22 / 22
ストーカー
しおりを挟む
「実は、最近ポストに変な手紙が入ってるんですよ。」
佐野先輩はいかにも興味津々といった表情で聞き返してきた。
「なに?変な手紙?」
「はい。差出人は不明なんですけど、"洗濯物は夜になったらしまえよ"とか、"電気つけっぱなしで寝るなよ"とか。一言だけ書いてあるんです。」
佐野先輩は気味悪がって言った。
「うわ、なんか気持ち悪いね。ストーカーなんじゃない?心当たりはないの?」
「それが全然思い当たる人はいないんですよね。」
首をかしげながら、話を続ける。
「一人暮らしなので何かあったら怖いなとは思うんですけど、ただの手紙なので今のところ実害はないですし…」
「そうだね、それだけだと警察もなかなか相手にしてくれないだろうからね。」
食堂にチャイムの音が鳴り響く。午後の仕事が始まる10分前を知らせるものだ。
私は急いで席を立ち上がった。
「まあとにかくさ、何かあったら駆けつけるから言ってよ。」
「佐野先輩って家どこでしたっけ?」
「高円寺」
「いや、私の家まで1時間はかかりますよ。つく頃には殺されてるかもしれないです。」
私が笑いながら言うと、佐野先輩もつられるように吹き出した。
「縁起でもないことを。」
佐野先輩は今日は午前上がりとのことだったので別れを告げる。そして、私は自分の仕事場に戻っていった。
部品工場の仕事は単純作業が多いため頭は使わなくていいが、非常に体力を消耗する。
それに時間の経過がとても遅く感じるのだ。
その日も、定時になる頃にはクタクタに疲れきっていた。
重い足取りでアパートまで帰ると、恐る恐るポストの中を覗いた。
白い無地の封筒が入っているのを見つけ、ため息を吐く。
以前は週に1回だったが、ここ最近は週に2回くらいのペースで投函されている。
部屋のなかに入ると封筒を開け、中の便箋を広げる。
紙の中央に1行だけメッセージが書いてあった。
「鍵はちゃんと閉めないとだめだよ。」
さすがに今回の内容にはゾッとした。
ドアの鍵が閉まっていることを確認すると念のためチェーンをかける。
身近に頼る人がいなかった私は佐野先輩に電話をかけた。
しばらくすると鳴り始めるコール音。
その瞬間だった。
「ブー、ブー、ブー」という振動音が押入れの中から聞こえてくる。
「えっ…」
唖然としながらそちらを見つめているとゆっくりと扉が開いた。
佐野先輩はいかにも興味津々といった表情で聞き返してきた。
「なに?変な手紙?」
「はい。差出人は不明なんですけど、"洗濯物は夜になったらしまえよ"とか、"電気つけっぱなしで寝るなよ"とか。一言だけ書いてあるんです。」
佐野先輩は気味悪がって言った。
「うわ、なんか気持ち悪いね。ストーカーなんじゃない?心当たりはないの?」
「それが全然思い当たる人はいないんですよね。」
首をかしげながら、話を続ける。
「一人暮らしなので何かあったら怖いなとは思うんですけど、ただの手紙なので今のところ実害はないですし…」
「そうだね、それだけだと警察もなかなか相手にしてくれないだろうからね。」
食堂にチャイムの音が鳴り響く。午後の仕事が始まる10分前を知らせるものだ。
私は急いで席を立ち上がった。
「まあとにかくさ、何かあったら駆けつけるから言ってよ。」
「佐野先輩って家どこでしたっけ?」
「高円寺」
「いや、私の家まで1時間はかかりますよ。つく頃には殺されてるかもしれないです。」
私が笑いながら言うと、佐野先輩もつられるように吹き出した。
「縁起でもないことを。」
佐野先輩は今日は午前上がりとのことだったので別れを告げる。そして、私は自分の仕事場に戻っていった。
部品工場の仕事は単純作業が多いため頭は使わなくていいが、非常に体力を消耗する。
それに時間の経過がとても遅く感じるのだ。
その日も、定時になる頃にはクタクタに疲れきっていた。
重い足取りでアパートまで帰ると、恐る恐るポストの中を覗いた。
白い無地の封筒が入っているのを見つけ、ため息を吐く。
以前は週に1回だったが、ここ最近は週に2回くらいのペースで投函されている。
部屋のなかに入ると封筒を開け、中の便箋を広げる。
紙の中央に1行だけメッセージが書いてあった。
「鍵はちゃんと閉めないとだめだよ。」
さすがに今回の内容にはゾッとした。
ドアの鍵が閉まっていることを確認すると念のためチェーンをかける。
身近に頼る人がいなかった私は佐野先輩に電話をかけた。
しばらくすると鳴り始めるコール音。
その瞬間だった。
「ブー、ブー、ブー」という振動音が押入れの中から聞こえてくる。
「えっ…」
唖然としながらそちらを見つめているとゆっくりと扉が開いた。
0
お気に入りに追加
6
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(6件)
あなたにおすすめの小説
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
濡れ衣の商人
鷹栖 透
ミステリー
25歳、若手商社マン田中の平穏な日常は、突然の横領容疑で暗転する。身に覚えのない濡れ衣、会社からの疑いの目、そして迫り来る不安。真犯人を探す孤独な戦いが、ここから始まる。
親友、上司、同僚…身近な人物が次々と容疑者として浮かび上がる中、田中は疑惑の迷宮へと足を踏み入れる。巧妙に仕組まれた罠、隠蔽された真実、そして信頼と裏切りの連鎖。それぞれの alibi の裏に隠された秘密とは?
