悪役令嬢はお断りです

あみにあ

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第二章

新たな任務 (其の二)

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煙が次第に消え、視界が開けていく。
私はもうそこにはいない。
口に当てられ甘い匂いが鼻に一気に広がり、意識を失った。

馬車の中には、ノア王子とピーターの姿。
ケホケホと咳込みながらドアを開け、ピーターはノア王子の腕を取り外へと飛び出した。

「ッッ、ピーター、待て、リリーがいない」

残った煙を必死で払いながらピーターは馬車の中へ戻るが、そこには誰の姿もない。

「あのバカッ、くそっ」

誰もいないその様に、ピーターは思いっきり拳を叩きつけた。

「僕の上着……リリーが……リリーが僕の代わりに連れ去られたんだ。すぐに捜索を」

ノア王子は強い口調で指示を出すが、護衛騎士は誰一人として動かない。
シーンと静まり返る中、一人の騎士が近づいてきた。

「ノア王子、申し訳ございませんが、それは出来かねる」

今回同行していた士官のダニエル。
護衛騎士をまとめる今回の任務の指揮官だ。
騎士達はサッと道を開けると、胸に手を当て敬礼をみせた。

「ダニエル……王子である、僕の命令が聞けないの?お前たちは僕を守るためにいるんだろう」

「その通り。ですからリリーの行動は間違っていない。あなた様をお守りしただけのこと。さぁ皆、準備を。このまま隣国へ向う。それが王より私たちに課せられた使命だ」

「ダメだ、リリーをそのままにはしておけない。彼女を探さないのなら、僕は行かない」

ダニエルはスッと目を細めると、ノア王子を見下ろした。

「王子、駄々を捏ねるのは頂けない。王になればこの先こういう事は何度でも起こるだろう。私たちは王子を守るためにここいる。辛いとは思うが、リリーは必要な犠牲だった。理解し馬車へ戻るんだ」

「嫌だ、僕は戻らない、どこへも行かない」

ノア王子はきっぱり言い切ると、意思を示すように馬車から離れる。
騎士達は王子の背後に回り込むと、逃げ道を塞いだ。
ダニエルは深く息を吐き出し、ノア王子の腕を捕らえる。

「リリーは騎士として王子をお守りし、犠牲となった。ここであなた様が役目を果たさないのであれば、彼女の犠牲は全て水の泡となるがそれでもいいのか?もちろんリリーの捜索行う、大事な仲間だからな。だがあなた様を無事に隣国へ輸送する事が最優先事項。ここで駄々をこね続ければ、それだけ彼女の捜索が遅れるぞ」

凄みを利かせノア王子を見下ろすと、ノア王子は悔し気に唇を噛み、震える拳を握りしめる。
そんな王子の様子に、ダニエルはまた深く息を吐き出すと、騎士達へ顔を向けた。

「ピーターとそこの二人、ここへ残って犯人の手がかりを集めろ。深追いはするな」

「「承知しました」」

彼らは返事を返すと、森の中へ散らばって行った。





どれぐらい気絶していたのか……目覚めるとそこは馬車の中だった。
だが先ほどの馬車とは違い、荷物を運ぶ用のものだ。
木製の床に箱や瓶ケースが乱雑に置かれ、窓はない。
もちろんスプリングなどないため、ガタガタと衝撃がもろに体に伝わってくる。
起き上がろうとすると、手足は縛られ身動きは取れなかった。

どこへ向かっているんだろう。
先ほど思い出した本の内容は、隣国へ向かう途中何者かに襲撃されたそんな記録程度の情報。
犯人の目的や詳しい詳細は、物語に深く関わっておらず、起こった事実だけ。
小説では無事にノア王子は解放されたようだが、私はどうなるのか正直わからない。
体をモゾモゾ動かし這うように壁際へ移動すると、前方の方から微かに話し声が耳にとどいた。

「おい、本当に大丈夫なのか?王子を誘拐するなんてさ」

「いや、大丈夫じゃねぇだろう……だがこうする以外に方法がねぇんだからしょうがないだろう」

「まぁ……そうだな……」

「唯一の救いは、誰も傷つけずにノア王子を捕らえられたことだろうな……」

深刻そうな男の会話、重苦しい雰囲気。
それだけで彼らが計画した誘拐ではないのだとわかる。
口調から読み解くに、嫌だが無理矢理やらされているのだろう。
指示をした主犯は別にいる、なんとか突き止めないと。
腰の剣は奪われている。
犯人を見つけても、武器が無くては戦えなし、逃げられない。
とりあえず何か役に立ちそうなものは……。
薄暗い倉庫を見渡していると、馬車が停車した。
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