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異世界へ行った彼女の話:第二十二話
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エルヴィンに連れられるままに店を後にすると、外には乗車してきた馬車が待機していた。
馬車の前には執事が佇み、私たちの様子に、静かに扉を開けていく。
その刹那、グゥ~と腹の虫が小さく鳴いた。
慌ててお腹を押さえてみるも、時すでに遅し……エルヴィンは眉を潜めながらにゆっくりと振り返った。
ひぇ、なぜこのタイミングで……恥ずかしい……。
顔真っ赤に伏せていると、私は恥ずかしさに狼狽していた。
「……腹が減ったのか?」
「えっ、いや……うぅ……そんな事はないんだけれど……えへへっ」
笑って誤魔化しながらにそうボソボソと話すと、エルヴィンは先に馬車の傍へと進んでいく。
そうして執事と何か話したかと思うと、馬車の扉が静かに閉まっていった。
あれ……どうしたのかな……。
「俺も腹が減ったからな、どこかへ食べに行くぞ。食べたいものはあるのか?」
「へぇ!?いや、いいよいいよ!大丈夫、気にしないで……!!!」
「うるさい、黙って俺の飯に付き合え」
エルヴィンはつっけんどんにそう言い放つと、むくれたままに私の腕を引っ張っていった。
そうして街中へとやってくると、そこは人で溢れ活気が満ち溢れていた。
ズラリと様々な店が連なり、行きかう人々が立ち止まり談笑を楽しむ姿。
店の前で客寄せする男性や、セカセカと急ぎ足歩いていく人々。
そんな人ごみに紛れていく中、女性の視線がチクチクと刺さることに気が付いた。
そっと顔を上げてみると、皆視線は私の隣……。
うっとりとした表情を浮かべる女性や、キャキャーを騒ぐ少女の姿。
なんせ連れているのは、城内での人気もある……美形も美形……エルヴィン。
まだ15歳……少年の面影はあるが……女性を惹きつけるには十分よね。
ねぇねぇ見て、あの子カッコいい!
声かけちゃおうよ~。
あれでも女連れじゃない。
うぅ……気まずい……。
チラッと窺うようにエルヴィンへ視線を向けてみると、彼は全く気にしていないようだ。
さすがイケメン……こういう事には慣れているのかな……。
チラチラと横目でエルヴィンを見る女性たちの言葉が耳にとどく中、ふとあちらこちらから良い匂いが漂ってきた。
そっと顔を上げると、いくつもの飲食店が連なっている。
露店も開かれ、美味しそうな匂いが立ち込めていた。
匂いにつられるようにキョロキョロ見渡していると、突然に彼が立ち止まった。
「ここにするぞ」
エルヴィンが立ち止まった視線の先は、大きなレストランだった。
歩いてきた中で見た店の中でも、ひときわ目立つ外観だ。
光が反射するほどの真っ白な壁に、おしゃれな庭が店を囲んでいる。
その圧倒的な存在感に思わず見惚れる中、入口には行列ができていた。
そのまま列に並ぶかと思いきや、エルヴィンは関係者用の扉を潜ると、そこにはオーナーらしき男性が佇んでいた。
「これはこれは、ようこそいらっしゃいました。ささっ、こちらへ」
その言葉にエルヴィンは軽く頷くと、男の背を追っていく。
さすが貴族、行列なんて並ばないんだね……。
そうして個室へと案内されると、私は促されるように席へと腰かけた。
「好きな物を頼め」
「へぇ!?あー、ごめんなさい。まだこの世界の料理に詳しくなくて……、あなたと同じもので大丈夫」
「……嫌いな物はあるか?」
その問いかけに軽く首を横に振ると、彼はメニュー表を指さしながらに注文していった。
そうして暫くすると、テーブルには鮮やかな料理が並んでいった。
色鮮やかなサラダに、メイン料理なのだろう麺の太いパスタのようなもの。
麺にはホワイトソースが絡められ、色とりどりの野菜がちりばめられていた。
グラスには桃色の液体が注がれ、爽やかな香りに心がほっとなごんでいく。
麺を口へ運んでみると、まろやかなクリームソースが頬を緩めていく。
「美味しい」
