にはぎ取ると、下の服まで破れた。
騎士の紋章がはじけ飛びさらしがあらわになると、周りの男たちの動きがとまった。
そんな中頭領はニヤリと口角を上げると、シャツを引っ張り胸を覗き込む。

「ほう、女か。お前まさか、噂の女騎士だろう?これは面白れぇ。当初の計画は失敗したが、これはこれで高く売れるぞ」

ゲスな笑いに頭領を睨みつけると、私は弾くように首を振り彼の手から逃れる。

「生意気な女だ。だがその強気な目、いつまでもつかな?ガハハハ、お前ら、こいつを牢屋ぶち込んでおけ。今回の失敗は大目にみてやろう、次失敗したら、全員殺すからな。さっさと行け!!!」

狐の面をした男たちが私の傍へやってくると、腕を持ち上げ引きづるようにして洞窟の奥へと運んでいった。
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