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異世界へ行った彼女の話:第九話
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池での一見から、私は新たな魔術の研究を始めていた。
あの深い池の底に……何かあるかもしれない。
しかし果てのない水の中を泳ぎ切るためには、それ相応の準備をしなくては……。
まず問題なのは呼吸。
これは水の泡と風の粒で何とかなるだろうけれど……いかんせんどれだけ必要になるかはわからない。
池底へ向かう中、魔術を展開し続ければ……いけるのだろうか……?
それならば……展開できるように自分は動けるようにしておかなければいけない。
後は水圧。
たとえ呼吸が出来たとしても、人間の体ではそんなに深くは潜れない。
潜水病になる可能性もあるし、それよりも体が水圧に耐えられないだろう。
なので水圧にも耐えられる何かを、見つけなければいけないということだ。
私が見た彼の魔術にはなかったけれど……高波を知っていた彼が、先に何か手を打っていたのかもしれない。
ということは、水圧をなんとかする魔術が存在する可能性が高い。
あぁ……そうだ、沈む方法も考えないとね。
泳いでいくには体力に限界があるし……。
それに何時間も水の中に居ることになるかもしれないから……体温の調節も何とかしなくちゃ。
色々と問題が浮かび上がる中、新たな手掛かりに私はまた魔術に没頭すると、あっという間に月日は流れていった。
そんな中、エルヴィンの生誕祭の日がやってきた。
オリヴィアから聞く限り、どうやらお城で、祝いのパーティーが行われるようだ。
城中その準備に忙しいため、今日塔は封鎖されてしまい、私は朝から部屋で魔術の本を読み漁っていた。
う~ん、水圧をどうにかする魔術はこの世界にはない……。
むしろ水圧という概念すら、存在していない気がする。
パラパラと図書館や研究室から持ち込んできた本を眺める中、ゆっくりと時間が流れいく。
でもそれなら……彼はどうやって私の世界へやってきたんだろう……。
そう頭を悩ませながらに、ベッドの上で怠惰にゴロゴロ、ウネウネしていると、部屋にノックの音が響いた。
徐に起き上がり返事を返すと、扉の前にはオリヴィアが両手に荷物を抱え佇んでいた。
珍しい……何を持ってきたのかな……?
目を凝らして彼女の手元をよく見てみると、どうやら派手なドレスに靴、キラキラ光る宝石……。
うん……一体何が始まるんだろうか……。
「姫様、さぁ~着替えのお時間ですわよ」
突拍子もないその言葉に口を半開きのままに固まると、私は恐る恐るオリヴィアへ視線を向ける。
「そんなお顔をされてどうしたのですか?今日は魔術士ベネット様の誕生祭だと、お伝えしていたと思うのですが……」
「えっ、聞いていたけれど……それと着替える事と、どう関係しているの?」
彼女の言う通り、今日生誕祭が開かれる事は聞いている。
そしてその日は、塔が封鎖される事も理解していた。
だから今日は朝からどこにも出かけていない。
きっともう元の世界では夕方ぐらいだろう。
よくわからない現状に一人うんうんと考え込んでいると、気が付けばオリヴィアは私のすぐ傍に、近づいてきていた。
「もう、何をおっしゃっているのですか?姫様も生誕祭へ参加するのですわ!こちらのドレスは、ベネット様のお見立てですわよ~」
オリヴィアは私の前に真っ赤なドレスを掲げて見せると、ウキウキと興奮した様子を見せる。
「ベネット様!?えっ、ちょっと待って!?……私も参加するの?いやいや……私よそ者だし、それに……パーティーなんて参加したことないよ!」
「あら大丈夫ですわ、ちゃんと招待状を頂いておりますもの。マナーは私が教えてきた事で、事足りておりますし……。姫様は純粋にパーティーを楽しんで下されば宜しいのですわ……。ふふふ、腕が鳴りますわぁ~。私はずっと姫様を着飾りたいと思っていたのです!それなのに姫様は……魔術漬けの毎日で……うぅぅ……」
オリヴィアは徐に視線を落とすと、悲しそうな表情を浮かべた。
招待状!?
いやいや……初耳なんだけれど……。
「いや、でも!そんな高そうなドレス貰えないよ。私は何もしていないし……」
「あら、そんな事ございませんわよ。それよりも、ここで姫様がパーティーに参加されないとなれば、ベネット様のお顔に泥を塗ることになってしまいますわ……。それでも宜しいのですか?」
静かに話す彼女の様子に、私は頭を抱えると、大きなため息をついてみせる。
はぁ……、嘘でしょう……。
チラッとオリヴィアへ視線を向けると、彼女は不敵な笑みを浮かべていた。
いつもの大人しい雰囲気から一転したその姿は、どこか恐ろしい……。
彼女は気合を入れるように両袖をまくり上げたかと思うと、ズンズンと私の方へ向かってくる。
「黒髪にはやはり赤……ベネット様さすがですわ。……靴と……装飾品……髪はこうして……」
ブツブツと何かを呟くその様子に思わず頬が引きつる中、私は逃げるようにベッドの上をジリジリと後退していく。
「あっ……ならこのいつも服で……」
「そんなのありえませんわ!姫様、もう観念してください」
彼女の迫力に動きが止まると……あっという間にオリヴィアに捕らえられ、私は身ぐるみをはがされていった。
あの深い池の底に……何かあるかもしれない。
しかし果てのない水の中を泳ぎ切るためには、それ相応の準備をしなくては……。
まず問題なのは呼吸。
これは水の泡と風の粒で何とかなるだろうけれど……いかんせんどれだけ必要になるかはわからない。
池底へ向かう中、魔術を展開し続ければ……いけるのだろうか……?