そうゆっくりと顔を上げてみると、エルヴィンは珍しく小さく笑っていた。
その姿に思わず見惚れる中、私の視線に気が付いたのか……エルヴィンは慌てた様子で視線を逸らせると、無言のままにフォークを手に取っていた。
そうして和やかな雰囲気で食事を終えると、エルヴィンは先に店を出ていろと、私を扉へと連れていく。
彼の言葉に頷いて見せると、私は先に店を後にした。
外へ出ると、まだ太陽サンサンと辺りを照らしている。
今何時だろう……太陽の傾きがないと……わからないなぁ。
そんな事を考えていると、突然に3人の男が私の前に現れた。
「こんにちは~、君一人?俺らとどっかいかない?」
「俺らいい店知ってるんだ、なぁ」
「すぐ近くだから行こうぜ」
ガラの悪そうな男は私の腕を掴むと、強引に引き寄せる。
「へぇ!?ちょっと……ッッ離してください!人を待っているんです!」
そう強く言い返してみると、男たちはニタニタと笑みを浮かべて見せた。
「おぉっ、それって女の子?なら一緒に連れていくよ」
「ちっ、違います!とりあえず、その手を離して下さい」
思いっきりに捕まれた腕を振り払おうとすると、男の手に力が入る。
鈍い痛みが腕に走ると、私は思わず動きをとめた。
「えぇ~男かよ。まぁいいんじゃん、遅れてくる奴なんて放っておいて俺らと遊ぼうぜ」
「行きません!ちょっ、嫌ッ」
「お前ら何しているんだ……?」
静かなその声に顔を上げると、そこには先ほどの柔らかい雰囲気はどこへやら、鬼の形相をしたエルヴィンが佇んでいた。
「あれ、連れってまさかこの子?まだ子供じゃねぇか。もしかして弟君?」
「悪いな~、この女は今から俺らと遊びに行くってよ。ガキは先に家へ帰ってろよ」
男たちはゲスな笑いを浮かべると、エルヴィンをあざ笑い始める。
その姿にエルヴィンは拳を大きく振り上げるが……その腕は男に捕らえられた。
「おぉ~いっちょ前に助けようとしてるのか~?ははっ、お子様に無理だぜ」
「くそっ、離せ!!!」
「あははは、悪く思うなよ」
エルヴィンを見下ろした男は拳を握りしめると、そのままエルヴィンの腹を一発殴った。
ドガッと鈍い男が響くと、エルヴィンは顔を歪めながらに、蹲るようにその場にしゃがみ込んでいく。
「ちょっと、やめて!!!」
「まぁまぁ~いいじゃねぇか、あんなおこちゃまより、俺らといる方が楽しめるぜ」
この男……!!!
私は手にしていた荷物を男へ投げつけると、思いっきりに突き飛ばした。
突然の事に驚いた男はそのまま後ろへ倒れ込むと、私は逃げるように体を離す。
そのままエルヴィンの傍へとやってくると、彼の腕を強く引き上げた。
「逃げよう」
そうエルヴィンに声をかけた刹那、グイッと髪を引っ張られると、痛みに顔が歪む。
そのまま引き寄せられると、男の腕が私の首へと回された。
「痛……ッッ」
男のごつい腕の中、必死に足掻く中、エルヴィンはゆっくりと立ち上がると、男の腰を蹴り上げる。
「いって……ッッ、このガキ……大人しくしてろ!!!」
振り下ろされる腕に思わず彼を庇うように抱きしめると、次に来るだろう痛みに身を震わせた。
しかしいつまでたってもその痛みが襲ってくることはない。
恐る恐るに顔を上げてみると、私たちの周りには先ほど馬車で見た執事たちが囲んでいた。
「なっ、何だお前らは!!!退け!!!」
「お取込み中失礼します。……あなた方は、この方をどなたかご存知でしょうか?その様子ですとご存知ではない……彼はベネット家のご子息様でございますよ。さすがにベネット家はおかわりでしょう?」
「おぃ、マジかよ……ベネット家って……でかい貴族じゃねぁか」
「ヤバイって、逃げようぜ」
「おぃ、お前ら!!」
男たちは慌てた様子で逃げていく姿を茫然と眺める中、執事はコソコソと何かを話すと、数人の執事が男たちの逃げていった方へ走り去っていく。
そうして一人の執事がエルヴィンを慎重に立ち上がらせると、急いで馬車まで連れて帰っていった。
**************
☆お知らせ☆
**************
第二十一話にて挿絵を追加致しました~(*'ω'*)
まさかのエルヴィンネコミミ!?
