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異世界へ行った彼女の話:第十一話
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しかし視線の先に映る彼の姿は、いつものローブではない。
紺色のタキシードに、スラリと伸びるパンツには、サイドラインが入っている。
髪を上げ固めている姿は、色気があり大人びて映った。
その美しい姿に思わず息をのむと、私は何も言葉にできないままに、茫然と彼を見つめていた。
綺麗……15歳とは思えない。
やっぱり素材が良いだけに……着飾ると映えるなぁ。
彼のキラキラした姿に見惚れる中、エルヴィンはゆっくりとこちらへ近づいてくると、サッと私の前に手が差し出した。
その手にハッと我に返ると、私は動揺を隠す様に、慌てて彼の手をとる。
まだ成長途中のはずだが……握った手はゴツゴツと細く、私の手を包みこむほどに大きい。
少年だと思っていた彼とは違う……15歳とは思えない男の部分にドギマギしてしまう中、私は誤魔化す様に笑みを浮かべて見せた。
「タキシードとてもよく似合っているね。いつもと違って……思わず見惚れちゃった」
咄嗟にそんな事を口にすると、エルヴィンは難しい表情を浮かべながら、そっぽを向いた。
そんな彼の様子を不思議に眺めていると、握りしめられた手に力が入る。
「っっ、あ……あんたの……その姿も、わっ、悪くないんじゃないか……」
「ははっ、ありがとう」
思ってもみなかった誉め言葉に思わず熱い気持ちがこみあげると、自然と笑みがこぼれ落ちる。
こちらを見ることなくボソボソと呟いた彼の耳は、ゆでだこのように真っ赤に染まっていた。
そうしてエルヴィンに連れられるままに、私たちはパーティー会場へとやってくると、そこは煌びやかな人々で溢れていた。
洋画でよく見るワンシーンのような、ドレスを着た淑女に、紳士たちがシャンパングラスを片手に、談話を楽しんでいる姿に、思わず感嘆としたことが漏れる。
そんなキラキラと眩しい舞台へ入場するや否や……人が怒涛のように押し寄せてきた。
ひぇっ!?一体何なの!?
その迫力に思わず彼から手を離し身構えていると、集まった人々はわき目も振らずにエルヴィンへと向かっていく。
その様子に思わず一歩後ずさると、あっという間にエルヴィンから引き離され、気が付いた時には……彼は大人たちに取り囲まれていた。
確か……彼は人嫌いだと聞いたことがあるけれど……これって大丈夫なのかな。
人ごみの中央にいるエルヴィンを背伸びしながらに隙間から眺めていると、花束や高価な宝石がいくつも送られている。
彼は全く表情を変える事なく淡々とした様子で贈り物を受け取る中、その群衆をかき分けるように、先ほど見た執事が割り込む姿が目に映る。
しかしそんなごった返す彼の周辺には、どんどん人が集まっていく。
人の波に飲み込まれそうになる中、最初は私も何とか耐えてはいたが……想像以上の勢いにジリジリと後退していった。
うぅ……これ以上ここにいるのは無理!
ごめんね、エルヴィン!
心の中でそう謝ると、私は急いでその場から離れ、そそくさと会場の隅へと移動していった。
そうして人が少ない会場の隅へとやってくると、私はほっと胸をなでおろす。
ふぅ……まさかあんなに人がやってくるとは……。
今更だけれどエルヴィンは位の高い貴族様なのかな。
それにしても、すごい人気なのね。
そんな事を考えながら私は遠くに見える騒がしい一角を横目にすると、料理が並ぶテーブルへ足を向けた。
長テーブルの傍にやってくると、ピシッと伸びる真っ白なテーブルクロスが引かれ、その上には色とりどりの料理が並んでいる。
パッと見るに……どうやらビュッフェスタイルのようで、テーブルの周りにはお皿を片手にメイドや執事が集まっていた。
食欲をそそる香りを堪能しながらに、彩られた料理をじっと眺めてみると、フルーツと生クリーム、ハムやツナ、ポテトが飾られたカナッペや、白身魚のソテー、赤ワインソースのステーキに、テリーヌと様々な料理が並べられていた。
うわぁ……どれも美味しそう。
でもこれって食べてもいいのかな……。
周りを見渡してみても、料理に手を付けている人は誰もいない。
う~ん、オリヴィアの授業でパーティーでの料理の説明なんてあったっけ?
