14 / 14
おまけ 学園編:後編
しおりを挟む
どれぐらい眠っていたのだろう、ふと目覚めると窓から夕陽が差し込んでいた。
体はまだだるいが、熱は幾分マシになっている。
おもむろに辺りを見渡してみると、そこは医務室ではなかった。
ここは寮……どうやって帰ってきたかしら……?
体を起こすと、額に置かれていたタオルが落ちる。
拾い上げてみると、まだ冷たい。
自分の姿をよく見てみると、寝間着に着替えていた。
そっと顔を上げると、ベッドの傍にはセスの姿。
ずっとついていてくれたのだろうか、ベッド脇で足を組み転寝をしている。
その近くには水を汲んだ桶と、カットされたフルーツが置かれていた。
もしかしてセスが寮まで運んでくれて、看病まで……?
そっと眠るセスへ近づいてみると、深い寝息が耳にとどく。
恐る恐る彼の頬へ触れてみると、熱が指先から伝わってきた。
見惚れるほどに綺麗な顔立ちで、長いまつ毛が微かに動く。
寝顔を見ると何だかあどけなく見える。
勉強や剣術何でもトップクラスで、落ち着きがあって優しくて余裕があって……。
同い年とは思えない立ち振る舞い。
だけどこうしてみると、私達と同じ学生なのだと実感する。
令嬢なら選り取り見取りなはずなのに……どうして私とこんな契約をしたのかしら?
綺麗な人ならたくさんいるし、話せばそれでもいいと言ってくれる令嬢は沢山いるはずだわ。
だって彼は公爵家の長男で、お金もあって文武両道、令嬢たちのあこがれの的。
男爵家ごときの私は、ここに来なければ関わることもなかった。
何度考えても堂々巡りだとわかっているのに、考えずにはいられない。
どうしてこんなにも気になるのか、自分で自分がわからない。
今まで令息にモテたことなんてなかった。
ついてくる令息はすぐにどこかへ行ってしまう。
相性がいいにしても恋愛経験もない私に、彼を喜ばせるなにかを持っていない。
なのにどうしてここまでしてくれるのかしら……?
あのまま医務室へ居れば、もしかしたら女だとバレていたかもしれない。
さらしは外していたし、隠す余裕もなかった。
だからセスは私を寮まで運んでくれたのだろう。
だけど彼にとって私はただの遊び相手なはず。
利用価値はそれしかない、そんな私のためにどうして……?
代わりはいくらでもいるはずなのに……。
わからない、只の優しさなのだろうか?
女だとバレる前からも彼は優しかった。
友人として心配で傍についていてくれたのかもしれない。
そう思うとなぜか胸がチクッと痛む。
友人にこれだけ優しいのだから、きっと恋人にはもっと優しいわよね。
私みたいな嘘つきにだって、こんなに優しくしてくれるんだもの。
彼の恋人になる令嬢が羨ましい……。
無意識に彼の頬をなでると、突然体が引き寄せられた。
「そんなに僕の頬が好きなのかな?」
耳元で囁かれた言葉にカッと体が熱くなる。
「セスッッ、いつから起きていたの?」
「ははっ、さぁね、熱は……下がってよかった」
セスは額に手を当てると、ニッコリと笑みを浮かべる。
吸い込まれそうな青い瞳に自分の姿が映り込む。
そのままゆっくりと顔が近づいてくると、唇に触れる前にとまった。
「今日はゆっくり休もうか」
セスは軽々と私の体を持ち上げると、ベッドへと寝かしつける。
あやすように腕枕をすると、彼の胸の中に閉じ込められた。
心地よくて暖かい彼の匂いに包まれる。
私はそっと瞳を閉じると、甘えるように彼の胸に頬をこすりつけた。
この関係はきっと長くはない。
いつか必ず終わりはやってくる。
だけどそれまでは手放したくない。
そう強く思うと、私はギュッと彼にしがみついた。
********************************
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました!
いかがでしたでしょうか?
ご感想等ございましたら嬉しいです!
それではまた別のお話でお会いできるよう、これからも頑張ります(*ノωノ)
体はまだだるいが、熱は幾分マシになっている。
おもむろに辺りを見渡してみると、そこは医務室ではなかった。
ここは寮……どうやって帰ってきたかしら……?