ぜひ見て頂けれると嬉しいです!
馬車の前には執事が佇み、私たちの様子に、静かに扉を開けていく。
その刹那、グゥ~と腹の虫が小さく鳴いた。
慌ててお腹を押さえてみるも、時すでに遅し……エルヴィンは眉を潜めながらにゆっくりと振り返った。
ひぇ、なぜこのタイミングで……恥ずかしい……。
顔真っ赤に伏せていると、私は恥ずかしさに狼狽していた。
「……腹が減ったのか?」
「えっ、いや……うぅ……そんな事はないんだけれど……えへへっ」
笑って誤魔化しながらにそうボソボソと話すと、エルヴィンは先に馬車の傍へと進んでいく。
そうして執事と何か話したかと思うと、馬車の扉が静かに閉まっていった。
あれ……どうしたのかな……。
「俺も腹が減ったからな、どこかへ食べに行くぞ。食べたいものはあるのか?」
「へぇ!?いや、いいよいいよ!大丈夫、気にしないで……!!!」
「うるさい、黙って俺の飯に付き合え」
エルヴィンはつっけんどんにそう言い放つと、むくれたままに私の腕を引っ張っていった。
そうして街中へとやってくると、そこは人で溢れ活気が満ち溢れていた。
ズラリと様々な店が連なり、行きかう人々が立ち止まり談笑を楽しむ姿。
店の前で客寄せする男性や、セカセカと急ぎ足歩いていく人々。
そんな人ごみに紛れていく中、女性の視線がチクチクと刺さることに気が付いた。
そっと顔を上げてみると、皆視線は私の隣……。
うっとりとした表情を浮かべる女性や、キャキャーを騒ぐ少女の姿。
なんせ連れているのは、城内での人気もある……美形も美形……エルヴィン。
まだ15歳……少年の面影はあるが……女性を惹きつけるには十分よね。
ねぇねぇ見て、あの子カッコいい!
声かけちゃおうよ~。
あれでも女連れじゃない。
うぅ……気まずい……。
チラッと窺うようにエルヴィンへ視線を向けてみると、彼は全く気にしていないようだ。
さすがイケメン……こういう事には慣れているのかな……。
チラチラと横目でエルヴィンを見る女性たちの言葉が耳にとどく中、ふとあちらこちらから良い匂いが漂ってきた。
そっと顔を上げると、いくつもの飲食店が連なっている。
露店も開かれ、美味しそうな匂いが立ち込めていた。
匂いにつられるようにキョロキョロ見渡していると、突然に彼が立ち止まった。
「ここにするぞ」
エルヴィンが立ち止まった視線の先は、大きなレストランだった。
歩いてきた中で見た店の中でも、ひときわ目立つ外観だ。
光が反射するほどの真っ白な壁に、おしゃれな庭が店を囲んでいる。
その圧倒的な存在感に思わず見惚れる中、入口には行列ができていた。
そのまま列に並ぶかと思いきや、エルヴィンは関係者用の扉を潜ると、そこにはオーナーらしき男性が佇んでいた。
「これはこれは、ようこそいらっしゃいました。ささっ、こちらへ」
その言葉にエルヴィンは軽く頷くと、男の背を追っていく。
さすが貴族、行列なんて並ばないんだね……。
そうして個室へと案内されると、私は促されるように席へと腰かけた。
「好きな物を頼め」
「へぇ!?あー、ごめんなさい。まだこの世界の料理に詳しくなくて……、あなたと同じもので大丈夫」
「……嫌いな物はあるか?」
その問いかけに軽く首を横に振ると、彼はメニュー表を指さしながらに注文していった。
そうして暫くすると、テーブルには鮮やかな料理が並んでいった。
色鮮やかなサラダに、メイン料理なのだろう麺の太いパスタのようなもの。
麺にはホワイトソースが絡められ、色とりどりの野菜がちりばめられていた。
グラスには桃色の液体が注がれ、爽やかな香りに心がほっとなごんでいく。
麺を口へ運んでみると、まろやかなクリームソースが頬を緩めていく。
「美味しい」
そうゆっくりと顔を上げてみると、エルヴィンは珍しく小さく笑っていた。
その姿に思わず見惚れる中、私の視線に気が付いたのか……エルヴィンは慌てた様子で視線を逸らせると、無言のままにフォークを手に取っていた。
そうして和やかな雰囲気で食事を終えると、エルヴィンは先に店を出ていろと、私を扉へと連れていく。
彼の言葉に頷いて見せると、私は先に店を後にした。