一人料理の前でうんうんと頭を悩ませていると、突然に声をかけられた。
「どうされたのですか?お嬢様」
低く透き通る声にそっと振り返ってみると、視線の先にはタキシードの姿の紳士が佇んでいる。
その男性は貴族なのだろう……立ち姿が美しい。
恐る恐るに目線を上げてみると、私よりも年上だろう紳士は……目じりに皺をよせ、優し気に笑みを浮かべ私を見つめていた。
えっ、あっ、誰……!?
どうしよう……なんで話しかけてくるの……。
「あっ、いえ……何でもありませんわ。おほほほほほ~」
咄嗟に出た不自然な言葉を発しながらに、私は思わずその場から立ち去ると、また会場の隅へと逃げ帰っていく。
うぅ……こんなところへ来てなんだけど……誰も話しかけないでほしい……。
自分が気が付かないうちに阻喪して、ベネット家の顔に泥を塗るわけにはいかない……。
あの美味しそうな料理を食べられないことはとても……とっても残念だけれど、ここで大人しくしていよう……。
そうして貴族たちが会場を埋め尽くしていく中、私はひたすらに壁の花を演じきっていた。
挨拶されれば笑顔で返し、それ以上の話は丁寧に遠慮してみせる。
そうして壇上から主催者だろうか……壇上の上から声が響くと、騒がしい会場がシーンと静まりかえっていった。
*******お知らせ*******
第三話:第五話:第八話にて挿絵を追加致しました!
エルヴィン、グレンと主人公の絡みがとても美しいのでぜひ見て頂けると嬉しいです(*'ω'*)
紺色のタキシードに、スラリと伸びるパンツには、サイドラインが入っている。
髪を上げ固めている姿は、色気があり大人びて映った。
その美しい姿に思わず息をのむと、私は何も言葉にできないままに、茫然と彼を見つめていた。
綺麗……15歳とは思えない。
やっぱり素材が良いだけに……着飾ると映えるなぁ。
彼のキラキラした姿に見惚れる中、エルヴィンはゆっくりとこちらへ近づいてくると、サッと私の前に手が差し出した。
その手にハッと我に返ると、私は動揺を隠す様に、慌てて彼の手をとる。
まだ成長途中のはずだが……握った手はゴツゴツと細く、私の手を包みこむほどに大きい。
少年だと思っていた彼とは違う……15歳とは思えない男の部分にドギマギしてしまう中、私は誤魔化す様に笑みを浮かべて見せた。
「タキシードとてもよく似合っているね。いつもと違って……思わず見惚れちゃった」
咄嗟にそんな事を口にすると、エルヴィンは難しい表情を浮かべながら、そっぽを向いた。
そんな彼の様子を不思議に眺めていると、握りしめられた手に力が入る。
「っっ、あ……あんたの……その姿も、わっ、悪くないんじゃないか……」
「ははっ、ありがとう」
思ってもみなかった誉め言葉に思わず熱い気持ちがこみあげると、自然と笑みがこぼれ落ちる。
こちらを見ることなくボソボソと呟いた彼の耳は、ゆでだこのように真っ赤に染まっていた。
そうしてエルヴィンに連れられるままに、私たちはパーティー会場へとやってくると、そこは煌びやかな人々で溢れていた。
洋画でよく見るワンシーンのような、ドレスを着た淑女に、紳士たちがシャンパングラスを片手に、談話を楽しんでいる姿に、思わず感嘆としたことが漏れる。
そんなキラキラと眩しい舞台へ入場するや否や……人が怒涛のように押し寄せてきた。
ひぇっ!?一体何なの!?