体を起こすと、額に置かれていたタオルが落ちる。
拾い上げてみると、まだ冷たい。
自分の姿をよく見てみると、寝間着に着替えていた。
そっと顔を上げると、ベッドの傍にはセスの姿。
ずっとついていてくれたのだろうか、ベッド脇で足を組み転寝をしている。
その近くには水を汲んだ桶と、カットされたフルーツが置かれていた。
もしかしてセスが寮まで運んでくれて、看病まで……?
そっと眠るセスへ近づいてみると、深い寝息が耳にとどく。
恐る恐る彼の頬へ触れてみると、熱が指先から伝わってきた。
見惚れるほどに綺麗な顔立ちで、長いまつ毛が微かに動く。
寝顔を見ると何だかあどけなく見える。
勉強や剣術何でもトップクラスで、落ち着きがあって優しくて余裕があって……。
同い年とは思えない立ち振る舞い。
だけどこうしてみると、私達と同じ学生なのだと実感する。
令嬢なら選り取り見取りなはずなのに……どうして私とこんな契約をしたのかしら?
綺麗な人ならたくさんいるし、話せばそれでもいいと言ってくれる令嬢は沢山いるはずだわ。
だって彼は公爵家の長男で、お金もあって文武両道、令嬢たちのあこがれの的。
男爵家ごときの私は、ここに来なければ関わることもなかった。
何度考えても堂々巡りだとわかっているのに、考えずにはいられない。
どうしてこんなにも気になるのか、自分で自分がわからない。
今まで令息にモテたことなんてなかった。
ついてくる令息はすぐにどこかへ行ってしまう。
相性がいいにしても恋愛経験もない私に、彼を喜ばせるなにかを持っていない。
なのにどうしてここまでしてくれるのかしら……?
あのまま医務室へ居れば、もしかしたら女だとバレていたかもしれない。
さらしは外していたし、隠す余裕もなかった。
だからセスは私を寮まで運んでくれたのだろう。
だけど彼にとって私はただの遊び相手なはず。
利用価値はそれしかない、そんな私のためにどうして……?
代わりはいくらでもいるはずなのに……。
わからない、只の優しさなのだろうか?
女だとバレる前からも彼は優しかった。
友人として心配で傍についていてくれたのかもしれない。
そう思うとなぜか胸がチクッと痛む。
友人にこれだけ優しいのだから、きっと恋人にはもっと優しいわよね。
私みたいな嘘つきにだって、こんなに優しくしてくれるんだもの。
彼の恋人になる令嬢が羨ましい……。
無意識に彼の頬をなでると、突然体が引き寄せられた。
「そんなに僕の頬が好きなのかな?」
耳元で囁かれた言葉にカッと体が熱くなる。
「セスッッ、いつから起きていたの?」
「ははっ、さぁね、熱は……下がってよかった」
セスは額に手を当てると、ニッコリと笑みを浮かべる。
吸い込まれそうな青い瞳に自分の姿が映り込む。
そのままゆっくりと顔が近づいてくると、唇に触れる前にとまった。
「今日はゆっくり休もうか」
セスは軽々と私の体を持ち上げると、ベッドへと寝かしつける。
あやすように腕枕をすると、彼の胸の中に閉じ込められた。
心地よくて暖かい彼の匂いに包まれる。
私はそっと瞳を閉じると、甘えるように彼の胸に頬をこすりつけた。
この関係はきっと長くはない。
いつか必ず終わりはやってくる。
だけどそれまでは手放したくない。
そう強く思うと、私はギュッと彼にしがみついた。
********************************
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました!
いかがでしたでしょうか?
ご感想等ございましたら嬉しいです!