外へ出ると、まだ太陽サンサンと辺りを照らしている。
今何時だろう……太陽の傾きがないと……わからないなぁ。
そんな事を考えていると、突然に3人の男が私の前に現れた。
「こんにちは~、君一人?俺らとどっかいかない?」
「俺らいい店知ってるんだ、なぁ」
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ガラの悪そうな男は私の腕を掴むと、強引に引き寄せる。
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そう強く言い返してみると、男たちはニタニタと笑みを浮かべて見せた。
「おぉっ、それって女の子?なら一緒に連れていくよ」
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思いっきりに捕まれた腕を振り払おうとすると、男の手に力が入る。
鈍い痛みが腕に走ると、私は思わず動きをとめた。
「えぇ~男かよ。まぁいいんじゃん、遅れてくる奴なんて放っておいて俺らと遊ぼうぜ」
「行きません!ちょっ、嫌ッ」
「お前ら何しているんだ……?」
静かなその声に顔を上げると、そこには先ほどの柔らかい雰囲気はどこへやら、鬼の形相をしたエルヴィンが佇んでいた。
「あれ、連れってまさかこの子?まだ子供じゃねぇか。もしかして弟君?」
「悪いな~、この女は今から俺らと遊びに行くってよ。ガキは先に家へ帰ってろよ」
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その姿にエルヴィンは拳を大きく振り上げるが……その腕は男に捕らえられた。
「おぉ~いっちょ前に助けようとしてるのか~?ははっ、お子様に無理だぜ」
「くそっ、離せ!!!」
「あははは、悪く思うなよ」
エルヴィンを見下ろした男は拳を握りしめると、そのままエルヴィンの腹を一発殴った。
ドガッと鈍い男が響くと、エルヴィンは顔を歪めながらに、蹲るようにその場にしゃがみ込んでいく。
「ちょっと、やめて!!!」
「まぁまぁ~いいじゃねぇか、あんなおこちゃまより、俺らといる方が楽しめるぜ」
この男……!!!
私は手にしていた荷物を男へ投げつけると、思いっきりに突き飛ばした。
突然の事に驚いた男はそのまま後ろへ倒れ込むと、私は逃げるように体を離す。
そのままエルヴィンの傍へとやってくると、彼の腕を強く引き上げた。
「逃げよう」
そうエルヴィンに声をかけた刹那、グイッと髪を引っ張られると、痛みに顔が歪む。
そのまま引き寄せられると、男の腕が私の首へと回された。
「痛……ッッ」
男のごつい腕の中、必死に足掻く中、エルヴィンはゆっくりと立ち上がると、男の腰を蹴り上げる。
「いって……ッッ、このガキ……大人しくしてろ!!!」
振り下ろされる腕に思わず彼を庇うように抱きしめると、次に来るだろう痛みに身を震わせた。
しかしいつまでたってもその痛みが襲ってくることはない。
恐る恐るに顔を上げてみると、私たちの周りには先ほど馬車で見た執事たちが囲んでいた。
「なっ、何だお前らは!!!退け!!!」
「お取込み中失礼します。……あなた方は、この方をどなたかご存知でしょうか?その様子ですとご存知ではない……彼はベネット家のご子息様でございますよ。さすがにベネット家はおかわりでしょう?」
「おぃ、マジかよ……ベネット家って……でかい貴族じゃねぁか」
「ヤバイって、逃げようぜ」
「おぃ、お前ら!!」
男たちは慌てた様子で逃げていく姿を茫然と眺める中、執事はコソコソと何かを話すと、数人の執事が男たちの逃げていった方へ走り去っていく。
そうして一人の執事がエルヴィンを慎重に立ち上がらせると、急いで馬車まで連れて帰っていった。
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まさかのエルヴィンネコミミ!?
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