その迫力に思わず彼から手を離し身構えていると、集まった人々はわき目も振らずにエルヴィンへと向かっていく。
その様子に思わず一歩後ずさると、あっという間にエルヴィンから引き離され、気が付いた時には……彼は大人たちに取り囲まれていた。
確か……彼は人嫌いだと聞いたことがあるけれど……これって大丈夫なのかな。
人ごみの中央にいるエルヴィンを背伸びしながらに隙間から眺めていると、花束や高価な宝石がいくつも送られている。
彼は全く表情を変える事なく淡々とした様子で贈り物を受け取る中、その群衆をかき分けるように、先ほど見た執事が割り込む姿が目に映る。
しかしそんなごった返す彼の周辺には、どんどん人が集まっていく。
人の波に飲み込まれそうになる中、最初は私も何とか耐えてはいたが……想像以上の勢いにジリジリと後退していった。
うぅ……これ以上ここにいるのは無理!
ごめんね、エルヴィン!
心の中でそう謝ると、私は急いでその場から離れ、そそくさと会場の隅へと移動していった。
そうして人が少ない会場の隅へとやってくると、私はほっと胸をなでおろす。
ふぅ……まさかあんなに人がやってくるとは……。
今更だけれどエルヴィンは位の高い貴族様なのかな。
それにしても、すごい人気なのね。
そんな事を考えながら私は遠くに見える騒がしい一角を横目にすると、料理が並ぶテーブルへ足を向けた。
長テーブルの傍にやってくると、ピシッと伸びる真っ白なテーブルクロスが引かれ、その上には色とりどりの料理が並んでいる。
パッと見るに……どうやらビュッフェスタイルのようで、テーブルの周りにはお皿を片手にメイドや執事が集まっていた。
食欲をそそる香りを堪能しながらに、彩られた料理をじっと眺めてみると、フルーツと生クリーム、ハムやツナ、ポテトが飾られたカナッペや、白身魚のソテー、赤ワインソースのステーキに、テリーヌと様々な料理が並べられていた。
うわぁ……どれも美味しそう。
でもこれって食べてもいいのかな……。
周りを見渡してみても、料理に手を付けている人は誰もいない。
う~ん、オリヴィアの授業でパーティーでの料理の説明なんてあったっけ?
一人料理の前でうんうんと頭を悩ませていると、突然に声をかけられた。
「どうされたのですか?お嬢様」
低く透き通る声にそっと振り返ってみると、視線の先にはタキシードの姿の紳士が佇んでいる。
その男性は貴族なのだろう……立ち姿が美しい。
恐る恐るに目線を上げてみると、私よりも年上だろう紳士は……目じりに皺をよせ、優し気に笑みを浮かべ私を見つめていた。
えっ、あっ、誰……!?
どうしよう……なんで話しかけてくるの……。
「あっ、いえ……何でもありませんわ。おほほほほほ~」
咄嗟に出た不自然な言葉を発しながらに、私は思わずその場から立ち去ると、また会場の隅へと逃げ帰っていく。
うぅ……こんなところへ来てなんだけど……誰も話しかけないでほしい……。
自分が気が付かないうちに阻喪して、ベネット家の顔に泥を塗るわけにはいかない……。
あの美味しそうな料理を食べられないことはとても……とっても残念だけれど、ここで大人しくしていよう……。
そうして貴族たちが会場を埋め尽くしていく中、私はひたすらに壁の花を演じきっていた。
挨拶されれば笑顔で返し、それ以上の話は丁寧に遠慮してみせる。
そうして壇上から主催者だろうか……壇上の上から声が響くと、騒がしい会場がシーンと静まりかえっていった。
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