それならば……展開できるように自分は動けるようにしておかなければいけない。
後は水圧。
たとえ呼吸が出来たとしても、人間の体ではそんなに深くは潜れない。
潜水病になる可能性もあるし、それよりも体が水圧に耐えられないだろう。
なので水圧にも耐えられる何かを、見つけなければいけないということだ。
私が見た彼の魔術にはなかったけれど……高波を知っていた彼が、先に何か手を打っていたのかもしれない。
ということは、水圧をなんとかする魔術が存在する可能性が高い。
あぁ……そうだ、沈む方法も考えないとね。
泳いでいくには体力に限界があるし……。
それに何時間も水の中に居ることになるかもしれないから……体温の調節も何とかしなくちゃ。
色々と問題が浮かび上がる中、新たな手掛かりに私はまた魔術に没頭すると、あっという間に月日は流れていった。
そんな中、エルヴィンの生誕祭の日がやってきた。
オリヴィアから聞く限り、どうやらお城で、祝いのパーティーが行われるようだ。
城中その準備に忙しいため、今日塔は封鎖されてしまい、私は朝から部屋で魔術の本を読み漁っていた。
う~ん、水圧をどうにかする魔術はこの世界にはない……。
むしろ水圧という概念すら、存在していない気がする。
パラパラと図書館や研究室から持ち込んできた本を眺める中、ゆっくりと時間が流れいく。
でもそれなら……彼はどうやって私の世界へやってきたんだろう……。
そう頭を悩ませながらに、ベッドの上で怠惰にゴロゴロ、ウネウネしていると、部屋にノックの音が響いた。
徐に起き上がり返事を返すと、扉の前にはオリヴィアが両手に荷物を抱え佇んでいた。
珍しい……何を持ってきたのかな……?
目を凝らして彼女の手元をよく見てみると、どうやら派手なドレスに靴、キラキラ光る宝石……。
うん……一体何が始まるんだろうか……。
「姫様、さぁ~着替えのお時間ですわよ」
突拍子もないその言葉に口を半開きのままに固まると、私は恐る恐るオリヴィアへ視線を向ける。
「そんなお顔をされてどうしたのですか?今日は魔術士ベネット様の誕生祭だと、お伝えしていたと思うのですが……」
「えっ、聞いていたけれど……それと着替える事と、どう関係しているの?」
彼女の言う通り、今日生誕祭が開かれる事は聞いている。
そしてその日は、塔が封鎖される事も理解していた。
だから今日は朝からどこにも出かけていない。
きっともう元の世界では夕方ぐらいだろう。
よくわからない現状に一人うんうんと考え込んでいると、気が付けばオリヴィアは私のすぐ傍に、近づいてきていた。
「もう、何をおっしゃっているのですか?姫様も生誕祭へ参加するのですわ!こちらのドレスは、ベネット様のお見立てですわよ~」
オリヴィアは私の前に真っ赤なドレスを掲げて見せると、ウキウキと興奮した様子を見せる。
「ベネット様!?えっ、ちょっと待って!?……私も参加するの?いやいや……私よそ者だし、それに……パーティーなんて参加したことないよ!」
「あら大丈夫ですわ、ちゃんと招待状を頂いておりますもの。マナーは私が教えてきた事で、事足りておりますし……。姫様は純粋にパーティーを楽しんで下されば宜しいのですわ……。ふふふ、腕が鳴りますわぁ~。私はずっと姫様を着飾りたいと思っていたのです!それなのに姫様は……魔術漬けの毎日で……うぅぅ……」
オリヴィアは徐に視線を落とすと、悲しそうな表情を浮かべた。
招待状!?
いやいや……初耳なんだけれど……。
「いや、でも!そんな高そうなドレス貰えないよ。私は何もしていないし……」
「あら、そんな事ございませんわよ。それよりも、ここで姫様がパーティーに参加されないとなれば、ベネット様のお顔に泥を塗ることになってしまいますわ……。それでも宜しいのですか?」
静かに話す彼女の様子に、私は頭を抱えると、大きなため息をついてみせる。
はぁ……、嘘でしょう……。
チラッとオリヴィアへ視線を向けると、彼女は不敵な笑みを浮かべていた。
いつもの大人しい雰囲気から一転したその姿は、どこか恐ろしい……。
彼女は気合を入れるように両袖をまくり上げたかと思うと、ズンズンと私の方へ向かってくる。
「黒髪にはやはり赤……ベネット様さすがですわ。……靴と……装飾品……髪はこうして……」
ブツブツと何かを呟くその様子に思わず頬が引きつる中、私は逃げるようにベッドの上をジリジリと後退していく。
「あっ……ならこのいつも服で……」
「そんなのありえませんわ!姫様、もう観念してください」
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