それではまた別のお話でお会いできるよう、これからも頑張ります(*ノωノ)
1
お気に入りに追加
1,576
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(11件)
あなたにおすすめの小説
【続】18禁の乙女ゲームから現実へ~常に義兄弟にエッチな事されてる私。
KUMA
恋愛
※続けて書こうと思ったのですが、ゲームと分けた方が面白いと思って続編です。※
前回までの話
18禁の乙女エロゲームの悪役令嬢のローズマリアは知らないうち新しいルート義兄弟からの監禁調教ルートへ突入途中王子の監禁調教もあったが義兄弟の頭脳勝ちで…ローズマリアは快楽淫乱ENDにと思った。
だが事故に遭ってずっと眠っていて、それは転生ではなく夢世界だった。
ある意味良かったのか悪かったのか分からないが…
万李唖は本当の自分の体に、戻れたがローズマリアの淫乱な体の感覚が忘れられずにBLゲーム最中1人でエッチな事を…
それが元で同居中の義兄弟からエッチな事をされついに……
新婚旅行中の姉夫婦は後1週間も帰って来ない…
おまけに学校は夏休みで…ほぼ毎日攻められ万李唖は現実でも義兄弟から……
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
【R18】私はお父さんの性処理係
神通百力
恋愛
麗華は寝ていたが、誰かが乳房を揉んでいることに気付き、ゆっくりと目を開けた。父親が鼻息を荒くし、麗華の乳房を揉んでいた。父親は麗華が起きたことに気付くと、ズボンとパンティーを脱がし、オマンコを広げるように命令した。稲凪七衣名義でノクターンノベルズにも投稿しています。
【完結】【R18】素敵な騎士団長に「いいか?」と聞かれたので、「ダメ」と言ってみました
にじくす まさしよ
恋愛
R18です。
ベッドでそう言われた時の、こんなシチュエーション。
初回いきなりR18弱?から入ります。性的描写は、普段よりも大人向けです。
一時間ごとに0時10分からと、昼間は更新とばして夕方から再開。ラストは21時10分です。
1話の文字数を2000文字以内で作ってみたくて毎日1話にしようかと悩みつつ、宣言通り1日で終わらせてみます。
12月24日、突然現れたサンタクロースに差し出されたガチャから出たカプセルから出て来た、シリーズ二作目のヒロインが開発したとあるアイテムを使用する番外編です。
キャラクターは、前作までのどこかに登場している人物です。タイトルでおわかりの方もおられると思います。
登場人物紹介はある程度話が進めば最初のページにあげます
イケメン、とっても素敵な逞しいスパダリあれこれ大きい寡黙な強引騎士団長さまのいちゃらぶです。
サンタ×ガチャをご存じの方は、シンディ&乙女ヨウルプッキ(ヨークトール殿下)やエミリア&ヘタレ泣き虫ダニエウ殿下たちを懐かしく思っていただけると嬉しいです。
前作読まなくてもあまり差し障りはありません。
ざまあなし。
折角の正月ですので明るくロマンチックに幸せに。
NTRなし。近親なし。
完全な獣化なし。だってハムチュターンだもの、すじにくまさよし。
単なる獣人男女のいちゃいちゃです。ちょっとだけ、そう、ほんのちょっぴり拗れているだけです。
コメディ要素は隠し味程度にあり
体格差
タグをご覧下さい。今回はサブタイトルに※など一切おきません。予告なくいちゃいちゃします。
明けましておめでとうございます。
正月なのに、まさかのクリスマスイブです。
文字数→今回は誤字脱字以外一切さわりませんので下書きより増やしません(今年の抱負と課題)
伯爵令嬢のユリアは時間停止の魔法で凌辱される。【完結】
ちゃむにい
恋愛
その時ユリアは、ただ教室で座っていただけのはずだった。
「……っ!!?」
気がついた時には制服の着衣は乱れ、股から白い粘液がこぼれ落ち、体の奥に鈍く感じる違和感があった。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
完結お疲れ様でございました。
傍から見たら口止めを盾にレイプしまくりの変態だとしても、彼女にしたら優しくて秘密を守ってくれる素晴らしい男性と感じていたんなら…何をか況んやですね。
割れ鍋に綴じ蓋で相性ぴったりだったんでしょう。お幸せに~
読ませて頂きありがとうございました。
lemon 様
いつもコメントありがとうございます!
無事に完結出来てほっと致しました(*‘∀‘)
変わったお話だったかと思うのですが、最後までお付き合い頂けて嬉しいです!
また別のお話でもお会いできるよう、これからも頑張ります!
毎回更新楽しみにしていました!キュンキュンが止まらなく、楽しかったです!
気がつけば完結していたので、寂しいですが、次の作品も楽しみです。
めい 様
コメントありがとうございます!
楽しんで頂けて嬉しいです(*'ω'*)
短編で書いていたお話だったので、少し物足りなさはあったかもしれないですが……
またこうした物語を書いていきますので、またお会いできるように頑張ります(*ノωノ)
改めまして、最後までお読み頂きありがとうございました!
結局婚約者にするの?しないの?
エステル 様
いつもコメントありがとうございます!
お読み頂きまして、ありがとうございますm(__)m
のちに婚約者になるかと思いますが、
申し訳ございませんその辺りは深く考えておりませんでした……(-_-;)
婚約者になるは大変ですが、それを二人で乗り越えてハッピーエンドが理想ですね!