緻密に描かれた人間関係、複雑に絡み合う動機、そして衝撃の真相。田中の執念深い調査は、やがて事件の核心へと迫っていく。全ての謎が解き明かされる時、あなたは想像を絶する結末に言葉を失うだろう。一気読み必至の本格ミステリー、ここに開幕!
没落貴族イーサン・グランチェスターの冒険
水十草
ミステリー
【第7回ホラー・ミステリー小説大賞奨励賞 受賞作】 大学で助手をしていたテオ・ウィルソンは、美貌の侯爵令息イーサン・グランチェスターの家庭教師として雇われることになった。多額の年俸と優雅な生活を期待していたテオだが、グランチェスター家の内情は火の車らしい。それでもテオには、イーサンの家庭教師をする理由があって…。本格英国ミステリー、ここに開幕!
テレ子
倉田京
ミステリー
社会人として一人暮らしをする美里。彼女の興味は人とは少し違っている。
そんな彼女の住むアパートに同居人がやってきた。その名は『テレ子』
テレ子は美里に対してあるいたずらを執拗に繰り返すようになる。
ある日、美里はテレ子のいたずらの意図に気がつく。
テレ子が美里に伝えたかった事とは…
記憶力の問題
つっちーfrom千葉
ミステリー
知性高いコルガン青年は、幼少の頃から努力を嫌い、ボヘミアン人生を望んでいた。彼は大学の授業においても、出席すること自体ほとんどしないという暴挙に出ていた。
運命の夏季試験日には、当然のことながら、進級を賭けた一夜漬けを余儀なくされる。持ち前の機知により試験を乗り越えた彼であったが、自室に戻ってみると、ドアには鍵がかけられていたにも関わらず、実家からの仕送り金の一部が盗まれていることに勘づいた。冷静沈着なコルガン青年は、わずか10分足らずの思考において、隣室の友人を容疑者として捕らえ、そのまま警察に引き渡す。犯人特定の決め手になったものは、いったい何だったのだろうか?
記憶力をテーマにした簡単な推理小説です。サスペンスではなく、コメディ寄りにしてみました。
【厳選】意味怖・呟怖
ねこぽて
ホラー
● 意味が分かると怖い話、ゾッとする話、Twitterに投稿した呟怖のまとめです。
※考察大歓迎です✨
※こちらの作品は全て、ねこぽてが創作したものになります。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
時の呪縛
葉羽
ミステリー
山間の孤立した村にある古びた時計塔。かつてこの村は繁栄していたが、失踪事件が連続して発生したことで、村人たちは恐れを抱き、時計塔は放置されたままとなった。17歳の天才高校生・神藤葉羽は、友人に誘われてこの村を訪れることになる。そこで彼は、幼馴染の望月彩由美と共に、村の秘密に迫ることになる。
葉羽と彩由美は、失踪事件に関する不気味な噂を耳にし、時計塔に隠された真実を解明しようとする。しかし、時計塔の内部には、過去の記憶を呼び起こす仕掛けが待ち受けていた。彼らは、時間が歪み、過去の失踪者たちの幻影に直面する中で、次第に自らの心の奥底に潜む恐怖と向き合わせることになる。
果たして、彼らは村の呪いを解き明かし、失踪事件の真相に辿り着けるのか?そして、彼らの友情と恋心は試される。緊迫感あふれる謎解きと心理的恐怖が交錯する本格推理小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
すみません「うらみ」ってどうゆう意味ですか?
「うらみ」は仕事もプライベートもめちゃめちゃにされた溝口が、私の犯行に見せかけて自殺した話です。
最後はカップルの男が警察へ通報しています、、
おもしろいのでお気に入りに登録しました!
「限界」のパートがジョーク(自分結構ジョーク好き)にありそうでおもしろかったですwww
お気に入り登録ありがとうございます!
面白いとのお言葉うれしいです!
自分はどちらかというとダークな話が好きですが、ジョーク系ももう少し書いてみようかなと思います(笑)
おもしろい!
お気に入りに登録しました~
お気に入り登録ありがとうございます!面白いとのご感想とてもうれしいです。今後ともよろしくお願いします。