リミテッド ー俺と番は死ぬまで一緒ー

いちご大福

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翻弄する、される二人。

変わっていく気持ち。

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「サクヤさま。起きて下さいませ」
「……起きました」
ベッドから起き上がると今日もサクヤの仕事が始まる。


今日も治療と薬品を調べながら薬剤師に指示をする。
テキパキと動くサクヤに遠目からレオが覗いていたが、すぐに姿を消した。

『あいつはこの国の宝だもんな………』
レオは思う。一緒に死んでくれと言ったが、国からしたら重要人物。


『頃合いか………』
もう既にレオの呪いは2ヶ月を切っていた。




それを頭を抱えるサクヤ。
『あと2ヶ月しかない………』
どうしたらいいんだろうと思っていると、頭がぐるぐるする。
考えつかない事に焦りを感じ始めているとサクヤは思う。

「サクくん!」
「あれ、どうしたの、ナツくん?」
ひょっこりと姿を現したのはナツであった。
「にーにを助けて」
「ナツくん?」
「にーに。ナツがいるからしんじゃう」
泣きそうなナツにサクヤは抱きしめる。ポンポンと背中を宥めながら。


「ナツがうまれたから、にーにとパパ、ケンカしてる。
ナツのせいでママ、いなくなったから」
「!!」
その言葉に衝撃を受けたが、泣くナツにひたすらサクヤは優しく告げる。

「ナツくんのせいじゃないよ、それは違う」
「え………?」
「にーには一度でもナツくんに怒ったかな?」
「ない………」
「ならナツくんのせいじゃない…君は望まれて産まれてきたんだから」
そういうとナツは泣き出す、そこに父親であるリツがいる事も知らずに。

泣き止んで寝てしまうナツにそっと近づく国王のリツ。


「サクヤくん、」
「お話を聞いていたんでしょう?」
「僕は情けない父親だ、こんな幼いナツを苦しめていたなんて………!」
思わず泣いてしまうリツにサクヤは微笑む。


「多分、レオさまはこの事を知って呪いを甘んじて受け入れているんです。
親子の会話をして下さい。このままではナツくんが可哀想です」
庭園を見ながら、そしてリツに強い意志を向けてサクヤは告げた。
そこにはヤナギとレオも居て。


レオは弟の言葉を知り、呪いが歪み始めていた。




「親子での会話をお願いします」
「…………こんな親に話すことはない」
真剣な顔をしているサクヤにレオは思いっきり吐き捨てる。

「僕はキミたち息子以上に大切なものはないよ」
「なら、なんで、早くに儀式を開かなかったんだよ!?サクヤが居たら、母さんは!!」
「開きたくても100年は経っていなくて、開きたくても出来なかったんだ!!
それにサクヤくんはまだ医師としては成長もしてなくて、」
親子二人のケンカが始まった。
ヤナギとサクヤはただ聞き手になっていた。

「ならなんで相談をしなかったんだ!母さんも勝手に決めて!」
「ナツを居なくなる、つまり流す事は母さんは、ユズはそんな事出来ないって言われた、
僕だって後悔しない日はなかった!
けどナツをお腹に抱えて幸せそうなユズを失くすなんて事も!!
色んな医師に見せたさ、でもダメだった!どこにもユズを失くさない方法なんて見つからないって」
泣きながら言うリツにレオも驚愕の表情を浮かべた。


「家族みんなで一緒にいたかったさ!!片方を選べなんて、出来ないよ!!」
悲しみが収まらないリツの言葉に、後悔も滲ませた言葉たちにレオは拳を握りしめた。


「俺は選べない、ナツも母さんもどっちも大事で、」
握りしめた拳をサクヤがぎゅっと握り返す。


「ごめんなさい。俺がもっと早くに産まれていれば、100年の周期がもっと早ければ。
きっと俺のせいかもしれないです」
涙を零しながら言うサクヤに二人、リツとレオは我に返る。
元を正せば、自分の存在が彼らを苦しめてしまったと。


「「違う!!!」」
親子がハモり、サクヤは驚いた表情を浮かべた。


「違わないです」
強い意志を持ちながらサクヤは伝える。
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