どんでん返し

井浦

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殺意

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ここまでは全て順調。あとはきっちり仕留められるかどうかだ。

俺は昔から山崎という男を嫌っていた。

こういうことを言うのはよくないのかもしれないが、まず顔つきが気にくわない。それに話し方もだ。滑舌が悪くてガラガラ声だ。

まあ、そういうのは生まれもった特性だから、それだけで殺したいなんて思わないさ。

俺が山崎に殺意を抱いた理由、それは、あいつが奥さんのことを裏切ったせいである事件が起きてしまったからだ。

山崎は1年前に奥さんの弓子にプロポーズした。

しかし、それから1年間あいつは色んな女と遊び続けた。

たまたまそれを弓子が知ってしまったんだ。

俺は弓子のこともよく知っているから、本当に複雑だった。
その時も殺してやろうかと思ったけど、思いとどまった。

その後、弓子になんとか許してもらって結婚した。しかも、おめでたいことに弓子が妊娠したんだ。

そしたら、またあいつの悪い癖が出た。

懲りずに不倫しやがったんだ。
弓子がつわりで苦しんでる時に、あいつは他の女と一緒にいたんだ。

そして、事件は起こった。

ある夜、弓子が発作を起こして倒れてしまった。一刻を争う事態だったんだが、あいつはその時、例によって不倫相手と会っていたんだ。

翌朝になって山崎が家に帰ったとき、弓子もお腹の子どもも既に亡くなっていた。

それはそれは許せなかったよ。
俺は弓子のために必ず山崎を殺してやると誓ったんだ。

そして、今日そのチャンスがやって来た。

*****

「死体の身元は分かったのか?」

「はい、この部屋に住む山崎啓太38歳。2週間前に奥さんを亡くしていて、今は1人暮らしのようです。」

1人で住むには広すぎる3LDKの部屋を鑑識が行き来する。

「警部、こんなものが見つかりました。筆跡は本人のもので間違いありません。」

警部は、鑑識から3つ折りの紙を受け取るとその場で広げて読み始める。

「遺書  私のせいで妻が死んでしまった。自分が許せない。」

そして、警部は続けた。
「なるほど、自殺で間違いないな。」




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