どんでん返し

あいうら

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限界

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デスクに置いている時計の短針が12を回ると「さすがに限界だな」と優輝は目をこする。

ここのところ徹夜が続いている。今日こそはしっかり睡眠時間を確保したい。

それから1時間ほど会社にいた優輝は、隣の席に座っている上司に、今日はさすがに帰らせてもらえないかと相談した。

優輝の上司は仕事に厳しいことで有名だ。少し顔をあげると、「なに甘いこと言ってんだ。」と一蹴した。

今日も帰れないのかと優輝は肩を落とす。

それから数十分後、半ば強引に上司を説得し、なんとか家路につくことができた。

そんな生活がしばらく続くと、ある日、優輝は身体を壊してしまった。そして彼は、上司と会社に責任があるとして賠償を求めることにしたのだった。

まずは弁護士を探さなければ。

弁護士事務所を訪問すると、業務の忙しさや徹夜続きでも帰らせてくれない上司について説明をした。

しかし、なかなか弁護に応じてくれる人はいなかった。

優輝の会社は一部上場の大企業だったため、弁護士の多くが逃げ腰になっているのだと考えた。

「くそ、こいつらに正義感はないのか。長いものに巻かれやがって。」

都心部の弁護士事務所は全滅だったので、今度は郊外にある小さな事務所を訪れた。

「すみません、裁判を起こしたいと思ってるのですが。」

こじんまりとした応接間に案内されると、年配の優しそうな弁護士が名刺を差し出してきたので、一応会社の名刺を渡す。

「どういった訴訟を検討されているのでしょうか。」

その弁護士は穏やかな表情で尋ねてくる。

優輝はことの顛末を丁寧に説明した。しかし、この弁護士も話を聞くと苦い顔になった。

「んー、なかなか難しいでしょうね。」

ここまで何度も断られてきて鬱憤が溜まっていた優輝は、少し声を張り上げて言った。

「なぜですか。私は身体を悪くしたんです。相手が大企業だからって逃げるんですか?弁護士としてのプライドはないんですか?」

すると、その優しそうな弁護士はイラッとした様子で返した。



「会社は昼過ぎに帰らせてもらってたんでしょ?体調を崩したのは、個人的な理由で徹夜していたあなたのせいですよ。」





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