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第五章 来栖
静寂
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来栖は、うす暗い職員室で1人震えていた。
便箋が、手から出た汗を吸って、ふやけてしまっている。
手紙の内容を全て理解できたわけではない。
しかし、事件の発端になったのが、佑真の投げた石であったということは、彼にも分かった。
おそらく、それが原因で慧は泥棒に見つかってしまい、結果として命を奪われたのだろう。
佑真が犯した行為によって、単なる空き巣事件が、殺人事件に変わってしまったのだ。
そのとき、バドミントン部の顧問をしている先生が職員室に戻ってきた。
来栖は慌てて手紙を封筒に戻すと、クリアファイルを引き出しの中にしまう。
そして、採点作業に戻った。
「お疲れ様です」
彼女は、運動後の溌剌とした雰囲気をまといながら声をかけてきた。
「お疲れ様です」
「来栖先生、なんだか顔色悪いですよ。あまり無理しないでくださいね」
「ええ、きりのいいところで帰ります」
来栖は、苦笑いで赤ペンを動かす。集中できていないせいか、ペン先が自分の意思とは無関係に動いているような錯覚に陥る。
心臓が強く脈打っているのが分かる。
その音が、体の外に漏れてしまっていないか心配になるほどだ。
「それでは、お先に失礼します」
荷物を取りに来ただけだったのだろう。その先生は、すぐに職員室を出ていった。
「はい。お疲れ様でした」
廊下の足音が完全に聞こえなくなると、来栖は大きく息を吐きながら、体を椅子に深く沈み込ませた。
再び、職員室に静寂が訪れる。その静けさが、来栖の心をいくらか落ち着かせた。
彼は、クリアファイルから佑真の封筒を取り出すと、机の上に置いた。
しばらくの間、封筒を見つめていたが、セロテープで何重にも封をすると、二度と開くことはなかった。
便箋が、手から出た汗を吸って、ふやけてしまっている。
手紙の内容を全て理解できたわけではない。
しかし、事件の発端になったのが、佑真の投げた石であったということは、彼にも分かった。
おそらく、それが原因で慧は泥棒に見つかってしまい、結果として命を奪われたのだろう。
佑真が犯した行為によって、単なる空き巣事件が、殺人事件に変わってしまったのだ。
そのとき、バドミントン部の顧問をしている先生が職員室に戻ってきた。
来栖は慌てて手紙を封筒に戻すと、クリアファイルを引き出しの中にしまう。
そして、採点作業に戻った。
「お疲れ様です」
彼女は、運動後の溌剌とした雰囲気をまといながら声をかけてきた。
「お疲れ様です」
「来栖先生、なんだか顔色悪いですよ。あまり無理しないでくださいね」
「ええ、きりのいいところで帰ります」
来栖は、苦笑いで赤ペンを動かす。集中できていないせいか、ペン先が自分の意思とは無関係に動いているような錯覚に陥る。
心臓が強く脈打っているのが分かる。
その音が、体の外に漏れてしまっていないか心配になるほどだ。
「それでは、お先に失礼します」
荷物を取りに来ただけだったのだろう。その先生は、すぐに職員室を出ていった。
「はい。お疲れ様でした」
廊下の足音が完全に聞こえなくなると、来栖は大きく息を吐きながら、体を椅子に深く沈み込ませた。
再び、職員室に静寂が訪れる。その静けさが、来栖の心をいくらか落ち着かせた。
彼は、クリアファイルから佑真の封筒を取り出すと、机の上に置いた。
しばらくの間、封筒を見つめていたが、セロテープで何重にも封をすると、二度と開くことはなかった。
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